ゴミの山が生み出した軌跡
いきなりだが、イベント終了後の写真を一枚ごらんいただこう。
全ロボット31体、大集合
なんだろうか、この、そこはかとなく漂う「ゴミの山」感。昨年7月に開催した第1回のヘボコンでも同様の写真を撮影したのだが、あのときも同じことを感じたのだ。
ずいぶんひどいことを言っているようだが、実際のところ、ヘボコンにおいてはこれは褒め言葉である。
なんたって、参加者は「関西一のヘボ」の座を争ってやってきた人たちなのだ。
イベント中。1階がいっぱいで2階から立ち見する人も!
ヘボい、不器用、集中力がない、ポンコツ、ダメ、雑、ゴミっぽい、不良品、生活態度を見直したほうがよい。これらすべてを褒め言葉ととらえ、「よいこと」として評価していこう、というのがヘボコンの精神である。
この大会には「ハイテクノロジーペナルティ」なんていうルールもある。高度な機能を搭載すると重いペナルティを科せられる。この会場において、まっとうに優れていることは、むしろ罪なのだ。
ルール説明の雑な絵に、真剣に見入るお客さんたち
連絡の行き違いにより、土俵の4つ角のうち2つだけ角丸になってしまうというハプニングもあった。主催者も卒なくヘボいのである。(写真は本編前に開催した子供向けワークショップの様子)
そんな特殊な磁場の中、いったいどんな試合が展開されていったのか。心に残る名試合10選、次のページからご紹介していこう。
1回戦 第2試合
DGR-01(ぐるぐる公園)
vs
オートねこ車(コノエダ)
DGR-01の「DGR」は、「大五郎」である。AKB以来、無数のアルファベット3文字表記が生まれてきたが、これほど荒んだ3文字があっただろうか。
大五郎は意外と売っていなくて、20キロくらい探し歩いたという。
大五郎の必殺技は大五郎ハリケーン。前面についたプロペラの風圧で、相手をなぎ倒すという設定だ。しかし実際にはプロペラを逆向きに付けてしまっており、絶対になぎ倒せないようになっている。人間誰しも間違えることはあると思うが、気づいていながら直してこなかったところに作者の無頓着な性格がよく現れているといえよう。必殺技なのに!
対するオートねこ車は、こんなロボットだ。
猫に木枠を取り付けたシンプルなロボット。
猫のおもちゃが台車を引っ張って前進するシンプルなロボットかと思いきや、スイッチを入れてみると意外な動きをするのだ。
転がる!
このおもちゃ、猫が音に反応して笑い転げるようになっている。それに木枠を付けることで突撃力を増したのがオートねこ車である。ヘボを抜きにしても普通に工夫されていて、おもしろいアイデアだ。相撲的にも、左右(前後?)に気まぐれに転がる猫は相手を撹乱するし、毛の生えた表面は摩擦が強くて押しにも強そうだ。
一方で、大五郎はボディも細いフレームでいかにも弱そうで、必殺技も設定だけ。
オートねこ車が圧倒的有利と思われたが……試合の様子は動画でごらんいただこう。
両者スタンバイ……と思ったら、動かないねこ車。急遽メンテナンスタイムに。おなかを開いて電池のチェック
電池ボックスのフタを雑に閉め、「OKです」を宣言。いよいよ試合開始
……するも結局、猫はピクリとも動かず、電池チェックのときのままのあおむけの姿勢のまま、敗退。
敗因はこうであったようだ。
・家に工具が見つからなかったので銅線を巻きつけるだけで留めていた
・出番直前に電池交換をした(その際、コードが外れた?)
ロボットのアイデアも性能もよかったのに、生活態度(物をなくす)で負けてしまった形である。ロボットバトルの基本は規律正しい生活から。そんな教訓を我々に与えてくれた、意義深い試合であったといえよう。
1回戦第5試合
TSUKUBOT3号(前田創)
vs
ピザの斜塔(巴大樹)
前田君の名前に見覚えのある方もおられるだろう。
昨年7月、第1回ヘボコンの最年少出場者(11歳)であり、手に汗握る激闘の末に強敵クーちゃん0号機を倒し、Make:Japan賞をさらっていったヒーローである。
前回の勝利の様子
ロボットの見た目も素朴なら、大喜びする顔も素直でかわいらしかった前田君であるが、今度はすごいロボットを携えてきた。
完全に殺る気
漆黒のボディにギラギラ光る大振りの2刀流、写真は静止状態だが、電源を入れると目が赤く光る。完全にダークサイドに堕ちているではないか!
