税務署が怖い
話はさかのぼって2月18日。平成24年度の確定申告が全国でいっせいにスタートした。ぼくは翌19日に税務署へ。初日に夏休みの宿題を終わらせる小学生のようなモチベーションで確定申告に臨んだのだった。
しかし、申告書を提出する前に帳簿をチェックしてもらおうと青色申告会(※個人事業主のための税に関するサポート団体。経理や帳簿の指導をしてくれる)のブースに立ち寄ったところ、児玉清似のおじいちゃんに「こんな経理じゃ駄目だ!」と、怒られてしまった。けっきょくその日は申告を諦めた。
帰宅後、すぐに指摘されたポイントは修正したものの、税務署に行くとまた清がいるかもしれない。
もう怒られたくない。
そうだ「e-Tax」を使おう
「e-Tax」がある
「e-Tax」、正式名「国税電子申告・納税システム」。インターネット経由で確定申告や納税ができるシステムだ。
これを使えば混雑している税務署にわざわざ行かなくても自宅で確定申告ができる。
自宅どころか無人島でできる。
ということで無人島行きのフェリーに乗る
税務署に行きたくないのは分かったが、なぜわざわざ無人島なのだ。という問いには、ただ一言「クールだから」と答えるほかない。
男とは時に、理屈で説明できない衝動に突き動かされるものだ。
ただ無人島に行ってみたかったというのもある
東京湾の無人島「猿島」
本島からフェリーで10分、やってきたのは東京湾に浮かぶ無人島「猿島」。横須賀からの連絡船が何便も通っていて、観光目的で上陸する人も多いので、じっさいにはそんなに無人じゃないという無人島だ。
「ザ・ビーチ」みたいなロケーション
確定申告のリミットは17:00
e-Taxは期間中なら24時間いつでも利用可能だが、無人島からの最終フェリーの都合で17時までには終えないといけない。
ぐずぐずしていられないな
たそがれてる場合じゃない
というわけでさっそく確定申告の準備にとりかかろう。まずは昨年一年間分の領収書等を整理し、経費や売り上げを細かくチェックしていく。
領収書をチェック
「スナックみき」1万5000円の領収書
「スナックみき」の領収書は経費に含まれるだろうか。ひとつひとつを吟味しながら経費の計算をしていく。こうした仕分けや計算は毎日コツコツやっておかないと、この人みたいに確定申告間際になって慌てることになるので注意が必要だ。
あと、風が吹くと領収書が飛ばされるので注意が必要だ
ビーチには気持ちいい風が吹いていて、とても快適なのだが領収書が飛んで行ってしまうと正しい申告ができない。
べつの場所で申告しよう。
猿島の奥へ
整備されたビーチ周辺から島の奥へ入っていく。すると一気に様子が変わった。戦時下の猿島は日本軍の要塞として利用されていて、今も至るところに兵舎や弾薬庫の建物跡が残っている。今にも日本兵が出てきそうな雰囲気である。
戦中の生々しい面影を伝える要塞跡
通称「愛のトンネル」。でも、ぜんぜんロマンチックな感じじゃない
これはホラーや
なぜか「愛のトンネル」と呼ばれているトンネルは名前とはぜんぜんイメージが違い、ほの暗くこわい。お化け屋敷的な意味でカップル向きかもしれないが、恋愛が成就するどころか逆に呪われそうだ。
ここを通る際、同行の安藤さんが「榎並さんの会社が潰れたらこのトンネルの呪いですね」と縁起でもないことを言ったが無視した。
さらに無人島の奥へ
トンネルを抜け、さらに無人島を進んでいくと、高台に開けた場所があり、建物が建っていた。なんでも島内を見渡す展望台で、初代ショッカーの基地としても有名な建物らしい。
ショッカーの基地にたどり着いた
ショッカーの基地はけっこうボロい
見た目からしてずいぶんと老朽化しているショッカーの基地。それにずいぶん狭い。世界征服を狙う組織の拠点としては、ややこぢんまりとした印象だ。ショッカーの台所事情はけっこう厳しかったのかもしれない。
かつてはここで、コブラ男とライダーの熱戦なども繰り広げられた
おじゃまします
風通しのいいオフィス
老朽化のため展望台に上ることはできないが、建物の内部が開放されていた。なかなか広くて快適な空間だ。風通しもいい(窓がない)し、夏はここにオフィスを構えるのも悪くないかもしれない。
デスクもあります
e-Taxの準備をしよう
さて、最高のワーキングスペースを手に入れたところで確定申告を再開しよう。
まず、e-Taxでの確定申告に必要な書類やツールを用意する。
クライアント各社からの支払い調書。つまり「売り上げ」を示す書類
経費の領収書を科目ごとに分けたファイル
ノートPC、モバイルルーターなどネット回線
住民基本台帳カード
ICカードリーダー
e-Taxを利用するためにはまず区市町村役場などで住民基本台帳カードを申請し、「電子証明書」を取得しなくてはならない。
さらに、その電子証明書を読み込むためのICカードリーダーを購入する必要がある。
このあたりの面倒くささが、e-Taxがあまり普及しない理由のひとつだろう。
セットアップ完了。いざ申告セリ
とはいえ一度セットアップが完了してしまえば、以降は毎年e-Taxでの手続きが可能となる。自宅(または無人島での)確定申告をお望みの人はぜひやってみるといいだろう。
確定申告とは?
