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こたつをスキーに連れてって

スキーに連れてって!
スキーに連れてって!
軽い気持ちで話したことが、のちのち自分を苦しめることってありますよね。

これはこの冬実際に起きたことをまとめた記事です。こたつをソリにして吹雪のゲレンデを滑ってきました。その一部始終をおとどけします。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。(動画インタビュー)

前の記事:コンピューターvsヒト 三本勝負

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

ある日、養命酒に呼ばれる

養命酒製造株式会社の広告担当佐熊さん、鳥山さんから連絡が入った。

「安藤さん、ちょっと相談があるので来てもらえませんか。」

先日こたつ列車の記事をリリースしたばかりだというのになんだろう。軽く嫌な予感がした。
会議室に入った瞬間、予感当たったな、と思った。だっておかしいでしょうこれ。
会議室に入った瞬間、予感当たったな、と思った。だっておかしいでしょうこれ。
いつも打ち合わせをしている会議室へ入ると佐熊さんと鳥山さんがこたつに入っていた。

養命酒といえばこれまでもフチ子になったり爆破したりと、好き勝手にやらせてもらっていたのだけれど、今回の二人から発せられるプレッシャーはなんとなくこれまでとは違っていた。これはなにかまずいことが起こるぞ、本能がそう語りかけている。
「どうぞどうぞ。」
「どうぞどうぞ。」
「………。」
「………。」
鳥山「いまわが社がオリジナルのこたつをプレゼントしていまして。」

知っています。こたつ列車の記事もこの前書きました。

佐熊「はい。その節はありがとうございました。今回はさらにこたつをフィーチャーしてもらいたくて。」
「養命酒カラーのこたつなんです。」
「養命酒カラーのこたつなんです。」
鳥山さんいわく、養命酒こたつの暖かさを世に伝えたいのだとか。日本のどこかで寒くて困っている人にこたつを送りたい、数は限定ではあるが送りたい、できれば今月送りたい。簡単に言うと養命酒こたつが15名様にあたるキャンペーンが今月いっぱいです、ということだ。

鳥山「こたつの暖かさを表現するためには部屋の中にいてはいけないと思うんですよね。たとえばですが、空を飛べないかなと。」
「ほら、高度が2000m上がると気温は12℃下がるって言いますからね。」
「ほら、高度が2000m上がると気温は12℃下がるって言いますからね。」
たとえば、の例えが急すぎる。無理ですよねそれ。

佐熊「では海に潜るのは?」

勝手に潜る分には止めはしないが、呼ばれたからには僕が潜るんだろう。嫌だ。しかしこのままでは帰してもらえなさそうだったので「こたつをソリにしてスキー場を滑るくらいなら……」と提案してみた。
「ではそれでお願いします。」
「ではそれでお願いします。」
しまった。

これまでも打ち合わせで軽い気持ちで提案した案件が本決まりになり苦労したことが何度もあるが、今回もそのパターンだ。とりあえず有識者と相談したいのでこたつだけ送ってくださいとお願いしてこたつを出た。

ここから苦悩の日々がはじまる。


こたつはスキーに連れていけるのか。


苦悩の日々がはじまる

こたつをソリにできるのかどうか、まずは信頼できる人たちに相談したいと思う。
というわけで突然こたつを送りつけてすみません。
というわけで突然こたつを送りつけてすみません。
おねがいしたのは当サイトでもおなじみバッタネイションの岩沢兄弟。過去にもフチ子のコップを作ってくれたり人間大砲を作ってくれたりと、無理難題を確かな技術力と華麗なとんちで解決してくれる素晴らしいユニットである(本職はインテリアデザイナー)。

