特集 2023年11月27日

佐渡島の伝統行事「アブラメ釣り大会」の謎に迫る

アブラメは意外な魚であり、会の目的もまた予想外でした。

佐渡島在住の友人が「佐渡では昔から十月くらいになると、アブラメ釣り大会っていうのをやるんだよ。最近は減ったみたいだけど」と教えてくれた。アブラメとは、おそらく磯で釣れるアイナメのことだろう。

こういう地域独自の伝統行事は気がつくと廃れてしまうので、体験できるうちにと参加させてもらったところ、それは日々の営みに根付いた素敵な食文化だった。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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アブラメ釣り大会は晩秋のお楽しみ

十月二十日に向かったのは、佐渡島南部の羽茂大崎(はもちおおさき)という山間の集落。本日の大会主催者である村田さん、この大会の存在を教えてくれた友人の耕(たがやす)さんと合流する。耕さんはタガヤス堂というドーナツ屋さんの店主である。

村田さんと私はこの日が初対面で、仲介役の耕さんは新潟からの移住者でこの大会は初参加。釣り自体もほぼ未経験。よって私はアブラメ釣り大会がなんなのか、よくわからないままにこの場へ来ている。

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完全釣り仕様の車で現れた村田さん。(は)と書かれたJA羽茂の帽子がかっこいい。
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近くに貼られていたポスター。アブラメを釣る集まりは、今もいくつかあるようだ。

村田さんの話によると、アブラメ釣り大会というのは、住んでいる集落だったり、友人同士だったり、職場だったりのイベントで、昔は盛んに開催されていたそうだ。

「昔はそんなに楽しみがなかったからさ、娯楽が。うちは五馬力のマメトラっていう耕運機に運搬用のトレーラーをつけて、それに子どもを乗せて家族で来たんだ。時速15キロで。トレーラーはクッションがないもんで、稲藁の束を敷いて、真ん中にお弁当とか飲み物を積んでな。

もう辞めてしまったところも多いけど、今でも集落によってはやっとるよ。この辺りでは十月一日を解禁日に決めていて、その日は磯に人がいっぱい集まった。佐渡でも特に、羽茂の辺りが盛んなのかもしらん」

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村田さんの家で伝統的な竹竿を見せてもらった。赤い服がドーナツ屋の耕さん。
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現地に生えている笹竹を切って、竿を作る人も多かったそうだ。

「釣竿を持っていない人は、現地で笹竹を切って作るのよ。エサはイワムシが一番。フナムシやヤドカリを捕まえて釣る人もおった。昔はよく釣れたよ。それこそ一人何十匹とか。

去年はまあまあ釣れたけど、今年は猛暑で海水温が高かったせいか、全然ダメ。先週やった他の集落の大会では、全員で一匹とかいっとったわ。だから今日も期待はしないで!」

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なかなか釣れない

アブラメは本来なら簡単に釣れる魚らしいが、今年はどうも調子が悪いらしい。とはいっても、三人でやれば最低でも一匹くらいは釣れるだろうと軽く考えていた。

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よくアブラメを釣ったという磯に案内してもらった。
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昔から特エサとされているイワムシを用意していただいた。その名の通り、柔らかい岩の中に住んでいるゴカイの仲間。今は掘れる場所も掘る人も減ったため、まあまあお高い。
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釣りの仕掛けはとってもシンプル。オモリの先にハリが一つ。
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アイナメは海底の岩や海藻の隙間に潜んでいる魚。釣れそうな場所に仕掛けを落とす。
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アブラメが掛かったら潜られる前に抜き上げられるように、なるべく固い竿がいいそうだ。お借りした昭和と思われるリョービの竿がかっこいい。
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アブラメの釣り方は簡単だが、アブラメを釣るのは難しかった。これはエサ取りのクサフグ。

期待をするなという言葉通り、この日はまったく釣れる気配がなかった。たまに釣れるのはフグだけ。こんなの俺が知っている佐渡の海じゃない。

もし釣れなくても、アブラメ釣り大会という文化を体感できているので楽しいのだが、やっぱり釣りたい。そしてアブラメを食べたいんですよ。

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