特集 2015年10月26日

天然マイタケを採ると本当に舞い踊るのか

憧れのマイタケ狩りに連れてってもらいました。
憧れのマイタケ狩りに連れてってもらいました。
人口栽培の技術が確立し、今では安く手に入るマイタケだが、漢字で『舞茸』と書くように、元々は見つけた人が喜びのあまり舞い踊ってしまうほど価値のあるキノコなのだとか(舞い踊っている姿に似ているからという説もあり)。

今でも天然のマイタケは大変貴重らしいが、本当に舞い踊ってしまうほど嬉しいものなのだろうか。その真偽を確かめるべく、マイタケ狩りに同行させていただき、確かめてみることにした。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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マイタケ狩りの難易度を見誤る

「人は天然のマイタケを発見すると舞っちゃうほど喜ぶのか」という謎を解明したい!

まあそれは口実で、本音はマイタケ狩りがしてみたかっただけだったりするのだが、そんな私の同行を許してくれたのは、山形県在住の丹羽さんという友達だ。

いま友達と書いたが、よく考えたら一回しか会ったことがないので、いわばSNSの分類上での友達どまりにもかかわらず、家族にも場所を教えないと言われているマイタケ狩りに連れて行ってくれるのだから、ありがたい話である。
待ち合わせ場所に現れた丹羽さんの装備が物々しい。
待ち合わせ場所に現れた丹羽さんの装備が物々しい。
私の中で好感度ナンバーワン山男の丹羽さんと朝5時に待ち合わせ、山へと登って幻の天然マイタケを探しに行く訳だが、車を降りるとなにやら命綱らしきものを装備しだした。それ、いるの?

御一緒する丹羽さんの友人達も、一体どこまでいく気ですかと不安になるようなフル装備。

やばい、本気のやつだ。
北関東源流会という釣り仲間だそうで、野宿しながら3泊4日とかでイワナを釣りにいく元気な方々。秋は禁漁なのでキノコ狩りに精を出す。
北関東源流会という釣り仲間だそうで、野宿しながら3泊4日とかでイワナを釣りにいく元気な方々。秋は禁漁なのでキノコ狩りに精を出す。
事前にハードな山登りだとは聞いてはいたけれど、だいぶ場違いな現場に来てしまったかもしれない。キャンプに誘われていったらプロ野球のキャンプだったくらいの勘違いかも。腰にカゴをぶら下げたハイキング気分の参加者は私だけである。

これはあれか、自分で仕込んだドッキリ企画か。この年で電波少年か。

ちなみに私は山登りを一切しないタイプのアウトドア好きで、体力偏差値は47くらい。ご同行いただく皆さんにまったく迷惑を掛けないというのは無理なので、せめて最小限の迷惑で留められるように頑張りたいと思う。
しかも雨が降ってきたよ。
しかも雨が降ってきたよ。

幻は徒歩5分で手に入る場合もある

歩きはじめてほんの5分というところで、先頭を歩いていた丹羽さんから「あったよ!」との声が掛かった。え、早い。

駆け寄ってみると、斜面に生えた大木の根元に、なんと天然のマイタケが生えていた。
もうマイタケが見つかったそうです。
もうマイタケが見つかったそうです。
天然のマイタケは、その存在を知らないと食べ物とだと認識できない地味なお姿。
天然のマイタケは、その存在を知らないと食べ物とだと認識できない地味なお姿。
あまりにもあっさりと見つかりすぎて、舞うに舞えないという感じだが、これは先週丹羽さんが見つけたものを採らずに置いておいてくれたものなので、あっさり見つかって当然なのだ。

見つかってヤッター!ではなく、誰かに採られてなくてラッキー!

マイタケが収穫できるのは約1か月の間で、タイミング的にはこの週がラストチャンス。早い時期だとさらに大きくなるのを待つそうだが、もうシーズンも終盤。サイズ的には小さいが、これ以上は成長しなそうだということで収穫となった。
これが天然のマイタケ。まだ大した苦労をしていないので、舞うほどの喜びがピンとこない。
これが天然のマイタケ。まだ大した苦労をしていないので、舞うほどの喜びがピンとこない。
ちゃんと木から育ちましたと自己主張するようなマイタケの香り。
ちゃんと木から育ちましたと自己主張するようなマイタケの香り。

