アブラメ釣り大会は晩秋のお楽しみ
十月二十日に向かったのは、佐渡島南部の羽茂大崎(はもちおおさき)という山間の集落。本日の大会主催者である村田さん、この大会の存在を教えてくれた友人の耕(たがやす)さんと合流する。耕さんはタガヤス堂というドーナツ屋さんの店主である。
村田さんと私はこの日が初対面で、仲介役の耕さんは新潟からの移住者でこの大会は初参加。釣り自体もほぼ未経験。よって私はアブラメ釣り大会がなんなのか、よくわからないままにこの場へ来ている。
村田さんの話によると、アブラメ釣り大会というのは、住んでいる集落だったり、友人同士だったり、職場だったりのイベントで、昔は盛んに開催されていたそうだ。
「昔はそんなに楽しみがなかったからさ、娯楽が。うちは五馬力のマメトラっていう耕運機に運搬用のトレーラーをつけて、それに子どもを乗せて家族で来たんだ。時速15キロで。トレーラーはクッションがないもんで、稲藁の束を敷いて、真ん中にお弁当とか飲み物を積んでな。
もう辞めてしまったところも多いけど、今でも集落によってはやっとるよ。この辺りでは十月一日を解禁日に決めていて、その日は磯に人がいっぱい集まった。佐渡でも特に、羽茂の辺りが盛んなのかもしらん」
「釣竿を持っていない人は、現地で笹竹を切って作るのよ。エサはイワムシが一番。フナムシやヤドカリを捕まえて釣る人もおった。昔はよく釣れたよ。それこそ一人何十匹とか。
去年はまあまあ釣れたけど、今年は猛暑で海水温が高かったせいか、全然ダメ。先週やった他の集落の大会では、全員で一匹とかいっとったわ。だから今日も期待はしないで!」
なかなか釣れない
アブラメは本来なら簡単に釣れる魚らしいが、今年はどうも調子が悪いらしい。とはいっても、三人でやれば最低でも一匹くらいは釣れるだろうと軽く考えていた。
期待をするなという言葉通り、この日はまったく釣れる気配がなかった。たまに釣れるのはフグだけ。こんなの俺が知っている佐渡の海じゃない。
もし釣れなくても、アブラメ釣り大会という文化を体感できているので楽しいのだが、やっぱり釣りたい。そしてアブラメを食べたいんですよ。