特集 2013年3月1日

ヘビの抜けがらで金持ちになりたい

ヘビが苦手な人はご注意ください
ヘビが苦手な人はご注意ください
私ごとだが先日、会社を作った。会社にとって何よりも大事なもののひとつといえばまず資金だろう。「経済社会にとってお金は血液だ」と、最近テレビで誰かが言っていた。そう考えると、弊社は設立間もなくしてすでに貧血ぎみということになる。

これからバンバン儲けて株式を上場し、プロ野球チームを買収するためにはお金に愛される体質にならなくてはならない。

そこで、金運アップの効果があるといわれる「ヘビの抜けがら」を捜して見ることにした。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

お金は大事だ

会社といっても社員が僕ひとりしかいないので、まともな会社と呼べるかは分からないが、法律的には社長ということになる。安定的に利益を上げ、会社を長く続けていくのが社長の務めだとすれば、金運はないよりあったほうがいい。
やってきたのは世田谷区にあるヘビ坂
やってきたのは世田谷区にあるヘビ坂
東京都世田谷区の成城は都内でも屈指の高級住宅街として知られている。その高級住宅街の一画にある豊かな森。近隣ではヘビの目撃情報もある。

今回は山奥ではなく住宅街のヘビをあえて狙う。なんせヘビはヘビでも、お金持ちの捨てたゴミを食べ、お金持ちの吐いた息を吸っているヘビなのだ。その抜けがらは金運の御利益もすごそうだ。
(ヘビの?)飛び出し注意
(ヘビの?)飛び出し注意
ここまで読んで「ヘビ? 冬眠中でしょ」と思った方もいるかもしれない。僕もその可能性はうすうす感じているが、冬に桜が咲くこともある昨今。春を待ち切れずに冬眠から目覚める、気合いの入ったヘビもいるかもしれない。早朝誰よりも早くオフィスに来てバリバリ働くビジネスマンのような、意識の高いヘビが理想だ。
「ヘビか?」と思ったらコブラの頭みたいな葉っぱだった。世田谷の葉っぱは緑が濃くて、いかにも健康そうだ
「ヘビか?」と思ったらコブラの頭みたいな葉っぱだった。世田谷の葉っぱは緑が濃くて、いかにも健康そうだ
ヘビや~い
ヘビや~い
昔、世田谷の地主が大蛇を退治したという伝説に由来する、とかではなく、おそらくクネクネしてるからその名が付いたと思われる「ヘビ坂」
昔、世田谷の地主が大蛇を退治したという伝説に由来する、とかではなく、おそらくクネクネしてるからその名が付いたと思われる「ヘビ坂」
お、ヘビか?(写真左下)、いやナワだ
お、ヘビか?(写真左下)、いやナワだ

ヘビいない

抜けがらを欲っするあまり、何でもヘビに見える病が発症し始めた。本当に欲しいのはヘビじゃなくて金だけどな。
わいは金持ちになるんや!
わいは金持ちになるんや!
お母はんにごっつい家を建てたるんや!
お母はんにごっつい家を建てたるんや!
阪神タイガースを買うたるんや!
阪神タイガースを買うたるんや!
金持ちになったらしたいことを思い浮かべながらヘビを探すが、欲望にまみれた男の前になかなか幸運は訪れない。なお、ぼくが金持ちになったら阪神タイガースを買収して、本拠地を家の近所の江戸川区球場に移転させるつもりである。オーナーの威光をフル活用して、現場にどんどん介入したい。
一見、思慮にふけっている風
一見、思慮にふけっている風
それにしてもなんて緑豊かな場所なんだろう。ここは本当に世田谷か? 場所によっては屋久島といっても差し支えないほどのロケーションだ。
へ~、これが屋久杉かー(違います)
へ~、これが屋久杉かー(違います)
ここは本当に新宿から電車で15分なのか?
ここは本当に新宿から電車で15分なのか?
あまりに壮大な自然に同行してくれた安藤カメラマンのテンションも上がる。安藤氏いわく「あまりにもカッコイイので、ドラマチックモードで撮影しました」との写真がこれだ。
日本屈指のアドベンチャーおじさんこと藤岡弘、に肉薄する一枚
日本屈指のアドベンチャーおじさんこと藤岡弘、に肉薄する一枚
消息不明になる直前の一枚、という雰囲気もある
消息不明になる直前の一枚、という雰囲気もある
ちなみに肝心のヘビは見つからなかった。冬眠という古い習慣を打ち破るホリエモンみたいなヘビの出現を期待したが、まだまだヘビ界は保守的だった。
しかし、春はもうすぐそこまでやってきているようです。写真は草むらにひっそり茂るゼンマイの姿
しかし、春はもうすぐそこまでやってきているようです。写真は草むらにひっそり茂るゼンマイの姿
その頃、安藤さんはバイオトイレに興奮していた
その頃、安藤さんはバイオトイレに興奮していた