マイタケ狩りとは大木巡りの山歩きである

ここまではほんのチュートリアル。ここから先がマイタケ狩りの本番であり(だとこの時は思った)、丹羽さんも今年はまだ入っていない場所へと登っていく。

マイタケの探し方だが、この辺りでよく生えるのはミズナラという木の根元だそうで、丹羽さんが記憶している場所や新しく見つけた木を営業マンのように回っていく。

クヌギを回ってカブトムシを探すのに似ているが、マイタケが1か所から採れるのはシーズンあたり1回限りで、先に採られてしまう場合も多い。
かろうじて道と言えそうな山道を歩きながら、ミズナラの木を巡っていく。丹羽さんのマイタケ狩りは独学なので、すべて自分で見つけたポイントだそうです。
かろうじて道と言えそうな山道を歩きながら、ミズナラの木を巡っていく。丹羽さんのマイタケ狩りは独学なので、すべて自分で見つけたポイントだそうです。
丹羽さんがチェックする期待値の高いミズナラでも、マイタケが生えている確率は30本に1株くらい。この時期になると毎週のように山へと入る丹羽さんでも、1シーズンに10株も採れれば上々。丸1日歩き回って収穫なしということも珍しくないそうだ。

また毎年のようにマイタケが発生する場所もあるが、そういう木の株は小さく、3年に一度だとそこそこ、7年に一度だとドカンと特大サイズになるのだとか。
ミズナラの木は太ければ太いほど確率が高く、こういう立派な木の生えている場所をどれだけ知っているかが勝負となる。
ミズナラの木は太ければ太いほど確率が高く、こういう立派な木の生えている場所をどれだけ知っているかが勝負となる。
観光用ではない吊り橋をいくつも渡っていく。
観光用ではない吊り橋をいくつも渡っていく。
このようにしてかなり山を登ってきたのだが、やはりシーズンが終わるぎりぎりというタイミングが響いたか、今のところご新規のマイタケ発見はゼロ。つい先週はリュック一杯に採れたそうだが、この難しさこそが自然相手のマイタケ狩りなのだろう。

雨も強くなってきたので、あとどれくらい登るんですかと聞いてみたところ、「ここまでは高速道路みたいなもんだから。ここからが本番!」と軽く言われた。

そうか、まだ本番じゃなかったのか。今まで歩いてきた山道は、マイタケ道の中では高速道路だったのか。
多少の雨が降っていても、野生動物のように動じないで休憩をとるメンバー達。
多少の雨が降っていても、野生動物のように動じないで休憩をとるメンバー達。
汗と雨で服の中までグッショリだよ。
汗と雨で服の中までグッショリだよ。
マイタケみつからない……きのこいない……きのこいなり……。
マイタケみつからない……きのこいない……きのこいなり……。

道なき崖をほぼ垂直に登る

ここまでは高速道路だよといったのは冗談ではなかった。さっきまでは私でもかろうじて通るべきルートが見えたのだが、もう丹羽さんがどこへ進もうとしているのかがまったくわからない。

サルやカモシカくらいしか登れなそうな斜面を迷うことなく進み、先の見えない藪を漕いでいく愉快な仲間たちを必死になって追いかける。人間ってこんな場所でも進もうと思えば進めるんですね。

迷子にならないよう列の最後は歩かないようにする。マイタケを探すのは皆さんに丸投げして最短距離でついていく。それでも一歩進むごとに体力がみるみる減っていく。きつい。本当にきつい。絶対痩せようって100回くらい思った。
へー、その崖、登っちゃうんだ~。
へー、その崖、登っちゃうんだ~。
道というものがないので、油断すると前の人を見失いそうになる。
道というものがないので、油断すると前の人を見失いそうになる。
ちなみにこんな感じの山奥なので、クマももちろん住んでいる。私には全くわからなかったが、山の先輩たちは「ここは獣臭いね」「クマの気配がビンビンするね」といった会話を笑顔でしていた。

ピーとサンバみたいな笛を吹いたり、フォーとHGみたいな掛け声を上げたりして、ずいぶん陽気な行進だなと思ったが、あれはクマ避けなのか。
ここまでくると吊り橋すらないので、川はザブザブと渡るしかない。
ここまでくると吊り橋すらないので、川はザブザブと渡るしかない。
濡れたカッパが突っ張って、足が思うように上がらない。どうせもうずぶ濡れなんだからさっさと脱げばよかった。
濡れたカッパが突っ張って、足が思うように上がらない。どうせもうずぶ濡れなんだからさっさと脱げばよかった。
崖を登ろうと掴んだ木の枝がどこにもつながっていないというトラップに何回も引っかかる。風雲たけし城の竜神池のような見極め力が求められるのだ。
崖を登ろうと掴んだ木の枝がどこにもつながっていないというトラップに何回も引っかかる。風雲たけし城の竜神池のような見極め力が求められるのだ。
いやー、大変だわ。

これがゲームの世界なら、辛くなったらリセットボタンを押せばスタートに戻れるけれど(このたとえ、ファミコン世代だな)、山の中では引き返すにも自力で戻らなくてはならないし、一人では帰る道もわからない。

リアルってこういうことなのか。下山したら私にお似合いのキノコ狩りゲームでも探そうかな。

超巨大な天然マイタケを発見か!

