特集 2016年4月12日

いいパンでパン食い競走

うまいしでかいし楽しい
うまいしでかいし楽しい
いいパン食い競走をやってみたかった。

パン食い競走だけでも楽しいのに、それで手に入るパンがいいパンだったら最高じゃないか。100%楽しいことしかない。
屋形船で宴会しながらハワイに行くぐらい一点の濁りもない楽しいことがしたい。

その夢があっさりかなったのでご報告です。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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パン食い競走を勝ち抜くためのたった2つの冴えたやりかた

3月にハイタッチのギネス記録を達成するために陸上競技場を借りた(そのようすはこちら)。記録大会のにぎやかしを言い訳にして、前からやりたかった高級なパンでのパン食い競走を実施することにした。

パン屋さんのコーディネートはバゲット評論家の平岩高弘さん。平岩さん自身もパン食い競争の達人として開催前の告知記事で極意を披露してくれた。
1.パンにキスをしろ

急いでパンに突っ込むとパンが揺れてしまいうまく噛むことができない。パンの前で歩くぐらいスピードを落とし、静かにパンをキスすることが第一のコツ。
2.パンは吸え

そしてパンは噛まない。まわりを覆っているビニールを吸う。ビニールだけを噛んで走り去るのがふたつ目のコツである。
「コント・ああ無情」みたいな写真になった
「コント・ああ無情」みたいな写真になった
ぜひ覚えておいてもらいたい。これで5月の運動会シーズンはデイリーポータルZ読者がパン食い競走で上位を独占することは確実である。

おいしいだけじゃなくて大きい

パンは平岩さんの紹介で武蔵小山のネモ ベーカリー&カフェに依頼した。
パン通のあいだでは名の通った名店である。すごいところに頼んだ。わかりやすく言うとビル・ゲイツにウインドウズアップデートの見張りをしてもらったようなものである。

用意してもらったパンは5種。美味しいだけじゃなくてでかさにもこだわった。
バゲットは一本
バゲットは一本
コンプレ(全粒粉のパン)しっかり重い
コンプレ(全粒粉のパン)しっかり重い
ブリオッシュ(卵とバターをたくさん使った甘いパン)
ブリオッシュ(卵とバターをたくさん使った甘いパン)
パン・オ・レザン(レーズンのパン)
パン・オ・レザン(レーズンのパン)
ブリオッシュとパン・オ・レザンはぶら下がっているとわかりにくいが、店で売られているものよりも二回り大きい。特別に焼いてもらった。
左がパン食い競争のための特別版。右が通常サイズ
左がパン食い競争のための特別版。右が通常サイズ
パン・オ・レザンは喧嘩にあけくれている不良少年も一発で更生するおいしさ
パン・オ・レザンは喧嘩にあけくれている不良少年も一発で更生するおいしさ
回転寿司でも声に出して注文するのを躊躇する僕がだ、名店で特別にパンを焼いてもらうなんて暮らしが2階級特進である。
これを上質な暮らしと言わずしてなんというのか。思わず水素水にありがとうって言うぞ。

そしてパン・ド・ミ。食パンである。
マグリットの絵でこういうのあった。
マグリットの絵でこういうのあった。
陸上トラックの上に浮くパンを見て、いいパン食い競走をやって本当によかったと思った。この景色を見るためにデイリーポータルZを13年やっていたのかもしれない。

いいパン食い競走のノウハウ

パン食い競走ではパンをひもにぶら下げるらしいが、パンが重いので棒にした。
それでもこんなにしなる
それでもこんなにしなる
棒は5mの自撮り棒のときに使った棒である。二度と使わないのではないかと思われた備品が役立った。
パンは洗濯バサミ2つ使い
パンは洗濯バサミ2つ使い
そして棒を支えるのは人。ライターの北村真一さんと為房新太朗さんである。
背が高いからだ。企画力と文章のうまさで当サイトに参加しているふたりだが、ここではただ高さを保つだけの役割である。

いいパン食い競走をされる際は参考にしていただきたい。
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あくなき調整

いいパン食い競走は1回5名の3回開催、15人の参加だったが希望者が予想以上に多く、予選としてじゃんけん大会が行われた。
左端でライフネット生命の出口会長もじゃんけんに参加してる
左端でライフネット生命の出口会長もじゃんけんに参加してる
もっとパンを用意すべきだったか…このとき内心焦っていたのだが、これが後の感動的なシーンにつながることになる。
パン食い競走の実況は古賀、解説・平岩のふたり。解説の内容は主にパンで、この競技の主役がパンであることを思い知らされる。
パン食い競走の実況は古賀、解説・平岩のふたり。解説の内容は主にパンで、この競技の主役がパンであることを思い知らされる。
スタート前に気になることがひとつあった。看護師が「こういう競技に限ってけが人が出る」と言っていたのだ。

看護師とは万が一に備えて来てもらったプロである。ずっとテントの下にいるのでライフネット生命の広報の人だと思って名刺を持って挨拶に行ってしまった人である。どうでもいい話だが。
参加者がスタートラインに集まってきた
参加者がスタートラインに集まってきた
怪我を避けるためにスタート前にどのパンが目当てかを聞くことにした。パンの下での混乱を避けられればと思ったのだがこれが功を奏した。

たいていかぶらないように目当てのパンを言ってくれるし、かぶった場合は譲り合いになった。
「ブリオッシュを狙います!」
「あ、わたしも…」
「じゃあお譲りします」
「いいんですか?」
「パン・ド・ミもいいなと思ってたので」
「なんだかすいません」
意気込みを聞きつつ、パンの調整をしています
意気込みを聞きつつ、パンの調整をしています
スタート地点はすっかり和やかな雰囲気になった。スポーツとは思えない事前調整、根回しである。大人のスポーツはこうでなくてはならない。

事前にどの人がどのパンか決まっているのでスタート後もスムーズである。
一直線に目当てのパンに向かい
一直線に目当てのパンに向かい
目当てのパンをとる
目当てのパンをとる
まったく混乱が起きない。そして安全。オルタナティブな配給とも言えるが、怪我せず楽しくパンを持ち帰るのが第一なのでこれでいい。
それでもこの達成感である。
それでもこの達成感である。

振るまいが始まる

先にも述べたがパン食い競走は競争率が高くなってしまった。パン食い競争に出られなかった人もいる。そうしたらパンを入手した人がパンを振るまいはじめたのだ。
今年いちばんのホスピタリティ出た
今年いちばんのホスピタリティ出た
僕がパン切りナイフを持ってきて、まあよかったらちょっとぐらいとは言ったのだが、完璧にシェアしてくれた。おかげで参加していない人まで大いに盛り上がった。ありがとう!
振るまっていた人はスタート前に「パンは明日の朝ごはんにします!」と言っていたのに。客人をもてなすために盆栽を薪にしたみたいな話である。
振るまっていた人はスタート前に「パンは明日の朝ごはんにします!」と言っていたのに。客人をもてなすために盆栽を薪にしたみたいな話である。
この景色を見たライフネット生命の出口会長が「これが生保の起源や!」と叫んだとか叫ばなかったとか(叫んでません)

性善説・ザ・ワールド

パンをくわえて走るのがおもしろくて、パンがおいしい。そしてパンを入手した人も独り占めしない。ユートピアである。

またやりたいけど怪我すると興ざめなので転んでも平気なように肉じゅばんを着て走るようにレギュレーションを変えたいと思う。ほんとに。
おれもパン食いたかったなーとか言ってませんよ
おれもパン食いたかったなーとか言ってませんよ
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