特集 2017年11月29日

ベトナムの制服オシャレと白すぎる洋服店

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白は、なにかと基本で、はじまりの色だと思う。白帯、上履き、チョーク、ウェディングドレス…。

シャツのオーソドックスな色も、また白。洗剤のCMではまず白シャツを洗っていることが多いし、清潔のイメージそのものだろう。それはきっとベトナムでも同じ。ただ、以前から「いくらなんでも白すぎない?」と思っていたシャツ屋があるので話を聞きに行ったところ、ベトナム学生の「制服オシャレ」についてちょっとだけ分かった。
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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怖いほど差別化しているベトナムの白シャツ専門店

ほら。
ほら。
白すぎない?
白すぎない?
夜に撮ったものだから照明もあってより白さを感じるが、だとしてもあまりに白すぎる。まるで世にも奇妙な物語や笑ゥせぇるすまんにでも出てきそうな、異世界に踏み込んだ感じが漂う。ベトナムはそういうお店がたくさんあるの?と思われるかもしれないが、いえ、そうでもないのです。
周りのお店は、
周りのお店は、
ふつうなんですよねー。
ふつうなんですよねー。
なお、ベトナムではひとつの業態が一箇所に集まっていることが多い。日本だとセブンイレブンとファミリーマートとローソンが軒を連ね、吉野家と松屋とすき家が軒を連ねているようなもの。といってもチェーン店だとさすがに事情は違ってくるけど、競争意識があるのかないのか、「そういえばこの国は社会主義だっけ」と思い出す(が、関係ないかもしれない)。それだけに、このお店の独自路線が目立つのだ。
照明屋エリア。どの写真も同じ位置から撮っています。
照明屋エリア。どの写真も同じ位置から撮っています。

ふしぎな「白シャツ専門店」、理由はシンプルでした。

以前から通りがかるたびに謎が深まるばかりだったこの白シャツ屋、いい機会だと訪ねてみた。
雪原に似た眩しさを感じる…。
雪原に似た眩しさを感じる…。
ちょっと気持ちヒヤッとしますねと、通訳で同行してくれた友人。
ちょっと気持ちヒヤッとしますねと、通訳で同行してくれた友人。
友人「なんか葬式っぽいですね…」
私「あ、白へのその感覚、ベトナムも同じなんだね」
奥には中学生らしき少年が立っていた!
奥には中学生らしき少年が立っていた!
私「あれ、君が店員?」
少年「そうだよ、家だから」
私「なるほど、家業のお手伝いって訳ね」

それにしても、周りの異様さ&裸足ということもあって座敷わらしっぽさがある。
親は外出中らしいので、彼に話を聞いてみることに。
親は外出中らしいので、彼に話を聞いてみることに。
私「いつからやってるの?ここ」
少年「7年前から」
私「まさかその頃から白シャツ?」
少年「そうだよ」

うお、思ったより老舗じゃないか。
奥に行っても相変わらず白い。 歯磨き粉のキャッチコピーにありそうだ、と思った。
奥に行っても相変わらず白い。 歯磨き粉のキャッチコピーにありそうだ、と思った。
私「単刀直入に聞くけど、なんで白シャツなの?」
少年「売れるから」
私「だよねー、というか売れないと売らないよね」
少年「昔はここの隣もふくめて3,4店舗くらい経営していて、ここにだけ白シャツを集めてたんだよ。だけどほかは軒並みなくなって、今は白シャツ店だけ残った」
私「割と真っ当なマーケティング戦略だったのね。念のため聞くけど、趣味とかじゃないよね?ご両親いつも白尽くめの服を着てるとか、そういうことではなくて?」
少年「そんな訳ないじゃん」
私「ねー」
いや、でも、いるところにはいるけどな。 こちらは以前取材したことがある、全身が白いおじさん。
いや、でも、いるところにはいるけどな。 こちらは以前取材したことがある、全身が白いおじさん。
でも、これってかなり驚き。前述のように、ベトナムは同じ業態は同じエリアに集まることが当たり前。個人商店レベルでは、差別化という概念をあまり感じる機会が少ないのだ。そこでこのお店のような存在は、地味ながら、アパレルマーケティングの革命児と言えるのかもしれない。
ただしシャツの引っ掛け方は、ボタンの上からと雑だ。
ただしシャツの引っ掛け方は、ボタンの上からと雑だ。
私「女性用ばかりだね、男性用はないの?」
少年「仕入れ値が高くて赤字になるんだよ」
私「そもそも、どこで仕入れてるの?全部古着っぽいよね」
少年「古着だよ、タイやカンボジアの市場から流れてきてる」
あっ、きっとあのへんだな(「あなたが着なくなった服は異国でこうなる」より)
あっ、きっとあのへんだな(「あなたが着なくなった服は異国でこうなる」より)

使い回しの利く白シャツだからこそ古着になる

女子学生が買いに来ていたので話を聞いた。
女子学生が買いに来ていたので話を聞いた。
私「そのシャツはどういう用途で使うの?制服?」
学生「いや、友だちへのプレゼント!」
私「え!プレゼントに白シャツを!?」
学生「前に借りたことがあって、破いてしまったんです。それで今回、友だちと演奏をするときにみんなで白シャツを着るから、ちょうどいいと思って買いに来たの」

