特集 2013年12月11日

外骨格ロボット「スケルトニクス」で昭和のギャグはどこまで再現できるか?

コマネチ!
コマネチ!
先日「Maker Faire Tokyo2013」でレポートした「外骨格ロボット」にすっかり心を奪われてしまった。

だって、歩くたびに「ガシャン、ガシャン」って音するんですよ。めちゃめちゃカッコいいじゃないですか。

そんなカッコいいロボットに、ぜひとも「欽ちゃん走り」やアホの坂田の「よいとせのこらせ」みたいな、昭和のギャグを再現して欲しいと思ったので、取材にかこつけてお願いしてみた。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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そのロボットは東大にあった

外骨格ロボットの制作をしているチームスケルトニクスに取材のお願いをしたところ、取材場所として指定されたのは東京大学駒場キャンパスであった。
東京大学の文字にビビるわたくし
東京大学の文字にビビるわたくし
待ち合わせ場所の研究室を訪ねると、すでに外骨格ロボのメンテナンスが始まっていた。
整備中の外骨格ロボ
整備中の外骨格ロボ
セッティングして装着するまでに時間がかかるのだ
セッティングして装着するまでに時間がかかるのだ
「昭和のギャグを再現して欲しい」というマヌケなお願いであるにもかかわらず、黙々と準備作業をしてくださるチームスケルトニクスのみなさんに申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになってしまう。
しかし、特に手伝えるようなこともないので、ぼーっと突っ立って見ているほかない。

ロボットの会社を立ち上げた

昭和のギャグを再現してもらう前に、まずは外骨格ロボについて詳しく話を聞いてみたい。いったいどんな動機でこんなロボットをつくろうと思ったのか?
右から阿嘉(あか)さん、白久(しろく)さん、中野さん(以下敬称略)
右から阿嘉(あか)さん、白久(しろく)さん、中野さん(以下敬称略)
──そもそも三人はどういうつながりなんでしょう?
中野「もともと、2008年の高専ロボコンで優勝したメンバーなんです」

高専ロボコンとは、全国の工業専門学校の生徒たちが、ある一定のルールに則り、決められた動きをこなすロボット制作し、その動きの正確さや早さを競うという大会のことだ。

大会の様子がNHKで放送されるのでご覧になった方も多いと思う。

彼らは2008年のロボコン沖縄高専のチームとして出場し、みごと優勝をとげたチームだったのだ。

──外骨格ロボットをつくろうと言い出したのはどなたですか?
阿嘉「ぼく……ですね、やっぱり『自分が乗ってみたいから』ってのが一番の動機ですよね」

──いつからですか?
阿嘉「2010年からですね、今ここにあるやつが試作機なんですよ」

──これが最初に作ったやつなんですか。
中野「3台作ったんですが、そのうち2台は沖縄に置いてあります、最近までは個別に受注してたんですが、規模が大きくなってきたので、株式会社を設立したんです」

──規模が大きくなってきたってのは、お金の金額とか?
中野「それもなんですが、やはり責任というのも個人で負うにはちょっと負担になってきたので……」

会社設立は今年の10月だそうで、まだできてから2ヶ月しかたってない。

なんて呼んだらいいのか?

呼び方が今ひとつはっきりしない
呼び方が今ひとつはっきりしない
──ところで質問というか確認なんですが、これ、ぼくは勝手に外骨格ロボットって言っちゃってますけど、正しくはなんて呼んだらいいんですか? 動作拡大スーツ? ロボットスーツみたいな呼称はあるんですか?

阿嘉「ロボットスーツもパワードスーツもたしか商標抑えられてるんです」

──え、そうなんですか!

中野「おそらく、勝手にそう呼ぶ程度ならば問題はないと思いますけど……」

──商品名なんかではダメでしょうね

白久「これの名前に関しては、ロボットって言葉じたい定義が曖昧なんで「外骨格ロボット」でいいと思いますよ」

名前の呼び方一つにも権利が絡み合っている、資本主義のままならなさである。

車はステージが違う

外骨格ロボット「スケルトニクス」は完全受注生産なのだが、ひとついくらで作ってもらえるのか? 気になるところだと思う。

──ちなみに、差し支えなければでいいんですけど……これ一体いくらぐらいでですかね?
白久「498万円ぐらいですね」
ヨンキュッパ!
ヨンキュッパ!
うーん、498万円。ヨンキュッパ。こんなヨンキュッパ聞いたことがない。

