バスのアナウンスが日ハムの選手
千葉の地理に詳しくない人の為に説明しておくと、千葉の上の方で東京湾に面してるのが船橋で、そのちょい西にあるのが西船橋だ。千葉らしい千葉の玄関口である(浦安は千葉っぽさが足らない)。
西船橋からバスや電車で内陸にちょっと入ると、そこが鎌ヶ谷。有名な鎌ヶ谷大仏や日本ハムファイターズの2軍本拠地であるファイターズスタジアムがある。大陶器市はファイターズスタジアムの駐車場で行われていた。
西船橋とファイターズスタジアムを結ぶ京成バスの広告はファイターズの選手で埋まっていた。
西船からの移動はバス。このバス、左折や右折のアナウンスがいちいち選手の声なのだ。まず「背番号xx番の日本ハム太郎です」みたいな自己紹介をしてから「バスが左折しますしっかりおつかまりに云々」とか言うのだ。僕は野球を見ないのでありがたみが判らないが、ファンには堪らないのだろう。
着いた。野球場なんてきたの何年ぶりだろう。
盛大に行われている感じ、ある
スタジアムの入り口には大陶器市の看板がデカデカと出ており、全国から色んな焼き物が集まっているっぽい事を伺わせた。
目立つ看板。どうも、ほとんどの人は自家用車で来てたらしい。
すぐにゲートがあり、テントの下で陶器市が開かれている。広さは、ざっと東京ドーム1/30個くらいだ。野球のダイアモンドよりちょい広いくらい。
正直、「え、全国?大?」とか思ったけど、結果的にはこのくらいの広さでちょうどよかった。これ以上広くても廻るのが大変だ(お年寄りは特に)。
ほぼ全貌。
テントに入ると、当然焼き物がずらり。客層は高齢者が多い。行った日が平日って事もあるだろうが、おそらく若者の焼き物離れであろう。
安いのから高いのまで色々ありました。
奥は焼き物が多いのだが、入り口近くでは黒砂糖や漢方、七味など、年寄り好きする巣鴨的な食品が売られていた。
高齢者って、こういう「ちょっと健康に良さそうなモノ」が好きですよね。
客層が高齢者中心だからこういう食品が多いのか、こういう雰囲気だから若者が少ないのか、ニワトリと卵問題みたいだが、きっと両方なんだろう。
これ、縁日だ。
肝心の焼き物はどうか?
焼き物は、たくさんあった。全国の産地から問屋が出てきている感じで、種類が多いしお手頃価格のものも多い。
この青い皿が2000円。お洒落カフェとかで、ちんまりとサラダを盛るのに使ってそう。
昔ながらの雰囲気な陶器もあれば、モダンな色合いの磁器もあったりして幅広い。見てるだけで楽しくなってくる。
モダンな盃。酒は良い器で飲みたい。
次のページではお手頃激安な器を紹介します。値段の見方も教えてもらいました。
正統派な、織部らしい織部もあれば、織部の様式をデザイン化したモダンな織部もあった。好き好きだろうが、僕は織部らしいベタな織部の方が好きだ。
モダン織部。
こういうの見ながら古田織部と細川忠興ごっこをするのも楽しいかも知れない(へうげもの)。
「うーん、よくないですなぁ」
「このわざとらしさが恥ずかしいですな」
とか(写真の焼き物の感想ではありません)。
モダン織部のカップと水差し。可愛い。
中には豪華っぽい見た目だけど数百円、なんて皿もある。
これで400円。実家にありそうな皿だろう。
こういう絵皿、田舎の家だとお祭りとか来客用に20枚とか30枚とか同じのが揃えてあったりするだろう。実家感半端ない。
これ、絵が手書きなら400円では売られていないはずなので、おそらくプリントものの大量生産品だろう。まぁ、遠目に見ればわからない(はい、今色んな人を敵に回しました)。
これは200円。これも実家感すごい。
器の値段はピンキリであり、おおよそは「どのくらい人手が掛かっているか」で決まる。だから機械プリントで大量生産されたものは、いくら手描きの器に似てても安い。あと、絵が描いてある器なら、絵の面積が広い方が高い。それだけ描くのが大変だから。
更に、絵を描きにくい、例えばコップの内側まで書かれている様なのは高い。描くのが大変だからだ。人手の量は焼き物の値段を決める上で大事な要素なのだ(ただし現代に作られた今焼きに限る話で、古いものについてはプレミアが加味される)。
この鉢はサービス品の値段で1500円。絵の面積と、値引き前の値段予想(2500円~3000円)からすると手描きかな?