あれから10ヶ月。僕は前田君の誕生日を知らないが、遅くともあと数ヶ月後には12歳を迎えるはずだ。子供の成長は早い。3年後に訪れる「中2」に向けて、彼の趣向も着々と変化しているのである。
対するは本大会最大のロボット、ピザの斜塔。
高さ制限のないヘボコンのルールを生かした巨大ロボット
ピザ部分は全体が前後に傾くシーソーのようになっている。その上にそびえ立つのが「ピザの斜塔」。
作戦はこう。まずは前傾の状態になり、自分では移動せず相手がピザの上に乗るのを待つ。
相手が乗っかってきたら、釣竿の先についたおもり(チャーハン)をピザの上に落とし、するとシーソーが傾き、相手をすくい上げて転倒させる!というものだ。
大柄な機体に似合わず緻密に考え抜かれた作戦。そしてそれがすべて完全な机上の空論であるところもポイントである。
前田君、この巨塔に太刀打ちできるであろうか。
試合開始とともに塔に接近するTSUKUBOT4号。塔の頂上には通話状態のiPhoneが搭載され、客席にいる友人が相手を挑発するようになっている。
「チャーハンあるよ」「おいしいチャーハンあるよ」の挑発に動じず、ピザに乗り上げる前に停止するTSUKUBOT4号。このとき、勝負は完全に彼の手の内に。
説明しよう。ヘボコンの試合には1分間の時間制限があり、1分をすぎると判定となる。このときの判定基準は、「試合中の移動距離が長いほうが勝ち」。
もともと、漬物石やレンガなど、移動しないただ重いだけのロボットを持ってきた人が最強になるのを防ぐためのルールだったのだが、ここへきてこのルールが効いてきた
動力を積まないピザの斜塔はなすすべもなく、まんまと時間切れ
もちろん、判定でTSUKUBOT4号の勝ちである。
作戦に作戦をぶつける応酬、高度な頭脳戦はまさかの小学生の勝利に終わった。
前田君の笑顔は相変わらずで、おじさん安心しました
1回戦第6試合
ツインフェクトフォース(アフロフ)
vs
タヒチ(コイン太夫)
サイズと重量の制限はあるものの、基本的に出場ロボットの形状は自由。それだけに、「まさかこれが…」というポイントが勝敗の決め手となることもある。
まさかのウォッシング
見てくれ、この自由な形。なんか全体に雑な感じのするロボット、やはり固定が全体的にガムテープであることが理由だろう。
2台のミニ四駆で前進するとともに、上からぶら下がる2本のブラシを高速で回転、すれ違いざまに相手を巻き込み……、ついにはピカピカに洗車してしまう恐るべきマシンである。(ちなみにツインフェストフォースは実在する洗車機の製品名)
そして対するはこちら。
テーマは「情熱」
女性がタヒチアンダンスをしながら、その腰には蛇がうねる。しかもけっこういい動きである。真っ赤に光る目も見逃せない点だろう。
洗車vsタヒチ。異種格闘技にもほどがある組み合わせだが、まさかアレが勝敗を分けることになるとは。
スタートと同時に猛スピードで突進する洗車機。意外な俊敏さ!
タヒチがほとんど移動しないまま激突、そのまま土俵際での競り合いに
そしてもつれ合ったまま両者場外へ。果たして判定は!?
タヒチを巻き込む形で場外に出たツインフェクトフォース。決め手となったのはこれだった。
緑の、コレ
腰みのだ。実は土俵際で競り合っているうちから、タヒチの腰みのが土俵外の床に垂れ下がっていたのだ!