安いものではないんだろうな、という覚悟はしていたものの、実際に値段を聞くと自然と唸り声が出てしまう。

──そこそこ高級な車ぐらいですかね?
白久「車と比べるとそうですが、業界の中ではかなり安い方なんですよ」

中野「実際に電池で動いてるロボットっていくらぐらいするかご存知ですか?」

──ちょっとわからないです……
中野「小さいやつでも数千万からヘタするともっとするんです」

──そうなんですか!
中野「車と比べると割高にみえますけど、車を半年かけていちから作るとして、20人の人を半年間雇う。それだけで人件費が大変なことになる。さらに人件費だけじゃないから、それを考えると(200万程度で買える)車は頭おかしいんです」
──車は頭がおかしい!っておもしろいですね。

白久「車ヤバいです、例えば200万やるからプリウス作ってっていわれても、作れませんもん」

阿嘉「車は研ぎ澄まされているというか……、ステージが違う感じがしますね」

車の価格を、そんな切り口から考えたことなかった。
ようするに、資本を投入して工場で大量生産すれば低価格になるという話ではあるのだが、そういったものの値段のしくみの不思議さを、ものづくりをしている彼らは皮膚感覚として感じとっているということなのだ。
200万円で買えるけど、200万円では作れない車
200万円で買えるけど、200万円では作れない車

ではなぜ低価格なのか?

では逆に「スケルトニクス」の498万円という低価格はなぜなのか? それはロボットスーツには必ず付いているという、あるものをごっそり省いてしまったからだ。

──「スケルトニクス」にはモーターの補助みたいな機能はないんですね

阿嘉「結局、技術として難しいところがあって、人の動きを補助するほどのパワーが必要なモーターを積むと、それを動かすための電池が必要で、さらに重くなったスーツを動かすためにさらに強力なモーターをつける。さらに電池が必要……というジレンマに陥るんです……逆に、これ(スケルトニクス)はそういう機能がついてないので軽くできたんです」

中野「そこなんです、本来絶対必要だと思われていたものをとったんですよ」

ふつう、こういったロボットにはモーターがついていて、動きを補助したりしなければいけないものだと、素人のぼくでさえ思い込んでいた。でも、よく考えれば、別に運動能力の補助機能が無いロボットを作ったって構わないのだ。

中野「よく取材で『これはどんな役に立つんですか?』って聞かれることあるんですけど、そういう質問がいちばん困るんですよね」

自分たちが乗りたいもの、作りたいものを一途に作り続けている彼らにとって、そんな質問は野暮というものなのだろう。

ロボットアニメについて

これだけのロボットを制作している彼らにとって、アニメの影響というのはどの程度のものだろうか?

──やはりロボットアニメみたいなものは見ますか? 世代的にはどんなアニメをごらんになってました?

白久「アニメは見ました。世代的にはエヴァンゲリオン、劇場版が終わったかなぐらいのころですね」
やっぱりエヴァ
やっぱりエヴァ
──若いですね……TV版は見てない?
中野「リアルタイムでは見てないんですが、ビデオでいちおう見ました」

阿嘉「ぼくはそういうのは、高専入ってからですね」

中野「よくきかれるんですが、その延長で、このロボットはどのアニメに影響受けたんですか?ってご質問があると思うんですが、特に、ロボットの制作に関してアニメの影響を受けたということは無いです」

──無いんですか。

中野「でも、アニメは好きなのでよく見ます。ただ、どちらかと言うとレゴブロックのほうでガンガンあそんでましたね」

白久「アニメ見て、おもちゃ屋に行くんじゃなくて、ホームセンターに行くタイプですね」

阿嘉「家にガンプラが並んでるんじゃなくて、工具が並んでるって感じですかね、モノづくりが好きだったから、ロボットにつられてアニメも見るようになったといったほうがいいかもしれない」

きた、名言きた。
「アニメ見ておもちゃ屋じゃなくてホームセンターに行くタイプ」さすがロボコンで優勝する人は違う。
ホームセンター
ホームセンター
彼らは、ロボットアニメももちろん好きではあるのだが、スタート地点がアニメではなく「ものづくりが好きで、気がついたら自分の作ってるようなものがアニメにも結構出てた」という因果関係が逆の世界に生きている。

外骨格ロボットを見た人々の反応

──この前イベントでも見たんですが、やっぱり子供の食いつきはすごいですよね。
中野「子供はまず寄ってきますね、寄ってきますけど、一定距離以上はちかよらないですね」

白久「小5ぐらいになると寄ってこないですね、気にはしてましたけど、カードゲームか何かしてあそんでて」

──小5ぐらいになると、ちょっとこしゃまくれたところがでてくるんですよね

中野「でも、子供のおかげで手ができたんですよ」

──え? どういうことですか?
中野「最初、ロボットに指の機構はなかったんですけど、イベントで子供に『じゃんけんしたい!』て言われて、手の仕組みをつけたんです」
子供と握手する外骨格ロボット
子供と握手する外骨格ロボット
こういった細かな要望にいちいち答えて、指の仕組みを作っちゃうというのがまたすごい。

