編集部日記 2022年6月18日

メイキング・オブ・江戸川乱歩「幽霊」

今週、江戸川乱歩の短編に写真を入れて掲載しました。皆さん読んでくれましたか。第1回第2回第3回

この狙いと裏話を堂々と書きたい。(編集部 林)

原稿がない

デイリーでは先々まで掲載スケジュールを作って記事を用意している。だが、ときどきエアポケットのように来週のスケジュールがすっからかんということが起こる。(編集部が書いているときはそういうときが多いので注意して見よう)

そんな事態が続いたとき、ネットに転載OKの原稿があることに気づいた。青空文庫だ。

青空文庫とは著作権の保護期間が過ぎた作品を無料公開しているプロジェクトである。すべてがボランティアで行われているインターネットの理想郷だ。ありがとうございます。

それをデイリーに掲載すればいいのだ。無限の油田じゃん(しかも超名作だしタダだ)。

それが昨年11月の文豪エッセイだ。

太宰さんも芥川さんもおもしろい(ライター気分でさん付けで呼んでます)。ウェブで読むと身近に感じる。大作家もまるでいま生きてる人が書いているような錯覚を覚える。

このとき、小泉八雲の貉(むじな)という短編の怪談も用意していて、舞台となった紀国坂の写真も撮っていた。

010.jpg
ここにのっぺらぼうが出るというお話です

エッセイで統一したので見送ったが、こういう創作ものもいい。昔の作品に新たに写真を追加するのだ。

名作のウェブ化だ。古典を映画化するように、ウェブのよみものにする。

きっと昔の本好きはいまの人がスマホを眺めるように小説を楽しんでいたはずなので、ウェブ化は正統な行為なんじゃないかと思ってる。我田引水。

1万~2万字ぐらいの短編にした

デイリーポータルZは娯楽サイトなので娯楽小説がいい。…となると青空文庫には江戸川乱歩があるではないか。2016年に著作権の保護期間が切れて青空文庫に加わっているのだ。

ああ、なんということでしょう。怪人二十面相のしわざが自由に読めてしまうのです!(江戸川乱歩の小説でよく出てくる語りかけのまね)

デイリーの記事がたいてい3000~5000文字なので、1万~2万字の作品ならば数回に分けるとちょうどよい。

文字数で探すのはブンゴウサーチというサイトが便利だった。文字数順に並んでいる。

今となっては掲載しにくい表現が少なく(江戸川先生すいません)、実現不可能な描写のない「幽霊」という短編にした。

途中、ウェブ化するために選んでいるのかただ江戸川乱歩を楽しんでいるのか分からなくなった。今年の冬はずっと江戸川乱歩を読んでいた。

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撮影はすいすい進み、落とし穴がある

「幽霊」のあらすじ

・金持ちの平田は辻堂という男に恨まれている
・その辻堂が死ぬが、死後、辻堂から「お前を呪ってやる」という手紙が届く。
・その手紙通り、平田の行く先々に辻堂の姿が現れる
・衰弱する平田は静養するがそこにも辻堂が現れる
・本当に幽霊なのか、その正体は…

原作に追加する写真をメモしていざ撮影と思っていたところにコロナの第6波が来たのでやる気をなくしてふて寝していた。

5月、つりばんど岡村さんが東京に長期出張で来ているタイミングで撮影することにした。辻堂の役だ。金持ちの平田は西村さんしかいない。

つりばんど岡村さん
西村まさゆきさん

書斎と和室はスタジオを借りたが、撮影はスマホで行った。いまの出来事のように見せたいからだ(でも掲載時につい雰囲気を出すために写真を暗くしてしまった)。

トルーは子どもと参加。子どもが来ると聞いた西村さんがドラえもんを持ってくる優しさ。平田は大金持ちになるだけあって気が利く

演技をするわけではなく、静止画を撮ればいいので撮影はスムーズに進んだ。この和室スタジオはトイレを使わないと安いプラン(なんだそれ)があったのでそれにしたが、誰も漏らすことなく1時間ほどで撮影は終わった。

そのときは最高~&ファビュラス!と盛り上がって撮ったが、あとで見たら使えない写真が多かった。静止画は一瞬を切り取るので思わぬ顔が記録されている。

トルーの足がきれいにクロスしてて気になるので使わなかった写真
ころんだ平田を助ける青年が笑ってるので使わなかった写真

デイリーだとこういう写真も面白がって使ってしまうのだが、これだとこの青年が犯人のように見えてしまう。江戸川先生に申し訳ないのでちゃんとした。 

熱演する西村さん

転んだシーンは実際に転んでいる。


砂浜での撮影は達成感がすばらしく、浮かれて撮影完了の記念写真を撮ってしまった。トルーが遠くのコンビニにお茶を買いに行ってしまい、不安しかないトルーの子を見守ったのもいい思い出だ

トルーの子の顔はトルーに加工してあります

この充実感、クランクアップでいちいち花束を渡す気持ちがわかった。

タンクトップ書生

金持ちの平田はボディガード代わりの書生を雇っている。
その役はデイリーポータルZいちの低体脂肪率 安藤さんに頼んだ。ボディガード=強い=タンクトップ、ということで衣装も決まった。
前日に黒か白か聞かれたので白をお願いした。書生だからだ。

当日、安藤さんは「わかりやした、なんでゲスか、手紙ですか?」と独自の解釈で書生になりきって演技をしてくれた。

写真にも「なんでゲスか?」感があふれていた
書生が犯人と思ったかもしれないが、推理小説でこういうタイプの犯人はなかなかな登場しない

タンクトップの安藤はとても評判がよく(悪く)、次回以降もタンクトップでの登場を依頼することを決意した。

・蜘蛛の糸のカンダダ安藤
・西遊記で孫悟空、沙悟浄、猪八戒、安藤
・トロイの木馬から出てくるタンクトップ

など夢が広がる。期待してほしい。

以上のようにしてウェブ版 江戸川乱歩「幽霊」ができた。まだの人はこちらから味わってもらいたい。

第1回第2回第3回

村の祭だ

原作に勝手に写真をつけるのは文化祭気分で脳からなんらかの物質がどくどく出た。

誰でも役者気分が味わえる。
村人が全員参加する村の祭りの芝居のようだ。「なんでタンクトップなんだよ!」とやじって見る芝居だ。

原稿がないから始めた試みだが、もうそんなこと関係なくなっている。古典ウェブ化コンテストやろうぜ、とか言い出している。

辻堂
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