さあ、確定申告である。個人事業主にとっては言わずもがなだろうが、会社員だと確定申告に馴染みのない方も多いだろう。その手順やルールなどを簡単にご紹介していこう。
e-Taxにログイン
住所、氏名、職業などを入力していく
会社員の場合、会社が給与から所得税を源泉徴収し、社員に代わって納めている。
僕のようにフリーな立場で複数の会社から報酬を得ている場合は、その報酬の合計額を申告。そこから経費などを差し引いた額によって正式に税額が確定する。
経費の領収書などは、一年分となると膨大な量になる。日々コツコツと整理して計算しておくことが大事だ。
このように直前で慌てて計算しているようではダメである
ややこしい経費の計算
ややこしいのは「経費」の考え方だ。経費は事業所などを使用した際に発生する「地代家賃」や、コピー用紙などを買った際の「消耗品費」など様々な科目分かれるのだが、まずはそれぞれの領収書がどの科目に該当するのかを仕分けていく。
めんどくさい経費その1/家賃
また、それぞれの科目についても細かいルールがある。例えば家賃。僕の場合は自宅を事務所として使用していたので、40%ほどは生活のためのスペースだ。経費として認められるのはあくまで「仕事のための空間」なので、この場合は家賃の60%分が経費となる。
仮に家賃が10万円としたら、10万×60%×1年=72万円が経費として認められる
めんどくさい経費その2/電気代
水道光熱費もややこしい。自宅が事務所の場合は基本的にガス代、水道代は経費として認められない。電気代は家賃同様、事務所として稼働していた時間を割り出し、それに契約ワット数などを掛けて料金を算出しなくてはならない。これが非常にめんどくさい。
エアコンも業務時間外の使用は経費にならない
めんどくさい経費その3/雑費
どの科目にも当てはまらない支出は「雑費」に振り分けられる。ただ、この雑費、広義だとどんなものでも含めることができてしまうため、「何のための出費なのか」をしっかり説明ができるようにしておく必要がある。
当サイトをやっていると、あまりしっかり説明できない出費が多いので、じつはこの「雑費」の扱いが一番困るのだ。
例えばこれ。とあるワインバーの領収書は→
次にこれ。何やらスプレーなどを大量購入→
画材屋の世界堂で絵具などを購入→
お菓子屋でホールケーキを購入→
このように、どの領収書もいちおう記事を書くための必然性がある出費なのだが、とにかく説明しづらいものばかりだ。「iPhoneを石化するためのスプレー代です」なんて言っても、税務署員には怪訝な顔をされるだけだろう。自分のヌードはさらにヤバい。
ただ、説明は難しいが、必然性がある出費ならば経費として計上することは可能だ。
「無人島でハンバーガーを食べました」 ←これは必然性がないのでNG
去年僕が当サイトで書いた記事は約30本。どれもこれも、いずれ劣らぬ説明のしづらさだ。
その全てに、上記のような理由づけをしていかなくてはならない。今回の確定申告でも、この作業に一番時間がかかった
不思議な領収書と格闘
いよいよ入力
経費の計算が終了したら、あとはe-Taxの手順に沿って該当項目を入力していく。
念のため検算
確定申告中です
売り上げや経費以外に、昨年支払った社会保険料の額なども入力する。この分も控除の対象になるので、払った額が多いほど税金は安くなる。
すべての入力を終え、いよいよ「送信」をクリック。果たして無人島からの確定申告は受理されるのか。
受理されました
うむ
かくして、おそらく日本初の無人島での確定申告は成功した。猿島はネットもつながりやすく、e-Taxを利用するには最適な無人島といえるだろう。
あとの心配事といえば、来年の確定申告で当記事の経費が認められるかどうかくらいである。
来年も来ます
「確定申告はお早めに」と毎年言われるが、夏休みの宿題ですら最終日にまとめてやっつけていた我々からすると、それは無理な相談である。
無人島ならレジャー気分で確定申告できるので、ものぐさな人にもおすすめである。ぜひ、来年は参加者を募り、無人島確定申告ツアーを実施したいと思う。