特集 2014年6月4日

岐阜で焼き物に萌えてきた

青織部のうながっぱ。
青織部のうながっぱ。
織部焼という焼き物がある。黄色っぽい地肌に緑色の釉薬が掛かっていて、茶色や黒で変な絵が描いてある焼き物だ。

その野暮ったさが好きで、デパートの陶器売り場なんかで見かけては『いいなー』なんて思っていた。

そんなある日、織部の本場は岐阜であることを知った。土岐市と多治見市である。行っちゃう?行っちゃうか?

行ってきました。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:銅像の目を光らせたら禍々しくなった

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

織部焼ってこういう感じです

言葉で説明してもよくわかんないだろう。百聞は一見にしかず。持っている織部焼のなかで一番織部っぽい皿の写真を見ていただこう。こういう感じだ。
焼き物に詳しくなくても見た事くらいはあるだろう。歪みがない現代的な織部である。
焼き物に詳しくなくても見た事くらいはあるだろう。歪みがない現代的な織部である。
特徴的なのは、緑釉(緑色になる釉薬)と、鉄釉(鉄を使った釉薬)による変な絵である。大体いたずら書きみたいなクォリティだ。

地肌は桃山時代の陶器である黄瀬戸に通じるやや黄色掛かった色をしている。

じゃあ織部はみんな緑色なのかと言えば、黒織部なんてのもある。
釉薬の掛け分けと変な絵が織部。でも黒い。そして高い。25万円!
釉薬の掛け分けと変な絵が織部。でも黒い。そして高い。25万円!
では織部の条件は色ではなく、釉薬の掛け分けと変な絵なのかと言えば、それも違うらしい。全部緑色の『総織部』なんてのもある。

ちなみに、色分けで言えば緑色の織部は『青織部』で黒いのが『黒織部』。ややこしい事に『織部黒』なんてのもあり、もはや織部ってなんなんだ!とキレる寸前だ。
織部な皿達。緑一色なのは総織部。手前の黄色が多めなのも織部である。黄瀬戸(全体的に黄色い陶器)っぽくもあるが織部だ。
織部な皿達。緑一色なのは総織部。手前の黄色が多めなのも織部である。黄瀬戸(全体的に黄色い陶器)っぽくもあるが織部だ。
細かく書くとものすごく長くなってしまうのでかなりはしょるが、

・緑釉が掛かってる。
・形が歪んでいる。
・鉄釉で変な絵が描いてある。
・色んな釉薬や技法が組み合わさっている。
・黒織部と織部黒の違いは、変な絵が描いてあるかどうか。

こんな感じの焼き物を織部様式というってことでいいんじゃないかと思う。条件に欠けがあっても、見てなんとなく『織部っぽい』のが織部って事でいいだろう(投げやり)。
緑釉の葉っぱと鉄釉で表現した枯れ。果たしてこれは織部なのか織部でないのか。
緑釉の葉っぱと鉄釉で表現した枯れ。果たしてこれは織部なのか織部でないのか。

岐阜の土岐市に行ってきました

織部については大体わかっていただけた気がするので話を進めて、岐阜の土岐市に行ってきた。

東京から名古屋まで夜行バスで行って更に電車で1時間半くらい。『やきもの観光都市』という看板が駅にあった。都市?とも思ったが、焼き物好きにはたまらん町って事は確かだ。
正直、遠かった。
正直、遠かった。
電車を降りると駅前に大きな焼き物があった。さすがやきもの観光都市。
水指だそうだ。銘は『時雨』。
水指だそうだ。銘は『時雨』。
まずどこに行くのかといえば、『織部ヒルズ』である。元の名前は美濃焼卸商業団地だそうだ。ヒルズというだけあって、実際に山の上にあるのでバスで行く事にした。
バスに描かれてる模様が織部っぽい。いっそ緑色でペイントすればいいのに。
バスに描かれてる模様が織部っぽい。いっそ緑色でペイントすればいいのに。
コミュニティバスだけあってあちこちに寄り道しながら、地域の人を乗せながら織部ヒルズを目指す。地元のおばあちゃんが運転手さんと気軽に話していた。

