本棚を見せてもらうということ
この取材を進めるにあたって、かなりたくさんの人に「本棚見せてください」とお願いした。最初は10人20人余裕だ、くらいに考えていたのだけれど、何度か続けて断られたあたりから(これはもしかしたら数集めるの大変なんじゃないのか)と理解した。
みんな本棚見られるの嫌なのだ。
確かにうちの本棚とか、あんまり人に見せられる感じじゃない。
わが家の本棚。
人に頼んだ手前、まずは自分ちの本棚から見せていく。
僕は通勤時間が長いということもあり、本は数読む方だと思うのだけれど、読んでしまった本には特に執着がないので月に10冊くらいまとめ買いしては同じく10冊くらい紐でまとめてリサイクルに出してしまう。読むのは小説中心、あとたまに雑誌とか。
なので何かの参考にしたいと思ってふせんを貼ったりした本以外は、基本的に本棚に残らない。
とはいえこれはひどい。
ごちゃっと積まれている本はきっとまだ読んでいないストックである。昭和40年男、っていう雑誌が目立つが、これはマブチモーターの特集が入っていたから懐かしくて買った。
この他にもダンボールに詰められたまま押し入れに放り込まれている文庫本がこの何倍かあるのだけれど、それはもう本棚ではないので今は開けない。
このへんは実家の本棚と同じだ。
おお、これは確かに恥ずかしいぞ。別の部屋に整然とビジネス書ばかりが収められた背丈くらいの本棚があるのだけれど、ということにしておいてもらいたい。ないけど。
「本棚見せて!」とお願いしたところ「裸を見られるより恥ずかしい」と言った女性がいたのも理解できる。やはり本棚というのはプライベートの不可侵領域に築かれた自分の城なのだろう。
しかしそれがわかってより一層他人の本棚に興味が沸いてきた。
各章では最初に本棚が出てくるので、その持ち主がどんな人物なのか、プロファイリングしながら読み進めてみてください。
本棚を見るとその人がわかる
紙面の都合で載せていない人も含め、今回かなりたくさんの人の本棚を見せてもらうことができた。
年をとるにつれてきっと本棚の中身も大きさも変わっていくと思うんだけど、やっぱりその人の本棚にはその人の個性がつきまとっていて、知ってる人が見たらその人の分身みたいなことになっているんじゃないだろうか。
10年とか20年後に自分の本棚がどうなっているのか、楽しみですな。
この企画はジーリサーチの「Insight x Inside」にインスパイアされてはじめました。人んちの部屋をインタビューと一緒に見て回ることができます。
かつては有料配信していた人んちの部屋取材記事ですが「いまならメルマガ登録で無料で見られます!(ジーリサーチ担当者)」とのこと。得!部屋にも人格あるよね。
file No.1 「データの載っている本が好きなんです」
一つ目の本棚はこちら。
天井までびっしりと詰まった本棚が窓や梁を避けるようにして壁一面に設置されている。背より高い本棚は対面するとなかなかの迫力、今回のインタビューの中でも最大規模である。
マンガが3割、その他分類しきれない書物たち。
辞書類だけでもかなりの量ある。
とにかく雑多。芋づる式に知識を手繰り寄せていった結果、次々と新しい宇宙をひもといてしまった、そんな印象である。本棚から持ち主が途方にくれている様子すら伝わってくる。
いったいどんな持ち主なんだろう。
持ち主の西村まさゆきさん。
「え、本多いですか?」
本棚の持ち主は当サイトでも書いてくれているライターの西村さん。主に地図が好き。
「天井までの本棚は3~4年前に友達にあつらえてもらいました。地震でも倒れなかったですよ。でももう一杯になっちゃったんで空いてる壁に増やしてもらおうかと思ってるところです。」
一目見て絞り切れていない感じがひしひしと伝わってくる。しいて言うならどんな本が好きですか。
「辞書とか時刻表とか地図とか、とにかくデータが載っている本が好きなんです。郵便番号簿とかもう消えちゃった国が全部載ってる本とか、もちろん図鑑も好きですね。」
これはきっと学校の図書館よりもおもしろいだろう。
グラシン紙に包まれている部分はいわく「セットで20万円くらいする」高いマンガ。
今買っておかないとこの世から消えちゃう
--時刻表と地図とかって古くなったら見ないじゃないですか。
「違うんですよ、地図も辞書もなんですけど、新しいのが出ると古いのがもう見られなくなっちゃうでしょう。いまはネットでも見られるんですけど、あれって常にアップデートされて最新版しかないですから。だから昔のデータは僕が買って持っておかなきゃこの世から消えちゃうんですよ。」
