あれなんだったんだろう
たぶんあの場に居合わせた人たち全員が、2週間たった今ふりかえると、「あれなんだったんだろう」という気持ちになるはずなのだ。「ヘボいロボットが戦うイベントがすごく盛り上がった」という事実が奇妙すぎて、脳がすんなり受け入れてくれないのだ。
時間がたって冷静になった今、また改めてあの日の試合を振り返ることで、思い出としての折り合いをつけていきたい。
不器用の祭典、ヘボコン
改めてイベントの概要を説明しよう。その名のとおり、技術力のない人が作ったロボットだけが集まる、不器用の祭典である。
技術力のない人が作ったロボットの一例
もう一例
すべての出場ロボットは「材料が段ボール」「接着がマスキングテープ」「部品がすぐ取れる」「仕込んできたネタも他の人とかぶる」などの弱点を抱えている。
制作者の技術力が低いため、どのロボットも基本的にまともに動かない。しかし「戦う」という目的がある手前、前進くらいはできるようになっている。我々には強力な味方、タミヤのキットがあったのだ。
ミニ四駆まるだし
この日の出場者席にはあらゆる種類のタミヤのキットが揃った
一言でまとめると、基本的にはまともに動かない、うまく動いているところはたいていタミヤのキット、というのが本大会の出場ロボットの最大の特徴だ。
こんなロボットたちが繰り広げた全23試合のうち、選りすぐりの12試合をレポートしていこう。
ルールおさらい
試合の様子を紹介する前に、対戦ルールのおさらいをしておきたい。
技術力の低いロボット達に格闘技や球技のような高度なことはできるはずもなく、必然的に対戦ルールは絞られてくる。
ロボット相撲である。体当たりさえできれば成立するスポーツだからだ。
ただし他にも技術力の低さに配慮した細かいルールが追加されている。試合の様子を紹介するにあたり、ざっと箇条書きで説明しておこう。
・土俵からでたり、倒れたりしたら負け。(ここまでは普通の相撲と同じ)
・接触しないでどちらかが場外に出たら再試合
・1分以上勝負がつかない場合は、移動距離が長い方が判定勝ち
・ハイテクノロジーペナルティ。高度な機能を搭載すると重いペナルティを科せられる
さあ、次ページからいよいよ、僕が選んだ名試合、12選をレポートしていこう。
チリトリーマアム(inuro) vs アキラ一号(アキラ二号)
当初、ただのガラクタ合戦かと思われたヘボコン。そこに確かなドラマがあると気づかせてくれたのがこの試合であった。
なにしろ、こうなのだ。
圧倒的な体格差
フィールドの幅は50cm。チリトリーマアムは「土俵の幅いっぱいのでかいロボットを作って突進させたら勝てるのでは」という作戦のもとに作成された巨大ロボ。二台のラジコンがチリトリを乗せて前進するロボットで、今大会最大の体長を誇る。
図体がでかいだけではなく、速い。
対するアキラ一号は、ヨチヨチ歩くタミヤのキットがベース。正面に貼られた顔も弱気の表情で、しかもそれが歩くとプラプラ頼りなく揺れる。試合前の試運転には会場から「弱そう…」との声も。
対峙する二体
そんな弱そうなアキラ一号。巨大なチリトリーマアムに対峙するその姿は、単身巨悪に立ち向かう勇者のそれか、それとも風車に挑むドンキホーテか。
いずれにしろ完全に主人公ポジションであることに間違いない。対するチリトリーマアムの悪役ぶり!
そんな対戦のゆくえは動画で見ていただこう。
おもいのほかじわじわ攻めるチリトリーマアム。それもそのはず、2体のラジコンを使った足回りは、コントロールを間違うと猛スピードで場外に飛び出してしまう。幅がいっぱいなので、なおさらはみ出しやすいのだ。
じわじわ迫ってくる巨体
登れ!登れ!
