特集 2026年3月18日

新種の魚発見!「スーパーサイヤ人のようなハゼ」とは? 発見者の平坂さんに聞いてみた

沖縄の深海から新種を発見した平坂さんをDPZに召喚!

2025年11月、沖縄県石垣島沖の深海から釣り上げられた魚が新種として認定された。発見者の一人として名を連ねているのはデイリーポータルZ発の生き物ライターにして怪魚ハンターの平坂寛さんだ。

新種にはスーパーサイヤ人のようなハゼ、「スーパーサイヤン(和名:エレキハゼ)」と名が付けられていた。

スーパーサイヤ人......なんでそんなことになったのか。そもそも新種はどうやって新種と認められるのか。大変なのかそうでもないのか、その中間ぐらいなのか。

平坂さんにオンラインインタビューを敢行した。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー >ライターwiki

どこがスーパーサイヤ人だというのか

沖縄から平坂さん(おひさしぶり!)、聞き手はDPZより伊藤、石川でやっていきます。

伊藤「新種発見おめでとうございます!つけられた学名※がヴァンダーホルスティア・スーパーサイヤン(Vanderhorstia supersaiyan)ですね」 
※学名:生き物に付けられる世界共通の学問上の名称。我々がふだん目にしている「サケ」とか「ツバメ」は日本向けの「和名」で、これらにもすべて学名が存在する。スーパーサイヤンの和名は「エレキハゼ」

平坂「そうですね。ヴァンダーホルスティアというのはヤツシハゼ属というハゼの仲間のことで、スーパーサイヤンはスーパーサイヤ人です」

これがスーパーサイヤン(写真提供:平坂寛)

伊藤「はいそこ!学名って体の形とか色といった特徴を簡潔に表現するものと思っていたんですが、思い切り架空のキャラクターですね」 

ハブの学名はProtobothrops(ハブ属のヘビ) flavoviridis(黄緑の)。隙あらばハブをねじこんですいません。
「架空のキャラクターや著名人の名前を当てている生物は結構いますよ」(平坂)

 平坂「この新種を発表する論文は僕を含め3名で書いているんですが、中心となって進めてくれた琉球大の小枝助教が、僕が捕ったこのハゼを見て『スーパーサイヤ人みたいだな』って言い始めたんです」

伊藤「ファーストインプレッションでサイヤ人ですか」

平坂「正直、僕には何を言っているのかわからなくて。 というのも、ドラゴンボールを読んだことがなかったんですよね。でもスーパーサイヤ人はなんとなくわかるんです。あの黄色い髪の人ぐらいの感じで」

伊藤「逆立った髪の」 

平坂「そう、でもそれを言ったら黄色い魚は全部スーパーサイヤ人になるじゃないかと言ったら、そうじゃないと。髪じゃなくて体にまとっているオーラみたいなやつだというので検索して見たら、なるほど……となって」

これのこと。

平坂「小枝さんは大学時代の同期で、たくさんの魚を発見している新進気鋭の研究者なんですけど、とてもユニークなネーミングセンスでインパクトある名前の魚を多く世に出しています。 例えばモノノケトンガリサカタザメとか」

伊藤「モノノケ!変だけど言いたくなりますね」

平坂「彼は本当に魚が好きなので、せっかく素敵な魚を見つけたから みんなに知ってほしいという思いが強いんです。 だからどこか引っかかりのある名前を選んでくれます」 

伊藤「それでスーパーサイヤンでいくかと」

平坂「やっぱりその効果はありましたね。論文が出たあとにインドネシアに行ったんですよ。 そこで会った魚好きの人に『知ってるか? 日本でスーパーサイヤンっていう魚が見つかったんだ』と言われて、『それ見つけたの僕です』と言ったらブラボー!と盛り上がって、その方は日本のアニメも大好きだったんです」

「その流れで実はドラゴンボール読んでないと言ったらすごい顔をされまして......」でしょうね。

平坂「変な話、ヤツシハゼの新種が見つかったといっても、それ自体がそんなに話題になることはないんです。それがこの名のおかげでニュースとなり、世界に届いていることを実感できるというのは、やはりいいネーミングだったんだと思いましたね」

伊藤「たしかに、ドラゴンボールぐらいワールドワイドで知られていれば、スーパーサイヤ人ぽいっていうのは『わかりやすい特徴』ですもんね」

石川「僕ももう覚えました!」

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深海に注目したきっかけはデイリーポータルZ!