「辞書なんて版が変わると解釈が変わったりして面白いんです(ごそごそ)。たとえばほらこの新明解の国語辞書の動物園っていう部分の解釈、当時はクレームがついて新版では書き換えられているんです。おもしろくないですか。」
言われてみれば確かにおもしろい、でもそれを語る西村さんの方がおもしろい。
「だから本棚っていうか資料庫的な存在ですかね。自分で整理できないから小説とかはなるべく買わないようにしてるんです。」
確かに本はデータ、本棚は資料室だと考えるとなかなか整理できないのもわかる。それを自分ちに置こうと思うかどうかは別だけど。
file No.2 「誰かが持ってきたり、ふといなくなっちゃったり」
続いての本棚はこちら。
本の裏にもう一層隠れているので、見える範囲の倍の本が入っていることになる。
背の高さまである大きな本棚に前後二層にわたって本が詰め込まれているのでそうとうな量である。
この本棚の他にも3か所の本棚に同様に本があふれていた。内容は小説が4割、専門書が4割、あと2割は絵本や子どもたちの本、といったところだろうか。
出産、子育て関連の専門書が多い。
小説は文庫ではなくてハードカバー。
中心部の一番取り出しやすい場所に専門書が2段に渡って置かれていることから、興味の中心は仕事なのだろう。それはわかるが、その他の棚の守備範囲がとにかく広いのだ。
ドストエフスキーら古典文学から角田光代さんよしもとばななさんらの新刊、聖書まで。かなり使い込まれた子どもの絵本も多い。小さな書店にまぎれこんだようなバラエティである。
この本棚の持ち主は助産院を営む斎藤さん。
助産師斎藤さん。
「基本的にわたしの本棚ではあるんだけど、助産院用に買ったものもあるし、あとお客さんや子どもたちが持ってきては置いていってくれるから、正直ぜんぶがぜんぶ興味あるってわけじゃないかしらね。」
本棚は斎藤さん自信が経営する助産院のリビングに置かれているため、院をおとずれる妊婦さんやその家族が自由に読むことができるようになっている。
「出産とか子育てとかって専門書ももちろんあるけど、最近はマンガで入る人が多いみたい。私はマンガは買わないんだけど、出産の時に読んだらよかったから、っていってうちに置いていってくれるお客さんが多いから、おかげでいろいろ揃ってますよ。」
「いつのまにかいなくなっちゃう本があるから」と最近作った貸し出しノート。
「週7日間しごと」という斎藤さんに本を読む時間なんてあるのだろうか。
--助産師さんの仕事って常に忙しそうな印象があるんだけれど、本を読む時間ってあるんですか。
「朝の4時~6時くらいまで、妊婦さんと赤ちゃんが起きてくるまでが自分の時間ですね。そこで好きに本を読むの。」
--読むのは小説が多いですか。
「小説。新しいものから古いものまで。ドストエフスキーは悪霊だったか白痴だったか、どの話なのかわかんなくなることあるけど、あの登場人物が目の前に現れるみたいな瞬間があるじゃない、そこが好き。」
僕も「カラマーゾフの兄弟」を何度も読み返しているので、登場人物に乗り移られそうになるその瞬間はなんとなくわかる。
「昨日も夜中の12時過ぎまでお産があったから、そのあとちょっと寝て、それでもやっぱり4時に起きたわよ。」
開かれた本棚。斎藤さんのところにやってきた人たちがみんなで作り上げた、そんな本棚である。
file No.3 「仕事の前にテンション上げるために開くかな、本は」
次は先に人物を紹介したい。
江藤海彦くん、古くからの友人である。今回は先に職業を明かさないので本棚を見て彼が何をしている人なのか推測してもらいたい。
いい商店街のある町に住んでます。
手前がキッチン、奥が仕事場。本棚はちょうどその中間に位置している。
ファッション、写真関連の雑誌がきれいに並べられているかと思えば
文庫本は場外。
その優劣がわかりやすい。
「雑誌は仕事の資料だね。何かアイデアとか発見があるんじゃないかって、もうほとんど見ないんだけどなんとなく捨てられずに取ってる感じ。」
「何かあったらここだけは持って逃げたい。自分の作品とかアイデアスクラップ、あと技術的な資料とか。」
仕事関連の本や資料はかなり選んであるべき場所に置かれているように見える。対して趣味の文庫だとか雑誌類はわりとぞんざいに積まれていたり。メリハリがあるというか、序列があからさまというか。
そんな彼の職業はカメラマンさんでした。
海彦くんは僕と同じ時期に沖縄で暮らしていたことのあるカメラマンさんである。本棚と同じで、好きなことには労を惜しまない、ただ興味のないことにはとことん無関心。
--本ってよく読むの?
