特集 2019年1月16日

「本当は鉄道に詳しくない……」プラレールで東京の地下鉄を再現した男たち

プラレールで東京の地下鉄路線を再現したぞー

おととし、世間を震撼させた「プラレールで山手線完全再現」をやってのけた人たちが、今度は「プラレールで東京の地下鉄完全再現」をやるという。

プラレールで地下鉄の再現って……はたして、できるのかそんなこと。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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できる

結論からいうと、できた。

地下鉄再現プラレールは、2019年1月12日〜14日までの3日間。さいたま市のイベント会場で行われた『展示会プラフェス』で公開された。

ひとまず、見て欲しい。プラレールで再現された東京の地下鉄を。

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東側から西をのぞむ

東京の地下鉄、東京メトロと都営地下鉄の全13路線を、線路の高さや側線、留置線なども含めてほぼ完全に再現している。

 

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いちばん地下鉄が混み合っている銀座周辺

銀座周辺は東京でいちばん地下鉄が込みあっている場所だが、日比谷線のうねり具合などに苦労のあとはみえるものの、ちゃんと再現されている。

画像に各地下鉄路線のカラーと路線名をいれてみた。

 

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これぜんぶプラレールなんだぜー

狂気の沙汰である。ただ、東京の地面の下には、実物大のこれが埋まっていると思うと、それもまた狂気の沙汰ではあるが。

どう写真を撮ってもすんなり収まるようには撮れないので、360度カメラで撮影してみた。

 

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皇居の位置で写真撮ってます(北が上)
Post from RICOH THETA. - Spherical Image - RICOH THETA


360度カメラの画像を矩形に修正すると、なぜかスピード感のある仕上がりになってしまったが、会場いっぱいに再現されたプラレールの線路が、まさに路線図のような形になっているのがよくわかると思う。どの線路が何線にあたるか考えながらみてもらうと楽しいかもしれない。

注目したいポイントを見ていきたい

狂気の沙汰はともいえるこの東京の地下鉄再現プラレール、ちょっと詳しく見ていきたい。

まず注目したいのはこの部分。

 

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新橋ステーション

この構造を見て「あぁ〜」となるひとは、鉄道マニアか、パトレイバーの劇場版を見たことがある人かもしれない。いわゆる「幻の新橋駅」も忠実に再現してある。

 

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わかりやすく色分けしました

幻の新橋駅は行き止まりになっており、現在は留置線(電車をとめておくための線路)として使われている。

以前、取材で幻の新橋駅の中に入ったことがあるけれど、まさにこのプラレールの通り、留置線は、渋谷方面に向かって緩やかな下り坂になっており、プラレールの再現度の高さにうなる。

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幻の新橋駅のホーム
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幻の新橋駅のあのタイル文字

普段見えないものをきっちり再現しているところは他にもあり、汐留駅のこちら。 

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大江戸線と浅草線の連絡線

大江戸線と浅草線を結ぶ線路が走っているのがわかると思う。これは大江戸線の車両を馬込の工場まで回送するための連絡線路だ。
こういった線路は地下鉄の中には意外とあり、例えば、有楽町線と千代田線も実はつながっていて、プラレールでもそれはキッチリ再現されている。

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有楽町線と千代田線の連絡線

 

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色をぬってみました

ここの連絡線は、たまに千代田線の列車を新木場まで走らせたりするのにつかわれることがある。


駅の造りも忠実

もちろん駅の造りも忠実に再現している。例えば、半蔵門線と銀座線の表参道駅。

 

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銀座線を挟むように半蔵門線が

銀座線を挟むよう形で半蔵門線が通る。同じホームで乗り換えができる超絶に便利な構造の駅だ。
同じホームで乗り換えできるといえば、赤坂見附駅もそうだが、もちろん、再現されている。

 

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上下二段になっている赤坂見附駅

あと、駅構造が気になるところといえば、小竹向原なんかも気になるところだと思う。

 

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でーたー、ポイントのおばけだぁ

これだけのポイントの切り替えをすべて平面で行っているというのがすごい。そらすぐ電車がとまるわけだ。


現場で組み立てる

さて、この東京の地下鉄のプラレール。今回、特別に設営をしているところから見せてもらった。

上の写真は、基本的に完成後(一部完成前)の写真だが、完成二日前の様子はこんなだった。 

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高さがない

今回、まずはザッと線路だけつなげて、大雑把な路線図のような形をまず作ってしまう。そのあとから立体にする。という作り方らしい。下の写真は、まだ高低差や線路が複線になっていない下書きの状態である。 

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これが

 

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こうなる
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プラレールで地下鉄を再現した、松岡さん(右)とぺたぞうさん(左)

今回この地下鉄路線完全再現を行ったのは、松岡さん、ぺたぞうさん達だ。松岡さんは、以前、山手線完全再現の取材をした際に話を聞いた。
松岡さんは、仕事を辞め、現在はプラレールの展⽰会やYouTubeなどで収⼊を得ている、プロの「プラレーラー」である。詳しい経緯は前回のインタビュー記事を御覧いただきたい。
ぺたぞうさんは「一畳プラレール」というたたみ一畳分のスペースにプラレールをレイアウトするという活動を行っており、プラレール界では有名な人物である。

このプラレール界の両巨塔に、地下鉄完全再現について、お話をうかがった。

――今回は、山手線完全再現のときとは違って、高さ……というか深さの概念があって、かなり難しかったのでは? どうやって作るのか、気になって見にきたんです。

松岡さん「そうですね、まず最初に下書きにあたるものをレールで組んで、レイアウトを決めるんです。で、そこからレイアウトを組んでいくわけですけど、最近できた路線から先にどんどんさかのぼって古い路線を作っていく感じです」

――それは、つまり、深いところにある路線から先に作るということですか。

ぺたぞうさん「はい、深いところにある線路から順番に高さをつけたり、複線にしたりするんです」

――これ、駅一つづつ海抜の高さが書いてありますね。調べたんですか。

松岡さん「地下鉄の駅の高さが載ってる資料があるので、そこから計算して、駅の高さを調べました」

――あと、山手線完全再現の時と比べると、駅の数が、めちゃめちゃあると思うんですけど、駅の数足りましたか?