しかしアキラ一号にはチリトリの傾斜を登り切る馬力もなかった。そのままコースアウト&転倒。
ひっくり返った姿が切なかった
風車に敗れたドンキホーテ同様、アキラ一号は破れた。手に汗握るジリジリとした展開が会場を沸かせた。最初の名試合である。
鬼ゴリモス2号(じゅんじゅん) vs ぺんだこ(ホリ)
対してこちらは、ストレートな意味でヘボコンの真価を見せつけてくれた試合である。何しろ両者とも圧倒的なヘボぶりなのだ。
気迫を感じるビジュアルだが
まずこちらの鬼ゴルモス2号。見た目こそ気迫にあふれているが、当日はじめ店てその動きを見て、僕は衝撃を受けた。
なんかじわじわ後ろに下がっていく
4足歩行かと思いきや、なんか違う。もがいているだけだ。
タミヤの4足歩行キットを使ったにもかかわらず、色気を出して部品をひとつ自作のものに交換したせいで、ちゃんと動かなくなったらしい。余計な工夫をして台無しになったパターン。
しかも後退といってもまっすぐ進むわけではないので、放っておくと自ら場外に退場していく。
一方で対戦相手のぺんだこ。
キュートなビジュアルで一見完成度が高いのだが、動かしてみるとこうである。
能力:瞬時にバランスを崩す
ゲーセンで取った動く人形(音に反応して動く)の外装を付け替えたそうで、こちらもちゃんと動いていたものに余計な改造を入れて台無しにしてしまったパターン。見た目は違えど、奇しくも似たもの同士の対決となった。
試合の様子は動画で。
後退しつつ自分でコースアウトしていく鬼ゴルモス2号と、自らバランスを崩して転倒するぺんだこ。相手を倒すというより、相手の自滅まで耐えた方が勝ち、という大変ヘボレベルの高い試合。
鬼ゴルモス2号が後退でぺんだこに接近、
一瞬機体を接触させるも、押し倒すには衝撃が足りず
途中でぺんだこは動作を停止。音に反応して動くしくみだが、操作者から離れてしまったため声が届かなくなったか
ぺんだこがそのまま静止している間に鬼ゴルモス2号が自ら場外へ
動作させると自滅するロボット2体による対戦。片方が途中で止まってしまったために自滅を回避でき、正常に動いていた方が負ける。という、もう何重にもポンコツな試合であった。
主催者の僕としても、ここまでヘボい展開は正直想定外であった。
この試合、ロボットのヘボさが人間の想像を超えてきた、歴史的瞬間であると思っている。
戦いをやめさせる牛(きゅんくん) vs 「日本うんこ学会」非公認!腸内細菌プロメテウス・ミラビリス号(モッサリオ・モッサモッサ)
この2体、まずは見た目のギャップをじっくり味わってほしい。
月とすっぽんとはこのことか
まずは奥、かっこいい方から紹介していこう。名前は「戦いを止めさせようとする牛」(以下、牛)である。名前のわりにどこにも牛要素がない気がするが、それは試合直前に「重くて動きが鈍るので牛どけていいですか」という申し出があったからである。
もともとの姿
当初のコンセプトを完全に無視してくる思い切りのよさも驚きだが、外すにあたってネジでも抜くのかと思ったら、単に上に乗っていた牛をどけるだけだったのも驚きであった。接着してなかったのか!
ちなみにでかい基板はジャンク品を使ったハッタリである。実体はこれもタミヤのキット。
戦いをやめさせようとするのをやめて傍観する牛。そして奥にもう一体、問題の緑の方
こちらは『「日本うんこ学会」非公認!腸内細菌プロメテウス・ミラビリス号』(以下、ミラビリス号)。
今大会随一のヘボいビジュアル。しかも電気を使わないというチャレンジングなロボット。それでいて、技も豊富なのである。
べん毛攻撃!
威嚇!
移動から攻撃まで全ての動作を空気圧だけで行っており、地味にすごい。機能、機構、工夫、どこをとってもすごいのに全体に漂うこの出来損ない感。もはやヘボの達人技の域。
そんな二体の対戦の様子がこちら。
サイドから回り込むミラビリス号を、そのまま押し出しにかかる牛
いまだ、威嚇!威嚇!