「波があるね。読むときはものすごく熱心に読むけど、仕事忙しかったりして読まない時はまったく。」
これおれも同じ写真集持ってる!って思ったら「このへん安藤さんにもらったものだよね」と。そうだったか。
--やっぱり写真関係の書籍が多いね。これっていつ見るの?
「腰を据えてっていうよりも、撮影に行く直前にテンション上げるために手に取ったりするかな。棚に入っている書籍はほとんど仕事に直結してる資料だね。小説とかは旅行に行くときに買うくらいかな。」
--撮影現場ってどんな雰囲気なの?
「ドラマとか映画の現場はさ、ほら撮られ慣れてる人が多いからやりやすいだろうって思われがちだけど、やっぱり人間相手じゃない。撮りたい人がたまたま機嫌悪い日だってあるよね。」
--相手が機嫌悪かったらどうすんの?
「2分で終わらせて!とか言われることあるんだけどさ、逆にこっちがそれでいいの?って聞きたくなるよ。ベテランの役者さんほどそういうこと少ないかな、ちゃんとしてるっていうか、カメラマンの先にあるものを理解してるんだと思う。」
ここからカメラマンあるあるが続くが、それはまた別の機会に特集させてもらいたい。
file No.4 「どこをとってもビジネス書」
次の本棚の持ち主は僕が旅行中に出会った人なんだけど、この人もかなりの個性派である。本棚もやっぱり他にない感じだった。
まず住んでいるところがすごい。
見せると場所がわかっちゃう感じのところに住んでる。
東京タワーが大きく見える、都内でも一等地である。僕みたいな小汚いのがうろうろしてると捕まるんじゃないかと恐縮する雰囲気。本棚見せてもらう前に気おくれがすごい。
早く着きすぎたので一度マンションのエントランスの前を通りすぎて、目の前にある坂を登って下って3分間時間を潰し、ようやく気を落ち着けてインターフォンを押した。
そして現れた本棚がこちら。
いろいろな物が効率的に配置されている印象。
内容は9割方ビジネス書。
背の高さより高い本棚は、ブースごとにインデックスが貼られて整理されていた。どこをとってもビジネス書である。しかも「入門!」とか「サルでも分かる」みたいなやつではなく、本気でなに言ってんのかわかんないやつだ。そんな徹底したビジネス本棚の持ち主がこちら
ザ・ビジネスマン。中村さん。
外資系コンサルタント、中村さん。会社名は公表できないが、口に出すのも恐ろしい超誰でも知っている会社である。
「こうやって見ると真面目に見えるでしょう」
中村さんは絵に描いたようなビジネスマンなのだけれど、どこか気さくでまったく鼻につく感じがないのがすごい。前にワイン飲みながら10時間くらいトランクス(下着)の通販について語り合ったことがある。
「本はたくさん読むようにしていて、新規のプロジェクトに入るたびにがさっと関連書籍を10冊くらい買ってきて読み込むんです。基本的にクライアントの方がその業界に詳しいので、追いつくためにはやはり本が効率いいんで。」
「事例」の棚にナニワ金融道が一冊紛れ込んでいたのを見逃さなかった。
コンサルってなんなんですか?