「腰みのが床についたので負け」。勝敗を決する重要なポイントとわかっていても「どうでもいい!!」と思わず口に出してしまう、この些細ぶり。
派手な激突シーンに、もつれ合っての激戦。普通に会場が沸いた試合だけに、脱力感もひとしおであった。
1回戦第9試合
ヘボ子(飲めず)
vs
地引網号(はちもと)
ここへきてヘボコン初のアイドルが参戦!その名も「ヘボ子」だ。
フラワーロックを改造し、会場の声援によって動くアイドルとしてデビュー
「ファン(観客)の皆さんと一緒に戦いたい」「みんなの心をひとつにしたい」というコンセプトで作られたヘボ子。背負ってきた夢の大きさはアイドルにふさわしいものであるが、しかしただロボット相撲を見に来た観客の皆さんがヘボ子ファンであることを疑っていないのは作者の呑めずさんのみであり、本番でどこまでみんなの協力を得られるかが決め手となるだろう。
そして対する地引網号。
その名のとおり、地引網で相手を絡めとる作戦
片面ダンボールを使いポップな見た目に仕上げられているが、中を見てみるとデカビタCのビンやWiFiルータが無造作に詰め込まれており(おもりとして)、内に秘めたカオスを感じるマシンだ。
アイドルvs海の男、真逆のパーソナリティが激突したこの試合、果たしてどうなったのか。
試合開始。会場に集まる大勢のファン(のうち、主に作者)の声援を受け、一生懸命にクネクネするヘボ子
対する地引網号も網を張り始めたそのとき、……あっ、ヘボ子!
新人アイドルにこの声援はプレッシャーが大きすぎたのか、バランスを崩して転倒してしまう。
そのまま首がもげるヘボ子。ヘボ子ーーーーーーーーーーーッ!!!!!!
こんな末路を誰が想像しただろうか。歓声に応えようとあんなにがんばったヘボ子が…!
ただ、彼女の最期も無駄ではなかった。壮絶な幕引きを目の前に、登場したときはは「え?アイドル?」と困惑気味であった観客のみなさんも、いつしかヘボ子を応援し、最後には一人残らずヘボ子のファンになっていた。そういう意味では、ヘボ子は、最後の最後まで、アイドルであった。
名実ともに、ヘボコン初のアイドルとなったヘボ子。僕は君のことを一生忘れない。
いいシーンを別アングルからもう一枚
1回戦第11試合
歯みがき上手かな(S川)
vs
大阪ドリル(瑛)
とにかく見てくれ、この「歯みがき上手かな」の気色悪さを!
なんだこの生き物っぽさ
市販の工作キットとは思えないこの動き。ヘボコンでありながら、
アメリカのあの犬型ロボットすら髣髴とさせる。
この質感を出しているのはキットの周りに貼られたフェルトのせいに違いないが、このフェルトがまた、なんだか雑なのだ。
ぜんぜん均一じゃないし、あとから継ぎ足した部分が全然なじんでない
コンセプトは乳歯だそうだが、乳歯というよりはシンナーで溶けた歯みたいな感じだ。これが歯ブラシを突きつけて、あの動きで「歯みがき上手かな?上手かな?」と迫ってくるわけである。子供にとっては悪夢でしかないだろう。
そして運の悪いことに、対戦相手がバッチリ子供だったのである。
前回最年少の前田君を下回る、小学3年生、瑛(あきら)君。
そしてそのロボット、大阪ドリル
大阪をモチーフにした素材をこれでもかと詰め込んだ1体。前についているタイヤっぽいのはドリルで、予想以上のスピードで高速回転する。足回りはシンプルな直進のみだが、ボディはレゴ製で固い。
「小学生だから」と思って舐めてかかると痛い目を見るタイプの強敵だ。
「歯みがきは得意ですか?」の質問に「いえ」と答えた瑛くん vs シンナーで溶けても歯みがき上手かな、対決の様子は動画でどうぞ。
試合開始と同時に
ドリルをぶん回しながらすごいスピードで大阪ドリルが突進
試合開始0.2秒で場外に跳ね飛ばされる、歯みがき上手かな
この日初めて、ロボットがきれいな放物線を描いた瞬間であった。
試合終了後に負けた感想を聞かれ「むしろおいしいです」と答えたS川さん。その発言のとおり、もっとも圧倒的だった試合としてここに紹介させていただきました。
