象、7年ぶりです
かつて沖縄には象がいた。しかし移動のおりに逃げ出し、そのまま野生化してどこかの山に住んでいるらしい。というのは沖縄に伝わる有名な都市伝説だ。
事実沖縄にも以前は象がいたのだ。しかし2001年、動物園が改装工事のために休館しているあいだに象は体調を壊し、亡くなってしまった。そういうわけで新しくオープンした動物園には突然象がいなくなっていたのだ。
子供たちはもちろんのこと、県民はみな象を熱望した。象がいない動物園なんてクリープを入れないコーヒーよりも味気ないだろう。僕も何度かこの動物園には来ているが、一番印象に残る動物はアリクイだった。ふつう象だろう。沖縄に象がいなくなってしまってから、ボランティア団体を中心として象を呼ぼうという声が高まっていた。
そして去年の年末、念願の象がインドからチャーター機に乗ってやってきたのだ。
見たことのある動物がたくさんいる
それにしても沖縄の動物園はなんとなく日常の延長のような場所だ。それは近所で見たことのある動物たちが多いせいではないだろうか。確かに沖縄には他県では見られない珍しい動物がたくさん生息しているのだが、せっかく動物園に来たからには見たことのない動物たちにも会いたいものだ。
しかし珍しい動物だってちゃんといるぞ。コアラだ。すごいだろう。僕が子供の頃、名古屋の東山動物園にコアラがはじめてやって来たのだが、そのときは2時間くらい待って動かないコアラを人垣の上からちらりと見たものだ。あれから20年、今では少しも並ばなくてよくなった。コアラは相変わらずじっと木の又に乗っかったまま微動だにしない。やっぱり象だ、僕たちの見たいのは、象なのだ。
そんなどこか物足りない感じの沖縄の動物園に、ついに待望の象がやってきた。それはもうどっかんどっかんいっていることだろうと期待してわざわざ週末を選んで来てみたのだが、正直それほど混乱はしていなかった。言ってしまえばいたって普段どおりの動物園だった。
入り口付近の掲示板には一応象のポスターが張ってあるのだが、ヨナグニウマの表示の方がでかかった。もっと象に賭けてもいいと思う。
しかし掲示板の示す象舎へと向かうと、そこはやっぱり他の動物に比べて熱気の度合いが全然違ったのだ。