威嚇体勢のままあえなく押し出されるミラビリス号
コントロール性能の高い2体。コースの読み合いで戦略性の高い試合が展開されかけたが、ピンチの挽回のために繰り出した威嚇が全く功を奏さず、結局ミラビリス号が敗退。
体当たりで決着する試合が多い中、「技」が繰り出されたという点で名試合である。(名試合の理由もレベルが低い)
コピーロボット(すずえり) vs ストライカー木魚(おかめ)
技を使った能力バトルといえばこの試合を忘れるわけにはいかない。対戦順は当日くじ引きで決めたのだが、この2体がぶつかることになったのは、もう、運命としか言いようがない。
余っていた木魚を有効活用したという機体、ストライカー木魚
このストライカー木魚は音に反応して前進するキットをベースとしており、操作者が木魚を叩くことにより前進する。
ちなみに背中にArduinoという最近流行のマイコンボードが乗っているのだが、もちろん線のつながっていない飾りである。
そして、その対戦相手がこちら。
コピーロボットはその名のとおり相手の能力をコピーする
左に板が見えるが、これが動力源「位置エネルギーエンジン」だ。電池は使わず、この上を滑らせることでその慣性で前進する。(要はただの坂だ)
そして特筆すべきはその能力。見てのとおり、本体はテープレコーダーである。相手の能力を録音し、再生することで能力をコピーする……という設定なのだ。
すずえりさんはこの日ツナギを新調してきた
音声だけ録音しても能力コピーにならないだろ!というのがこのロボットの想定ツッコミだが、この試合は違った。相手の木魚を録音して再生することができれば、ストライカー木魚の動きをコントロールすることができるのだ。
この出来すぎた対戦カード。熾烈な能力バトルの様子は動画で見てみよう。
坂を滑り飛び出してくるコピーロボット
一発目は勢いがつきすぎ場外へ。「接触なしで場外に出た場合は再戦」のルールが発動。
2戦目、先ほどより至近距離から飛び出したコピーロボットが…
ストライカー木魚をノックアウト!
完全に物理法則だけでコピーロボットが勝利。能力バトル要素一切なかった……。
というかそもそも試合中にテープレコーダーを操作できないので、もともと録音だけしかできない仕様だったのである。2回戦で再生を行うつもりだったが、試合後にぼやいているとおり、それすらも録音できてなかったというヘボコンぶりであった。
たまてばこ(ももうた) vs かめたろう1号(かめたろう)
ロボットアニメにつきものなのが、パイロット同士の精神戦である。勝敗はロボットの性能のみで決まるのではない、より強い精神力を持ったものが勝利する。そしてヘボコンの世界もそれは同じだ。
ボールをたくさん搭載したこのロボットは「たまてばこ」
一見何がなんだかよくわからない機体だが、実際動かしてみると、工夫の塊のようなロボットであった、
このトリッキーな動き!
ボールが転がるレーンの両端に前進と後退のスイッチがついていて、ボールが当たるとロボットが進み、またボールが弾かれて別のスイッチに当たり……、の繰り返しで移動する。マイコンなどの高度な技術を使わず、工夫だけでこの動きを実現している。ヘボ抜きでふつうにすごい。
そしてその対戦相手がこちら。
かめたろう1号
この朴訥(ぼくとつ)フェイス。しかしスペックは顔に似合わぬものを持っている。
かめたろう1号は紙のカバーをはがすと木材でできており、重い。そして重心が低くサイズもでかく、相撲には圧倒的有利なフォルム。完全に「勝ちに来てる」マシンなのである。
機能こそ前進のみだが、この顔でまっすぐジリジリ迫ってくる。
工夫の申し子 vs 勝ちに来てるマシン、試合の様子はこうだった。
スタートと同時に急発進、相手の前に躍り出た、たまてばこ
しかしここで動きの要であるボールが止まってしまい、なすすべないまま、かめたろう1号の馬力にじりじり押されていく
焦ったパイロットが戦況を変えようと直接スイッチにタッチ、この操作で後退した たまてばこ はそのまま土俵の外へ……
朴訥とした顔からはとても想像できなかった、殺人マシーンのごとく淡々と敵を追い詰めていくかめたろう1号の姿。たしかにそれは脅威であったが、しかし最終的にたまてばこに止めを刺してしまったのは、パイロットである ももうた さん自身の焦りであった。
試合後のかめたろうさんのコメント「大人げなくて申し訳ありません」というフレーズが印象に残る、名試合であった。
amazing quick floor(斎藤充博)、陸グソク(aba)
写真左。平たいボディを床と一体化させ相手の下にもぐりこみ、転ばせる作戦
ミニ四駆を動力としており、名前のとおり、大きな見た目からは意外なほど素早い。
そして対戦相手は。
陸(おか)グソク。リモコンで動くキットにオオグソクムシのケースをかぶせたもの
小回りの利く陸グソクの得意技はローリングヒップアタック。回転して尻尾部分で敵を打つ。しかしおそらく平たいamazing quick floorにダメージは与えられず、かえって上に乗り上げてしまうだけだろう。勝ち目はないかもしれない。強い、強いぞ amazing quick floor!