こたつをソリにして、ゲレンデを滑るのって可能ですかね。

「いけるんじゃないですか。」

軽くオッケーが出た。ただ安全かどうかはまた別の話だという。
「まあこうやってソリを付けたら滑るでしょうけど。」
「まあこうやってソリを付けたら滑るでしょうけど。」
「転んだりぶつかったりすると体が天板に圧迫されるでしょうね。」
「転んだりぶつかったりすると体が天板に圧迫されるでしょうね。」
なるほど、するとどうなりますか?
「下手したら危ないと思いますよ。」
「下手したら危ないと思いますよ。」
岩沢さんは笑いながら話していたが、ホワイトボードには「死」と書かれていた。下半身がこたつに入った状態でソリが加速しそのままどこかにぶつかって止まる時、慣性で天板がおなかに刺さるらしい。
「そうですね、安全を優先するとソリよりもボートですかね。」
「そうですね、安全を優先するとソリよりもボートですかね。」
ソリだとスピードがつくと制御が効かなくなる可能性があるので、ゴムボートにこたつを固定してはどうかということだった。なるほど聞いてよかった。とにかくケガをするのは避けたいのでぜひそれでいきましょう。
「ゴムボートに乗せて滑るのが安全だと思います」。 その前にすみません、その死っていう文字だけ消してもらっていいですか。
「ゴムボートに乗せて滑るのが安全だと思います」。 その前にすみません、その死っていう文字だけ消してもらっていいですか。
方針は決まった。その場でちょうどよさそうなゴムボートを注文。「おれたち」のソリが加速を始めた瞬間である(岩沢さんたちを強引に仲間に引き入れた)。

ばかな撮影をさせてくれるゲレンデを探す

次はこたつのソリで滑らせてくれるゲレンデ探しである。ありのままを企画書に落とし込んで近場のゲレンデ3か所に送ったのだけれど、その後反応がなかった。シーズンイン直後の忙しい時期である、わけのわからない話に付き合ってはいられないのだ。

結局知り合いから知り合いの知り合いへと直接おねがいしてもらい、半ば強引にゲレンデを確保した。持つべきものは友だちである。場所は群馬県のたんばらスキー場。僕はもうこの先の人生、たんばらでしかスキーはしない。

撮影当日、爆弾低気圧が暴れる

バッタネイション岩沢さん監修のもと、こたつソリの制作は順調に進んだ。各パーツに分けて前日夜に現場に搬入し、われわれは近くの健康ランドで仮眠を取って朝6時に集合した。ここまでは順調だったのだ。だがしかし、である。

着いたときに目を疑った。
雪がすごいのだ。
雪がすごいのだ。
ちなみにたんばらスキー場には2週間前に打ち合わせと下見に来ている。その時はまったく雪がなくてオープンに間に合うのか心配したものだ。
2週間前のたんばらスキー場。
2週間前のたんばらスキー場。
それが撮影当日はこうだ。
吹雪。
吹雪。
発達した低気圧がちょうどこの日に関東を直撃した。ニュースでは猛吹雪が予想されるため「山間部では何かにつかまっていないと立っていられないくらいの風が吹く可能性がある」とのことだった。
立ってはいられるが立っていたくない天気である。この時点の気温はマイナス7度。
立ってはいられるが立っていたくない天気である。この時点の気温はマイナス7度。
まずい状況である。

しかしスキー場に無理を言っている手前、日を改めるわけにもいかず決行することになった。まあ雪玉に入って山頂から転がり降りる、とかではなく、ソリ用のファミリーゲレンデだから危険も少ないだろう。

吹雪を避けてスキー場スタッフの常駐するバックヤードで作業をさせてもらった。
「やるんですね。では組み立てちゃいますよ」
「やるんですね。では組み立てちゃいますよ」
ゴムボートに
ゴムボートに
こたつを設置していきます。
こたつを設置していきます。
軽量化と安全性を考慮した内部構造(みかん箱とベニヤ)。
軽量化と安全性を考慮した内部構造(みかん箱とベニヤ)。
ボートに空気を入れて内部構造を固定、布団をかけて天板を乗せたら養命酒こたつ型ソリの完成である。
すごい!
すごい!
すごい。布団の中はゴムボートだが外見は完全にこたつである。そうか、こたつって中がどうなってるのか見えないから割と改造の自由度が高いのだ。
「なんで?なんでここにこたつがあるんですか?」とたんばらのスタッフ。
「なんで?なんでここにこたつがあるんですか?」とたんばらのスタッフ。
しかしゲレンデではさらなる困難が待ちかまえていた。