1回戦第12試合
ミスターX(コジマコブラ)
vs
フラワリスト(大村悠)
プロゴルファー猿の悪役をうろ覚えで再現したミスターX。
「ミスターX」を検索してみるとわかるが、全然違う。
別に考えていた壮大な構想のロボットが形にならず、本番前日に5分くらいで組み上げたというマシン。全体的におざなりである。
対するフラワリストはこちら。
コンセプトは「自然と機械のハイブリッド」。
自然、機械、文明、それらのあり方を問うマシンだそうだ。言いたいことはわかるが、いかんせん全面紙粘土である。「自然」部分もまるっと人工感まるだし。そのうまくいってなさが愛おしいロボットだ。
この戦い、思いもよらぬ結果に終わる。
試合開始直後、後ろに移動して土俵外に飛び出してしまうミスターX
ヘボコンには一般的なロボット相撲のルールに加えて、技術力の低さを考慮したルールがいくつかある。そのひとつが、「ロボット同士が接触しないで外に出た場合は再試合」というものだ。これは、まともに前進できないロボットが登場しても、勝負のていをなすように、という配慮である。ただし、やり直しは2回まで。
2回目もすぐに飛び出してしまい、最後の3回目。今度は先に外に出たほうが負けだ。
やっぱりあらぬ方向に走っていき、場外に出てしまうミスターX。
ヘボ対応ルールがあってもなお、まともに勝負できなかったミスターX。しかしである。あの紙袋の中には、ある事情があったのだ。
紙袋をはがすと、中にはあのヒーローの姿が…
このおもちゃ、昨年お子さんが生まれた際に、近所の郵便局のおばちゃんがお祝いにくれたものだという。そんな思い出のこもったおもちゃを軍事利用しようとしたコジマコブラさん!
しかし、奇しくも対戦相手は「自然」であった。果たして正義の味方が、美しい花を前にして、襲い掛かることができるだろうか。ましてや、彼は赤ちゃんのために贈られた優しいヒーローなのである。
美しい花
単にランダムに動くだけのおもちゃなのだが、しかしこの試合結果は偶然ではなかっただろう。この機械仕掛けのアンパンマンは、自然と争うのではなく、共存を選んだのだ。こうして、フラワリストが訴えたかった「機械と自然の融合」がここに果たされたのである……。
無駄に壮大なドラマが生まれた一戦であった。
1回戦第13試合
テック・セメタリー君2号(テック・セメタリー)
vs
シュティ(A Magi Is Nook)
ヘボコンにおいて作戦や必殺技とは、机上の空論のことである。その7割は本番では発動しないし、残りの3割は発動するが特に効果はない。
しかし、たまには事前に作りこんできた作戦が奇跡的に決まってしまうこともある。それがこの試合だ。
テック・セメタリー君2号、墓だ
墓だが、油粘土である。やわらかい。当たると相手のボディに粘土がつく。そしてやわらかいので相手の攻撃をすべて吸収する。墓の中には神社で買ったお守りが埋め込まれているという。「そのご利益で勝つ」と言っていたが、油粘土に埋め込んだりしたらむしろバチが当たるのではないか。
そんな作戦もありつつ、今回鮮やかに決まったのはそれではない。それがどんなものであったかは、実際の試合の中で見ていただこう。
対するはカニ型ロボット、シュティ
タミヤのキットに外装を(養生テープで雑に)留めただけのものである。このパターン、シンプルではあるが、よけいな細工をしていないぶん、意外に強かったりする。
ちなみにこのシンプルさで、作者は4人チームである。ヘボコンにはいろんな種類のヘボが登場するが、「無駄に人数が多い」というのは新機軸だったかもしれない。
それでは必殺技がきれいに決まった奇跡の試合、ごらんいただこう。
まずは中央で激突、がっぷり四つで組み合う両者
もみ合ううちに、シュティの八の字に開いたハサミが、ちょうどテック・セメタリー君2号の角にフィット。
するとテックセメタリー、なんと墓がじわじわ回り始めた!
墓を回してシュティを自分のキャタピラの正面に引きずり込み、一気に押し出す!
