さて、これらのかっこいい風景はなぜかっこいいのか。それは「都市土木」ならではなのだ。
仕事にはないけど大雨に対してはバッファがある
なんの話かというと、調節池の話だ。
調節池とは、大雨で川が増水したときに氾濫しないように一時的に水を溜めておくための施設。つまりバッファだ。
全国にいろいろな形式でたくさんの調節池があるのだが、今回は都心のど真ん中で現在工事中の「古川調節池」を見せてもらったので、そのかっこよさをご覧いただきたい。
調節池とは、大雨で川が増水したときに氾濫しないように一時的に水を溜めておくための施設。つまりバッファだ。
全国にいろいろな形式でたくさんの調節池があるのだが、今回は都心のど真ん中で現在工事中の「古川調節池」を見せてもらったので、そのかっこよさをご覧いただきたい。


うひょー!かっこいい!


見上げるとこんな!すてき!


横のトンネルを入っていくと、こんな!うひょー!


トンネルの途中で180度見渡した様子。こんなバッファぼくもほしい!

詳しい説明は次ページ以降することにして、まずこのかっこよさをご堪能いただきたかった。どうだろうか。
仕事でもこんな頼もしくかつかっこいいバッファがほしいものだ。
仕事でもこんな頼もしくかつかっこいいバッファがほしいものだ。


さらに奥へと進むと…


その先にはこんなものが!うわー!


見とれちゃいました。


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「都市土木」って響きがかっこいい
この古川調節池、場所はどこにあるかというと、東京の渋谷区と港区をまたがる古川という河川の地下にある。ご存じ渋谷駅の脇でひょっこり顔を出すあの川の下流部分だ。
ぼくがおもしろいと思ったのは調節"池"という名前だが、その形はまるで川だということだ。その延長3.3km。
ぼくがおもしろいと思ったのは調節"池"という名前だが、その形はまるで川だということだ。その延長3.3km。


東京都「古川地下調節池の位置図、横断図、縦断図」より→こちら(PDFです)


東京都建設局パンフレット「古川地下調節池」の表紙より。にょろり。

「なんでこういう形なんですか?」
「用地を新たに確保する必要がないからですね」
今回案内してくださったのは東京都第一建設事務所 工事課長の林さん。
「用地を新たに確保する必要がないからですね」
今回案内してくださったのは東京都第一建設事務所 工事課長の林さん。


あわせて行われる護岸の整備も、すぐ脇に建物などが建っているのでたいへんそうだ。

そうなのだ。この記事の結論を言うと「都市の中で大規模な工事やるのってほんとたいへん!」ということなのだ。
なんせまず土地がない。そしてすぐそばで生活が営まれている。すでに先行するものや事情がたくさんあるので制約が多い。前任者がやった仕事に機能追加するかのようだ。って喩えたら、うわー!やりたくねー!
でもその結果、川の地下にもう一本川、っていうふしぎにすてきなことが実現するのだから、担当者でないぼくとしては「ナイス都市土木!」ってところだ。傍観者はいつも気楽だ。もうしわけない。でもかっこいのでしょうがない。
なんせまず土地がない。そしてすぐそばで生活が営まれている。すでに先行するものや事情がたくさんあるので制約が多い。前任者がやった仕事に機能追加するかのようだ。って喩えたら、うわー!やりたくねー!
でもその結果、川の地下にもう一本川、っていうふしぎにすてきなことが実現するのだから、担当者でないぼくとしては「ナイス都市土木!」ってところだ。傍観者はいつも気楽だ。もうしわけない。でもかっこいのでしょうがない。

けっこう氾濫してたのだな
さて、いろいろ四苦八苦しながらの工事だが、この調節池が望まれるのにはもちろん理由がある。ここらへん、けっこう水害にあっているのだ。


高度に市街化すると雨がいっきにどっと川に流れ込む。(東京都建設局パンフレット「古川地下調節池」より)


麻布十番の駅付近って、過去に浸水しているそうだ。(東京都建設局パンフレット「古川地下調節池」より)


今回の古川ー渋谷川に流れ込む「流域」を示したもの。この地図にはおもわず「おおー!」って声を上げた。これはほぼ分水嶺を示しているのではないか!?おもしろい!(東京都建設局パンフレット「古川地下調節池」より)おもしろくないか?おもしろいよね!

