特集 2012年1月26日

癒着の実態を浮き彫りにする

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デイリーポータルでライターを始めて3年目になる。
僕もそろそろ、日本に衝撃を与えるような記事を書いてみたい。
決意した。今日こそ霞が関に乗りこんで、癒着の実態を浮き彫りにしてやる。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

前の記事:「横綱」という名のバーガー

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もう権力には媚びない

そうなのだ、友人には大手メディアに就職し、被災地の現状とか医療現場の問題とか、社会を震わせる記事を書いてる奴もいる。
報道現場の最前線で戦う記者たち。
報道現場の最前線で戦う記者たち。
それにひきかえ、僕はどうだ。
ここ半年は雑草を食った記事だけじゃないか。そうでなければ、二重跳びの練習だ
去年3回も書いた、雑草を食べた記事
去年3回も書いた、雑草を食べた記事(これこれこれ
昔のどうでもいいトラウマを克服。
昔のどうでもいいトラウマを克服
文筆に命をかけたライターとして、これでいいのか?
いいわけが無いじゃないか。
いいわけが無いじゃないか。
権力におびえたままで、社会の実態を暴けるだろうか?
暴けるわけ無いじゃないか。
暴けるわけ無いじゃないか。
今日こそ自分の意思を明らかにし、はっきりとしたとした態度を示そうじゃないか。
今日こそ僕が明らかにする!
今日こそ僕が明らかにする!
霞が関の癒着の実態!
霞が関の癒着の実態!
背中には両面テープ!!
背中には両面テープ!!
何がしたいか分かった人も、分からない人も、次のページまでお付き合い願います。
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まず向かったのは、あの省庁!

正直言うと、この看板を持って霞が関を歩けば、一人ぐらいノリのいい国家公務員が通りかかり、『官僚との癒着の実態』を撮影できるのではないかと思っていた。

より大きな地図で 霞が関 を表示
これだけ省庁があれば、一人ぐらい話の分かる官僚もいるはず。
しかし霞が関には行くことができず、やってきたのはここ、千代田区の大手町である。
充分に都会だが、霞が関からはちょっと遠い。
充分に都会だが、霞が関からはちょっと遠い。
撮影をした時期は、ちょうど特別手配の某容疑者が逮捕された直後で、警視庁のある霞が関周辺は大変緊迫しており、とうていこんな看板を持って歩ける空気ではなかった
隠して持っても視線がビリビリ刺さる。
隠して持っても視線がビリビリ刺さる。
無理だ。
そこで予定を変更して、大手町に来た。
実は大手町にも日本の中枢となる省庁が一つだけある。
気象庁。(諸事情によりイラストでお送りしております)
気象庁。(諸事情によりイラストでお送りしております)
気象庁ならば、きっと警備もそんなに厳しくないだろう。この看板を片手に、気象庁の方向へと歩みを進めた。

予想気温も、人の目も冷たい。

気のせいかもしれないが、すれ違う人が故意に僕から目をそらしている。
視線を感じ、「もしかして癒着してくれる人?」と思い振り向くと、光の速さで目をそらされる。
冷たい人の目。これが大都会の洗礼か。
冷たい人の目。これが大都会の洗礼か。
こうして、誰一人僕に癒着を申し出てくれないまま、気象庁に到着した。
気象庁に着いた。(諸事情によりイラストでお送りしております)
気象庁に着いた。(諸事情によりイラストでお送りしております)
ここの前で看板を掲げ、癒着を希望してくれる人を待った。
さすがに一人ぐらいいるだろう、と僕は信じていた。しかし、出入りする人はみな無関心で、僕の体は冬の北風に冷えていった。
(正しくは、一瞬関心を向けてくれるが、素早く知らないふりをされた)

日本の行政はいつも庶民に冷たい。
この日の気象庁の最高予想気温も、6℃と冷たかった。
いろいろと無理だ。
僕は気象庁をあとにした。
気象庁は冷たい省庁です。(予想気温が)
気象庁は冷たい省庁です。(予想気温が)

目指せ! 経済界との癒着!

大手町の近くに日本銀行がある。
格調高いこの建物。
格調高いこの建物。
行政との癒着が無理ならば、経済界と癒着してみたい。
ちょっとヨネスケ気分。
ちょっとヨネスケ気分。
看板を低く目立たないように構え、そっと様子をうかがう。霞が関ほどピリピリした空気は漂ってない。
これならうまく癒着できるかもしれない。建物自体に癒着できるチャンスも考えられる。
しかし植え込みの向こうを見ると……
「うわ!!めっちゃ警察官いる!!」
「うわ!!めっちゃ警察官いる!!」
植え込みで見えなかったが、背伸びして見ると、めっちゃ警察の人がいたのだ。
しかも詰め所まであって、超本格的警備だ。
看板どころか、両面テープを貼って歩くのさえはばかられる。
僕はすみやかに看板をしまい、コートを着込んだ。
無理、無理、無理……
無理、無理、無理……
無理、無理、無理、無理、無理……
無理、無理、無理、無理、無理……
ほほう、これが日本銀行。
ほほう、これが日本銀行。
事も無げに、日銀の前を通り過ぎる。
日銀を見たことが無かったので、ちょうどいい観光だ。由緒ある建物が壮麗である。
日銀と関わろうとするのはここまでにして、癒着はもっとソフトな官公庁にすることにした。
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なかなかちょうどいい官公庁が無い

