特集 2012年8月26日

クリームチーズは既にチーズケーキであると主張する

チーズケーキ
チーズケーキ
チーズケーキは種類が多い。焼いたり、冷やし固めたり、膨らましたり、蒸したやつもある。いわゆるデコレーションケーキのような「ザ・ケーキ」に比べて自由が許されているように感じる。

そんなチーズケーキというものの開放感に身を任せ、私などはもはやクリームチーズの状態ですでにチーズケーキといっても良いのではと常々思っているのだ。

その思いを、今日は主張したい。
1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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これはチーズケーキです

クリームチーズというと、ケーキ作りに使う塊のもののイメージを持つ方も多いと思う。

修練を積めばそれもチーズケーキに見えてくるとは思うが、今日はまず個包装になったブロック型のクリームチーズについて、これはチーズケーキであるとあなたを説得しよう。

スーパーなどでおなじみのKiriのポーションタイプに代表されるクリームチーズ。こういうやつである。
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私には、これがチーズケーキに見えるのだ。

見えるだけではない。この状態で食べてもなお私には「うむ、チーズケーキじゃ」と思えるのである。

チーズケーキへの道

とはいえ、いきなりクリームチーズの四角いのを皿に乗せて「はい、チーズケーキ」といわれても大人は苦笑だし子どもは泣くだろう。

実は私も昔はそうだった。鍛錬を積んでクリームチーズがチーズケーキであると認識するまでに高めたのだ。

一朝一夕で習得できるものではないかもしれないが、段階を追っていけば納得はしていただけるかもしれない。

これならどうだろう。
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ビスケットの「チョイス」を敷き、上にブルーベリージャムを乗せた。

見た目としてはこれはもう完全にチーズケーキだ。

さらに食べてみていただければ分かると思うのだが、味もびっくりするほどチーズケーキ、種類でいうとレアチーズケーキなのである。
視点を上げたほうがそれっぽく見える(クリームチーズの平べったさが分かりにくくなる)
視点を上げたほうがそれっぽく見える(クリームチーズの平べったさが分かりにくくなる)
大切なのは、手で食べずにフォークで食べること。手を使うと一気にリッツパーティー(カナッペ?)になってしまう
大切なのは、手で食べずにフォークで食べること。手を使うと一気にリッツパーティー(カナッペ?)になってしまう
これでもどうしてもチーズケーキではないと邪念が入ってしまう場合は、ビスケット敷いてとジャムを乗せたあと、1晩冷蔵庫で寝かせるとさらになじむので試してほしい。

さて、自転車でいうとここまでが補助輪付きだ。

この状態をチーズケーキだと思えるようになったら補助輪を片方はずそう。

つまりこういうことだ。
!
ビスケットを敷いただけである。

見ようによっては、むしろチーズケーキに近づいたと思うかもしれない。そう思えたらチャンスだ。間髪いれずに次の段階へ移行する。
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レーズンを乗せた。

チーズケーキというよりも一瞬レーズンバターのように見えてしまうのだが、そこは気力で乗り越えて欲しい。

味もなかなかにレーズンバターチックだが、食べなれるほどにこれがチーズケーキであると思えてくるのである。

ここまできたら、もう一度約束の地に帰ろう。

見える景色が、きっと違ってくるはずである。
!
……どうだろう。

あれ? なんか会場静かになっちゃったかな。

まだクリームチーズが既にチーズケーキであるということについて納得がいかないという方に、続いては理屈の面から主張を続けていきたい。

チーズケーキの工業製品のような一面

もう一度、冷静に考えてみよう。チーズケーキというのは独特だ。

洋菓子店でケーキに囲まれていると、明らかにひとり気を吐く地味さである。

しかし地味だから人気が無いかといえばそうではなく、むしろ大人気。ひとつのお店が数種類のチーズケーキを扱うことも珍しくない。専門店だってある。
当然チーズケーキだけのレシピ集だってたくさんある
当然チーズケーキだけのレシピ集だってたくさんある
地味だけど人気の「ケーキ」といえばホットケーキやシフォンケーキだって同じなのだが、地味といよりもシンプルさ、そのフォルムの静けさにおいてチーズケーキは手加減がない。
大変にシンプル
大変にシンプル
生クリームのデコレーションやランダムに盛られたフルーツなどデコラティブな美しさを追求しているように見えるケーキが多いなか、チーズケーキときたらもはや美意識が工業製品志向なのである。