テック・セメタリー君2号の隠し技、回転。
一見「墓が回るからなんなんだ」という、技というよりただシュールな機能だが、実は状況次第で投げ技のように使えるのだ。それが鮮やかに決まった、奇跡の試合であった。
ちなみにテック・セメタリー、試合後は油粘土で汚れた土俵をきれいに掃除してから退場するなど、礼儀正しいお二人であった。ヘボしき中にも礼儀あり、である。
1回戦第15試合
おれさまのばんさん号(ねぼすけ)
vs
箱入り息子(動いた。)
当サイトのライター小堀さんを含む3人組、動いた。昨年の第1回大会では、最凶のダーティーヒーロー「ヤマタノオロチン」を携えて出場。放送に適さないグッズを材料にしたこのロボットは、ヘボコンのメディア露出を阻む悪役として、他ロボットの集中砲火を受けた。
ヤマタノオロチン
そして今回2度目の出場、動いた。のロボットがこちらである。
でか
下に敷いてある黒い板は土俵である。限界ギリギリサイズで攻めて来た。ただこの箱、よく見るとちょっと浮いてる。
なんかいるわ
そんな大きな箱が本体で、名前は「箱入り息子」。そして前回のロボット。今回の中身は推して知るべしであろう。
そして対するは、おれさまのばんさん号。文字通り、晩餐をロボット化したものだ。
もっといい食生活をしてほしい
最大の特徴は「食べられる」。ダンボールとチルド食品の組み合わせが、「食」をウリにするにはリアルすぎる生活感を放っている。地味に箸がついている準備万端さにも注目してほしい。
さて、前回に引き続き今回もTV局が取材に来ているぞ。果たしてヘボコンは放送に載るのか?放送禁止か?どっちに転ぶか、この試合の行方にかかっている。
試合開始と同時に突進をキメるばんさん号。しかし箱入り息子は素材の性質上、床のグリップ性能が異常に高い。ばんさん号の馬力ではビクともしないのだ
ばんさん号をなんとか前進させようと、画面外で後ろから息を吹きかけるねぼすけさん。しかし箱入り息子のグリップ力が圧倒的。
とはいえ、箱入り息子も安泰ではない。時間切れになると移動距離の長いばんさん号の勝ちになるため、うまく土俵から押し出すか、反対側まで押し返さねばならない。
そうこうしているうちにコントロールを誤ったか、箱入り息子の足が場外に!!
箱入り息子の自滅により、ばんさん号が勝利!
前回に引き続き、主催者、出場者、観客とみんなの心がひとつになったこの試合。共通の敵を作るとチームの結束が固くなると聞くが、そういう意味では彼らはイベントの成功に必要不可欠なチームなのかもしれない。
ありがとう、「動いた。」!(負けてくれたから言える)
2回戦第1試合
ファミコンチャンプ(もやし)
vs
DGR-01(ぐるぐる公園)
vs
AIBO(西尾萌夏)
vs
人とのつながり(家族のつながり)
2回戦は4体バトルロイヤルである。
2回戦最初の試合、この試合の主役は、このロボットだったと言ってよいだろう。
人とのつながり(ロボット名です)
使用部品は、妹と使っていたラジコンの部品、お母さんに買ってもらったスケボーのおもちゃ、お父さんに借りた手回し発電機。家族の思い出を一体のロボットに凝縮し、すべてセロハンテープで留めた、まさに「家族のつながり」(出場者名)を体現したロボットである。
思いのほか機敏に動く
これだけつながりをアピールしつつ、ステージには一人で登場、家族は特に見に来ていないという点も心にしみた。
そして対戦相手となるのが以下の3体。
まずはすでにご紹介した大五郎。DGR-01
ボディにファミコンを使用、相手に花を捧げる小粋なロボット、ファミコンチャンプ
今大会では最も大きく出たネーミング。AIBO
不戦勝で2回戦にすすんだ人とのつながりを除き、のこり3体はいずれも1回戦を勝ち上がってきた実力派ぞろいである。果たして、家族の絆はバトルロイヤルを勝ちぬけられるのか!?