そんなこんなで何度も尻もちをつき、軽く斜面を滑り落ち、全身びしょ濡れになって、登ったり降りたりした先にあったのは、風格漂う苔むしたミズナラの大木だった。

素人目でも、なにか特別な感じがする存在感だ。
そりゃキノコぐらいいくらでも養えるだろうっていうくらいの風格。
そりゃキノコぐらいいくらでも養えるだろうっていうくらいの風格。
この木は丹羽さんが13年前にマイタケ狩りを初めて、最初に見つけたという思い出の場所。

ここに超大物が待っていたのだ。
ジャーン。でたね、特大サイズが。
ジャーン。でたね、特大サイズが。
ゆうに鍋100人前はありそうな特大サイズのこのキノコは、マイタケはマイタケでもトンビマイタケという種類。普通のマイタケよりもうまいという人もいる食用キノコだ。

ただし、である。

夏が収穫時期の種類のため、もうすっかり老成して全体がコルクのように硬くなってしまい、まるで食べられる状態ではなかったのだ。
キノコというか、もはや木だな。
キノコというか、もはや木だな。
あー、残念。君とは2か月前に出会いたかったよ。

マイタケ狩りは人生の縮図なんだよと、誰かが小さくつぶやいた。

天然のナメコとナラタケをたっぷり収穫!

トンビマイタケは残念だったが、マイタケの仲間だけが美味しいキノコではない。

さすがにこれだけ山へ登れば、手つかずの自然が待っている。別のキノコならあるかもと言われて向かったポイントに、素敵なキノコが待っていた!
倒木にモリモリとキノコが発生中!
倒木にモリモリとキノコが発生中!
そこに生えていたのは、皆さんご存知のナメコだった。傘が開いているのでピンとこないが、スーパーなどで売っているあのナメコの野生バージョンだ。

丹羽さんの話だと、天然物ならこのくらい成長したものが、味も歯ごたえもベストであり、これぞナメコの最上級なのだとか。

ナメコって木についている時からヌメヌメしてるんですね。
ナメコって木についている時からヌメヌメしてるんですね。
正直、山登りというか崖登りがきつすぎて、なんで来ちゃったんだろうと少しションボリしていただが、この見事なナメコを見て、「キノコ狩り最高!」って単純に思い直した。

もうこれが俺のマイタケっていうことでいい気がする。
天然のナメコってこんなにでかくなるのか!
天然のナメコってこんなにでかくなるのか!
その下にはさらなるパラダイスが出現!
その下にはさらなるパラダイスが出現!
ナラタケという食用キノコが山盛り採れた!
ナラタケという食用キノコが山盛り採れた!
そしてナメコらしいナメコも生えていた!どう見てもナメコ!
そしてナメコらしいナメコも生えていた!どう見てもナメコ!
今日が雨でよかったと思えるほどの艶っぽさ。
今日が雨でよかったと思えるほどの艶っぽさ。
こちらはブナハリタケ。こう見えて食用だそうです。
こちらはブナハリタケ。こう見えて食用だそうです。
ということで、丹羽さんが事前に見つけておいたマイタケ以外とは出会うことができず、残念ながら舞うことはできなかった。

しかし、マイタケ狩りがこれだけ大変だからこそ、山に登って大きな株を見つけたときは、そりゃ舞うほどうれしいんだろうなということが体で理解できたのだ。

ちなみに今回のルートは私の体力にあわせてもらったものであり、距離はいつもの三分の一程度で、難易度も低めのお散歩レベルなのだとか。
どうにかロープで助けられることなく無事下山。これでお散歩レベルかー。
どうにかロープで助けられることなく無事下山。これでお散歩レベルかー。
正直なところ、あと30分も登りが続いたらやばかったのだが、「今度は泊りがけで源流へ釣りにいこう!」と誘っていただいたので、春までにダイエットと体力づくりをしたいと思う。

