コラボ企画 2014年6月16日

動くカニ看板の消費カロリーを考える

おなじみのこの看板です。
おなじみのこの看板です。
物を動かすためにはエネルギーが必要である。

エネルギーには熱とか光とか、いろいろな種類があるのだけれど、中でも熱エネルギーを測る単位、それがおなじみ「カロリー」である。

たとえばあの巨大な動くカニ看板、あれを動かすためにはどのくらいのエネルギーが必要なのだろうか。それをカロリーで表すとどのくらいになるのだろう。

計算してみました。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。(動画インタビュー)

前の記事:「トレラン」って面白いの?

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

カロリーってなんだっけ

中学くらいで習ったような気がするが、1リットルの水の温度を1℃上げるために使うエネルギーが1キロカロリーである。

今回はウイダーinゼリーとのコラボ企画なのでウイダーの180キロカロリーを基準に考える。180キロカロリーというのはいったいどのくらいのことができる量なのか。
これ1個で180キロカロリー。新しくレモン味が出たみたいです。
これ1個で180キロカロリー。新しくレモン味が出たみたいです。
カロリーはエネルギーが熱に変わった時にその量を表す単位のことである。つまりカロリーが高い食べ物、というのは体の中で燃焼されたときに、たくさんのエネルギーが発生する食べ物、ということ。

ここまでの説明がわからなくても大丈夫である。なぜならこれだけ説明しておいて、ここから先は人じゃないものについて考えるのだから。

突如でかいものについて考えてみよう

たとえばよく町で見かける動くカニの看板があるだろう。彼らは一日中休みなく動いているが、あれがもし本物のカニで、身が詰まっていて、自分の体を動かすためにエネルギーを使っているとしたら、いったいどのくらいのカロリーを消費していることになるのか。

そんなことありえないけど、ありえないことをあえて考えるのが未来の子供たちに夢を託す、ということなのではないか。
夢とか言い出した。
夢とか言い出した。

まずは人から考える

いきなりカニの看板を考えるのも難しいので、まずは同じような動きをした時の人の消費カロリーを知るところから始めたい。カニのあの動きは人でいうところのなんだろう。

ウイダーが提供しているカロリーカウンターを見ると、1分間の手洗いで消費するカロリーは3キロカロリーとのこと。ということはウイダーinゼリー1個で1時間手を洗うことができるということだ。「ウイダーinゼリーを1個飲んで1時間手を洗う」という企画もそれはそれで面白そうだけど、それはまた別の機会にして先を急ぐ。

体重と運動、時間を入力すると消費カロリーが出てきます。
体重と運動、時間を入力すると消費カロリーが出てきます。

人はわかった、カニはどうか

動くカニ看板のあの動きを、人で言うところの手洗いレベルのカロリー消費と仮定する。カニは人とはそもそもの体つきが違うので、可動部分の重さに関しては補正する必要があるだろう。体重に占める足の重さを知る必要がある。

しかしここで新たな問題が発生する。カニの体重がわからないのだ。体重がわからないと可動部分の重さもわからないし、そうなると消費カロリーを計算することができない。

どうする。机上の理論がいっきに現実についていけなくなった瞬間である。でかいカニの重さの出し方なんて教科書に書かれてないもの。


こういう時は作ってる人に聞くのが一番だろう。

というわけで日本で一番動くカニ看板に詳しい人に聞きに行ってきた。
いざ、その人の住むデンマークへ(日本の)
いざ、その人の住むデンマークへ(日本の)
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日本一のカニ看板の専門家

安城市は日本のデンマークと呼ばれています。
安城市は日本のデンマークと呼ばれています。
動くカニ看板の専門家を訪ねて愛知県安城市までやってきた。全てはでかいカニ看板の重さを教えてもらうためである。

気合入れてやってきたのだけれど、あとでライターきだてさんにこの話をすると「それ電話じゃダメだったんすか」と聞かれて殴られたような衝撃を受けた。ダメに決まってるだろうなにいってんだ。
キャラクター工房、加藤さん。
キャラクター工房、加藤さん。
加藤さんは動く立体看板の制作大手「キャラクター工房」の社長である。事務所に入るとまずでかい猪木さんが出迎えてくれる。
これ見られただけでも来てよかっただろう。
これ見られただけでも来てよかっただろう。
「うちはFRPっていう強化プラスチックで立体造形を専門にしている会社なんですけどね、中でも動く造形、ようするに動く看板が得意なんです。」

加藤さんいわく、ここキャラクター工房では、デザインから制作、施工からメンテナンスまで、一貫して自社でやってるのだとか。そういう会社は国内にそういくつもないらしい。

事務所には他にも楽しげなものが所狭しと置かれていた。
この恐竜なんて生きてるみたいだろう。
この恐竜なんて生きてるみたいだろう。
岩とかどこかで見たことがあるキャラクターの立体構造物だとか。どれもさすがに完成度高いのだけれど、版権があるものも多いので気安く写真が撮れないのがじれったい。

工房自体は滋賀県にあるので、ここでは制作作業はほとんどしていないらしいのだけれど、過去の制作物の写真を見せてもらうだけでその出来のよさに興奮した。

--動くカニ看板は立体看板の中でもやっぱり人気なんですか。

「人気ですね。これまでで一番数作ってるんじゃないかな。去年はタイにも輸出したから、いまバンコクで動いてるはずですよ。」
やっぱりカニが一番人気だった。これがその輸出したカニ。今もバンコクで元気に動いている。
やっぱりカニが一番人気だった。これがその輸出したカニ。今もバンコクで元気に動いている。
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めくるめく立体看板の世界

