今年は毎日文房具トークライブ開催
文房具業界には、メーカー数十社が集まって作られた「全日本文具協会」=全文協という社団法人がある。
で、この全文協がISOTを後援していたりもするのだが、今年はさらに会場内に大きくブース展開し、全文協に加盟しているメーカー各社自慢の文房具をずらっと並べて紹介していた。
全文協ブース。終日の人だかりで大変だった。
ここ見るだけで日本のいまの文房具シーンがなんとなく分かる、ぐらいのボリュームある展示。
この全文協ブースをプロデュースしたのが文房具業界のキングこと文具王 高畑正幸氏なのだが、今回はさらに文具王による展示品の紹介トークが1日2回、3日間通しで行われたのだ。
どっかで見た名前があるなと思ったら、僕も出てた。
とはいえさすがに文具王だけでは大変ということで、まず初日は文具王と僕も参加している文房具トークユニット「ブングジャム」の3人で、最終日はTBS『マツコの知らない世界』で文房具を担当した文具ソムリエールこと菅未里さんが参加してのライブとなった。
1時間のトークで31点の文房具を紹介するという、ハイスピードカメラ撮影のようなライブ。
おかげさまで全ての回とも大盛況。ただ、文房具1点の説明が2分足らずという状況に焦ったか、全員が超絶早口になっていたような気がするのが悔しい。スロー再生したい。
鉛筆彫刻ライブ
また、会場内では別のライブも3日間ずっと行われていた。
SNSで画像が流れてきたのを見た事ある、という人もいるのではないか。鉛筆の芯に彫刻を施す「鉛筆彫刻」の、ライブである。
人通りのある中、黙々と鉛筆の先端を削り続ける過酷なライブだ。
鉛筆彫刻家の山崎利幸氏の死ぬほど繊細な技術を間近で見られるということで、僕もかなりワクワクして見に行ったのだが、実際に作業を拝見すると、かなり危険だった。
作業中の山崎利幸さん。こないだルーペ専門店で見たやつ使ってた。
あまりにも繊細すぎて、見てるだけで自然に息を詰めてしまい、呼吸が止まるのだ。なんで山崎さん本人はあれで窒息死しないんだろう。
(
山崎さんのサイトで、削ってる動画も見られる。本当に息が詰まるぞ)
鉛筆三本でししおどし。どうやって彫ってるのか見当つかない。
文字やらマークやら。なんであんな細かなものに細かい彫刻ができるのか。
なんかもう指紋に黒鉛染み込んでんじゃないかという山崎さんの手。
ところで、山崎さんに
「展示会場とかそんな騒がしいところで集中して彫刻するって大変じゃないですか。ISOT側から無茶振りされたんですか」
と訊いたのだが、ご本人は
「いやー、自宅でも子供がバタバタ走り回ってるような環境でやってるんで、全然問題無いですね。これぐらいなら逆に静かな方ですよ」
と泰然と仰っていた。タイの座禅僧みたい。この人、そのうち鉛筆で五百羅漢とか彫るんじゃないか。
最終日にはプライスダウン。でも折れるの怖くて買いづらい。
ちなみにここで彫られた鉛筆彫刻(アルファベット)は、その場で販売されていたのだが、あまり売れていなかった。
彫刻をずっと眺めてたおばさん(小売店の名札を下げてた)が、「欲しいけど、こんなところで買って帰ったら家に着くまでに折れてそうで買えないわ」という旨のことを同行していた人に何度も繰り返し喋ってた。まったく同意見だ。
こんな繊細なやつは、もうちょっと落ち着いたところで買いたい。
マステ、応用効き過ぎ
紙製品のメーカー ワールドクラフトのブースにはマスキングテープが並べられていた。
爪に貼る用のマステ『ネイルマステ』。
単に柄物のマステを置いてるだけかなー、とスルーしかけたのだが、ブースに立っていたお姉さんから「簡単にネイルができるマステですー」と声をかけられた。
いや、なんでそれ僕に声をかけた?40代ヒゲのおっさんに?