想像していた以上の背景があった。しかし、プレゼントに古着を選ぶ感覚が日本人とはまた違っていておもしろい。ベトナムはものを大切にする傾向をしばしば感じるので、その点では納得できるけど。
以前友人の家に行ったときに見た筋肉質なソファ。なんとシーツが紳士肌シャツ。(「ベトナム家庭の大晦日で文化の違いにいちいちビックリ」より)
以前友人の家に行ったときに見た筋肉質なソファ。なんとシーツが紳士肌シャツ。(「ベトナム家庭の大晦日で文化の違いにいちいちビックリ」より)
私「学生が買いに来るってのは意外だったなー」
少年「女性用しか置いてないけど、来る人はだいたい学生か会社員だよ。古着だから安いし、価格はだいたい10万~15万ドン(およそ500円~750円)だね」

日本で古着といえば、だいたいジャケットやコートなんかのアウターが中心的だという気がする。とくに学校や職場で着る白シャツといえば、清潔な色というイメージもあるためか、新品であってこそ!という印象も。とは言いながらも各家庭には事情というものがあるだろうし、それは言うだけ野暮だという話なのかもしれない。
パノラマで見ると伝わるこの白さ。
パノラマで見ると伝わるこの白さ。
以前ベトナムで新品の白シャツを買ったら、日本円で3000円以上したことがある。感覚的には日本の1/3から1/5というベトナムの物価から考えると高いなぁと感じたが、日本も紳士服のチェーン店が台頭する前はそもそも安くなかった気がするし、ベトナムにおいて白シャツは高いものなんだろうな。そこに手が届かないけど必要だという人のための古着屋なんだろうなー。

なお、とくに若い人のシャツは腰回りがピッチピチ、これは明らかに韓国アイドルの影響で、ベトナムの若者といえば韓国好きが多い。自分も6年前に韓国製の服を買ったことがあり、すぐに太って着られなくなった。まぁ、でも、彼らは新品を買っているかもしれない。

月曜のベトナム女子高生は白アオザイ

さっきの女子学生は演奏用にーと話していたけど、そもそもベトナムの制服ってどんなの?と友人に聞いた。

友人「基本的には白シャツですよ。だからあの子自身も普段は白シャツを着ていると思います。下は、男子は長ズボンで女子は長ズボンかスカート、色は黒か紺かな」
私「基本的にって、必ずしもそうではないってこと?」
友人「各家庭で買うんですよ。だから、学校が指定しないという意味では制服じゃないかもしれませんね。ちなみに最近の小学生は半ズボンが増えているみたいです」
私「最近半ズボン!日本と逆だね。常夏のこっちならデメリットも少ないけど、冬の半ズボンは辛かったなー」
なお、小中学生の間は社会主義の象徴的な色でもある赤いスカーフを首に巻く。小学生は1~5年生まで、中学生は1~4年生までと、期間も日本とはちょっと違う。
なお、小中学生の間は社会主義の象徴的な色でもある赤いスカーフを首に巻く。小学生は1~5年生まで、中学生は1~4年生までと、期間も日本とはちょっと違う。
友人「スカーフを外したあとは、ベトナムの男性は青年団に入る人もいます」
私「ほほう、青年団」

青年団とは、ベトナムの社会システム。すべてではないにしろ、学校や会社には共産党関連組織が付いていて、小中学生は少年隊、高校生になると青年団に入る。学校によって参加が義務付けられていれば、そうでない場合もあるが、共産党員になるにはこれが正規のルート。簡単に言えば、エリート国家公務員へのプロセスです(ただし青年団までは、共産党の偉大さを聞かれて答えられるなら、まず入団できるとのこと)。活動内容はボランティアや、建国記念日の横断幕の作成などなど。

友人「そこで真面目な学生は、左胸にシンボルのバッヂを付けたりします」
私「ひと昔前の制帽みたいだな」
白シャツながらも派手な刺繍が施されているものも。
白シャツながらも派手な刺繍が施されているものも。
私「こういう刺繍入りのものも着ていいんだ?」
友人「着れますよ!学校指定の制服ではないので、ワンアクセント入れて個性的に見せるんです。私が学生の頃は、緑・黄・赤色のボタンが流行しました。アオザイも白いけど、花柄のレースを入れたり、キラキラと光るラインを入れたり、できる範囲でこだわってましたねー」

そうそう。都市部の高校では、月曜はアオザイ着用のところも多く、地方では常用という場合も。以前たまたま高校の前を通ったとき、100人はいるかと思われる下校中のアオザイ学生の「群れ」に遭遇、面食らったことがあった。イナゴの大群と華やかな妖精のイメージが同時に浮かんだ瞬間は、後にも先にもこのときだけだ。
こちらの女性は社会人だけど、学生時代の制服アオザイを着てもらいました。知人を出しておきながら言うのもなんですが、白アオザイって本当に妖精っぽさがありますよね。
こちらの女性は社会人だけど、学生時代の制服アオザイを着てもらいました。知人を出しておきながら言うのもなんですが、白アオザイって本当に妖精っぽさがありますよね。
思った以上に奥行きのある様子を動画にて。

制服オシャレは万国共通

白シャツや白アオザイでも、ボタンの色をカラフルにしたり、花柄のレースを入れていたと聞いて、懐かしいなーと感じた。自分やその周りも、制服をベースにオシャレのためにいろんな工夫を凝らしていた覚えがある。教師に怒られない範囲で、シャツの裾を出すとか、片足の袖だけめくり上げてミサンガを見せるとか、あったなぁ。昨今校則関連の話題も聞くけど、大人になって語れる思い出は多い方が良いなと思うのでした。
白シャツをかきわけた先には、ご先祖様の祭壇がありました。
白シャツをかきわけた先には、ご先祖様の祭壇がありました。
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