ネーミングの謎が解けたところで、スーパーサイヤンを発見し、新種発表!となるまでの道のりを教えてもらおう。

伊藤「スーパーサイヤンがいたのは石垣島沖の深海ですよね。深海魚については本も出してるし、平坂さんの関心の高さは感じていましたけど、新種の調査に関しても深海というフィールドにこだわりがあったんですか?」

平坂「はい。深海はかなり未知の魚が多いフィールドで、言ってしまえば深海を覗けばもう新種だらけという感じなんですけど、探してみようと考えるきっかけになったのは、伊藤さんと行ったバラムツ釣りの取材なんですよ」

伊藤「なつかしい!もう14年前だ」

2012年の大傑作記事「巨大深海魚を釣って食べたら尻から油が!!(それにしてもすげえタイトルだな)」平坂さんに伊藤・西村さんが同行して駿河湾でやばい脂を持つ深海魚、バラムツ釣りにチャレンジした。

平坂「夜に深海から浮上してきたバラムツを釣り上げて、深海魚って海上から釣れるんだという気づきがあったわけです」

伊藤「たしかに!重さで手がちぎれるかと思いましたが(下手だから)」

平坂「生きている深海魚を間近で見られる、これはおもしろいと、そのあと日本のあちこちの海で釣りをしていたら、石垣島沖ですごく珍しい魚が釣れました。 もう10年ほど前(2016年)ですが当時日本で4匹目とか5匹目ぐらいで、存在は知られていたけどまだ種名がついていない魚でした」

この魚。自分でも自覚してるんじゃないかというぐらい珍しオーラがある。
この後、アオスミヤキという和名がついた。(写真提供:平坂寛)

平坂「LINEで研究者に画像を送ったら『食べないで!』と言われて研究機関に魚を送りました。 そんなに貴重なものだったんだ、 食べなくてよかったと」

伊藤「いつもなら食べちゃう(笑)」

平坂「その研究者が小枝先生で、それ以来 珍しい魚を見つけたら提供するというようなことを続けていて、今回のスーパーサイヤンにつながったんです」

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漁師さんと船を出す

伊藤「石垣島沖というのは深海魚を調べるフィールドとしては魅力的なんですか?」

平坂「そうですね。奄美も含め、南西諸島の深海はあまり研究が進んでいないんです」

伊藤「おお、やりがいの海」

平坂「あと深海魚を研究する条件として重要なのが立地で、船を出して40分も走れば300〜400mの深海にアクセスできます。 沖縄は駿河湾ほどじゃないけど、日本全体で見るとかなりアクセスしやすい場所なんですね」

バラムツも釣れる!(写真提供:平坂寛)

 

めっちゃ珍しい深海魚、ヒメソコホウボウ。深海に置いておくのがもったいないぐらいかわいい。(写真提供:平坂寛)

石川「船はどうするんですか?」

平坂「現地で仲良くなった漁師さんにお願いしています。以前イグアナを捕まえた時に知り合った居酒屋の店主兼漁師の方が変な魚好きで、深海魚を釣りたいと相談したら、『やってみよう』と連れていってもらって 」

伊藤「でも、深海魚釣りの船が出てる駿河湾ならともかく、石垣島沖だとどこで釣っていいかわからないんじゃ......」

平坂「海図を見て地形的にこの辺かなという感じで、釣れるか釣れないかは手探りですね。でも、そこがおもしろいんです。ポイントが確立していないから、一緒に開拓していくのが」

 伊藤「その手探りがスーパーサイヤンにつながったわけですもんね」

船上でそうめんランチ。最高すぎますな。(写真提供:平坂寛)

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