金を背景にすればなんでもそれっぽいのではないか
以前、工藤さんがやった「
わが家で記者会見」の場合も、背景の市松模様のパワーがすごかった。背後にある様式で整ったものがあるっていうのってすごいんだな。
で、さらに思った。金屏風に絵があったらもっとかっこいいだろうに、と。
なぜか本棚にこんな本が。いつ買ったのかまるで覚えていない。なぜ買ったのかも分からない。今日、この日のために買ったのだろう。
絵の入った金屏風、たとえばこういうの。池田孤邨という江戸後期の絵師による「燕子花・八橋図屏風」というものだそうだ。かっこいい。
かっこいいだろうに、というか、かっこいいかもしれないが、上記のような壇上に置かれる金屏風には絵はないものなのかな。あれは、お屋敷に美術品として置かれるものなのかな。よくわからない。
よくわからないけど、金屏風の絵ってかっこいいよねとりあえず。ってことで、ぼくも金屏風の屏風絵を作ってみよう。
作ってみよう、といっても実物を作るわけではない。いや、当サイトライターの乙幡さんあたりなら作っちゃうのかもしれないが。
まずは小さく。
最初の難関、金。
画材屋さんにて。たとえば金色の紙を貼ったら、それは金屏風に見えるのだろうか。
しょっぱな、さいしょのつまずきは「金ってどうすればいいんだ?」という点だった。
もちろん本物の金箔など買うこともできない。折り紙の金色でうまくいくかな。
「アルミ」「銅」ってあるが、ここに「金」ってあれば…と一瞬思ったが、それってようするにリアル金素材だ。金のシート。そんなものが画材屋にあるわけがない。おちつけ、自分。
金の折り紙か?とかいろいろ考えたが、その上に絵を描くことができなそうだし。
えっ、ていうか、ぼくちゃんと絵を描くつもりなんだっけ?絵、描けないよ、ぼく。(じゃあこんな試みをそもそも考えつくなよ、って話だが)
おちつけおちつけ。まずは画像で合成しよう。テストだテスト。
画像にしても金は難しい
とおちついてみたものの、やっぱり金屏風の金は画像でも難しい。
Photoshopで金の感じを表現するやり方をしらべても、みんなやたらピカピカしている。
さきほどの「琳派」の写真集を見てみる。そう、ピカピカじゃないんだよなー、あの経年した金箔のあの落ち着いた感じを作りたいんだよなー。
このとおり。おお!いいんじゃない?
素材画像販売サイトに「金屏風」というのもあったが、やたら値が張る。
いっそ、金じゃないものを金色にしたほうが「いぶし金」(っていうのかな?)に見えるのではないか。
そうおもって、コンクリートの表面風フリー素材の色を変えたものが上だ。これはいい!
かっこいいといえば、工場にきまっとる!
まあ、もうなんというか、ぼくが選ぶかっこいいモチーフなんて決まってる。工場だ。もちろん。思えば、ぼくの好きな山口晃さんも屏風絵スタイルで
素敵な絵をたくさん描いている。
ところが
切り抜くのがちょーーーーーーうめんどくさい!
いぶし金の背景に載せるには、この溶鉱炉を切り抜かなければならない。しかし、さすが工場。細かい。細かすぎる。だれだ工場にしようって言ったのは。
ようやく…切り…抜けた…!
切り抜くだけで1時間超。しかもあとで気がついたが、こんなにまじめに切り抜く必要がなかったのである。
ちなみに上の画像はちゃんと切り抜かれていることが分かるように、後ろに鮮やかなグリーンのレイヤーを配置している。この状態ですでになにかかっこいい!こういう加工はじめてやってみたので新鮮だ。
さて、金に乗せてみよう!
あ…れ…?