ぺたぞうさん「駅の部品は総動員ですね、もともと地下の駅という部品もあるんですが、現在は販売終了してしまって数が限られてるんです」 

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地下の駅は販売終了

ぺたぞうさん「町の駅なんかも合わせれば、なんとか数は足りるのでは」

――町の駅これですね……色が二種類あるんですね。

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色が二種類ある町の駅

ぺたぞうさん「町の駅の屋根が青いやつは、セット品に入っていたやつで、屋根が黄色いのは単品で売っている部品です」

――そんな違いがあるんだ。出自で色が違うのか。おもしろい。

ぺたぞうさん「本当は、つくばエクスプレスの地下部分あたりも入れようと思ったんですけど、さすがにそこまでやると辛くなるので、あくまで東京メトロ、都営地下鉄に絞ってレイアウトしました」

――法的に地下鉄となっている路線だけということですね。


現場で合わせる能力

――これだけのレイアウトは、設計図みたいなものは作るんですか?

松岡さん「設計図はありませんけれども、配線図は作ります」

 

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大江戸線の配線図

――この配線図はどうやって調べるんですか?

松岡さん「インターネットで調べれば、わりとすぐわかりますよ」

――たしかに「(鉄道路線名) 配線図」で検索するとけっこういろんなものが出てくるな。

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千代田線の路線図

――この配線図を元に組んでいくわけですね。

ぺたぞうさん「ただ、この配線図そのままだとプラレールのレイアウトにできないんです。配線図をみて、プラレールのレイアウトにデコードできる人が必要で、それができる人が何人もいないんですよ」

――配線図をプラレールのレイアウトに翻訳した設計図は無いんですね。

ぺたぞうさん「ないです。かりに設計図を作ったとしても、現場で現状に合わない部分がどんどん出てくるので、あまり意味がないんですよ」

――なるほど。

ぺたぞうさん「配線図を作るのが得意な人、配線図をプラレールのレイアウトにデコードするのが得意な人、実際に組むのが得意な人……それぞれ得意分野があるんです」


前面展望動画と構内図で確認

――それにしても、駅構造、デフォルメされてるとはいえ、かなり忠実ですごいですよね。配線図だけじゃなかなか難しいんじゃないですか?

松岡さん「配線図だけだとわかりにくいので、メトロの構内図とYouTubeの前面展望動画で確認しますね」

――メトロの構内図は、ウェブサイトにあるやつですよね。でも、YouTubeの前面展望動画って地下鉄のやつは何か映ってるんですか、それ。

松岡さん「真っ暗ですけどね、ただ、たまに線路や構造物が見えたりするんですよ」

――見えるのか……。

松岡さん「よく見ると、渡り線(隣のレールに移動するための線路)が廃止されていたりとか、そういったところを確認していますね」 

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半蔵門線と三田線が交差しているところもちゃんと再現、すごい

――しかし、毎回思うのですが、来る人は子供だけじゃなくて、若い子や大人も非常に多いですね。

松岡さん「多いです」

――松岡さんは、そもそも最初はYouTubeでプラレールのレイアウトをアップしていたんですよね。

松岡さん「そうです。YouTubeです。そのときに『会ってみたい』という子供がものすごくふえて。で、何度か会ってたんですけど、こうやって個別に会うなら、オフ会やったほうが早いなってなったんです。でも、プラレールのレイアウトを思いっきり広げられるような場所がなかなかないんですよ」

――場所を借りるのって意外とお金かかりますからね。

松岡さん「そこで、気づいたのが、自治体がやっているようなホールや市民センターの貸しスペースをギャラリーとして借りると安いことに気づいたんですよ。で、プラレールのレイアウトというアート作品を展示するという名目で借りるんです。だから『展示会プラフェス』なんです」

――あ、そういうことなんですね。 

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あくまでアート作品の展示です

松岡さん「最初に会いに来た子なんかは、今は自分でプラレールのイベントをやるようになってますよ」

――師匠と弟子みたいですね。

松岡さん「正直な話、私は鉄道そんなに詳しくはないんです。もちろん好きですけど。どっちかというと、こういった場を作るのが楽しいですね」

――鉄道、詳しくないけれど、好きだというのは僕も一緒です。鉄道分野は本気で詳しいひとがやたらいて、気後れしてしまうんですけど、こういう「プラレールのレイアウトで実際に遊ばないまでも、組んであるものを鑑賞するのは好き」というレベルの「詳しくないけど、好き」という人も多いんですよね。このイベントはそのへんの需要に見事に答えてる感じがしますね。


次はどこを再現するのか……

松岡さんのプラレールで再現シリーズはとどまるところを知らない。山手線、東京の地下鉄の他にも、ぺたぞうさんたちが、大阪メトロの再現はすでにやっている。

地下鉄でいえば、札幌、名古屋、福岡あたりが狙い目かもしれないがどうだろう。

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