このあと日本橋の兜町付近をさまよったが、どうしたらいいか分からなくなってきた。
はっきり言おう。警察官が怖い。
悪いことはしてないんだけど、「その看板、なんですか」 と言われ、職務質問になることは避けたい。
交番の前では看板をしまう。背中も見せない。
交番の前では看板をしまう。背中も見せない。
とはいえ何かに癒着しないと、企画が終わらない。
早く撮影終わらせて、あったかいコーヒー飲みたい。
早く撮影終わらせて、あったかいコーヒー飲みたい。
そんな僕の目の前に、ある官公庁が現われた。
そうか!
この立地なら、入口の警備員に見つからず、内部へ直接に癒着を要求できる!
これはチャンスだ!
僕は急いで階段を駆け上がり、内部へ向けて癒着を直訴した!
「すいませーん、癒着して下さーい」
「すいませーん、癒着して下さーい」
「デイリーポータルZから来た、加藤と申しまーす」
「デイリーポータルZから来た、加藤と申しまーす」
だんだん趣旨が観光になってきています。
だんだん趣旨が観光になってきています。
だめだった。見向きもされなかった。
ここでも世間の風は厳しい。
ちなみに、ここ日本橋郵便局は日本の郵便発祥の地だそうで、記念のレリーフがある。
せっかくなのでピースして、レリーフと記念写真を撮ってきた。

引き続き、東京観光をお楽しみください

同じく兜町にある東京証券取引所!(テレビでぐるぐる回ってるやつがあるところ)
同じく兜町にある東京証券取引所!(テレビでぐるぐる回ってるやつがあるところ)
ピースがとうとう裏ピースになる調子に乗りっぷり。
ピースがとうとう裏ピースになる調子に乗りっぷり。
兜町神社に初詣。癒着の現場を見つけられますように。
兜町神社に初詣。癒着の現場を見つけられますように。
このようなことをしていて、癒着の現場を押さえられたのか?
なんと押さえられたのである。
詳細は次のページにて説明したい。
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これが経済界との癒着の実態だ!!

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上記の写真が、最終的に経済界との癒着の実態を捕えた写真である。
癒着しているものは何か。
答えはこれだ。
日本経済界の中心、「兜町」。
日本経済界の中心、「兜町」。
にある都営バスのバス停。
にある都営バスのバス停。
よって最初の写真は、日本経済界のシンボルと僕が癒着した写真であるとも言える。
経済界との癒着をたくらむ男性記者
経済界との癒着をたくらむ男性記者
最初は背中で貼りついたのだが、撮影係の編集部・安藤さんから、「それはスーツと兜町の癒着に過ぎないのではないか」と指摘が入り、この形となった。
兜町との癒着で、ずぶずぶの実態。
兜町との癒着で、ずぶずぶの実態。
癒着の実態を見つめる市民の目。
癒着の実態を見つめる市民の目。
撮影完了である。
あとは、企画の反省を行いながら、癒着の実態を浮き彫りにしていこうと思う。
【反省点1】なぜ僕は権力におびえた。
【反省点1】なぜ僕は権力におびえた。
僕は最初「権力におびえず癒着の実態を解明する」と誓った。
しかし終始僕は警察官の存在におびえ、霞が関に足を踏み入れることもできず、最後にはバス停と癒着するに至った。
それにひきかえ、記者をやっている友人たちは毎日情報をもぎ取るため、深夜に早朝に、警察官の自宅まで取材に行くという。
何が僕とのこの差を生んだのか。
徐々に全貌を明らかにしつつある、癒着の実態。
徐々に全貌を明らかにしつつある、癒着の実態。

【反省点2】官僚のみなさんを思え

元々この企画も、当てが無かったわけではない。
実は僕の幼なじみの友人が官僚をやっており、事前に彼に打診したのである。
概要をメールで送り、こんな内容で僕と癒着してくれないか、と頼んだのだ。
そしたら彼から、「企画自体は面白いと思うんだけど、俺がやるのは無理」 と返事が来た。
今思えば、当然である。
それでも「企画自体は面白いと思う」とフォローしつつ返事をくれた彼はやさしい。
そんな彼はいまだ結婚もせず、毎日深夜まで国のために働いている。
その間、僕は何をしていたのか。
全容がほぼ解明された癒着の実態。
全容がほぼ解明された癒着の実態。

【反省点3】なぜ気象庁の写真が無いのか

本当のことを書こう。
気象庁の前で写真を撮ろうとしたところ、看板を見た警備員にとがめられ、「これ以上近づいた場合、『ひまわり』からの衛星レーザーで攻撃する」 と警告を受け、すごすごと帰ってきたのだ。
というのはもちろん嘘である。
本当は編集部の安藤さんが、写真データのメモリを全部飛ばしたのだ。(詳細はDPZ制作日記参照
この手の撮影はテンションが重要なため、最初のノリでどこまで撮れるかが勝負である。帰宅後に、「すいません、今日の撮影データ全部消えました」 と安藤さんから電話がかかってきたときの僕の落胆は計り知れない。ロケハンも含めて、3時間ぐらいかけた撮影である。
付き合ってくれた安藤さんを責めるわけにもいかず、僕は世界を呪った。
完成。完全に浮き彫りになる格好となった、経済界との癒着の実態。
完成。完全に浮き彫りになる格好となった、経済界との癒着の実態。
流行りのGIFアニメも作ってみました
流行りのGIFアニメも作ってみました

写真データはその後どうなった

幸いデータは、安藤さんの努力により8割ほど復旧し、記事も何とか完成に至った。
こうして無事、癒着の実態は浮き彫りとなった。
しかし、もし消えていたら「デイリーポータル編集部により、癒着の証拠が闇に葬られました」 というオチになったわけで、そう思うと、それはそれで面白かった気もする。
公園ではいくら癒着しても怒られなくて安心。癒着の温床と呼ぼう、公園。
公園ではいくら癒着しても怒られなくて安心。癒着の温床と呼ぼう、公園。
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