昭和のギャグを伝授

外骨格ロボットの話を聞くのにすっかり夢中になってしまい、昭和のギャグを再現してもらうために来たことをすっかり忘れかけていた。

ロボットの話はひとまずここまでにして、さっそく「スケルトニクス」にギャグを指導したいと思う。

ロボットの連続可動時間は10分程度が限界なので、その間に昭和のギャグを5つ再現してもらいたいと思う。

再現してもらう5つのギャグは……

・コマネチ!(ビートたけし)
・飛びます! 飛びます!(坂上二郎)
・欽ちゃん走り(萩本欽一)
・アホの坂田(坂田利夫)
・指パッチン(ポール牧)

の5つだ。

チームスケルトニクスの3人は全員平成生まれのため、それぞれのギャグをよく知らない。

そのため事前に演技指導を行った。
飛びます!飛びます!は顔を手の方に持っていくのが正しい
飛びます!飛びます!は顔を手の方に持っていくのが正しい
さっきまで、才気あふれる若者たちの話に圧倒されっぱなしの私であったが、昭和のギャグの演技指導で一気に息を吹き返した。
指パッチンの演技指導にも熱がこもる
指パッチンの演技指導にも熱がこもる
しかし、指パッチンの演技指導でハッスルし、何回もターンしたため息が上がってしまった。恥ずかしい。

コマネチ!

まずは、ビートたけしのギャグ、コマネチを再現してもらう。
コマ
コマ
ネチ
ネチ
楽勝である。

みごとなコマネチだ。
ただ、本当は頭を若干傾げるとそれっぽいのだけど、ロボットには首が無いので仕方がない。
ただ、本当は頭を若干傾げるとそれっぽいのだけど、ロボットには首が無いので仕方がない。

飛びます!飛びます!

続いて再現してもらったのは、坂上二郎の「飛びます!飛びます!」だ。飛行機に管制塔から離陸許可を出している。というギャグである。
飛びます!
飛びます!
飛びます!
飛びます!
どうだろうか。ただ左右に揺れているだけ。どうかすると「三瓶です」に見えなくもない。
!
このギャグは、元々コント55号のコント中で坂上二郎がとっさにやってのけた仕草が元になっているので、その部分だけ取り出して、こうやって冷静にやってみると何が面白かったんだろう? という疑問が湧いてくる。

片岡鶴太郎がやっていたモノマネが、オーバーかつスピーディーだったのは、そうやることにより、見ている側におもしろさへの疑問を抱く余地を与えないための工夫だったのかもしれない。

欽ちゃん走り

続いては、萩本欽一のいわゆる「欽ちゃん走り」だ。
だめだよー
だめだよー
こんなに頑張ったんだよー
こんなに頑張ったんだよー
ロボットは足が上がらないのでその部分はどうしようもないのだが、腕の表現の芸術点はかなり高いのではないかと思う。
ただ、本当は頭を若干傾げるとそれっぽいのだけど、ロボットには首が無いので仕方がない。
ただ、本当は頭を若干傾げるとそれっぽいのだけど、ロボットには首が無いので仕方がない。

アホの坂田

次は、アホの坂田の歩き方。
「よいとせのこらせ、よいとせのこらせ」と掛け声をかけながら歩いてくる、あの独特の歩き方である。
よいとせの
よいとせの
こらせ
こらせ
おぉ! かなりの再現度ではないだろうか?
迫り来るサイバーアホの坂田。素晴らしい。
迫り来るサイバーアホの坂田。素晴らしい。
このあと「ありがとさ~ん、あんたバカね、おほほー」までやってもらえばよかったと、いまちょっと後悔している。

パイロットの阿嘉さんは、もちろんアホの坂田の歩き方をするのは初めてだったと思うのだが、ややこしい動きを、初めてとは思えない飲み込みの早さで再現してくれた。

これだけ頭のいい人にアホの坂田のマネをさせるのは罰が当たりそうでなんかこわい。

指パッチン

最後はポール牧の名ギャグ、指パッチンである。
これも、今考えると「なにが面白かったんだろう」と思ってしまうギャグの一つではある。ただ、当時はべらぼうに面白かったのだ。
ぱっちん
ぱっちん
ターンして
ターンして
キメッ!
キメッ!
ポール牧の指パッチンが今ここに蘇った。
!
外骨格ロボットポール牧である。ロボットは指先でぱっちんできない代わりに、全身を使って指パッチンを表現してくれた。もう、それだけで十分です。

昭和のギャグは外骨格ロボットでだいたい表現できる

以上、外骨格ロボット「スケルトニクス」で表現した昭和のギャグを見ていただいた。
今回再現してもらった昭和のギャグは、動きが小さいものが多かったのだけど、パイロットの阿嘉さんの全身を使った表現でなんとか再現できたのではないかと思う。

ありがとうございました。
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