--中村さん、そもそもコンサルって何する人なんですか。
「手っ取り早く言うと、経営判断を動かしていくための業務、ですかね。周辺の状況を総合的に分析して、経営層に対してそれを資料とか作って噛み砕いて提案をして、たぶんこっちが正しいだろうと思われる方向に動かしていくんです。そういうのって事実だけを細切れに伝えてもわかってもらえないので、こうこう、こういう理由でこういうことが起きているので、整理してみるとこういうことですよ、って順を追って伝えることが大切なんです。」
--お、おう。
明らかに「お前分かってないな」という受け答えをする僕にも、中村さんは丁寧に説明してくれる。話を聞いた後は、わかっていなくてもどこかわかったような気分になるのだ。もしかしたらそれこそがコンサルタントのスキルなのかもしれない。
今度中村さんの会社とブレスト会やる約束してきたからデイリー関係者は覚悟しておいてほしい。
file No.5 「本棚は自分を振り返るのにちょうどいい」
お次の本棚はこちら、はっきりいって次も濃いぞ。
哲学、芸術、文明、そんな雑多な「重い」本が多数。雑誌「風の旅人」は定期購読。
ジャズ、憲法、一貫してドキュメンタリー。
写真集、建築、絵画。タイトルだけでは何を言っているのかわからない本ばかりである。
隙間なくつめ込まれた大量の本たち。内容含め、本棚から発せられる質量がすごい。前に座ると押しつぶされそうである。
どんな怖い人が出てくるんだろう、とお思いだろう。実はこんな柔らかい人たちです。
森夫妻。
旦那さんは写真家、奥さんは日本語教師という森夫妻。二人とも僕の長年の友人で、バカが付くほど親切でお人よし、このハードコアな本棚からは想像もできなほど柔らかい人たちである。
今回は棚に入りきらないほどの本と写真関係の機材があふれる旦那さんの部屋でインタビューをさせてもらった。壁にはキャロルのポスターが裏打ち(台紙に貼られた状態)して飾ってある。
--そのピンクのジャージ、ヤンキーみたいでかっこいいですね。
「ああこれ?古着屋で500円。」
「ちがう、300円!(妻)」
--本に囲まれた部屋ですが、本棚ってどういう存在ですか。
夫「なんだろう、ふっと何か考えたり思い出したり、自分を振り返りたい時にざっと見返すかな。でももうこれ以上増やす場所がないからさ、今はほとんど図書館で借りて済ましてるよ。」
確かに本棚は自分の好きな本が集まった場所なので、自分のこれまでを振り返ったりするにはちょうどいいのかもしれない。森さんはよくフェイスブックとかで面倒くさい自論を展開しているのだけれど、あれもこの本棚を振り返りつつ発せられた言葉だと思うと非常に納得がいく。
file No.6 ほぼ職場の棚と言っていい
続いては日本語教師をしているという森家奥さまの本棚を見せてもらった。
--けっこうキレイにしてるじゃないですか。
「もっと事前に言ってくれたらもう少しなんとかするんだけどさ、直前に言うから。」
今回の取材、アポは直前じゃないとおもしろくないのだ。余裕があるとみんな本棚片付けちゃうから。だから「本棚見せてください!」「いつ?」「今から!」が今回の取材の基本スタンスだった。それでだいたい断られたけど。
旦那さんの部屋と対照的にとてもコンパクトにまとまった本棚。
--本棚の位置づけは?
「ぜんぶ仕事の本だね。机自体が仕事場。勤務してる職場に自分の棚がないからさ、毎回全部家から持って出勤すんの。だから資料とかコンパクトにまとまってないと困るわけ。」
--個人のというか趣味の本は持たないの?
「趣味のはここだけ!」
ここだけ趣味!あとはぜんぶ仕事!
「小説とか、読みたい本は図書館で借りる。買わない。だって置く場所ないしさ、仕事の本だけでも毎年どんどん増えるから油断できないの。」
語学の教材は毎年アップデートされるので必然的に増え続けるのだとか。絵本も教材。
このスペースに絶対に収めて一冊たりとも外には出さない、という強い意志を感じる本棚だった。
彼女は前に政府系の貿易振興の仕事をしていた頃からの知り合いなのだけど、全てにおいて無駄がなく、スマートに人の倍働いているイメージだった。本棚とちょっとかぶる。
file No.7 「人に見られたくない本はキンドルで」
次は本棚ではないんだけれど、ある人の電子書籍の中身を見せてもらった。本は本でも電子化されると本棚としての意識が違ったりするのだろうか。
モノクロのキンドルとiPadを「台湾で買った」という花柄のケースに入れて持ち歩いていた。
「電子書籍はマンガが中心ですね。小説とかは今でも紙で買うことの方が多いかなー。」
ざっと内容を見せてもらったのだが、これだけできっと僕の本棚全部よりも多い本(主にマンガ)が収められているんだろうな、と思う。全巻揃っているものは個別のフォルダに分けられていて、それ以外は「衝動買い」「青空文庫」「べんきょう」と、ざっくりした入れ物に放り込まれていた。
「衝動買い」というフォルダが。
--紙と電子書籍の使い分けは?