いよいよゲレンデにこたつ登場。


こたつ、ゲレンデに設置される

こたつソリのセッティングに1時間ほどかかったので、もしかしたら吹雪も少しは弱まったのではないか。期待してドアを開けたところ
そんなことなかった。
そんなことなかった。
ポジティブに考えるとパウダースキーを楽しめるコンディションである。ほら、気温が高くてベタ雪だとこたつソリも濡れてしまうだろう。だからよかったのだこれで。
よかったのだこれで。
よかったのだこれで。
これで。
これで。
………。

山が鳴いている。

視界がなにしろ悪いこともあり安全を考慮して今回はたんばらスキー場の多田さんにご協力いただいた。具体的にはソリが森とかにつっこんだ時に助けてもらうためだ。
右がたんばらスキー場多田さん。左手には突然の大量降雪で埋まってしまったソリ用エスカレーターを掘り起こすゲレンデスタッフ。忙しい時に本当にすみません。
右がたんばらスキー場多田さん。左手には突然の大量降雪で埋まってしまったソリ用エスカレーターを掘り起こすゲレンデスタッフ。忙しい時に本当にすみません。
いよいよゲレンデに養命酒こたつソリが登場する時が来た。

じゃーん。
こたつをスキーに連れてきた!
こたつをスキーに連れてきた!
こたつだな、と思う。白いゲレンデに養命酒カラーの赤いこたつは非常に映えるのも確かだ。ただ、ここになくてもいいだろう、とも思う。

しかし暖かそうである。入ってみよう。
入った!
入った!
どうですか、暖かいですか?
暖かいです。ただ、隠れていない顔の部分が冷たすぎて表情が作れない。
暖かいです。ただ、隠れていない顔の部分が冷たすぎて表情が作れない。
この環境下で長く外にいることは本当の意味で命取りなので、てっとばやく滑走しておしまいにしたいと思う。

カメラチェックを行いゲレンデスタッフ多田さんに「ちゃんと見ていてくださいね」と念を押しているところに、なにやら下の方から近づいてくる黒い影があった。

こんな天候の中、誰だろう。
誰かが向かってくるぞ。
誰かが向かってくるぞ。
あれはまさか
あれはまさか
ビンくんだ。
ビンくんだ。

ビンくん登場

先日のこたつ列車ではなもみに扮して乗り込んでいた養命酒の「ビンくん」はご存知のとおり非常にフットワークが軽い。ちょっとは仕事選んでもいいのに、とも思うが、撮影のために身の危険を感じているいまの僕が何を言っても説得力がない。
タイトルは「無茶」。これが事故前さいごの写真にならないといいが。
タイトルは「無茶」。これが事故前さいごの写真にならないといいが。
頭上で風が鳴っている。頬に当たる雪の粒は硬く、鋭い。体感気温はどのくらいだろうか、じっとしているとまずいぞ、と体がSOSを発している。

「ではいきましょうか」岩沢さんが言う。
「行きますよ、いいですね。」
「行きますよ、いいですね。」
早く始めないとこたつに雪が積もってせっかくの養命酒こたつが白い塊と化す。やるなら今しかない。岩沢さんがこたつソリを押し出すため背後にまわった。

よろしくおねがいします!

緊張の瞬間である。場の空気がさらに2度ほど下がったように思う。いよいよこたつソリの滑走だ。


滑るのか、こたつ。


こたつソリ、雪上を滑走する

準備は整った。初速を確保するため、最初は岩沢さんに後ろから押してもらう。

ゾゾゾゾゾー

重い物体がおそるおそる動き出す感触があった。しかしある点を超えると速くなる。
ちょ、まって、まって
ちょ、まって、まって
いや、まっ
いや、まっ
ゾジュバー
ゾジュバー
自分から止まった。

養命酒こたつソリは一瞬加速を始めたように見えたが、徐々に失速して下まで滑りきらずに止まってしまった。どうもこたつ布団がソリの前に入り込んでしまいブレーキとなったようだ。

命拾いしたという見方もあるが、やはり実力を出せていないうちは成功とは言えないだろう。再度挑戦である。
「布団を巻き込まないよう、上に上げましょう。」
「布団を巻き込まないよう、上に上げましょう。」
布団がブレーキにならないようボートの中に巻き込んだ。これによりこたつの中にボートが入っていることが丸わかりだが、いまさらそんなことを気にしてる人は誰もいない。

