特集 2012年4月13日

浅草にある700円の床屋さん

ヘアーカットが700円!
ヘアーカットが700円!
1,000円で髪を切ってくれる床屋はもう珍しくなくなったが、浅草の地下街で、さらに安い店を見つけた。

なんと700円ポッキリ。日替わりランチみたいな価格である。

ちょうど髪も伸びきっていることだし、その700円の床屋を試してみることにした。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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浅草地下商店街という迷宮

700円という破格の床屋があるのは、浅草駅の地下にある浅草地下商店街。松屋デパートや銀座線からも直結の大変便利な場所にあるだが、その混沌としたミステリーゾーン感がすごい。


当サイトでもライター大坪さんが2006年に記事を書いている(こちら)が、日本でも有数の歴史を誇り、男の冒険心を満足させてくれる希有な地下街だ。
銀座線浅草駅なら改札を出てちょっといったところに入口があります。
銀座線浅草駅なら改札を出てちょっといったところに入口があります。
地上からなら、東武浅草駅の前にあるダンジョン風の階段がかっこいいからオススメ。
地上からなら、東武浅草駅の前にあるダンジョン風の階段がかっこいいからオススメ。
これは夜の地下街。仲見世通りでは味わえない浅草らしさが全開。
これは夜の地下街。仲見世通りでは味わえない浅草らしさが全開。
浅草地下商店街にはじめてきたのは、佐渡ヶ島の酒と肴を出す店で飲んだ時で、そのすぐ向かいにあったのが、この700円の床屋さんだった。
あの700円と書かれた店が気になる。ちなみにここは『だっちゃ』という店だっちゃ。
あの700円と書かれた店が気になる。ちなみにここは『だっちゃ』という店だっちゃ。
今飲んでいる一合の日本酒と、あそこのヘアーカットの値段がだいたい同じなのかと思うと(実際にいくらのお酒を飲んでいるのかはよくわかっていないのだが)、すごくこの酒が贅沢な気がしてきた。
900円くらいまでは見かけたことがあるけれど、700円というのは未知の領域。
900円くらいまでは見かけたことがあるけれど、700円というのは未知の領域。
一流技術者と書かれると、逆に身構えてしまう。
一流技術者と書かれると、逆に身構えてしまう。
どうやら「客を選ぶ店」のようだ。
どうやら「客を選ぶ店」のようだ。
この日は夜も遅く、すでに閉店しているようなので、後日あらためて髪を切りにくることにした。

店の名前はカットセブン

都内での打ち合わせに行く用事があった日、いつもとちょっと路線を変えて浅草経由にして、ヘアーカット700円のお店へとやってきた。

髪はヴィジュアル系バンドメイクをするため(この記事)という大義名分で2カ月以上伸ばしっぱなし。あまりにボサボサで帽子をかぶってきたため、変な癖がついている。
700円カットにふさわしいボサボサ頭だ。
700円カットにふさわしいボサボサ頭だ。
1000円カットなら何度か利用したことがあるけれど、700円っていうのはどうなんだろう。あれ以上、コストと時間を削れる部分があるのだろうか。

店の前まで来て、初めて店名が『カットセブン』であるということを知った。
古いんだか新しいんだかよくわからない店構えだ。
古いんだか新しいんだかよくわからない店構えだ。
入るといきなり柱。そして丸坊主のお客さん。もしかして坊主頭専門店なのかという不安がよぎる。
入るといきなり柱。そして丸坊主のお客さん。もしかして坊主頭専門店なのかという不安がよぎる。

予想より普通の床屋でした

浅草地下商店街らしい、どことなく昭和っぽい感じの店内。1000円カットのお店と同じく、頭を洗ったりする設備はないようだ。

三席あるうちの一番奥にすぐ通され、テルテル坊主型のエプロンを掛けられる。髪を濡らしたりはしない合理主義。
セルフパパラッチ。
セルフパパラッチ。
カタログから髪型を選ぶようなタイプ(近所のスーパー銭湯にある床屋がそういうシステム)という訳でもなく、普通にどうするかを聞かれたので、「3センチくらい切ってください」と、ざっくりとしたオーダーをしてみた。700円カットだからということではなく、美容室に行っても、だいたいこんな注文くらいしかしない。

最悪、あまりに仕上がりがあれだったら、別の店で直せばいいかと思って、短髪にはしなかった。

「耳に掛かっていいんでしょ」という確認をされたくらいで、あとはサクサクと迷いなく進んでいく。ハサミを入れる回数の少なさが驚異的だ。
カット終了後、掃除機みたいなおなじみの道具で毛を吸引。ところで休みが張り出しているのが気になる。
カット終了後、掃除機みたいなおなじみの道具で毛を吸引。ところで休みが張り出しているのが気になる。

一席に一人の理容師

お客から見やすい位置に、「私の休みは木金曜日です」という張り出しがあって、どういうことかと聞いてみたら、もちろんそのままの意味だったのだが、この店は三席それぞれで切る人が決まっていて、その人が休みの場合は、その席が空いているというシステムなのだそうだ。

今日は真ん中の女性理容師さんがお休み。
一応簡単なセットもしてくれます。
一応簡単なセットもしてくれます。
一人でやっている床屋さんが3件並んでいるようなイメージですかね。

そのため、普通は空いた席にどんどんお客さんが順番で入っていくが、指名をしたければ、待ってさえいれば可能らしい。だからなんだという話だが、こういう豆知識は結構好きだ。

仕上げに電動眉毛剃りみたいな道具でちょこっとカットされて終了。眉毛をではなく、耳毛を。
あっという間にカット終了。切ったばっかりなのにボサっとしているのは髪質の問題が大きい。
あっという間にカット終了。切ったばっかりなのにボサっとしているのは髪質の問題が大きい。
以下、世間話の内容。

  • スカイスリーのおかげか、最近はだいぶ浅草に人が増えた。
  • 地元のお客さんが多いが、浅草へ遊びに来るついでに髪を切る常連さんとかもいる。
  • 女性の理容師もいるので、そこのデパートの女性販売員も、よく切りにくる。
  • この地下商店街は、よく有名人がロケにくる。この前はなぎら健壱と小島よしおがやってきた。
  • バリカンは1、2、3、5、6、9ミリから指定できる。
  • そんなに古い店じゃないという話だが、大坪さんの記事に店名があったので、6年前には存在していた。浅草の「古い」は基準が違う。
  • 最近はツイッターなどの評判が気になる。

料金は、税込みで700円だった。あの理容師さん、ツイッターやっているのか。

15分700円という選択肢。

カットに掛かった時間は15分。美容院などで時間を掛けて丁寧にカットしてもらうのも楽しいけれど、こういうシンプルなやりとりも嫌いじゃない。時間とお金を掛けてする豪華な食事も一食、立ち食いソバ屋も一食、どっちも大事な一食という話ですかね。

ここで髪を切ったあとに、「あ、その髪型700円?」とか、特になにかを指摘されるということはなかった。髪が伸びているときに、また浅草にくる用事があれば、また利用してみようと思う。
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