事前の評では優勝候補との呼び声も高かったamazing quick floor。ここであえてこれだけ持ち上げているということは……、結果は推して知るべしである。
予定通り陸グソクの下に滑り込むamazing quick floor
しかし陸グソクはそのままamazing quick floorの上を通過し……
何ごともなかったかのように着地。いっぽう陸グソクの重みから開放されたamazing quick floorは一気に場外へ
素晴らしく機敏な床。その名のとおり、相手にダメージを与えることなく、完全に床としてその出番を終えた形である。
気持ちよいほどに、作戦が完全に裏目に出た。そんな名試合であった。
Tsukubot3号(前田創) vs クーちゃん零号機(ティラ)
いよいよ登場だ。名試合中の名試合。取材にやってきたフジテレビ、朝日新聞、日経MJがこぞって取り上げた、本大会最高のマッチである。
前田君と、そのロボット「Tsukubot3号」
前田君は今回の出場者中で最年少、小学5年生である。そのロボットはスイッチまですべて手作りの力作。若干11歳にしてこの技術力は驚異的。しかしながら
この腕から延びる支柱は何だ
2足歩行に見えて実はこの支柱を使った4足歩行である、といったヘボさも忘れていない。そこまでひっくるめて(ヘボコンとしては)完璧なロボットを、わずか11歳の若さで繰り出してきたのである。
こんな前田君を相手に戦うとなると、誰であろうと悪役にならざるを得ない。そんな役回りをうっかりくじで引き当ててしまったのが、対戦相手のティラさん。
ロボットは「クーちゃん零号機」
クーちゃん零号機はタミヤのボクシングロボに、会社のイメージキャラクターの外装をかぶせたものだそうだ。何でよりによって会社の看板背負った人が、こんなダーティーな役回りになってしまったのか。不幸としか言いようがない。
このキット、パンチがめちゃくちゃ速い
じわじわ接近していく2体のロボット
Tsukubot3号の進路が逸れ、サイドからクーちゃん零号機のパンチをまともに浴びる角度に(クーちゃん零号機のパンチが速すぎて見えない!)
そのままじりじり押されていたTsukubot3号だが、一瞬の隙をついて正面に態勢を立て直す
残り20秒。何度も倒されそうになりながらも何とか持ちこたえるTsukubot3号。
お互いバランスを崩しながらどんどん接近していく2体のロボ。そのとき、体勢を崩しかけたクーちゃん零号機の足元をTsukubot3号がすくった!!
