ローカルチェーン店がおもしろい
福岡の「ウエスト」や、石川の「8番らーめん」みたいな「その県、その地域にしかない」というローカルな外食チェーン店が大好物なぼくは、地方に行くと必ずそういった店に行くようにしている。
しかし、静岡の「さわやか」はなかなか行く機会をえられず、もたもたしているうちに、ネットで話題になり、完全にブームに乗り遅れてしまった。
このたび、静岡在住のライター鈴木さんに案内してもらって、初めて「さわやか」に行くことになった。
はい、さわやかに来ました
しかし、いまさら「さわやか」でげんこつハンバーグを食べた! なんて話、はっきり言って誰も見向きもしないと思う。
というか、デイリーポータルZではすでに取り上げている。
そこで、ここは心を鬼にして、げんこつハンバーグは我慢し、さわやかで、あえてハンバーグ(肉)を食べないレポートをしたい。
あの「さわやか」である。きっとハンバーグ以外のメニューもあって、それもおいしいはずだ。
普通に「さわやか」のげんこつハンバーグの記事が読みたい方は、Googleで「さわやか げんこつハンバーグ」と検索すればいくらでも良い記事が出てくるので、そちらをご覧いただくとして、こちらは胸をはって、オルタナティブな情報をレポートしたい。
「ハンバーグほんとに食べないんですか?」
「そんなわけで、今日は、ハンバーグは食べずに、他の料理を注文します」と鈴木さんに伝えたところ、彼女は「え、初めてですよね? ハンバーグ食べないんですか?」と目を白黒させたあと、失笑していた。
さわやかに来て、ハンバーグを食べない!?(失笑)
「え、ここそんなに笑うところ?」と思ったが、後にその意味がわかる。
わー、ハンバーグうまそう……
メニューを広げると、ハンバーグばかりである。全体の90%はハンバーグか肉に関する料理だ。
ほとんどハンバーグ
しかし、そんななか、ハンバーグ以外の料理がいくつかあった。
ハンバーグ以外のメニューが1ページ分あった
右側のステーキに気持ちが持って行かれそうになったのだが、今回は、「梅しらす雑炊」を注文。
ハンバーグ以外のメニューを注文
同行してもらった鈴木さんと、編集部の林さんもそれぞれ焼き野菜カレーと野菜ミートドリアにしてもらい、完全にハンバーグを食べない修行のような注文をする。
まるで病院のレストランのような
うまそう
で、こちらが出てきた梅しらす雑炊だ。
ふつう、メニューの写真と実際に出てきた料理を見比べると、メニューの写真より見劣りするなということが多いけれども、この梅しらす雑炊は、メニューの写真通りのものがでてきた。
器の鉄板に、かろうじてハンバーグレストランっぽさが残るが、まさかハンバーグ専門のレストランのメニューのようには見えない。
見た目は完全に「和食さと」とか、病院のレストランで出てくる雑炊メニューのようだ。
あおさの香りだろうか、ほんのりと磯の香りもただよう。ただし、周囲のハンバーグやカレーといった匂いが断続的に割って入ってくる。これは仕方がないといえば仕方がない。
いただきます
魚介のダシが利いていて甘くてうまい。甘くてうまい。江戸時代の農民がカステラ食べた時の感想みたいだが、実際に甘みがあるのだ。
たまごやしらすがうまいことアクセントになっており、優しい味ではあるが、単調ではない。真ん中の梅を崩してたべると、味がかわってこれまたうまい。
さらに「きざみわさび」という、つけあわせもついており、味を変える要素が二つもあるため、まったく飽きない。
これ、ハンバーグ専門店で味わうものには思えない。
鈴木さんによると、さわやかで、ハンバーグを頼まないひとはほぼいないという。
このハンバーグ以外のメニューは、何人かでやってきて、その中のひとりが、ハンバーグを食べるのはちょっとしんどいな……というときに、頼む。そういう位置づけのものらしい。
例えば、家族みんなでやってきて、子供やお父さんお母さんがハンバーグを頼む中、おばあちゃんは梅しらす雑炊を頼む……というような風景も容易に想像される。
梅しらす雑炊という、ハンバーグとは真逆に位置するようなものが、突然メニューにあるのはそういった意図があるのではないか?
うまいなー
あ、となりにハンバーグきた
……
やはり、どうしてもハンバーグは気になってしまう。げんこつハンバーグにそそられないわけがない。
これは人としての業である。
人類は生存するために、常にカロリーの高い食べ物を求め続けてきた。そして、高カロリーのものを「おいしい」と思うよう脳がプログラミングされているという。
梅しらす雑炊では、人類6500万年の歴史に負けた。
最初、鈴木さんが笑ったのは、人間としての業に抗おうとする人間の小ささを感じ取ったのだ。
「さわやかで、あえてハンバーグを食べない。なんて愚かなことを(失笑)」というわけである。
お釈迦様の手のひらで、竹槍をふりまわしているような気分になった。
カレーもミートドリアもうまいぞ
さて、梅しらす雑炊だけではなく、他に頼んだ料理もせっかくなので味見してみたい。
焼き野菜カレー
「焼き」の名にふさわしく、中身から器まで、いいぐあいにコゲがついている。
おいしー
本来は、ライスと共に頼むのが普通なのだそうだが、カレーのみでもけっこううまい。
味見した林さんは「松屋のカレーのさらにうまいやつ」だという。つまり、けっこう本格的でスパイシーだということである。
レトルトカレーみたいなのが出てくると思ったけれど、さわやかはカレーにも手を抜いていない。
うまそうである
「うまみポルノだ」
しっかりした味がついているうまいドリアである。サイゼリヤのミラノ風ドリアよりも具が多く、これは確かにビールが飲みたくなる。
ハンバーグの代わりにこれを食べるのも大いにありだと思う。
人類の歴史には負けたが、うまい
さわやかの梅しらす雑炊は、普通にうまかった。
しかし、みんなで、さわやかに行った時、ほんとうに食べたくて「梅しらす雑炊」をたのんだ場合、まわりから「具合悪いの?」とか「無理やり誘っちゃった?」といった気づかいをされる可能性があるので、普段から「さわやかの梅しらす雑炊が好きなんです」とアッピールしておくことが重要ではないか?
「さわやか」で梅しらす雑炊を頼みたいひとは、Facebookのプロフィール欄に「さわやかの梅しらす雑炊が三度の飯より好きです」と書いておくことをおすすめしたい。