よく言われることだが、水田や森などがなくなると、いわゆる「保水力」が低下するので、雨が一気に河川に流れ込む。しょうがないので、調節池を作って、それらの替わりをさせるわけだ。
いわば、このトンネルは水田や山林の保水機能部分だけを具現化したものなのだ。
大規模に開発された都市につきもののものなので、全国に調節池はたくさんある。そう、以前記事にしたあの外郭放水路だってそうだ。
いわば、このトンネルは水田や山林の保水機能部分だけを具現化したものなのだ。
大規模に開発された都市につきもののものなので、全国に調節池はたくさんある。そう、以前記事にしたあの外郭放水路だってそうだ。


ずるいぐらいかっこいい首都圏外各放水路(「500トンの柱が59本!」)

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デイリーやっててよかった!
で、なんでぼくが今回こうやって工事の様子を見せてもらうことができたのかというと、それは以前書いた同じ東京都による事業、新橋の「環状2号線」建設現場の記事「都心地下25mの大ジャングルジム」の成果なのだ。



こんな風景が広がってたんだよ!

本記事と同様「かっこいー!」しか言っていない記事だったが、東京都さんには好評だったようで、「また見に来ませんか?」とお誘いいただいたのだ。
デイリーやっててよかった。みんなも入ってみたい工事現場があったらデイリーのライターになるといいよ。
デイリーやっててよかった。みんなも入ってみたい工事現場があったらデイリーのライターになるといいよ。

なんとおしゃれタウン麻布十番に現場が
この古川地下調節池の完成は2015年度末予定。まだまだ工事中だ。準備工事は2009年度から行われていたというから、けっこう長丁場だ。
ただいまトンネル自体をシールドマシンを使って掘っている最中で、今回はそのシールドマシンを地下に入れた巨大な縦穴「立て坑」と、掘ってる最中の様子を見せてもらったのだ。立て坑の場所は、麻布十番の駅前。そう、あの一ノ橋ジャンクションのど真ん中なのだ!
ただいまトンネル自体をシールドマシンを使って掘っている最中で、今回はそのシールドマシンを地下に入れた巨大な縦穴「立て坑」と、掘ってる最中の様子を見せてもらったのだ。立て坑の場所は、麻布十番の駅前。そう、あの一ノ橋ジャンクションのど真ん中なのだ!


工事準備が始まる前の一ノ橋ジャンクション。小さく三角形に交差している麻布十番名物。


三角形の内側にある公園からぐるりと360度見渡す。ジャンクションの開き。


そこが、いまこうなっている。

繰り返しになるが、ほんと土地がない。工事自体は地下だが、各種材料や道具、出た土をいったん貯めてトラックに乗せ替えるためのスペースなどが必要になるのだ。だけど、その余裕がほとんどない。いやー、ほんとたいへん!


公園だったところにきっつきつにヤードが建て込まれている。これぞ都市土木っ!(東京都第一建設事務所工事課パフレット「街、くらしを守るための工事 古池地下調節池工事(その1)」より)


おもえば2010年に書いた記事「くぐれ!たいやきくん」で古川を手こぎボートで古川遡上してここまで来たときに見えた仮囲いはこれだったのだな!

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「第2の古川」深さ40m超!


まず案内いただいたのは、敷地にあるインフォメーションセンター


(誰でも入れますので、みなさんのぜひ(平日のみ))


シールドマシンの模型!これでトンネルを掘りつつ仕上げると言うことがほぼ自動で行われる。


地下調節池にそって台地に切り込みを入れ、北側をずずっと持ち上げて断面が見えるようにした模型。断面は地質。これすてき。ほしい。


ここは古川が屈曲している部分にあたる。


そしてオビのように見えるのが調節池。深い!

いまいるこの場所はゆくゆくは、地下調節地に一時待避した大量の水を、古川の水量がおちついたら、ふたたびポンプで戻す施設が作られる場所。ちなみに水を地下に落とす場所はもう少し上流(養老橋という橋のそば)に建設予定。
と、ここまでちょっと説明が長くなった。それではあらためて立て坑から入ってみよう!
と、ここまでちょっと説明が長くなった。それではあらためて立て坑から入ってみよう!