「明日は志野田茶太郎の着ぐるみが来るってね。10周年やから。」

なんて言っていた。志野田?茶太郎?
着いたぜ、織部ヒルズ。
着いたぜ、織部ヒルズ。
東京を出て10時間、ようやく織部ヒルズに着いた。次のページでは織部ヒルズを散策します。
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いきなり織部

バスを降りるといきなりやぐらが建っていて、根元の石垣部分が焼き物だった。模様的にも織部である。黒織部のやぐらだ。銘は『織部櫓』。そのまんまだ。
石垣っぽいけど焼き物タイル。
石垣っぽいけど焼き物タイル。
道には織部ヒルズの旗が掲げられてたりする。
織部ヒルズの旗はちょっとすすけて穴が開いてたりした。
織部ヒルズの旗はちょっとすすけて穴が開いてたりした。

道の駅が織部だらけ

織部ヒルズに着いたらまず行くべきは道の駅『志野・織部』だろう。志野ってのは志野焼の事で、真面目に説明すると長くなるのだが、赤めの地肌に白い釉薬が掛かった焼き物の事だ。
道の駅の中。商品のほとんどが焼き物である。
道の駅の中。商品のほとんどが焼き物である。
普通、道の駅っていうと地域で取れた野菜とか肉とか、そういう地産地消的な品揃えだったりするのだが、ここは概ね焼き物である。値段も品揃えも幅広い。
モダンな織部皿。660円。
モダンな織部皿。660円。
ちょっと良い感じの織部縄目小皿。1575円。
ちょっと良い感じの織部縄目小皿。1575円。
豚が3頭くっついた器があった。かわいい。
豚が3頭くっついた器があった。かわいい。
普通に焼き物が大多数なのだが、織部のマグネットとピンバッチもあった。実を言うと、これを買いに土岐まで来たのだ。
通販では買えないので現地に行くしかない。
通販では買えないので現地に行くしかない。
地元陶芸家による手作りだそうで、模様がちょっとずつ違う。磁石が埋め込み式でないのが残念(裏にぺたっと貼ってある)だが、これがあれがいつでも織部と一緒だ。

志野・織部の公式サイトに通販のページがあるのだが、そこではこのマグネットとピンバッチを売っていなかった。なのでここまで来た次第です。
これは買いです。アド街なら薬丸印の新名物になってるね。
これは買いです。アド街なら薬丸印の新名物になってるね。

高い茶碗も売ってる

なかには高価な茶器も売られていた。ガラスケースに入れられたそれらは大体数万円する。
これは志野。6万3000円となかなか高価。
これは志野。6万3000円となかなか高価。
茶碗1個6万円か・・・。他にも織部らしい織部の茶碗などが並んでいた。
奥の黄色いのが黄瀬戸の茶碗。手前はみんな織部。右は黒織部。色は黒いけど変な絵と歪んだ形が織部である。
奥の黄色いのが黄瀬戸の茶碗。手前はみんな織部。右は黒織部。色は黒いけど変な絵と歪んだ形が織部である。
左から黒織部、青織部、鼠志野。青織部は緑釉が少ないし形も綺麗だが絵が織部っぽい。灰色の志野焼は鼠志野という。
左から黒織部、青織部、鼠志野。青織部は緑釉が少ないし形も綺麗だが絵が織部っぽい。灰色の志野焼は鼠志野という。
織部の湯飲みになるとぐっと価格が下がる。が、7000円弱。
織部の湯飲みになるとぐっと価格が下がる。が、7000円弱。
この辺の茶碗には手が出ないし、まだ1軒目。これから他のお店も廻るのだ。ぐっと堪えて買わないでおいた。