ヘビ料理の店へ

といわけで野生のヘビは諦め、飼育ヘビにターゲットを移すことにした。しかし、残念ながらヘビを飼っている知人が周りにいないため、上野にあるヘビ料理専門店「救命堂」を訪ねた。
店構えは普通の定食屋のよう
店構えは普通の定食屋のよう
軒先には定食屋風の暖簾がかかり、パっと見ではヘビ料理のお店とは気づかない。うまいカツ丼が食えそうな外観だ。

しかしショーケースによくよく眼を凝らすと、するどい牙でこちらを威嚇するシマヘビの姿が。年季が入ったビルの全体から、ここで絞められてきた何千匹、何万匹というヘビたちのただならぬ怨念が立ちこめているような気がした。
歴史を感じさせる「うえのヘビヤ」の看板
歴史を感じさせる「うえのヘビヤ」の看板
さて、ここからはヘビが苦手な人、食事中の人はお気をつけていただきたい。生々しいヘビの写真が続きますので、心して御覧ください。





…さて、覚悟はできましたか?
いきなりで恐縮ですが、シマヘビの瓶詰です
いきなりで恐縮ですが、シマヘビの瓶詰です
ここは食材はヘビのみという正真正銘のヘビ料理専門店だ。シマヘビやハブ、マムシなど、様々なヘビが店内の至るところで息をひそめている。いつ足元をガブリといかれるか、そんな若干の緊張を感じつつ、ご主人にインタビューを試みる。
この道45年のご主人。横にあるのはシマヘビ15~20匹分の粉末。体力増強等の効能があるという
この道45年のご主人。横にあるのはシマヘビ15~20匹分の粉末。体力増強等の効能があるという

ヘビに咬まれて亡くなった仲間も

なんでもこの店は上野で100年続くヘビ料理界でも屈指の老舗。ご主人が若い頃は都内にも60カ所程度のヘビ料理屋があったというが、今では数件を残すのみだという。ご主人いわく、後継者不在で店をたたむ仲間だけでなく、ヘビに咬まれて亡くなった方もいるらしい。命がけの商売なのだ。じつはご主人も2回ほど毒蛇に咬まれているとか。幸い命に別条はなかったが、1週間想像を絶するほどの痛みにのたうち回ったそうだ。
そんなご主人も、もうすぐこの店をたたむつもりだという
そんなご主人も、もうすぐこの店をたたむつもりだという
せっかくなので、活きのいい生のヘビを見せてもらうことにした。
沖縄から届いたばかりの新鮮なハブだという
沖縄から届いたばかりの新鮮なハブだという
いまごろは野生のヘビは冬眠している時期だが、沖縄等に棲息するハブは一年を通じて活発な活動を見せている。そんな現地から届いたばかりの活きのいいハブを見せてくれるという。
無造作にフタを開けるご主人
無造作にフタを開けるご主人
ご主人!
ご主人!
あのマッチョな安藤さんが「ヒャッ」とのけぞる程のハブに、まったくひるむことなく向き合うご主人。まるで武芸の達人のような、華麗な手さばきだ。当サイトを代表する生き物ハンターの平坂さんも、50年後はこんなおじいちゃんになるのではないかと思った。
まるでウナギみたいにカジュアルにヘビを扱うご主人
まるでウナギみたいにカジュアルにヘビを扱うご主人
そうだ、本題はヘビの抜けがらだった。ご主人、抜けがらってありますか。
あるよ、ホラ
あるよ、ホラ

滅多に出ない上モノ

ご主人が慣れた手つきで棚から取りだしたのは岐阜県産シマヘビの抜けがら。ぼくのように抜けがらを欲しがる人もけっこういるらしく、いい抜けがらが手に入った時は保管してあるという。
お値段2000円也
お値段2000円也
「これは滅多にとれない上モノだよ」とご主人。何でも抜けがらは脱皮の際に切れてしまうことが多く、一匹丸ごと形を残した状態のモノは珍しいらしい。これは素晴らしい金運が期待できそうだ。
上モノ
上モノ

ハブに咬まれ変形してしまったご主人の指
ハブに咬まれ変形してしまったご主人の指
持ちかえった抜けがらは早速会社の一番高い場所に祀り、毎朝一礼してから仕事を始めるようにしている。僕が社長のはずなのに会社を乗っ取られた気分だが、これで金運が上がるなら仕方ない。

ちなみに気になるヘビ料理だが、ヘビの肉は他の爬虫類同様、鶏肉のような味がするという。気になったが食べるとせっかくの御利益が消えるどころかたたられそうなのでやめておいた。
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