特集 2017年10月18日

静岡の知られざるファミレス「五味八珍」

イチ押しの浜松餃子
イチ押しの浜松餃子
静岡県のご当地ファミリーレストランといえば、先日も紹介した「さわやか」が、全国的な知名度を獲得しつつある。

しかし、静岡県には、まだ知られざるローカル外食チェーンがあるらしい。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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静岡県民に案内してもらう

静岡の知られざるローカル外食チェーンとは、「五味八珍(ごみはっちん)」だ。

主に静岡県内に40店舗以上を展開する中華料理のチェーン店で、店舗数40店舗以上ということは、「さわかやか」よりも店舗数は多い。

ぼくは「さわやか」は知っていたものの、「五味八珍」は取材の直前まで知らなかった。

鈴木さんに「まだ全国的に知られてないけれど、静岡のひとはみんな知っている外食チェーンがある」ときき、がぜん興味がわき、ぜひ行きたいということで、連れて行ってもらった。

全国的にまだ知られていないということは、ケンミンSHOWでもまだやってないのでは? と思ったが、調べるとすでに数年前に登場していた。テレビの嗅覚の鋭さよ、とおもったと同時に、テレビでやったからといって取り上げないのもいったい何に気を使ってんのかという話なので、気にせず紹介したい。
「さわやか」に引き続き、静岡在住ライターの鈴木さくらさんに案内してもらいました
「さわやか」に引き続き、静岡在住ライターの鈴木さくらさんに案内してもらいました
これがあの「五味八珍」か
これがあの「五味八珍」か
「これがあの「五味八珍」かあ」と、数日前まで知らなかったにもかかわらず、いちおう感心してみる。
これ、建物が完全に白川郷の合掌造りですよね? なぜ?
なぜ合掌造り?
なぜ合掌造り?
あ、言われてみればそうですね……どこの五味八珍もこんな形をしてますよ。いままで気に留めてなかったです。なぜでしょう?
なぜかわからないけれど、白川郷。なぜ合掌造りなのか。普段からよく見ているひとはあまり気にしないのかもしれない。
だいたい、五味八珍が静岡のローカル外食チェーンだって気づいたの最近なんですよ。
全国にあるとおもってた?
テレビCMとかしてたから、全国にあると思ってたんですよ。でもよく考えたらあのCM静岡ローカルだったんですね。
さっそく入店してみると、きになる掲示をみつけた。
お母さんへのご案内
お母さんへのご案内
この「お母さんへ」と題された文章がいい。

短くまとめると「子供は散らかすことの名人だし、みんなそうだった。散らかしても店の人が片付けるから、ゆっくり召し上がってください、お母さん!!」ということである。最後は、エクスクラメーション二つである。

子供のマナーについて、親に過剰な負担を強いる風潮が強まるなか、これは慈悲深さの彼岸というほかない。五味八珍のある市町村の出生率がアップすることを願いたい。

もう、この文章をみただけでかなりの満足感があるので、帰ってもいいかなというきもちになったが、さすがになんか食べて帰りたい。

中華風に見えない店内

店内を見回すと、提灯がずらりと並んでいたり、飛騨高山の人形が置いてあったりと、ラーメンやギョーザを提供する店とは思えないつくりになっている。
提灯が並んでいると景気が良い
提灯が並んでいると景気が良い
飛騨高山の民芸品の人形?
飛騨高山の民芸品の人形?
合掌造りといい、飛騨高山の人形といい、なぜ、飛騨高山みをアピールするのかはよくわからないけれど、その謎をとくヒントがメニューに書いてあった。
ラーメンの詩
ラーメンの詩
メニューに「ラーメンの詩」と題されたポエムが掲載されている。

それを読むと、どうも五味八珍は、ラーメンをただの中華料理として考えているわけではなく、昔なつかしい家庭でたべたふるさとの味としてとらえているようだ。ラーメンの詩のバックの写真は白川郷の合掌集落だろう。
つまり「なつかしさ」のイデアとして白川郷の合掌造りや飛騨高山のイメージが使われている、ということかもしれない。
この、ばか丁寧な文章。味わいぶかくてすばらしい
この、ばか丁寧な文章。味わいぶかくてすばらしい
ルーレット占い機
ルーレット占い機
紙エプロンのばか丁寧な案内や、ルーレット占い機など、この五味八珍、店の中にあるものがいちいち、他の外食チェーン店にはないなにか特別な「気」のようなものを漂わせている。

