特集 2018年6月30日

教会じゃなく集落が世界遺産ってどういうこと?~長崎と天草の潜伏キリシタン集落を訪ねた

世界遺産になった長崎の集落群は、実に個性豊かな風景揃いでした
世界遺産になった長崎の集落群は、実に個性豊かな風景揃いでした
もう間もなく「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産になる。2007年、暫定リスト(世界遺産の推薦候補一覧)に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(以下「長崎の教会群」)という名で記載されてから、実に10年以上にも及ぶ長い道のりであった。

今回、晴れて世界遺産になるのは、以前より世界遺産の候補とされていた長崎の教会群……ではなく、潜伏キリシタンの集落なのだという。それはいったいどういうことなのか、世界遺産になる「集落」を見に行った。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。

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紆余曲折あった世界遺産候補

「長崎の教会群」に関しては、2007年から2014年にかけて長崎在住の当サイトライターT・斎藤さんがすべての構成資産を訪れて記事にされている。
今改めてT・斎藤さんの教会巡りを拝読すると、その候補資産は一定ではなくたびたび入れ替わっていたことが分かる。今年ようやく世界遺産になるまで実に紆余曲折があったのだ。

中でも推薦方針の大転換を図るきっかけとなったのは、「長崎の教会群」として推薦された後の2016年、ICOMOS(イコモス、文化遺産を評価する機関)から「構成資産を禁教令時代に特化すべき」と指摘されたことによる。

世界遺産になるには、唯一無二の存在であることが求められる。「長崎の教会群」は禁教令が解けた後の明治から昭和初期にかけて建てられた比較的新しい教会がほとんど。もっと歴史のある教会が世界中にゴロゴロ存在する中、それらに抜きんでた価値を証明するのは難しかった。
教会建築として世界遺産になるには、こういうのとか(インド「ゴアの教会群と修道院群」ス・カテドラル)
教会建築として世界遺産になるには、こういうのとか(インド「ゴアの教会群と修道院群」ス・カテドラル)
こういうの(「フィリピンのバロック様式教会群」パオアイのサン・オウガスチン教会)とかと比べて負けずとも劣らない価値を証明しなければならない
こういうの(「フィリピンのバロック様式教会群」パオアイのサン・オウガスチン教会)とかと比べて負けずとも劣らない価値を証明しなければならない
一方でICOMOSに高く評価されたのが、キリスト教の伝来から禁教期を経て信仰の復活を遂げた「潜伏キリシタン」の歴史である。そこで構成資産を潜伏キリシタンに関連するもの、すなわち禁教期に潜伏キリシタンが暮らしていた集落に改め、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(以下「潜伏キリシタン関連遺産」)という名称で再推薦されたのだ。
平戸島対岸の田平地区にある田平天主堂。カッコ良い教会ではあるものの、明治時代に新規開拓された土地にあることから「潜伏キリシタン関連遺産」では除外された
平戸島対岸の田平地区にある田平天主堂。カッコ良い教会ではあるものの、明治時代に新規開拓された土地にあることから「潜伏キリシタン関連遺産」では除外された
とまぁ、大幅に見直されて計12件となった「潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産であるが、「長崎の教会群」から変更されなかった物件も存在する。南島原市の「原城跡」と、長崎市の「大浦天主堂」だ。

原城跡は江戸幕府による禁教令が発せられるきっかけの一つとなった「島原の乱」の舞台であり、また幕末の元治2年(1865年)に建てられた大浦天主堂は潜伏キリシタンがプチジャン神父に信仰を打ち明けた、「信徒発見」の舞台である。禁教期の始まりと終わりの地、潜伏キリシタンの歴史に深く関わる存在であることから続投と相成った。
島原の乱において、一揆軍が最終的に立てこもった「原城跡」
島原の乱において、一揆軍が最終的に立てこもった「原城跡」
幕末の元治2年(1865年)、外国人居住者の為に築かれた大浦天主堂。日本に現存する最古の教会堂で、国宝に指定されている
幕末の元治2年(1865年)、外国人居住者の為に築かれた大浦天主堂。日本に現存する最古の教会堂で、国宝に指定されている
さて前置きが長くなってしまったが、いよいよこの世界遺産の主体である潜伏キリシタンの集落を見てみよう。

【「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産】

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