これは絵の面積は多いけどやたら安いのでプリント。しかし九谷焼きっぽい絵で可愛い。今写真見てたら欲しくなってきた。
なかには3個で1080円なんて安いものも売られていた。ちょうどどんぶりと皿2枚が欲しかったので購入。
好きに選んでいい。仕事量が多そうに見えるのを選んだ。
今時は100円ショップでも皿は買えるが、100円の皿はやっぱり100円にしか見えないし、面白い器は売られていない。
ここに来れば色んな器から自分の趣味に合うものを選べて、安ければ数百円で買える。日常使いするものだからこそ、気に入ったものを使いたい。
これで1080円は安いと思います。買いました。
曲げわっぱの弁当箱。2段で3000円~5000円くらい。でも実は樂天だとあとちょい安いくらいで買えたりする。
趣味なので和食器ばかり載せてきたが、広尾のイタリアンとかで使いそうな、カッペリーニをちんまり盛るのにちょうど良さそうな洋食器なんかもあった。
こういう変な形の皿もある。2000円前後。
次のページでは、大陶器市らしからぬものが売られていたので紹介します。
意外に緩いレギュレーション
さて、このイベントは大陶器市。とはいえ、磁器も売られていたりして、っていうか入り口では乾物とか黒糖とか売ってたし。
更に、琉球ガラスも売られていて、なかなにカオスだった。
カラフルな琉球ガラスたち。綺麗だけど、君たちを買いに来たわけではないのよね。
そしてなぜか、折れたバットを原料にした箸。もう生産していないという。その名も『かっとばし!』だ。
ファンにはたまらないんだろうか。正直わかんない。
そしてなぜかプラスチックの『エサのいらない金魚』。なんだろう、おおきな器を買って水を張ってこれを浮かべておけって事なんだろうか。
可愛いけどピクリとも動かないので結構ホラー。
有田焼の眼鏡置きなんてのもあった。老眼鏡なんか、ずっと掛けてない人は便利なのかもしんない。
眼鏡だけでなくアクセサリーの置き場としても!という説明が涙ぐましい。
コーヒーなどに入れるミルク、またはドレッシング入れとしての、猫。買った。
有田焼の壺を模した醤油スプレー。買い忘れた!
更には高級家具まで。要は、お年寄りが買いそうなものは大概売られている。ミニ巣鴨だ。
萬古焼の急須は1000円くらい。
急須には『本物の急須』ってのがある
上の写真の急須は1000円。下の写真の急須は3800円だ。なにが違うのか?うっかり、下の写真の急須を見たおばちゃんが、
「いい値段ね」
って言ったら店のオジサンが急に不機嫌になって、
「いい値段じゃないよ、これあっちの店では7000円だからね!本物の急須ってのはそういう値段なんだから。このくらいでいい値段なんて言われちゃたまんないよ!まったく、わかってないんだから」
って言っていた。厳しい。大陶器市の厳しい一面である。ちなみに、本物の急須とはなにか?
安いんだそうです、これでも。
安い急須は中に金網が入っていて、それで茶葉を漉している。が、本物の急須は網の部分まで陶器なのだ。金属の網だと金物くささが出てしまうがこれだとそれがないのだという。
金網よりも手間が掛かっているのでその分高い、という事になる。ふーん。
中を見れば本物と判る。本当に他の店では7000円で売られていたので、お得な急須だったのだ。
さっきから書いている「手間が掛かっている器は高い」って話は、実はここのオジサンに教えてもらった。
値段が書いてない器の値段を聞いたら教えてくれなくて、値段が書いてある器に掛かってる手間から予想しろ、と言われた。訓練?