以下、思い出のスナップショット。
俺が見つけたキノコその1、古くなり過ぎたナラタケ。
俺が見つけたキノコその1、古くなり過ぎたナラタケ。
俺が見つけたキノコその2、マイタケだと喜んだが全然違った怪しいやつ。
俺が見つけたキノコその2、マイタケだと喜んだが全然違った怪しいやつ。
俺が見つけたキノコその3、これナラタケですかと聞いたら全員から「オーラがない(知識と経験に裏打ちされた発言)」と、否定された。
俺が見つけたキノコその3、これナラタケですかと聞いたら全員から「オーラがない(知識と経験に裏打ちされた発言)」と、否定された。
俺が見つけたキノコその4、このシイタケみたいなやつも毒ですかと聞いたら、それは天然のシイタケだよと言われて驚いた。自分で見つけた唯一の食べられるキノコ。
俺が見つけたキノコその4、このシイタケみたいなやつも毒ですかと聞いたら、それは天然のシイタケだよと言われて驚いた。自分で見つけた唯一の食べられるキノコ。
僕は全然気が付かなかったけれど、シモフリシメジという超おいしいキノコがけっこう生えていたそうです。
僕は全然気が付かなかったけれど、シモフリシメジという超おいしいキノコがけっこう生えていたそうです。
ヤマブドウというものをはじめて食べたかもしれない。ザ・野生の味。
ヤマブドウというものをはじめて食べたかもしれない。ザ・野生の味。
ミズという山菜の実を食べたことがあるんだけど、こんな風になっているのか!
ミズという山菜の実を食べたことがあるんだけど、こんな風になっているのか!
乳歯みたいなマムシグサの実。うまそうだけどバリバリの毒草だとか。
乳歯みたいなマムシグサの実。うまそうだけどバリバリの毒草だとか。

天然のマイタケは地鶏のような歯ごたえ

さてさて山からとってきたキノコ達だが、野宿をしながらの鍋が最高だよとの誘いもあったが、全身ずぶ濡れで体力もヘロヘロ。

そこで丹羽さんの友人がやっている上山市の五十番食堂という店へと持ち込み、お任せで調理していただいた。
手前が丹羽さん、奥が調理をしてくれた五十番食堂の方。
手前が丹羽さん、奥が調理をしてくれた五十番食堂の方。
初めて食べる天然マイタケの味だが、歯ごたえが栽培のマイタケと全然違って驚いた。「甘い」とか「脂が乗っている」みたいなわかりやすい美味しさではないのだが、自分のDNAがありがたがる旨味と香りがすごい。

樹齢何百年にもなる大木から養分をもらってゆっくりと育っただけあって、地鶏のようなしっかりとした筋肉質。いや菌肉質か。まさに木の子。

ダイエットは明日からにして、天然キノコの味をしっかりと堪能させていただいた。とかいって、今現在ももちろん痩せていない。
開けた瞬間に香りが広がるマイタケのホイル焼き。
開けた瞬間に香りが広がるマイタケのホイル焼き。
歯ごたえが最高の天麩羅を塩で。衣はサクサク、マイタケはザクザク。
歯ごたえが最高の天麩羅を塩で。衣はサクサク、マイタケはザクザク。
天然ナメコもぬめりと歯ごたえが素晴らしい。来年はナメコおろしそばにチャレンジだ。
天然ナメコもぬめりと歯ごたえが素晴らしい。来年はナメコおろしそばにチャレンジだ。
私が見つけた(ここ大事!)シイタケとたっぷり採れたナラタケで作った塩味の鶏雑炊。クセが全くないキノコのダシが最高!
私が見つけた(ここ大事!)シイタケとたっぷり採れたナラタケで作った塩味の鶏雑炊。クセが全くないキノコのダシが最高!
採ってきたキノコを食べつつ、酒を飲みながら、今日一日をゆっくりと振り返る。採れないことが当たり前のマイタケ狩り、今回の依頼も「採らせてくれ」なら断ったが、「同行させてくれ」だったのでOKしたそうだ。ちなみに初めて丹羽さんと会ったのはタキタロウ調査隊の時で、あれを楽しめる人ならということでこちらもお願いさせていただいた。

丹羽さんは今年で43歳とのことだが、春は山菜採りとマタギのお手伝い(ものすごくハード)、夏は源流での渓流釣り、そして秋はキノコ狩りと、毎週のように山を登っているので、今は高校生のときより体力があるよと笑う。

採ってきたキノコ達は、あの山の水と土と空気を濃縮したような味がした。

なんてわかったような感想を言えるのは、あのハードな山登りを経験したものだけの特権だ。

来年こそは舞えるといいな

天然のマイタケを食べてみて、その価値を再確認した訳だが、これを自分の力で見つけたら確実に舞うね。そのための振りつけを考えておこうかな。

もう何度もマイタケを採っている丹羽さんでも、その年に初めて見つけた時や抱えられない程の大株を見つけた時は、きのこ目のズーム機能が発動。やっぱり嬉しくて舞い上がってしまうそうだ。
それにしても疲れました。
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