直売所を巡ろう

織部ヒルズには陶磁器の卸売り問屋が数多く集まっているのだが、個人への直売をしているところも多い。片っ端から廻ってきた。

安くて品揃えが半端無く、まさに陶器好きの極楽だった。
地図。半分くらいの会社で直売してる。
地図。半分くらいの会社で直売してる。
直売してるお店の前には看板が出てます。謎のキャラと共に。
直売してるお店の前には看板が出てます。謎のキャラと共に。
普通の食器屋さんという雰囲気のお店もあれば、どう見ても倉庫で入りがたいお店もあった。値段は定価の3割引き~5割引き程度。食器の定価ってなんなんだろうなって気持ちになる。
焼き物の価値が判らなくなってきた。
焼き物の価値が判らなくなってきた。
定価の半額、2650円(税別)だったのはこの器である。実際の価値は判らんが気に入っているのでいい。可愛いし。
定価の半額、2650円(税別)だったのはこの器である。実際の価値は判らんが気に入っているのでいい。可愛いし。
ここは作家による織部のお店で値段はちょっと高め。だがすごく良くて買いそうになった(実際に買ったのは安いのとか上の写真の箸置きとか)。
ここは作家による織部のお店で値段はちょっと高め。だがすごく良くて買いそうになった(実際に買ったのは安いのとか上の写真の箸置きとか)。
この辺の皿だと200円~500円くらい。安いのも嬉しいが、種類が半端ないのもすごい。
この辺の皿だと200円~500円くらい。安いのも嬉しいが、種類が半端ないのもすごい。
織部だろうがなんだろうが380円である。買った。
織部だろうがなんだろうが380円である。買った。
完全に倉庫です。こういうとこもあります。
完全に倉庫です。こういうとこもあります。
各お店を廻りながら気に入った食器を1枚、2枚と買い、まとまったところで送ってもらうことにした(お店にもよりますが、頼めば送ってくれます)。

後日届いたのはこんな器達。やはり織部が多い。安いのは200円から、高いので2500円くらいだ。全部で2万円くらい。
気に入った陶磁器に囲まれる生活って良い。元々持ってた、気に入らない食器は全部捨てた!
気に入った陶磁器に囲まれる生活って良い。元々持ってた、気に入らない食器は全部捨てた!
次のページでは焼き物にまつわるゆるキャラなどを紹介します。
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ゆるキャラも陶器になる

前のページにしれっと出てきた器っぽいゆるキャラにお気づきだろうか。名前を『ちゃきちゃきトッキー』という。織部ヒルズのキャラクターである。

あちこちに置かれていてトッキーユビキタス状態であった。
ショーウインドウにあったり。
ショーウインドウにあったり。
テーブルに置かれていたり。
テーブルに置かれていたり。
逆さになってるトッキーも。本体の下には水抜きの穴が開いている。
逆さになってるトッキーも。本体の下には水抜きの穴が開いている。
手作りっぽく1個1個形が違う。
手作りっぽく1個1個形が違う。
そこらの切り株にも乗ってたりする。野良トッキーである。
そこらの切り株にも乗ってたりする。野良トッキーである。
なんだろう、この野良感。
なんだろう、この野良感。
最初は珍しくて写真を撮っていたトッキーも、あまりにそこら中にあるので慣れてしまった。もはや扱いとしては野良猫みたいなもんである。

織部ヒルズには野良トッキーがたくさんいる。
消失点に向かってトッキーが並ぶ。
消失点に向かってトッキーが並ぶ。

志野田茶太郎という犬

立体物は見られなかったが、志野田茶太郎という、焼き物と犬が合体したゆるキャラもいる。こちらは道の駅『志野・織部』のキャラクターだそうだ。

そう、1ページ目でおばあちゃんが言ってたのはこいつの事だ。
器と犬のキメラ。
器と犬のキメラ。
実は僕らが行った翌日が志野・織部の開館10周年だったそうで、茶太郎の着ぐるみが登場したのらしい。その日は別の予定があったので見られなかったが、ネットに動画があった。

なんかもう、色々すげぇ。

くろたん

最も謎だったのはこのキャラ。くろたん。である。なんつーか、恐い。『くろたん
岐阜東濃アートツーリズム』
で検索しても情報が出てこないのも恐い。
日本一恐いゆるキャラ、くろたん。むしろゆくるないキャラ。
日本一恐いゆるキャラ、くろたん。むしろゆくるないキャラ。

うながっぱ

土岐のお隣、多治見も焼き物の街なので観光に行ったのだが、多治見のゆるキャラもなかなか強烈だった。

鰻とカッパの融合体である。
キャラデザはお馴染みのやなせたかし先生である。
キャラデザはお馴染みのやなせたかし先生である。
多治見にはうながっぱ専門のショップまであった。
多治見にはうながっぱ専門のショップまであった。
立体にするとよく判らないが、絵だとどう見てもやなせたかし先生である。先生、仕事しすぎ。