そのまま転倒するクーちゃん零号機
首が転げ、最高にキャッチーな負け姿のクーちゃん零号機
押しつ押されつの互角な攻防、フラフラになりながら戦うロボットたちの健気さ、そして制限時間ギリギリで決着するドキドキ感、最後の一撃の鮮やかさ、そして最年少・前田君の勝利。すべてにおいて歴史に残る名試合でした。
前田君のあまりにいい笑顔の写真が残っていたので。新聞各紙の記事は完全に彼が主役でした
うどんを運んでいる(ネッシーあやこ) vs 開発名:キャタピラー(成瀬ノンノウ)
最高の名試合の後は最低のヘボ試合。第1回戦の最終戦は、なぜかひとりだけ登壇。
うどんを運ぶロボット「うどんを運んでいる」
ベースの車が速すぎたため、重さで速度を落とそうとうどんを乗せたのがきっかけだそうだ。しかし試合展開はもはやこのロボットの詳細がどうであるかは無関係な方向へ。
突然スクリーンに映し出されるギョウザの写真
何を隠そう、この試合、ネッシーさんの不戦勝である。対戦相手だった成瀬ノンノウさんは電車に肝心のロボットを忘れ、終点の小田原まで捜索に向かうも、結局見つからずじまい。そこで送られてきたのが、先ほどの一人ギョウザビールの写真である。
ヘボコンのコンセプトを、ロボットではなく生き様で体現してくれた成瀬さん。前田君とは別の意味で伝説の出場者となった。(誰も見たことがない、という意味で)
LCXX(バガボンドワークス) vs 敗者全員
正式な試合以外の余興にも印象深いシーンがあった。
1回戦終了後、「技術力の高い人によるデモンストレーション」と題して、ゲストに本気のロボット作家をお招きして、作品を見せていただいた。
登壇していただいたバガボンドワークスさんのお話は、ものづくりに関する示唆にあふれるもので、今回の出場者を鼓舞するような内容もあって出場者席はおおいに沸いた。
その直後に行われたのが、この大虐殺である。
技術力の高いロボット「LCXX」 vs
一回戦で負けた奴ら
ちなみにLCXXは乗用。人が乗っても余裕で進む馬力&耐久性を誇る
バガボンドワークスさん側としては、LCXX単体 vs ヘボコン軍総力戦 でも構わなかったのだが、ここで出場ロボットが壊れてしまうと後の進行に差し支えるので、負けたロボットのみに限定して参戦。
もはや勝負ですらない、無数のロボットたちが一方的に蹂躙される様子は動画でごらんいただこう。
そして迎えた二回戦はバトルロイヤル。4対一気にぶつかり合う集団戦である。
ワラワラ
4試合あった2回戦の中でも、もっともヘボコンらしいというか、ボンクラ度が高かったのがこの試合。まずは参戦ロボットを紹介しよう。
左奥から時計回りで、すきばやし次郎、やさしさ(概念)、突撃パンダさん、ぺんだこ
すきばやし次郎は「未来の回転寿司」をイメージしたコンセプトカーであり、軽快な音楽を流しながら寿司を回転させ突進する。ただし回転が弱いので敵に当たると寿司がすぐ止まる
「戦うことの愚かさを伝えたい」というやさしさ(概念)は、赤ちゃんのようなかわいさ(口に注目)で相手の戦意を喪失させ、体当たりを受けても柔らかい体でショックを吸収、やさしく包み込む。
エントリー登録時はラジコン+ちりとり+パンダのかわいい姿だった突撃パンダさん。シンプルなつくりがネットで酷評を受けた結果、暗黒面に堕ち、他の出場ロボットのパーツを吸収した(パクった)悪魔合体ロボに。
突撃パンダさんは2回戦にあたってすきばやし次郎対策で寿司のぼりを新調しての参戦。こうやって出番待ちの間にありあわせの資材で雑なチューンナップが行われ、ロボットの姿がどんどん変わっていくのはヘボコンならではである。
そして1回戦でもご紹介した、途中で機能停止することで自爆マッチを生き抜いた、ぺんだこ。
試合開始と同時にすきばやし次郎に猛突進をしかける突撃パンダさん
なんとか踏みとどまったすきばやし次郎。そのまま2体は膠着状態に
その隣で何をするでもなくパタパタ動き回る、やさしさ(概念)とぺんだこ。この2体のボンクラぶりがすごい
挙句途中で止まってしまう、やさしさ(概念)
こっち見んな
膠着状態のままタイムリミットで試合終了。移動距離による判定で、暗黒合体ロボ・突撃パンダさんの勝利。
4体バトルロイヤルにもかかわらず試合展開としてはほぼ一騎打ち。しかしその横で我関せずといった様子で遊びまわる、2体の奔放ぶりが実にヘボコンらしい試合だった。
それからただのネタロボットかと思われた突撃パンダさん、その戦闘能力の高さがはっきりと見えてきたのもこの試合からである。
ヤマタノオロチン(動いた。)、陸グソク(aba)、Tsukubot3号(前田創)、うどんを運んでいる(ネッシーあやこ)
プロレス的ストーリーから大いに盛り上がったのがこの試合。まずは参戦ロボットから紹介していこう。
右上から時計回りに、1回戦不戦勝のうどんを運んでいる、斎藤さんの床ロボを難なく乗り越えた陸グソク、そして1回戦ではすばらしい試合を見せてくれた、最年少・前田君のTsukubot3号
そして最凶のダーティーヒーロー、ヤマタノオロチン。3対6本のアダルトグッズを備え、そのうねる力で前進する。弾力のある素材のためグリップ力が強く、馬力も意外にある。1回戦で倒した鍋型ロボットNABEよりにんじんを譲り受けた。
ヤマタノオロチンの卑猥なビジュアルは、到底大手メディアに露出できるものではない。
今回これだけ大手のマスコミが取材に殺到したイベントで、出場者一同みんなテレビに出たいし、新聞にも載りたいと思っている。しかし試合にヤマタノオロチンが登場することにより一気に放送禁止映像となり、そのチャンスが失われてしまうのだ。ましてや優勝などしてしまったら、このイベントの報道自体が危うい…!
