「弊社の創業は昭和13年(1938年)で、名古屋市でキャラメルの製造からはじまり、ビスケットなどを作るようになったお菓子メーカーです。なにか他社様とは違う目玉商品が欲しいということで、開発に1年を掛けて昭和41年(1966年)にしるこサンドが誕生しました」
実は知名度が高かったしるこサンド
しるこサンドの取材をするにあたって、名古屋を中心とした東海地方では知られているものの、全国的にはあまり知られていない食べ物なのだろうと思っていた。なぜなら私が知らなかったからだ。
いやでも実は知られているのかもと不安になって、取材前日にツイッターを使ったアンケートを取ってみたら、予想外の結果となった。
いやでも実は知られているのかもと不安になって、取材前日にツイッターを使ったアンケートを取ってみたら、予想外の結果となった。
ガーン、9割以上の認知度なのか。ご協力ありがとうございました。
196人に回答いただいたところ、なんと90.3%がしるこサンドを知っていたのだ。
ちなみにその内訳だが、愛知、岐阜、三重が出身、あるいは現在住んでいる48人だと47人が知っており、その3県を抜かしても149人中131人、なんと約88%が知っていたのだ。知らない私が少数派。
ツイッターでのアンケートという特性上、しるこサンドを知っているからこそ答えるという面があるだろうが、それにしても高い知名度だ。
ちなみにその内訳だが、愛知、岐阜、三重が出身、あるいは現在住んでいる48人だと47人が知っており、その3県を抜かしても149人中131人、なんと約88%が知っていたのだ。知らない私が少数派。
ツイッターでのアンケートという特性上、しるこサンドを知っているからこそ答えるという面があるだろうが、それにしても高い知名度だ。
知っている人のほとんどは食べた経験もあるようだ。
そしてしるこサンドを食べたことのある人のうち、66%が好きと答えており、好きではないという答えは3%程度。
人々からそんなに愛されているしるこサンドの存在を、私は知らずに生きていたのか。まあよくあることなのだが、ちょっと悔しい。
人々からそんなに愛されているしるこサンドの存在を、私は知らずに生きていたのか。まあよくあることなのだが、ちょっと悔しい。
しるこのサンドなのにみんな好きってどういうことだ。日本人はそんなに甘党か。
あなたにとって「しるこサンド」とはどんな食べ物ですか?という質問には、以下のような熱い答えが集まった。
・名古屋ソウルスナック
・菓子盆の中に普通に入っているもの
・母さんが買ってくるもの
・おばあちゃんがくれるお菓子
・実家でよくたべていた。仏壇に供える美味しいお菓子
・子どもの頃に家にあったのでよく食べました。「家にある食べ物」です
・小さな頃から食べている、そこにあるのが当たり前のお菓子
食べたことがある人なら、うんうんそうだねと頷く答えなのだろう。そして知らない人に、その名前からどんなものかと予想してもらった答えがこちら。
・おしるこをパンで挟んだもの
・あんこを餅
・あんこをモナカの皮
・パンに羊羹
・あんこをカステラ?それはシベリアだっけ?
そうそう、そう思うよねと、食べたことのない私が頷いた。
・名古屋ソウルスナック
・菓子盆の中に普通に入っているもの
・母さんが買ってくるもの
・おばあちゃんがくれるお菓子
・実家でよくたべていた。仏壇に供える美味しいお菓子
・子どもの頃に家にあったのでよく食べました。「家にある食べ物」です
・小さな頃から食べている、そこにあるのが当たり前のお菓子
食べたことがある人なら、うんうんそうだねと頷く答えなのだろう。そして知らない人に、その名前からどんなものかと予想してもらった答えがこちら。
・おしるこをパンで挟んだもの
・あんこを餅
・あんこをモナカの皮
・パンに羊羹
・あんこをカステラ?それはシベリアだっけ?
そうそう、そう思うよねと、食べたことのない私が頷いた。
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製造元の松永製菓にやってきた
そんな訳で私にとっては謎であるしるこサンドの取材をするため、愛知県小牧市にある製造元の松永製菓株式会社さんへとやってきた。
ちなみにこの時点で私はまだ、しるこサンドを見たことも食べたことも無い。失礼は承知の上だが、あえてまっさらな状態でお話を伺ってみたいと思ったのだ。
ちなみにこの時点で私はまだ、しるこサンドを見たことも食べたことも無い。失礼は承知の上だが、あえてまっさらな状態でお話を伺ってみたいと思ったのだ。
愛知県小牧市にある松永製菓株式会社さんにやってきました。
お話を伺った藤田大輔さん。アンケートの結果を見せると「ありがたいですねー。ありがたい。ありがたい限りです!」とニコニコ。
――さっそくですが、しるこサンドの歴史を教えてください。
――いろいろと挟むものはありそうですが、なんでしるこだったんでしょう?