カニの他にもキャラクター工房の手がけた立体看板は国内外とわず枚挙にいとまがない。
「おそらく動く看板では世界最大級」という8メートルの動くオノデン坊や。
「おそらく動く看板では世界最大級」という8メートルの動くオノデン坊や。
--最近の作品で印象的だったものとかありますか。

「最近はそうだなー、バクのバクちゃんですかね、大須のタピオカドリンクのお店用に作ったんですが、これはなかなか苦労しました。」
これがバクのバクちゃん。キャラクターデザインから加藤さんの手による作品。
これがバクのバクちゃん。キャラクターデザインから加藤さんの手による作品。
バクちゃんはバレリーナみたいな足の動きに加え、なんと瞬きまでするのだ。素人が考えてもカニの足動かすよりはるかに複雑な機構を持っていることが予想できる。

「あとはあれですね、グローバル展開を視野にいれている会社なんかが発注してくれるんですが、でかい回る地球なんかもいくつか作っていますね。」
こういうの。
こういうの。
「グローバル」とか「守ろう、僕らの地球」みたいなタイトルでフリー素材として写真が売られているやつではないか。まさかあれの実物を作っちゃう人がいるとは。

「これもうちが作ってるんですよ。都内で見たことないですか。」
こ、これは!
こ、これは!
かつて渋谷センター街にあった巨大ポテトである。ここにあるのはミニチュアだけれど、マックの入り口に誇らしげに飾られていたあれも加藤さんがデザインして作ったものだったとは。これは僕らは加藤さんの作品を知らないうちに目にしているぞ。

飛び込み営業からカニ看板を作るようになるまで

今では業界最大手と言ってもいいほどメジャーになった加藤さんの会社だが、ここまで来るまでにはつらい時期もあったのだという。

--社長はどうして立体看板を作ろうと思ったんですか。

「フジカラーのニャン太くんっていうキャラクターがいて、あれのぬいぐるみを勝手に作って飛び込みでフジカラーに持って行ったのが始まりなんです。もちろん門前払いですよね。でも3回目くらいに行った時、またぬいぐるみ持って帰るのもあれだからって受付に置いて帰ったんです。それを運よく上司の人が見てくれたみたいで、あとから電話がかかってきまして。」

3回断られてもぬいぐるみ置いてくる情熱がすごい。

--でもそこから立体看板にはどうつながるんでしょう。

「その時フジカラーが『もっと大きくて店の前に置けるようなやつを作れない?』って言ってきて。もうびっくりですよね。それから必死にタウンページとか引いて立体造形ができる京都の業者を探しあてて、弟子入りみたいな形で飛び込んでいったのが今の世界だったんです。」

その時加藤さんが飛び込みで弟子入りした会社こそ、なにを隠そう動くカニ看板を最初に作った会社だったのだ。巡り巡って話題がカニ看板に戻ってきた瞬間である。

そう、今日はカニの重さを聞きに来たのだ。

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--ところで動くカニの看板って、重量はどのくらいになるんですか。

「大きさと形によりますね。タラバ、ズワイ、花咲、いろいろありますから。」
まあそうですよね。ちなみにタイで動いてるこれはタラバガニ。
まあそうですよね。ちなみにタイで動いてるこれはタラバガニ。

--カニ看板で一番大きいのはどのくらいなんでしょう。

「大きさでいうと6メートル、重量は700キロくらいですかね。FRP自体は軽いんだけど、どうしても中に金属のフレームが入るから、それで重量が増えちゃう。でもカニの場合はほとんどが甲羅の部分の重さなんですよ。7割が甲羅です。」

カウンターが700キロまで対応してるのは運命を感じる。

カウンターが700キロまで対応してるのは運命を感じる。

ちなみに平均的なズワイガニが看板と同じ状態で横幅約50~60センチ、重さ500~600グラムほどである。

これが看板クラスまで育つと体積で10の3乗倍、つまり体重は1000倍になることから、500~600キロ。なんと動くカニ看板が700キロというのは、生きてるカニから考えても非常に妥当なのだ。

いよいよ何がいいたいのかわからなくなってきたが、つまり看板クラスのカニがいたとするとそれは体重700キロで、その3割、210キロの足をバタバタさせているということだ。その時カニはどのくらいのカロリーを消費しているのか。

運動は「手洗い」を選択。
運動は「手洗い」を選択。

人間の両腕がだいたい体重の15%ほどということなので、カニの足が全体の30%ならば(足の重さはカニの種類で違うので、ここは看板の比重に習って3割と仮定する)同じ運動をしても単純に人間の倍のエネルギーを使うことになる。つまりカロリーカウンターから導かれたカロリーを倍にしたらいい。

出ました!カニの体に合わせるため、これをさらに倍にする。
出ました!カニの体に合わせるため、これをさらに倍にする。

カロリーカウンターが計算した値を倍にすると3528キロカロリー。出た!これが動くカニ看板が生きていた場合、1時間に消費するエネルギーである。

動くカニ看板、生きていれば1時間で3528キロカロリーを消費

ウイダーinゼリーを毎時約20個消費する計算である。カニ、おつかれさま。

いろんな部分で「本当か?」という思いはあるだろうが、それは実際にでかいカニが現れた時まで取っておいてもらいたい。


カニの看板がすごいのかウイダーinゼリーがすごいのか

かなりアバウトな計算と仮定が重なっているので正確とは言えないかもしれないが、桁違いに間違っていることもないと思う。つまりあのサイズのカニが手足を動かしていくためには毎日ウイダーinゼリー480個ほどのエネルギーを摂取しなくてはならいないのだ。巨大生物たいへんである。

こんど町で動くカニ看板を見たら、キャラクター工房の加藤さんとウイダーinゼリーのことを思い出してください。
ちなみにこれ1個で人間なら3キロくらい走ることができます。
ちなみにこれ1個で人間なら3キロくらい走ることができます。
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