こんな感じでネイルできるんですよー。だからなんで僕を呼び止めたのか。
粘着力を強めにして、爪に貼っても剥がれにくいようになっているそうだ。
粘着力が強いという時点でそれもうマステじゃないような気もするのだが、いいのだろうか。
せっかくなんで、やってみませんかー? せ、せっかくなんでじゃあ。
作業自体は、一度爪の上に仮留めしてサイズを測り、爪の形にあわせてカットして再度貼り直す、というもの。
貼り付けたら、ちょっと強めにゴシゴシとこすって出来上がりだ。
やーだー、なんかちょっともう、アガルー↑↑
いやー、やってみるとわりと楽しいな、ネイル。
ただ、言っても所詮はマステなので、しばらくするとペロンと剥がれてしまった。
その辺は最初から折り込み済みで楽しむなら、なかなかいいんじゃないか。
予備のネイルマステを持ち歩けるセットも。
また、テープをネイル型に切り抜くガイド兼、剥がれた時の予備を指10本分まとめて貼って持ち歩く用のテンプレートとポーチのセットも紹介されていた。
対日本人女性の対策済みブース
ISOT会場内で女性の知り合い何人かから「きだてさん、海外エリアのあそこ行きました?ヤバいですよあそこ」と聞かされたのが、イギリスのmagic whiteboardというメーカーのブース。
しかもその情報、女性からしか入ってこないのだ。なんだ、どうヤバいんだ。
静電気でどこにでも貼れる、フィルムでできたホワイトボードを紹介してる。
で、行ってみると確かにブース周辺に女性しかいない。どうなってんだ。どういうトリックなのか。
ギギギ。なるほど、こういうことか。ギギギギギ(歯ぎしり)
よく見れば答えは簡単で、ブースに立っている男性のうち2人が爽やか金髪イケメンだったのだ。
正直に言うと、製品自体はすでに国内外いくつかのメーカーが発売しているようなもので、特に目新しいって感じでもない。(負け惜しみじゃなくて)(負け惜しみじゃなくて)(負け惜しみじゃなくて)(負け惜しみじゃなくて)(何度でも言う)(負け惜しみじゃなくて)
もう一人のイケメン。なんか楽しそうにしゃべってた。
なのに、女性がなんかキャッキャしながらイケメンに話しかけパンフもらったりしてるのだ。
イケメン、英語しか喋れないっぽいのに!日本人スタッフもいるのに!あまりイケメンじゃない金髪男性だっていたのに!
女性に商品説明しているイケメンを、さらに外から眺める女性たち、を後ろから写真に撮る僕。なんかの縮図か。
製品はさておき、文房具プレゼンの方法としては「黒船が来ただよ!」みたいな感じである。ズルいと思う。
台湾製の筆箱に心癒される
一方、台湾エリアのブースでは、学童用のオモチャみたいな筆箱のメーカーがとてもハートウォーミングで良かった。
台湾おっさんが片言で説明して、日本おっさんが適当に聞き流してる。これが海外ブースの正しい有り様だ。
なんというか、紹介している筆箱がどれもこれも緊張感ゼロというか、どうでもいい感じで、すごく癒される。
多機能だけどどうでもいい筆箱。こういうぼんくらな雰囲気がとても愛おしい。
例えばこの、数え玉と電卓を内蔵した筆箱。とてもいい。
これを見て喜んでいたら、台湾おじさん二人が入れ替わり立ち替わりで次々と、さらにどうでもよさそうな筆箱を出してきてくれた。
定規付き筆箱。心底どうでもよくて、本当にいい。
おじさん、最初はがんばって片言の日本語と英語混じりで説明してくれようとするのだが、すぐに面倒くさくなったのか、ただ単に定規をカチャカチャ動かして見せるとか、そんなジェスチャーだけになった。
さらに失われる緊張感。なんだここ、パラダイスか。癒されるわー。
ボタン一つでガシャンと飛び出すスロットゲームと鉛筆削り付き。どうでもよすぎてテンション上がる。
うわー、どうでもいいわー、とニコニコしながら筆箱をいじっていたら、おじさんにシャツの袖をクイクイと引かれ、「これはすごいぞ」とドヤ顔された。
見た目はまったく普通に缶ペンケース。
フタを開けて、なんかパーツを展開し始めるおじさん。
すごい急いで変形させようとするので、途中で「写真撮れないからちょっと止めて」と頼んで撮影。でももうほとんど完成してる。
なんか大がかりな変形をさせてるなと思ったけど、結果として書見台になるだけ。やっぱりどうでもよかった。
こういう、結果としてなんのプラスにもマイナスにもならない、どうでもいい感じが味わえるのも、ISOT海外ブースの大きな楽しみだ。
そろそろ中盤戦ですが、まだまだ最新文房具レポートをやってまいります。
3日目の明日は、ホワイトボード専用の書道セットや、クレジットカード専用のクリアホルダーをご紹介します。