パッパショップのショーウインドウには子供の手作りっぽい立体物なんかもあった。
なんで鰻とカッパなのか。
なんで鰻とカッパなのか。
河原には石で出来たうながっぱ像があり、その向こうにはうなぎ屋さんである。うながっぱ!逃げてー!
うながっぱの危機。
うながっぱの危機。
トッキー同様、うながっぱもあちこちにあった。岐阜はどうもゆるキャラ過剰である。

今度は焼き物のうながっぱ。まさかの緑釉、総織部うながっぱである。うなぎ+かっぱ+織部。地元の名物を全て混ぜちゃったのだ。
身長80cmくらい。でかい。
身長80cmくらい。でかい。
黒目とまつげの鉄釉が流れて泣いてるように見えるのが恐い。
21世紀、織部はここまで進化した。
21世紀、織部はここまで進化した。

織部とカッパ

多治見は街の真ん中を庄内川が流れていて、それでウナギとカッパが名物なのだと思う。そして名物と名物が融合し、おりべ公園ではやっぱりおりべとカッパが融合していた。
公園の名前が書かれているプレートは総織部である。
公園の名前が書かれているプレートは総織部である。
おりべかっぱ公園。その名前そのまんまに、おりべ焼のカッパが鎮座していた。
鉄釉が多すぎませんか。
鉄釉が多すぎませんか。
こういう立体物で鉄釉は鬼門な気がする。だって、茶色が流れてどうも汚れに見えてしまう。藻みたいだ。
評価しづらいっす。
評価しづらいっす。
カッパのメスは子だくさん。確かに織部ですが。
カッパのメスは子だくさん。確かに織部ですが。
無慈悲な融合とでも言ったらいいだろうか。あれもこれも一緒にしちゃう感じとか、数的に過剰な感じがすごい。実家の母親ってたまに過剰な事をしがちだろう。それと近い物を感じる。

最後のページでは土岐と多治見で見つけた、そこも焼き物なのか!みたいなものを紹介します。
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土岐市美濃陶磁器歴史館に行きました。
土岐市美濃陶磁器歴史館に行きました。

展示物の撮影は出来なかったんだけどね

土岐市の陶磁器博物館。中には桃山時代の織部やら志野やら、いわゆる『名物』が数多く展示されていた。中にはちょっとビックリするような陶器もあったのだが写真は撮れなかった。

でも何気ないとこに織部があったりして面白かった。入り口の取っ手とか。
入口の取っ手が総織部でした。
入口の取っ手が総織部でした。
土岐市の駅前オブジェは志野焼の壺である。なんか頭が出てるのがモダンアート。
白い長石釉がまぶしい。
白い長石釉がまぶしい。
そして多治見の放置自転車禁止の看板。これも焼き物で、色が濃すぎる気もするが織部であろう。
織部な看板。
織部な看板。
こちらは織部ではないがやはり焼き物である。全てが焼き物の街、それが土岐と多治見なのだ。
焼き物多すぎ。
焼き物多すぎ。

あふれ出る織部

疲れたので入ったパン屋さんで飲めるコーヒーは織部のカップに入っていた。もう、これだけで美味しそうに見えてしまう。
このカップ欲しい。
このカップ欲しい。
そこで売っていたロールケーキの名前は織部ロールである。でも織部っぽい要素はあまり無い。
どこら辺が織部なのかは判らない。
どこら辺が織部なのかは判らない。

17世紀のトトロ

大分とっちらかった感のある本稿だが、最後に蛇足を承知で紹介しておきたい写真がある。

これは土岐市美濃陶磁器歴史館で展示されていた、17世紀の香炉蓋である。様式としては志野織部だが、造形はどう見てもトトロである。
写真は博物館で売っていた資料集より引用。
写真は博物館で売っていた資料集より引用。
トトロはやはり、古来日本にいたのだ。

焼き物、良い

焼き物の鑑賞と購入を目的として土岐市と多治見市を刊行してきたわけだけど、他にも桃山時代の窯跡や古墳なども見てきた。それらはすごく地味で、味わい深い遺構だった。
日本全国、よそに行けば観光地なのだ。なにもない町なんてない。これからも焼き物を軸にした観光をしていきたいと思いました。次は九谷に行きたいな。
日本全国、よそに行けば観光地なのだ。なにもない町なんてない。これからも焼き物を軸にした観光をしていきたいと思いました。次は九谷に行きたいな。
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