「名古屋は昔からあんこをよく食べる文化があり、喫茶店には小倉トーストがあるし、家でもパンに塗って食べたりします。パンとあんこの組み合わせがいけるなら、ビスケットとも合うだろうと発想したようです」
普通のコンビニにもあんこを挟んだパンが売られていた。いやこれは関東でもあるかな?
フレンチトーストにあんこはさすがに初めて見る気がする。
――名古屋の人はパンにあんこを塗るという噂は本当だったんですね。では名前が『あんこサンド』じゃなくて『しるこサンド』なのは?
「あまり深い意味はなかったみたいですが、あんこを使った食べものということで、饅頭サンド、ぜんざいサンド、おしるこサンドなどの候補があがり、おしるこサンドが語呂がいいかな? いや、『お』がない『しるこサンド』だと。ぜんざいは粒あんですが、おしるこはこしあん。しるこサンドもこしあんだから、ちょうどいいじゃないですか」
――開発に1年も掛かったのは、なにか理由があるのでしょうか。
「ビスケットにあんこを挟むという発想はすぐ思いついたのですが、あんこをビスケットの生地で挟んでから焼くという製法だと、焼いた後にどうしても剥がれてしまいます。当時の開発担当が社長から『もうやめてしまえ!』なんて言われながらも原料や形状をいろいろ試し、この形に行きついたそうです」
ここでようやくしるこサンドとご対面。え、これがしるこサンド?
しるこが挟まってない!
――すみません、しるこサンドってビスケットを焼いてからあんこを挟むのではなく、焼く前に挟むんですか? じゃあこの中にあんこが入っているということですか?
「そうなんです。そこが他社様と競合にならないものをと考えた一番の特徴ですね。『どこにあんこがサンドしてあるの?』ってよく言われます。どうぞ割ってみてください」
パキンと割ってみると、確かにあんこが入っていた。
――この形は予想と違いました。ちょっと食べてみていいですか? パリリンパリリン。あ、そんなに甘くはないんですね。おばあちゃんが孫にあげても罪悪感がない甘さというか。
「弊社のビスケットは駄菓子的な位置付けなので、手ごろな値段でたくさん食べていただきたい。そこで甘さは控えめにして、食べ飽きない味になっています。3枚続けて食べると、ようやく少し、しるこの味がしてきませんか」
確かに3枚目くらいから、ようやくしるこの味がしてきた!
――これはさらりとしたおしるこの味ですね。あんこではなく、ほんのりとしるこの雰囲気を感じます。なるほど、しるこサンドだ。
「物足りなさがあるから、気が付けば一袋食べてしまうんです。和洋折衷のほのかな味わいなので、飲み物はお茶でもコーヒーでも牛乳でも、なんでも合いますよ。オーブントースターで温めるのもほっこりしていいですね。ビスケット部分に塩気があるからアイスと一緒に食べてもおいしいです。井村屋さんからは『しるこサンドアイス』が発売中です」
後日、埼玉で発見したしるこサンドアイス。井村屋さん、攻めてるな。
しるこサンドがそのままドーン。下にはクラッシュしるこサンド入りのこしあんアイスも入っているよ。
――この甘さ控えめの味は、発売してからすぐに売れたんですか?
「他にない商品ということで、地元ですぐに受け入れられました。当時は工場が24時間フル稼働だったそうです。もちろんずっと売れ続ける訳ではなく、山あれば谷ありで売れ行きが下がったときもあったのですが、あえて製造方法や原材料をまったく変えなかったのがよかったのですかね。今年がちょうど発売50周年、この辺の方にはソウルフードなんて言ってもらえるようになりました」
――50年間も同じ味の市販菓子ってすごいですね。販売エリアはどのあたりまででしょう。
「やはり中心は愛知、岐阜、三重ですが、全国のスーパーなどにも出荷しています。数年前にテレビで取り上げられたのも大きく、おかげさまで全国的に売り上げがアップしまして、でもすぐにまた戻るかなと思ったら、そのまま受け入れてもらえたみたいです。また理由はよくわからないのですが、昔から東北と九州では人気が高いですね」
探してみたら関東にも結構ある。これはイオンのプライベートブランドだけど、中身は松永製菓のしるこサンド。
100円ショップでも発見。しるこサンド探し、けっこう楽しい。
これは松永製菓の直売所で流されていた、昔のラジオCM。イオン小牧店のお菓子売り場でも流れているとか。
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しるこサンドのバリエーション
――発売以来、あえて味を変えていないという話ですが、しるこサンドのバリエーションってあるんですか?