準備が整ったらセカンドチャレンジである。
そういえばブレーキないけどこれ大丈夫ですかね
そういえばブレーキないけどこれ大丈夫ですかね
再び岩沢さんが後ろから押す。心なしかさっきよりも加速がスムースである。滑りだしたら止まらないんじゃないかなこれは。
いや、いや、いや
いや、いや、いや
いやー
いやー
ゾジュバー
ゾジュバー
二度目のトライはうまく加速した。

この養命酒こたつソリ、初めからわかっていたことだけれどブレーキがない。もちろん舵もないのでどこかにぶつかるまで止まらない。車に不可欠な三要素のうちの二つを欠いているのだ、走らせてはダメだろうそんなの。

しかし今さらなにを言っても無駄なので、今度は後ろから押さずに前から引っ張ってもらい方向を定めることにした。なるべくスピードをつけて滑走距離をかせぎたい。
必死。
必死。
後ろから押してもらうよりも前から引いてもらった方がだんぜん加速する。引く方はたいへんだと思うけれど。
まって速い速い速い
まって速い速い速い
「ぎゃー、加速した加速した」「ビンくん転んだ!ビンくん転んだ!」
「ぎゃー、加速した加速した」「ビンくん転んだ!ビンくん転んだ!」
「岩沢さんも転んだらおれ一人じゃーーーーん」
「岩沢さんも転んだらおれ一人じゃーーーーん」
「ぎゃーーー」
「ぎゃーーー」
!
とまあ写真やアニメーションでは怖いほど加速しているようにも見えるけれど、実際には恐怖を感じるほどのスピードは出ていない。

寒さでゴムボートがしぼみ始めており、お尻が新雪に埋もれ気味になってしまっていたのも原因というか勝因だったように思う。
すぐに雪が積もって見えなくなるのでチャレンジのたびにF1のピットクルー並みのチームワークで雪下ろしをする必要があります。
すぐに雪が積もって見えなくなるのでチャレンジのたびにF1のピットクルー並みのチームワークで雪下ろしをする必要があります。

自己流の乗り方を編み出す

何度かチャレンジするうち、自分でソリを押しながら加速させ、いいスピードになったら飛び乗る、というやり方を発明した。人はどんな状況でも挑戦をやめない生き物なのだ。
自分で押します。
自分で押します。
加速したなと思ったら
加速したなと思ったら
すかさず飛び乗る!
すかさず飛び乗る!
この時すねを強打すると思うがそれは我慢でなんとかなるので無視。
しゅぱー
しゅぱー
しゃー
しゃー
!
こたつソリはぎこちない滑りしかできなかったが、ビンくんは全域にわたって危なげなく滑っていた。前が見えているのだろうか、構造が謎である。
どうなっているんだ。ハイテクか。
どうなっているんだ。ハイテクか。
いずれにせよこたつをソリにしてゲレンデを滑る、という目的は達したのではないだろうか。もう髪がバキバキに凍っていることですし、このくらいでおしまいとさせてください。
このくらいで勘弁してください。
このくらいで勘弁してください。

おまけ

寒いゲレンデで滑ったあとは暖かいこたつと養命酒で外からも中からも温まりましょう。
寒い日にはこたつで養命酒!1日3回20mLずつ、食前または就寝前に。
寒い日にはこたつで養命酒!1日3回20mLずつ、食前または就寝前に。
「暖かい?」 寒い。
「暖かい?」 寒い。
ありがとうございましたー。
ありがとうございましたー。
薬用養命酒 (第2類医薬品)
冷え症、肉体疲労、胃腸虚弱、血色不良、虚弱体質、
食欲不振、病中病後の滋養強壮に

言い出しっぺ、責任を果たす

なにはともあれ「こたつをソリにしてゲレンデを滑る」という目的は達した。下山してこれを書いている今でもあれは夢の中の出来事だったんじゃないかと思うけれど。

気軽に言ったことで自分の首をしめるのはたぶんこれが最後ではないだろう。これからもどんどんうっかりした発言をして自分を追い込んでいきたいと思います。

ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました!
撮影を担当してくれた岩沢さん。メガネが凍っている。ありがとうございました。
撮影を担当してくれた岩沢さん。メガネが凍っている。ありがとうございました。


みなさんに当たるこたつはソリではありません。


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