手前のカップが3000円なら、後ろの器はいくらでしょう?という話。
このくらいの絵の面積で3000円なら、内側にも書かれてるんだから面積は2倍、更に内側で書きにくいからそれを加味して価格は3倍、9000円、という見方をするのだという。そこで、
「いい値段ですねぇ」
って言ったら叱られた。
「器ってのは、多少無理して買うのが当たり前なんだから。気軽に買えるのなんか入れ物だからね。今の人は器じゃなくて入れ物を買いに来てる」
って。ちなみに、前述の3個1080円の器はこの人から3分前に買っており、まさに入れ物を買った直後に軽く説教されてしまったのだった。大陶器市、勉強になるけど厳しい。
これは18000円。なるほど、絵が細かいとこのくらいの値段になるのだ。
しかしおかげで器を見る目が少し養われた。手間から器の価値を計るというのは、今まで持ってなかった価値観だ。今までは、なんとなく『良いな』と思うのは高いなーって思っていた。
三島っぽい色と図柄だが細かい仕事で15000円。
これは九谷の小皿5枚セットで1万円。1枚2,000円分の仕事量はこのくらいである。
大きくて絵が細かい壺なんかになると数十万円になる。会社の応接室にある壺なんかを勝手に鑑定してみるといいんじゃないでしょうか。
左が50万円、右が18万円。このくらいの大きさになると窯における占有スペースにもよる。場所を取る大きな器はそれだけ高い。
ヒラメの大皿38000円。大きいものは高い法則。
次のページでは九谷焼きを中心に、焼き物内の鳥を鑑賞したいと思います。
焼き物には鳥が多い
ここで焼き物に描かれている絵そのものに注目したい。中でも僕が好きな焼き物のひとつ、九谷焼に注目すると、なんだか花や鳥が多く描かれているのだ。年寄りが好きな被写体の二大巨頭である。
バズーカみたいな高級レンズを抱えたおじいちゃんを公園とかで見た事あるだろう。みんな鳥と花を撮っているのだ。
九谷焼きは、黄色とか緑がよく使われていて、大体花と鳥の絵が描いてある。これは
寿司ングレスの記事で使った皿。
サギ。サギは白いイメージがあるけど、こういう色のもいるのかしらん。周りの緑も九谷焼きの特徴。
可愛い。
正体不明。
鳥獣戯画的な、抽象化されたデザインの皿もあれば、写実的なものもある。ただ、色使いやモチーフは九谷っぽい。
ルリビタキの様な気がする。
一見これまで見てきた九谷焼とは違うが、緑と黄色の部分が吉田屋していて九谷らしさを残している。
絵は焼き物の種類にも左右されるが、陶芸家にも左右され、こういう、ふくふくしたスズメを描く作家さんもいる。
スズメの花瓶。膨らんだスズメが可愛いじゃないか。
もしくはこういうモダンで可愛いお皿なんかもあった。同じのが樂天で似たような値段で売られている。
買いました、これ。
重厚な皿もあればポップな皿もある。多種多様な商品と多種多様な売り子さん、それが大陶器市の魅力かも知れない。
なんだろう、このフクロウらしきなにか。
フクロウですけど、なにか?
特に安いわけではない
こういう感じの『大なんとか市』って、えてしてデパートなんかで買うよりお得に買えるんじゃないかと思いがちだけど、実は値段で言えば、貼られている値札がカタログに載ってる定価だったりする(あとで調べた)。だから、その値札を線で消して赤文字や赤札でセール価格と言っているもの以外は、ここで買ってもよそで買っても値段は同じだ(定価販売のは値切れる可能性があるが)。
ただ、実物を手にとって選べるのはいいし、品揃えは確かにすごいと思った。最初に狭いと思った規模も、半日程度で廻るにはちょうど良い広さだった。
たまに「わかってない」とか言われてめげたりもするけれど、そういう垣根の低いコミュニケーションを取りながら普段使いする器を探すのも、たまにはいいんじゃないでしょうか。
次回は2015年2月21日から2週間、大宮第2公園で開催されます。結構しょっちゅう、色んなとこで開かれてるみたいです。