「最近はマンガは電子書籍にしてますね。マンガ本って電車とかで読んでるとあんまりかっこよくないじゃないですか。あと○○入門!とか初心者まるだしのビジネス書も。そういうのは電子書籍で買ってこっそり読んでます。」
確かにビジネス書なんかは(もしかしてこれは知ってて当たり前の知識なんじゃないのか)みたいな本こそ読んでおかなきゃなと思うのであって、でもそういう本って読んでいるところを人には見られたくないもので。そういうときにいいんですね、電子書籍は。
キンドルは主にマンガ、それから人に見られたくないビジネス書。
--家の本棚は?
「自分ちの本棚はわりとちゃんと人に見られてもいい本で固めてます。料理本とかこじゃれた雑誌とか。マンガとかはできるだけ表にださないようにベッドの下とかに詰め込んでますね。」
この本棚(電子書籍)の持ち主はニフティ営業部河合さん。文学部卒ということもあって、紙、電子書籍問わず、もともとたくさん本を読む習慣のある人である。彼女のようないわゆる「本好き」が電子書籍を持つと鬼に金棒、いやそれ例えが悪いな、駆け馬に鞭、いやそれも違うか。とにかく怖いもの無しであろう。
営業部河合さん。
電子書籍リーダーが一台あれば、きっと家の本棚まるごと持ち歩くことができるんだろうな、とは思う。それはきっと便利にちがいない。だけどなんとなく家に本棚がなくなるのは寂しい。休みの日の午後、片付いていない本棚の前でぼーっと座って適当に一冊二冊引っ張りだす時間の心地よさは捨てがたい。そういうゆるさも、いつか電子書籍で再現できたら、と思う。
でも河合さんの言うように、人に見られたくない本は今すぐ電子書籍にするべきですね(こういう取材があると結局見られるんだけどさ)。
file No.8 「とにかく倒れない、が優先事項」
最後はちょっと変わった本棚を持っている人の家に伺った。中身もさることながら本棚自体がちょっと面白い。
--本棚どこですか?
「これです」
--これかー!
クローゼットにしか見えないけれど、引き戸を引くとずらずらっと大量の本が現れるのだ。しまわれた状態の見た目よりもずっと収納力がある感じ。1000冊くらい入るのだとか。
本棚の持ち主はデイリーでも記事を書いているきだてさん。ご存知おもしろ文房具コレクターである。
「引っ越す前の家で、本棚から冷蔵庫から地震の時に全部倒れたんですよ。ほんとひどい目にあったので、次はとにかく倒れないやつを、と思って。」
なるほど。
「これなら奥行きがあるので倒れにくいのと、震度4くらいで棚が飛び出してくるんですが、そうするとさらに幅がでかくなって倒れないんです。」
3年前の地震で買ったばかりの液晶テレビを割っているきだてさんだからこその説得力である。とにかく倒れない、それは本棚として重要な能力なのだ。
--文房具関連の書籍ばかりかと思ったら、意外とそうじゃないんですね。
「そもそも文房具関連の書籍って世の中にそんなにはないんですよ。これでもそこそこ集まってる方だと思います。」
文房具関連の書籍は実はそれほど多くないのだとか。
--家の中で本棚はどんな位置付けですか
「最近は読みたい本っていうよりも仕事で必要だから買う、みたいなきっかけで本が増えていくことが多いかなー。だから仕事のアイデアが詰まった場所なんですかね。なんでもかんでも仕事に役立てようとしちゃって。純粋さが失われてますね。」
それはライターはみんなそうなので安心してください。
そして本棚よりも目を引くのがやはり壁一面の文房具棚。3000種以上あるコレクションは「たぶん世界でも最大規模でしょうね」とのこと。これも震災の時に全部倒れた。