試合開始すぐに、中央に集結する4体。結果的に体の一番小さい人とのつながりが、真ん中で押しつぶされる形に
そのまま団子状態のうちに、バランスを崩し大五郎が転倒!のこり2体に見えるが、その間にはまだ人とのつながりがいる。
最終的にはAIBOがキャタピラの馬力を生かしてほかの2体を順に押し出し。
AIBOと、バラバラになってしまった家族
家族がバラバラに!
目を赤く光らせながら続々と敵をなぎ倒していく魔犬AIBO。バラバラになってしまった家族は気の毒だが、しかし考えてみればもともとセロハンテープで止まっていた家族である。力が加わればバラバラもやむなしか。
これ、また図らずもこの試合自体が何か社会風刺みたいになっていないだろうか。テーマは、希薄化する家族のつながり、である。
技術力は低いわりに設定やコンセプトに凝りがちなヘボコン。うっかりするとすぐに社会風刺が生まれてしまうという、意外な側面に気づかされた試合であった。
残骸を手にする家族のつながりさん。妙に切ない写真が撮れてしまった
決勝戦
AIBO(西尾萌夏)
vs
テック・セメタリー君2号(テック・セメタリー)
さて、その後も試合は2回戦、3回戦と続き、いよいよ決勝である。決勝に残ったのはあの、
魔犬・AIBO
ここでAIBOについてもうちょっと詳しく説明しておこう。エントリー時のコメントには「AIBOの現代版を作ります」とあったので、僕はてっきりAIBOの外装を今風に改造してくるのかと思っていた。当日、会場入りしてみると、そこにはイチから作った完全オリジナルAIBOが来た。
ボディ部分にも注目
ボディにはプリント基板のパターンが印刷されていて、作り込みが細かい(そもそも素材が木材なので完全にフェイクなのだが)。
また、iPodを搭載しており、試合中にはかすかに犬の鳴き声がする。(ただし音が小さくてマイクをとおしてすら聞こえない)。事前の質問用スレッドでは「音は何デシベルまで出して大丈夫ですか」と質問していたのだが、AIBOの名前と同様、大きく出たものである。
そしてもう1体、決勝に勝ち進んだのが、先にもご紹介した油粘土の回転墓石、テック・セメタリー君2号だ。
右奥。心なしか、墓の角が少し丸くなってきたような気がする
奇しくもキャタピラ同士となったこの戦い。キット自体の性能は互角に思えるが、果たして優勝の行方は!?
真正面からぶつかる2体。馬力は拮抗か!?
しかしここでAIBOに変化が。首が上がった!?
そう、AIBOのベースはブルドーザーなのである。すくい上げの機能をいままで隠し持っていたのだ。
そのまま捲り上げてテックセメタリーを押し倒し。
いままであのマスクに気をとられて気づかなかったのだが、AIBO、実はブルドーザーだったのだ。そして封印していたすくい上げをここにきて解禁、テックセメタリーを破った。
隠し技の回転で1回戦を勝ちあがったテックセメタリーだったが、最終的にはAIBOの隠し技に破れた。
というわけでなんだかドラマチックに終わった決勝戦。西ヘボコン、優勝は、AIBOでした!おめでとうございます!!!!
次のページでは各賞受賞者の紹介と、ここまでで紹介し切れなかったロボット達をご紹介します。
各賞紹介
テック・セメタリー君2号(テック・セメタリー)
AIBO(西尾萌夏)
オートねこ車(コノエダ)
電池を換えたばっかりに動かなくなったという本番でのヘボっぷりもさることながら、猫のおもちゃのチョイスと使い方のおもしろさで受賞。
長時間運転するとリモコンのコードがどんどん猫の腹に巻きついていくスリルもよかった。
歯みがき上手かな(S川)
受賞理由は「タミヤの音センサーロボットを使っていると思うんですが、見るも無残な姿で印象に残りました」と株式会社タミヤ・石崎氏。
しかしその次の瞬間、受賞者・S川さんの口から衝撃の事実が語られる。
「買ったキット、タミヤじゃなかった気がするんです」
タミヤ使ってないロボットにタミヤ賞をあげてしまった石崎氏。
主催者、出場者、審査員にいたるまでこの場に居合わせたメンバーすべてがヘボい、黄金のヘボ・トライアングルが完成した奇跡の瞬間であった。
そして、ヘボコンにおける大賞といっても過言ではないこの賞。
今回も会場での投票で決定
ヘボ子(呑めず)
ヘボ子!!!!!!!!!