「通常のしるこサンドよりも出荷量が多いのが、この『スターしるこサンド』です。違いは個包装をしてあるかどうかで、中身はまったく一緒ですが、スターの如くきらめいた商品になってほしいと名づけました。地元では割安な通常版が人気で、東京などではシェアしやすい個包装のスターが圧倒的に売れますね」
「スターしるこサンドは看板商品なので、今年に限って50周年のマークを入れました。内容量が増えたとか安くなったとかのメリットはまったくないんですが」と藤田さん。
吉井和哉さんからの要望で、スターしるこサンドがツアーグッズとして使われたこともあるとか。
スターライトツアーだけに、スターしるこサンドだ。
こちらはももいろクローバーZのナゴヤドームライブでの限定版。
「過去にはスポット的に、和栗味のような季節感があるバージョンを出したこともあります。現在発売しているのはさつまいも味で、なかなか女性に人気です」
――それは絶対にうまそうです。通常版しか知らない人にドヤ顔で配って歩きたい!
『しるこサンドさつまいも』って、しるこサンドの存在を知らないと訳が分からないネーミングだが、これは間違いなくうまそうだ。
「また食べやすい棒状の『しるこサンドスティック』、一口サイズでバクバクいける『しるこサンドクラッカー』など、実はいろいろあるんです。最近はお土産物としてパッケージされたものが名古屋駅で売られたりもしています。ちなみにしるこなので餅を入れるというアイデアもあったのですが、あんこを挟んでから焼くという製造上の都合で実現しませんでした」
――なるほど、餅を焼いたら、おかきになりますね。
棒状になったしるこサンドスティック。
食べ出したら止まらなくなるという、しるこサンドクラッカー。
――松永製菓さんで、しるこサンド以外での人気商品といえば?
「しるこサンドに続くわが社の商品といえばカクテルサンドです。これも30年以上続くベストセラーですね」
――うわ、懐かし―!田舎に行くと必ずあって、どれから食べるか迷うやつですね。カクテルという単語を、これで覚えた気がします。
菓子盆に必ず入っているやつだ!
味わい深い色紙の文字。
「そして今年の3月に出たのが、この高級タイプのクリームサンドビスケットです」
――このタイプのビスケットで高級志向って初めて見ました。菓子セレブだ!
これで大切なお客さんをもてなしたい!
「あとスーパーなどでは売っていないんですが、しるこサンドには、実はもう一つあります。昨年オープンした直営店の『あんびすきゅい』限定で販売している、生しるこサンドもおかげさまでご好評をいただいております。
――生しるこサンド!それどこですか!え、すぐ近く!じゃあすぐいきましょう!
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ビスケットが食べ放題!夢の『あんびすきゅい』
松永製菓の直営店である『あんびすきゅい』は、本社のすぐ近くにあるボウリング場の一角にあった。
お目当ては生しるこサンドという、生キャラメルから始まった『生』スウィーツブームの極め付けみたいな商品なのだが、この店のシステムがすごかった。
なんと松永製菓のビスケット(生は除く)が食べ放題!ドリンクも飲み放題で1時間400円!
お目当ては生しるこサンドという、生キャラメルから始まった『生』スウィーツブームの極め付けみたいな商品なのだが、この店のシステムがすごかった。
なんと松永製菓のビスケット(生は除く)が食べ放題!ドリンクも飲み放題で1時間400円!
ファミレスやファーストフードの店だと思って入店すると、ちょっと驚くかもしれない。
店内の入り口部分は、持ち帰り用に松永製菓のお菓子が各種売られている。
しるこクリームのビスケットもあるのか。ぬかりないね。
普通はバラ売りしていないカクテルサンドも、ここでは個別に購入可能!