これは、心してかからないと(料理を食べること)、こちらが五味八珍に飲み込まれてしまうような気がする。

「普通のラーメン」とはなにか

五味八珍のおすすめは、まずひとつ「浜松餃子」というものがある。
!
もともと五味八珍は餃子のテイクアウト専門店からスタートした店らしいので、浜松餃子がイチ押しである。

それはよいのだけれど、ラーメンがすごい。
普通のらーめん
普通のらーめん
「普通のらーめん」だ。その下に「普通のみそらーめん」もある。

「ラーメン」「みそラーメン」ではなく、「普通のらーめん」「普通のみそらーめん」とすることにより、普通なのに、特別なメニュー感が出ている。

鈴木さん、同行してくれた編集部の林さん、私で、それぞれ、普通のらーめんとチャーハンのセットや、タンメンなどを頼んだ。

五味八珍、静岡県民にとってどんな店なのか?

さて、注文がくるまで、静岡県民にとって五味八珍はどんな位置づけだったのか、聞いてみたい。
静岡の人は五味八珍にはよく来るんですか?
私個人的には、かなり久々にきたんです。というのが、五味八珍は家族連れで行くイメージがあるんで……。あまり行かないんですよ。
たしかに、子供に配慮した掲示文とか、家族連れを想定している感じはしますけど、カップルでラーメン食べに来たりもしない?
しないです、デートで連れてこられたら怒ると思います。
怒るか。位置づけとしたら、サイゼリヤとかに近いのかな? 逆に、五味八珍に来るようなカップルはもう結婚が間近とか?
そういう、焼肉屋みたいなシステムではないと思います。
でも、子供の頃は来てたんですよね?
きてました。子供の頃は、特別な日に連れてきてもらう、例えば、運動会が終わった後とかに家族で来るみたいな。そんな店でした。
家族が仲良かったころに来る店、みたいな。そんなイメージかな?
ラーメンって昔は、どさん子ラーメンとか家族で食べに行くイメージもあったけれど、最近は先鋭化しちゃって、とても家族で食べに行く感じじゃない。でも、五味八珍はそういうイメージではないですね。
五味八珍は、家族と一緒に、子供が行くイメージがあったから、小学校の高学年にもなると、家族と一緒に行くのが恥ずかしいみたいな感覚はあったかもしれませんねー。
さわやかとくらべると、家族向けのイメージが強いんですね。

家族と一緒に御飯を食べに行く。まさにファミリーレストランの本来の目的に合致した正しいファミレスの姿なのではないか。
でも、高校になると、さわやかと五味八珍は、2大アルバイト先になるんですよ。
子供の頃に来て、いったん離れてまた高校生になったらバイトで来て、そのあとまた離れて、結婚して子供ができたらまたやってくる。静岡の人は五味八珍のまわりを回ってる彗星だ。

そんな話をしているうちに、料理が運ばれてきた。

普通のラーメンの普通のうまさ

普通のらーめん
普通のらーめん
浜松餃子
浜松餃子
まずは普通のらーめん。
普通のらーめんを食べる
普通のらーめんを食べる
普通だ!
普通だ!
あっ、普通だ。
「普通をらーめん」をたべた最初の印象が普通である。ぼくも食べてみたけれど、たしかに普通だった。

かつおだしが利いた醤油味のふつうのラーメンである。麺が縮れ麺ではなく、ストレートではあるものの、スープとちゃんとからまっており、ラーメンとして普通にうまいのだ。

今まで食べた醤油ラーメンの味をうかべてほしい。まさにそんな味の普通のラーメンだった。

先鋭化しすぎた最近のラーメンに比べると、とっても安心できる味だ。

続いて浜松餃子。
餃子をいただく
餃子をいただく
あんがジューシーというか、ニュルッとしていて、おいしいです。
浜松餃子、これも餃子として普通にうまい。ラーメンも、餃子も、五味八珍はふつうにうまい。

鈴木さんの話によると、五味八珍の餃子は、浜松餃子が流行り始めて、急にもやしがついたらしい。

普通の大切さ

ラーメンも餃子も、普通にうまい。としか感想を言っておらず、なんともボキャブラリーのとぼしさを露呈するはめになった。

しかし、やはり、普通にうまい。というのはある。

普通にうまい。というのはとてもだいじである。家族みんなで行くレストランが、奇抜な味だと、家族全員が食べることができないからだ。

やはり、五味八珍、家族向けなのだ。
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