みんなの声援にこたえようとがんばりすぎて首がもげたヘボ子!永遠のアイドル・ヘボ子!あの、ヘボ子が大賞に輝きました!
賞の発表後、首の治ったヘボ子にみんなでもう一度声援を送ったあと(写真の撮影角度のせいで一人しか応援していないように見えますがちゃんと客席も応援しています)
「決勝に行ったら見せよう思っていた」というヘボ子・フォーエバー・Tシャツが披露された
賞品には、前回の「小学生が作ったトロフィー」からさらにレベルアップ、「幼稚園児が作ったトロフィー」が贈られました。(ライター三土さんのお子さんが作ってくれました。)
デビュー初日にいちど首がもげ、その日のうちにスターダムに上り詰めたヘボ子。もはや波乱万丈すぎて意味がわからないが、今後もアイドルとして、いつまでも活躍してくれたらと思う。(どこでかは不明)
出場ロボット紹介
最後に、これまでの試合で触れられなかったロボット達を一挙ご紹介していこう。
フエキどうぶつB(はげちゃんぐ)
大阪の企業、フエキ文具の動物のりをフィーチャー。頭上にはアクションカムを搭載、自分の活躍を撮影できるがちょっとした衝撃でカメラが回ってしまうという弱点も。
エヂソヌ(はむ&たこ)
昨年11月のミニヘボコンに、手作りのラズベリーパイを搭載したロボット(Raspberry Piっていうマイコンとかかっています)で出場した二人組。今回はインテルのマイコン・Edisonとかけてきたが、いかんせんEdisonの知名度が低かった
そよかぜ2(イッキーノン)
プロペラの風力で動くが、微風すぎて推進力がほぼない。必殺技はスポンジの手と、その先についた人形による2段チョップ。
ヤ○ト5○1(茶泉)
ラジコンを使用するも、遠隔操作(ハイテクペナルティ対象)を避けるためにコントローラーを本体と一体化させて台無しに。また格納庫を脱いで発進するギミックを搭載するも、格納庫に引っかかり出られないまま1回戦敗退。
KONAMONタンク(ムッシュ☆)
頭上でたこ焼きを高速回転、前面の主砲からミニたこ焼きを発射、前面下部のコテ、と粉ものオンリーの3段構えで武装。
クワッピー(石掛真人)
クワガタが引っ張る台車から網を発射、相手を絡めとる。
発射の動作は見事だが、台車が重過ぎてクワガタの脚力では引っ張れず、移動不能に。
ミツルハナガタ2000(ハートランドしんじ)
足回りには100均のリモコン式自動車のおもちゃを4台搭載。
操作はハイテクノロジーペナルティ覚悟でiPhone(に貼り付けたリモコン)を使用。時にはカメラフラッシュを使用して目くらましを行うことも。
豚肉1号(蒼井汁)
主砲に、有機系突撃装置(ネギ)を搭載。敵機にこすり付けての精神攻撃を行う。2回戦では主砲をこんにゃくに換装し、よりイヤな感じにグレードアップ。
くま(ふうこ)
このナイトメア感!花をまとったかわいいクマかと思いきや、目が光って怖い。でも目が光ってないと白目になってより怖い。
踊りはかわいい
スパロボ君4D(肉)
プロペラの回転で匂い袋に送風、いいにおいをさせながら戦う。子機「マグネサテライト」を搭載、試合中に飛び出し、自分で動き回る。
ごり太くん(山下紺太郎)
馬力を稼ぐため、タミヤの歩く象キットを2つ使ったロボット。しかしお互いが干渉しあいほとんど動かないという本末転倒ぶり。スポンサー名の書かれた旗をたなびかせて戦う。
HK1号(チャーリー浜岡GP)
ほうきを大ぶりに回転させ相手を掃き出すロボット。しかし攻撃力のほとんどはほうきというよりも、ほうきを支える軸によるものであった。
ゴミの山よ永遠なれ
ここでもう一度、冒頭の写真を見てみよう。