ツリーハウスに思いつめる息子
昨年、バーベキューをするときに買ったテント。バーベキューのさいに大活躍してくれたものの、それ以来活用する機会がなく、納戸の奥にほったらかしになっていたのだが、息子はそれを出してくれという。
ツリーハウスが無理ならば、公園にテントを張って住むとまで言い出し、完全に思いつめている息子。
まあ、住まなくてもいいから、ベランダにテント張ってご飯食べたり、寝たりするぐらいで勘弁してくれないかというと、わかったそれでいいという。
あの頃の気持がよみがえってきた
さっそく、納戸からテント一式を取り出し、組み立てる。
このスペースに
こんなふうに張った
最近のテントは、ペグを地面に打ち付けたりしなくても設営できる物もあるので、ベランダのような地面の硬いところにもテントを張ることも可能だ。
テントの中のようす
写真がいきなり夜になったが、これはテント設営時の写真を、まるっと撮り忘れていたためだ。
これは……秘密基地だ!
ちなみにテントを張ってないとこれぐらいのスペース
テントの中に、いそいそとテーブルやパソコンを持ち込んでいると、子供の頃、秘密基地を作った時の、あの胸の高鳴りがむくむくとよみがえってきた。
息子に頼まれてテントを張ったものの、モチベーションに関しては、もはやこちらの方が高いぐらいだ。
尋常じゃないはしゃぎっぷり
はしゃぎすぎてピンぼけ
テントを張り終えると、待ちかねたように息子がテント内に突入した。
「ふぁ~」と声にもならない声をあげてテント内ではしゃいだあと、ここで寝る! と言い出した。
わかるぞ、その気持ち。
外をなにかで仕切るだけで自分のテリトリーが明確になって「縄張り」という感覚がめばえ、ワクワクするのだ。
このへんの意識はもう、野生動物に近い。犬が電柱にマーキングするように、子供は秘密基地を作るのだ。
鍋ができるまでテントの中で仕事した
そんな「変わったことしてるぞ」というおめでたいテンションが持続しているうちに、テントの中でやり残していた仕事を片付け、息子はiPadでYouTubeを鑑賞した。
寒さゆえか頭の方はハッキリしており、途中で眠くなることもなく、いつもより仕事が早く片付いた。
寒いなか温かいものを食べる
さっそく、テント内で食事に取りかかりたい。
テントの中といえども12月。そこそこ寒いので、鍋をすることにした。寒い中、フーフーしながら熱いものを食べる。ぜったいおいしいはず。
ベランダでテントの便利なところは、台所で調理したものをそのままテントに持ち込んで食べることができるということだ。
持ち物に制限があるようなバーベキューや登山と違って、好きに作って好きに食べることが可能だ。
ほわ~
写真がシチューのテレビCMみたいな雰囲気になってるが、鍋である。
台所で煮たものをテントに持ち込む
テントの中が狭く、カセットコンロを使うとちょっと危なっかしいので、台所でぐつぐつ煮込んだ鍋をそのままテントに持ち込んで食べた。
鍋の具材をそれぞれ取り分けると、フーフーする前に外気に触れて適温になるので、けっこう早いスピードでパクパク食べてしまう。
すぐに食べやすい温度になる
息子に、どうだ? と聞いてみたところ、おいしい。とゆってくれた。そして、自分の分を食べ終わるとそそくさと居間の方へ引っ込んでしまった。
もう飽きたか
どうやら、息子は飽きたらしい。理由は「寒いから」。
寒いのはわかる。わかるけどさぁ、早すぎねえか。そもそもお前がテント張ってくれと言い出したんじゃないのか? まだ鍋食べただけだぞ。
まあいい、テントで一晩一緒に寝るんだと息子と約束しているので、布団を敷いて寝ることにした。
せっかくなので一晩ここで寝る
ベランダのすぐ横の部屋の押入れから布団を取り出し、テントの中に敷く。外気がいくら寒くても掛け布団を厚めにかければ平気だ。
居間でiPadに興じる息子を呼び出し、一緒に寝た
おやすみなさい
夜が明けた
テントでの寝心地は、寝返りをうって布団が外れるたびに寒くて目が覚めた以外はとくに不自由もなく、心地よく眠ることができた。
むしろ頭だけ寒いのでいつもより目がぱっちり覚めたような気がする。
いかにも寝起きといった表情
布団を片付けて、きのうの鍋の残りで朝ごはんがわりのうどんを作って食べることにする。
じゃーん、うどんだぞー
息子は自分の分をたべると……
居間に引っ込んだ……
どうやら、息子はもう完全に飽きたらしい。
この後、妻に「テントいつまで出しとくの? 洗濯物干したいんだけど」と言われたのでさっさと片付けた。
片付けは息子にも手伝わせました
消防法について消防署に電話して聞いた
以上、ベランダにテントを張って子供と一緒に一晩過ごした。
このことを記事にしようと編集部に相談したところ「消防法」なるものがあるということを教えてもらった。
マンションのベランダは、例え自分の部屋のベランダであっても、避難の邪魔になるようなものを置くと違法らしい。
えー、まじか。もうテント張っちゃったよ。
これ、もしうっかり記事として公開したら、炎上して通報されて消防法違反で逮捕されちゃうのだろうか? それは困る……。
困るので、最寄りの消防署に電話して聞いてみた。
ーーあの……すみません、ベランダに物を置くと消防法違反になるという話を聞いたんですが……。
「マンションのベランダね。基本的に避難するさい支障になるようなものは置いてはいけないことになってます。例えば、避難通路や避難ハッチを塞ぐように本棚や洗濯機を置いたり、ガーデニングしたりするのは限度を超えちゃってると、そういうふうにご理解いただければ」
ーーなるほど、たとえばなんですが、鉢植えとかそういう物もダメですか?
「まあ、その辺は程度問題でね、物干し竿とか、エアコンの室外機とか、そういうものは予め避難に支障がないという判断で、使っていただくのがルールということですね」
避難経路が確保されていれば設置してもいい
「ベランダに物を一切置いてはいけない」というものでもないらしい。ここで、問題の核心部分である、テント設営の可否はどうなのか?
ーーあのー、この前……テントをですね……。
「テントぉ? キャンプで使う?」
ーーえぇ、キャンプで使うテントをですね、ベランダに張って……そのー、子供と一緒に中に入って遊んだんですけど……それもマズいですかね?
「テント張ったって、あなたそこでずーっと生活するわけじゃないんでしょ?」
ーーはい、それはもちろんです
「親子で休みの日にちょとテント張ってみようかってのが、限度を超えた使い方ってわけにはーならないよねえ」
ーーそう思います
「ベランダにテント張ったからって、それが即いけません!ってものではないですよね、常識で考えて、ね……こんな回答でよろしいですか?」
ーーじゅうぶんです! 安心できました! ありがとうございました。
ベランダにテントを張るのは、そこでずーっとテントを張って暮らすわけでなければ、常識の範囲内での使用なので、消防法的には問題ないということがわかった。
ひと安心である。
ベランダにテントは常識の範囲内で
家のベランダにテントを張るのは意外と楽しい。
ただ、外の気温の低さに比例して、テンションの下がり方も早くなるので、やってみたいという方にはもっと暖かい時期にやるのをおすすめしたい。