特に冷やし固めて作るレアチーズケーキは工業製品感がすごい。
消え入りそうな静寂
消え入りそうな静寂

そこへ、Kiriだ

そして、そう、工業製品のような美しさを持つ食品といえば、あの四角いクリームチーズだ。
冒頭でご紹介したKiriのポーションタイプ
冒頭でご紹介したKiriのポーションタイプ
高原に突如現れる白い長四角。モノリスだね
高原に突如現れる白い長四角。モノリスだね
豆腐か?! でなけりゃなんだ? そうか、この工業製品のような美しさ、さてはチーズケーキか。チーズケーキなんだな?

という思考回路の働きが、もはやこのタイプのクリームチーズをチーズケーキとしか思わせないのである。
理屈で理解するクリームチーズのチーズケーキ性(1)
チーズケーキのように美しいのだから、クリームチーズがチーズケーキでもいいじゃないか

チーズの形をしたチーズケーキの存在

さらに、これを言ってしまうとここまでの主張はいったいなんだったんだという商品もこの世の中にはある。

チーズの形をしたチーズケーキである。
チーズケーキです
チーズケーキです
何さ、よくある6Pチーズじゃないのさ、とここでチャンネルを変えないでおくれよ、ねえ、だんな! これ、まごうことなく正真正銘のチーズケーキだ。
これ! むしろ昔はこういうのよくあったよね
これ! むしろ昔はこういうのよくあったよね
私が子どもだった頃はむしろこんなチーズケーキを、ちゃんとしたチーズケーキよりもよく見た気がする(キャンディーのような包装のベビーチーズ的な「チーズケーキ」もあった!)。
6ピースタイプのプロセスチーズと同じ売り場に今も生き続けている「チーズケーキ」の一形態
6ピースタイプのプロセスチーズと同じ売り場に今も生き続けている「チーズケーキ」の一形態
スーパーではこういったものを「チーズケーキ」とはせずに「チーズデザート」とにごした商品名を打ち出しているメーカーもあった。もしかしたら減少傾向のチーズケーキかもしれないが、こういったチーズケーキが市場にあるということは心強い。

ちなみにこの手のチーズケーキは味は酸味があってうす甘いものが多い。

いわゆるチーズケーキとは一線を画しており、ここでもやはりチーズケーキというものの懐の深さにうならされるばかりだ。
右がチーズケーキなら、左もチーズケーキで問題ないはず
右がチーズケーキなら、左もチーズケーキで問題ないはず
理屈で理解するクリームチーズのチーズケーキ性(2)
チーズの形をしているチーズケーキだってあるのだから、クリームチーズがチーズケーキでもいいじゃないか

逆に、チーズケーキっぽいチーズの存在

さて、ここでひとつ抑えておかなければならないことがある。

チーズの形をしたチーズケーキが実在するのとは逆に、完全にケーキのような姿をしたチーズもまた存在するのだ。

以前、編集部 石川が形状からケーキの境界線を探るという野心的な記事を書いていた(「みんなケーキになあれ」)。何かとケーキについてとやかく言いたいサイトなのである。

その際、カマンベールチーズのケーキ性を指摘していた。
このように三角に切って上に何か飾るとすべてが「ケーキ」になるのでは、という記事
このように三角に切って上に何か飾るとすべてが「ケーキ」になるのでは、という記事
ちなみに上の写真につけられたコメントは一言、

「チーズじゃねえか!」

であったが、しかし実際一見してチーズケーキにしか見えないようなチーズもあるのだ。

特にマンステルというチーズが、私が探した中ではやばかった。調達が間に合わなかったので画像検索でどうか見てください。
理屈で理解するクリームチーズのチーズケーキ性(3)
チーズって、そもそもすごくケーキっぽいのだから、クリームチーズがチーズケーキでもいいじゃないか