「これ以上、奴を勝ち進めさせるわけにはいかない。」
ヤマタノオロチンを除く3人の気持ちはひとつになり、4体デスマッチは実質1vs3の団体戦に変わったのだ。
試合開始直後に うどんを運んでいる が単独で転倒
陸グソクにターゲットを絞ったヤマタノオロチンが突進。(にんじんついてるほうが前です)
しかし小回りの利く陸グソクは突進をかわし、後ろに回りこむ。
後退のできないオロチンをにとどめを刺そうと、場外へ押し出しにかかる陸グソク。しかしうどんを運んでいるの残骸が邪魔してなかなか押し出せない!Tsukubot3号も手を貸そうと接近中
タイムリミットギリギリで、ヤマタノオロチンは場外に。これで世界の平和とヘボコンのメディア露出は守られた!!
改めて動画を見てみると、中立の立場であるはずの僕が完全に反オロチン陣営に肩入れしている。
だってイベント主催者だし、このイベントをメディアで取り上げてほしい気持ちは人一倍なのだ。
ともあれそういった事情のおかげで、こうした見事な協力プレイ(が実際できていたかどうかはともかく気持ちの上では)が見ることができたのだ。ヤマタノオロチンのおかげで生まれた名試合である。
ちなみにこのあと陸グソクとTsukubot3号による追加試合が行われ、残念ながら前田君は2回戦で敗退。それを破った陸グソクも次の3回戦で敗退した。
突撃パンダさん(みゆ)、かめたろう1号(かめたろう)
そしていよいよ最後の名試合。最後に紹介するのは、もちろん決勝戦だ。
かめたろう1号 vs 突撃パンダさん
朴訥とした顔に似合わず、その体重と馬力を生かした押し出しで数々のロボットを葬ってきたかめたろう1号。その頭にはNABE→ヤマタノオロチン→陸グソク、と継承されてきたにんじんのトッピングが。
そして対する突撃パンダさん。当初はイロモノかと思われていたが、速攻の素早さと、チリトリで相手の足元をすくい上げて踏ん張りを奪う戦法でメキメキと頭角を現し、ついには決勝進出。
この試合に関してだけはもはや牧歌的なヘボコンの空気ではなく、完全に真剣勝負である。
試合の行方は、動画で見ていただこう。
速攻を得意とする突撃パンダさんが、ゴングと同時に一気にかめたろう1号を土俵際に追い詰める
しかし重量級のかめたろう1号を押し出すことはできず、またその巨体をチリトリに収めることもできない。
しばし膠着状態がつづく。突撃パンダさん、正面の人形の下にあるのはかめたろう1号の顔を吸収した(パクった)パーツ。
徐々に、馬力で勝るかめたろう1号が少しずつ巻き返していく。じわじわと後退を余儀なくされる突撃パンダさん。
そしてタイムリミット。審判おおたさんの判定は…
かめたろう1号の優勝!!!!