大胆に切り取ってそれっぽくフチつけたりしてみたものの、ぜんぜんかっこよくない。
こんなはずじゃない。なぜだ。 いままで工場には全幅の信頼を寄せていたのに。あんなに苦労して切り抜いたのに。
もう一回参考書「琳派」を見てみよう。
ははーん。
思えば、ぼくは屏風画について何も分かっていなかった。というか、今も分かっていないが。というか、屏風画どころか日本画、いや絵画全般について何も分かっていない。
上は尾形光琳「四季草花図屏風」。すてきだなあ。
まあ、それでも、「琳派」をつらつらと見る限り、足元の画面の区切り方がポイントであるように感じた。 前ページの池田孤邨のものもそうだった。
だったら、こういう工場はどうだ。
こう、浮遊した感じがポイントと見た。これでどうだ!
たぶん工場はだめなんだ
あ…れ…?
なんかだめだ。
思うに、細かすぎるのだ。ほんとうの屏風絵は筆で描くもの。ぼくがいまやってるのは写真を重ねている。要するに「絵的」なもっと細部がないもののほうがいいのだろう。
あきらめよう。工場は、だめだ。
いや、あくまで屏風向きでないというだけだよ、工場。きみの魅力はいささかも損なわれてはいないよ!
ジャンクションにしよう
これどうだ?
落ち込む必要はない。ぼくが敬愛してやまないのは工場だけではない。
ジャンクションもかっこいいのだぞ。
ジャンクションに細部がないわけではないが、工場ほどではない。これぐらいだったらいけるはずだ。
そして、どうやら屏風絵は図の部分ではなく地の部分に面白味があるとみた。つまり、モチーフの形それ自体と言うより、モチーフが金色の地の平面をどう分割しているか、図によってどう地の部分の形が現れるか、という点に面白味があるのだ。たぶん。おそらく。きっと。
だったら、この画面を大胆に斜めに切り取っているジャンクションなどはいいのではないか。
どうだ!
おお!?なかなかいいんじゃない?(大きな画像は
こちら)
これだよこれ!これがやりたかったのだ。
やっぱりかっこいいじゃないか。いぶし金をバックにすればかっこいいものはさらにかっこよくなるのだ。
かっこいいもので、もっと細かくないものはないか?あ、あれはどうだ!?
おおお!いいねえ!
コンテナターミナルの風景だ。かわいいよねえ、コンテナ。切り抜くのも簡単だったし。
ただ、いっそ地面も切り抜いちゃった方がそれっぽいかも!
おおおおおお!いいねえーー!
余白の活かし方が分かってきた。
こうなると、意味なく文字が欲しい。ほら、なんか書いてあるじゃないですか、文字が。「コンテナ」を万葉仮名的に感じで当て字して描き加えたい。そう、
暴走族の名前の湯飲みみたいな感じで。
Twitterでどのような当て字が良いかアイディア募集したところ、素敵な当て字が
続々と集まった。どれも捨てがたかったのだが、
@225ch_oco さんの「梱定納」を採用させていただくことにした。意味的にぴったりだ。
文字のバランスむずかしいなー。でもやっぱりそれっぽくなるなーいいなー(大きな画像は
こちら)
「梱定納図」に加え、ぼくのトレードマークを入れました。ほら、なんかハンコ押してあるじゃないですか、日本画って。
だんだん分かってきたので、思い切ってあれもやろう!
コンテナの相棒、キリン
通称キリン、ガントリークレーンだ。
コンテナには欠かせない、キュートなあいつ。キリンである。
これきり抜くのもすごーーーーくたいへんだった。肩凝った。そしてこのすごい3DCG感はどうだ。
コンテナに比べるとかなり細かいが、これはいけるだろう。ぼくにも金屏風選球眼ができてきた。どうだ!
いやー、至極満足。すてき。
あ、そうだ、もうこれをそのままボードに貼ってしまおう。金とかもういいや。
そのままプリントして
ボードに貼って、4等分して。
どうだー!
おお、おもったよりそれっぽい。金っぽい。
あと、つなぎ目むずかしいな。これは今後の課題だ。というか、今後があるのか。
なぜか持ってたコンテナの鉄道模型を置いてみる。かわいい。
いつか実物大を!
いろいろてきとうだったけど、小さくてもいざ出来てみると、いとおしい。かっこいい。なんだろう、この屏風欲。
次回は写真ではなくちゃんと絵を描きたい。そしていつの日か実物大に挑むぞ。