あらためて立て坑から入る様子を


立っている場所全体が立て坑にフタがしてるものなのだが、一箇所柵が巡らせてあってのぞき込むと…


ひょー!すごい!こわい!


仮設のエレベーターで降ります。これがまたちょっとこわいんだよなー。


到着して見上げるとこんな!下に見えるのが、シールドマシンが掘り進んだトンネル。つまりここに水が溜められることになる。



「このカーブに注目してください!」


地上の古川の曲線のトレースなのだ!ほほー!おもしろい!

そうなのだ。まさに第2の古川なのだ。地下にいながら地上の川を感じられるというのはとても面白いと思った。


トンネルの所々に、地上のどこら変化を示す写真が貼ってあって興味深さもひとしお。ナイス表示!

そしてシールドマシンへ!
さて、こうして川をトレースしながら奥へ進むと、まさにいま掘ってる最中のシールドマシンへと辿り着く。これが今回のハイライトだ!


周囲の台車に乗ったタンクや機械が「最前線感」を醸し出す。


そしてここが…!

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シールドマシンのお尻!

感動した。かっこいい。なんてすてき。これの向こうは地下40mの土だけがあって、そこを掘って進んでいるのだ。
シールドマシンという機械はすごくて、掘ったそばからトンネルの内側を「セグメント」という部材で仕上げていってしまう優れもの。今回、そのセグメントをシールドマシンに送り込む作業を見ることができた。
シールドマシンという機械はすごくて、掘ったそばからトンネルの内側を「セグメント」という部材で仕上げていってしまう優れもの。今回、そのセグメントをシールドマシンに送り込む作業を見ることができた。


ぼくらが入ってきた立て坑から運び込まれた「セグメント」をクレーンに吊って…


うまいこと操作していきます。


で、下の方の方が別のクレーンに吊りかえて、シールドマシンにセット。

「なんというかシールドマシンってもっと全自動かと思ってました」
「やはりこういう作業は一つ一つ人間がやってますよー」
クレーン操作している人はしれっと作業してるけど、きっとぼくがやったらぐるんぐるん揺れて、がつんがつん当たっちゃってたいへんなことになるんだろうなー、と思った。やってみたいけど。
「やはりこういう作業は一つ一つ人間がやってますよー」
クレーン操作している人はしれっと作業してるけど、きっとぼくがやったらぐるんぐるん揺れて、がつんがつん当たっちゃってたいへんなことになるんだろうなー、と思った。やってみたいけど。

しれっと巧みなクレーンさばき。

なんでぼくがしつこく工事現場見てみたいのか自分で分かった!


セグメントを立て坑に下ろしている様子。それにしてもやっぱり作業スペースがきつきつ。

地上に上がってきてみると、あらためてスペースのなさに苦労が忍ばれる。


セメントプラントもぎりぎり建ってるし


首都高の橋脚を匠に避けるように資材置き場が。

きけば首都高の橋脚のそばを掘るのも神経使ったという。そうだろうなー。
「橋脚が3mmずれたら工事中止ですから」
「へええー!たいへんだ!」
「もちろん実際は1mmも動いていないですけど」
ぼくがいままで工事現場に感動してきたのは、思えばそれがいずれも「都市土木」だからなのだなあ、と気がついた。さまざまなものと事情を巧みに避けながら四苦八苦するさまがいとおしいのだ。
「橋脚が3mmずれたら工事中止ですから」
「へええー!たいへんだ!」
「もちろん実際は1mmも動いていないですけど」
ぼくがいままで工事現場に感動してきたのは、思えばそれがいずれも「都市土木」だからなのだなあ、と気がついた。さまざまなものと事情を巧みに避けながら四苦八苦するさまがいとおしいのだ。




みんなで見に行きたいです



たびたびぼくの撮影のために脇へどいて待ってくれる東京都の方々。すみませんすみません!ありがとうございます!



まだまだおもしろい話がいっぱいあったのだが(掘り出した土をトラックで運ぶための管理の話とか!)すべてを説明すると30ページぐらいになりそうなので今回はここらへんで。きっとまた工事が進捗したら見せてもらって記事にしますよ!というか、みんなで見に行きたいなあ。




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