初めてみる動物のビスケットにほっこり。
通常の15枚分の大きさを誇るというメガしるこサンドは残念ながら売り切れでした。
400円で叶う夢物語
入り口の売店ですっかり興奮してしまったが、ここからが本番である。『あんびすきゅい』はフランス語で『一つのビスケット』という意味だそうだが食べ放題。きっとあんこのあんだ。
400円を払ってビスケットバイキングのエリアへと進む。それにしてもビスケットバイキングって、バンド名みたいでかっこいいな。
400円を払ってビスケットバイキングのエリアへと進む。それにしてもビスケットバイキングって、バンド名みたいでかっこいいな。
お目当ての生しるこサンドは別料金だが、それでもバイキングがたった400円である。
このドリンクとビスケットが飲み放題&食べ放題。ビスケットの種類は日替わりらしい。
食べたいビスケットを好きなだけ、それも何度でも盛っていいという贅沢。なんと高級なクリームサンドもあるじゃないか。
まだ発売前だというクリームがシュワシュワするレアなビスケットなんていうのも。
まずはまんべんなく少しずつ。そして気に入ったのをおかわり。いやー、これは楽しい。
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これが生しるこサンドだ
これが生しるこサンドだ
一通りの食べ放題ビスケットを味わったところで、お腹がいっぱいになる前にカウンターにて生しるこサンドを追加注文。
こしあんが160円、つぶあんが180円。もちろん両方注文だ。
高級感のあるパッケージに包まれた生しるこサンド。
ここでしか売っておらず、通販もやっていない生しるこサンド。要冷蔵なのでお土産として誰かが買ってきてくれるという可能性も、地元の人以外は低いだろう。
一生に一度の経験かもと震えながら、慎重に袋から取り出す。
普通のしるこサンドもさっき初めて食べたようなにわかしるこサンドファンなのに、俺なんかが生を食べて申し訳ない。
ババーン。これが生しるこサンドか。
ぜひ横からも見てやってください。
ドキドキしながら食べてみると、しるこサンドとは対照的なしっとりとしたクッキーに、上品な甘味のフワッとしたあずきクリームが挟まっている。「生」と名の付くお菓子は多いが、これは通常版が焼かれたあんこ生地なので、きっちり筋が通っている。これは生だ。
控えめな甘さと程よい塩気。食感はまったく違うのだが、この味にはしっかりとしるこサンドのDNAが刻まれている気がする。
さて気になるつぶあんとこしあんの違いだが、クリーム自体は同じもので、20円高い前者には歯ごたえあるのあずきが混ぜられているようだ。そしてこれがアクセントとなってうまい。私は生しるこサンドなら断然つぶあん派だ。
控えめな甘さと程よい塩気。食感はまったく違うのだが、この味にはしっかりとしるこサンドのDNAが刻まれている気がする。
さて気になるつぶあんとこしあんの違いだが、クリーム自体は同じもので、20円高い前者には歯ごたえあるのあずきが混ぜられているようだ。そしてこれがアクセントとなってうまい。私は生しるこサンドなら断然つぶあん派だ。
このあずきがうまいのよ。
トイレへ行こうとしたらボウリング場とつながっていて驚いた。
そして大満足の取材から帰ってきて、もしかしたら当サイトでも過去に取り上げたことがあるんじゃないかと検索してみたところ、案の定出てきたのが2004年掲載の「名古屋コネタ対決・前編」の2ページ目。さらに2005年の「名古屋コネタ60本ノック」にも。
コネタとして扱われるくらいだから、少なくとも当時は珍しい食べ物だったと思われる。
当サイトに初登場から干支も一周する12年。あの頃はまさか生しるこサンドが生まれるなんて、誰も思わなかったことだろう。
コネタとして扱われるくらいだから、少なくとも当時は珍しい食べ物だったと思われる。
当サイトに初登場から干支も一周する12年。あの頃はまさか生しるこサンドが生まれるなんて、誰も思わなかったことだろう。
実はわりとみんなが知っていたしるこサンドだが、この取材で私も一気に詳しくなることができた。たぶん町内一だろう。もはや子供の頃からしるこサンドを食べて育ちましたという捏造された記憶すらあるくらいだ。
あんびすきゅいのすぐ近くにある松永製菓の直売所には、ちょっと割れたり欠けたりしたものを集めたお得な『割れビス』も売っているので、大量に食べたい人はこちらもどうぞ。
あんびすきゅいのすぐ近くにある松永製菓の直売所には、ちょっと割れたり欠けたりしたものを集めたお得な『割れビス』も売っているので、大量に食べたい人はこちらもどうぞ。
『割れビス』っていう言葉を初めて知ったぜ。
取材協力:
松永製菓株式会社
あんびすきゅい:愛知県小牧市大字西之島330
松永製菓株式会社
あんびすきゅい:愛知県小牧市大字西之島330
ダジャレの電子書籍がでました
日刊サイゾーというサイトで連載していた『男のダジャレレシピ』が電子書籍になりました。ダジャレを言いたいだけの料理レシピ集で、「とってもギューシー(牛脂)なすき焼き」とか、そんなのが40点収録されています。詳しくはこちら!
レシピ集というよりはダジャレ集です。いやダジャレレシピ集です。