ジリジリとした緊張感あふれる戦いの末、スピード vs パワーの戦いは、最終的にはパワーが制した。
これにて第1回ヘボコンの頂点は、かめたろう1号に決定したのだ。
以上が、僕が選んだ名試合12戦である。当初はただ出来の悪いロボットを見せ合って面白がるためのイベントだったのに、いざ当日になってみると、本当に息を飲む試合や、こう来たか!と驚かされる試合がたくさんあったのだ。
それでいて誰もがマジになりすぎることもなく、特に後半からは自然と、勝った人が必ず「なんかすいません」と謝る流れに。こうしたヘボと白熱の絶妙な塩梅が、あの会場の一体感を作り出していた。いやーほんと楽しかった。最高のイベントでした。
各賞の発表
さてイベントレポートの本編はここまで。ここからは各賞に輝いたロボットの紹介をしていきます。
優勝トロフィー(1500円相当)授与の様子
投票による「最も技術力の低い人」賞:コピーロボット(すずえり)
すずえりさんには小学生(ライター西村さんの子供)が空き箱で作ったトロフィーが贈呈された
審査員賞 Make: Japan賞:Tsukubot3号(前田創)
審査員賞 デイリーポータルZ賞:「日本うんこ学会」非公認!腸内細菌プロメテウス・ミラビリス号(モッサリオ・モッサモッサ)
他にもがんばったロボットたち
そして最後に、名試合紹介で登場しなかったロボットたちも、この場を借りてご紹介しましょう。
ポールダンスロボ(アニポールきょうこ)。ポールダンスの危険さを攻撃に転化したロボット。思った以上に人形が高速回転するので怖い。
素熊(しろくま)(MAKE部部員A)。世界初の飲めるロボットというコンセプトで製作されたが、もはやいつ入れた水なのか忘れてしまい、飲むには相当な勇気が必要。
ヘボ201系(赤ソファ)。きかんしゃトーマスの現代的解釈。線路はいいの?という質問に「スタビライザーをつけたから大丈夫」と答えたので見てみるとダンボールの切れ端がテープで雑に貼ってあった
コードアームズ(児玉忠大)。見た目はちゃんとしているが、一見武器っぽく見えるクレーンは物を引っ掛けるとバランスを崩して転倒する。
奥、バッファロボ(山本)は角を回転させながら迫ってくる突進型。しかし何回走らせても軌道が曲がってしまい、場外負け。 手前、全自動スープよく振るマシーン(ススガ)はラーメンのスープを振るためのロボを競技に転用。2回戦ではスープを高級な味噌ラーメンに付け替えたが特に効果なく敗退。
僕、石川のロボットは「虎盾」。虎の屏風がこちらに迫ってきて、その表面で高速回転するタイヤが相手を外に弾き飛ばす!というコンセプトだったが、正面につけたミニ四駆が重すぎ、転倒。
尖ったドリルが恐ろしいシャイボーグ エリーちゃん(伊藤健史)。モチーフはヴィーナスの誕生だがずいぶん遠くに来た感あり。準優勝の突撃パンダさんの最初の犠牲者。
人質ちゃん(ルーシュ)。最初にエントリーしたロボットでアダルトグッズの使用をとがめられたため別のコンセプトでリメイクして挑んだが、倫理面ではむしろ悪化したのではという声も。
右、羽生結弦くんがスピンを決めつつ相手を蹴散らすユズルロボ(爲房 新太朗)。足回りの弱さから、ビー玉を撒き散らしながら初戦敗退。 左は電研ロボ一号たん(電研)。後ろにコントローラーを引っ張ることで後退可。2回戦でかめたろう1号の餌食に。
右、NABE(まつながたかふみ)。試合のたびに具が変わるというコンセプトで登場するも、1回戦敗退したため具は変わらず。しかし勝者に具のにんじんを継承するという独自の生き残り術により、にんじんだけかめたろう1号とともに決勝進出。
以上、これだけバラエティ豊かなのにひとつ残らず技術力が低いという、ほんと奇跡のようなイベントであった。
最後に出場ロボット全機集合しての一枚。こうして見るとやっぱりガラクタやわー(ほめ言葉)