ファンデーションのケーキの存在

あの四角い形のものを「ケーキ」と呼びたくなる理由として、もうひとつ大きいのが化粧品のファンデーションだ。

舞台用化粧品などに多いようだが、固形の水溶きファンデーションなどを「ケーキファンデーション」と呼ぶことがあるのだ。

しかも、この手のファンデーションのサイズが絶妙にクリームチーズ的なのである。
このサイズ感
このサイズ感
化粧品を使わない方にはポカーンな話になってしまい恐縮だが、この感覚は、クリームチーズを見て「ケーキだ!」と思うのに間違いなく一役買ってくれるはずだ。
完全に一致である
完全に一致である
理屈で理解するクリームチーズのチーズケーキ性(4)
あの形を「ケーキ」と呼ぶ文化があるのだから、クリームチーズがチーズケーキでもいいじゃないか

クリームチーズがあるからチーズケーキがある

なんだか混沌としてきてしまっただろうか。

ここで最終打だ。味の話をしよう。

そもそも、チーズケーキというのは数あるチーズのなかからクリームチーズを使って作られるものが圧倒的に多い。
塊で売っているクリームチーズはパッケージにチーズケーキのレシピが載っているものが本当に多い
塊で売っているクリームチーズはパッケージにチーズケーキのレシピが載っているものが本当に多い
チーズケーキは中世の時代からあったそうなのだが、広く食べられるようになったのはクリームチーズの開発があったからこそだという(米クラフト社のクリームチーズ販促キャンペーンがきっかけで広まったという説もある)。

レシピを見ても、特に濃厚なものだとクリームチーズの分量がやたらに多い。クリームチーズと砂糖をよく混ぜて固める(だけ)というレシピすらあるらしい。

もうほとんど、クリームチーズはチーズケーキなのだ。

これを最初から言えばよかったのか。
理屈で理解するクリームチーズのチーズケーキ性(5)
チーズケーキはそのほとんどがクリームチーズでできているのだから、クリームチーズがチーズケーキでもいいじゃないか

本当のチーズケーキとクリームチーズ食べ比べ

よし。ここまできたらガチンコ勝負である。

本物のチーズケーキとクリームチーズを食べ比べてみようじゃないか。

普通にレアチーズケーキ作ったる。
材料(プラス、砂糖とゼラチンも必要でした)
材料(プラス、砂糖とゼラチンも必要でした)
100均では型がシリコンのものしか売っていなかった。現代!
100均では型がシリコンのものしか売っていなかった。現代!
改めて、クリームチーズの分量の多さよ(でも砂糖も多いね。しかも素精糖しかなかったね)
改めて、クリームチーズの分量の多さよ(でも砂糖も多いね。しかも素精糖しかなかったね)
できた。……チーズケーキだ!
できた。……チーズケーキだ!

わあ、チーズケーキだぁ

レアチーズケーキはむかし好きで何度か作ったのだが、大人になってスキルアップしたのか当時作ったものよりずいぶんとおいしく感じた。

わあ、チーズケーキだぁ~とうれしくなってしまう。うん、これがチーズケーキだよね、そうだよね、そりゃそうだ。

では、これとクリームチーズを比べてみよう。
見た目は土台があるかないかの違いだけ
見た目は土台があるかないかの違いだけ
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……。

しょーーーっっぱ!

え? ちょっとまって、Kiriのあのクリームチーズってこんなにしょっぱかったっけ。あれ? あれれれれ?

面白いくらい「こんなはずでは!」というリアクションをしてしまった。どうも作った方のチーズケーキが視界に入ったせいで脳が甘みを期待してしまったようだ。

まだまだ私も修練不足か、いや、しょっぱいチーズケーキだって世の中にはあるということだ。そうだ。そうだ!

以上、貧乏チーズケーキの紹介でした

と、長々と夢のような話にお付き合いいただきありがとうございました。

冒頭の、クリームチーズにビスケットを敷いたりジャムやレーズンをトッピングする食べ方は、私がチーズケーキが食べたいけれど材料がないときにやっていた食べ方なのです。

実際そうして食べている間に私にとってはクリームチーズはチーズケーキだということになってしまったのでした。

初めて普通のチーズケーキと食べ比べたら、心のチーズケーキはあんまりしょっぱくてびっくりしました。
一番よくやるのは、クリームチーズにジャムだけ乗せる食べ方(ビスケットを常備していないため)
一番よくやるのは、クリームチーズにジャムだけ乗せる食べ方(ビスケットを常備していないため)
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