もういいかな、と思っても次の日には食べたくなるパン
後半、調子にのって買ったパンは食べきれなかった。
これがバイキング形式の食べ放題ならとてももったいないことになるのだけれど、パンはそのまま持ち帰ることができるのだから罪がない。
帰った直後こそ「しばらくパンはいいかな」という気分だったのだが、翌朝には腹も減ったしパンも食べたくなった。持ち帰ったパンは朝食になった。めでたしめでたし。
デイリーポータルZの大人気企画『勝手に食べ放題、地方チェーン店編』をはげます会会員専用ページで、2020年12月に公開しました。静岡から鈴木さくらさん、京都からこーだいさん、岡山からオカモトラボさん、沖縄からDEEokinawaやんばるたろうさん、4名に挑戦。「勝手に食べ放題」とは、食べ放題メニューがない店で好きなものを好きなだけ食べるという企画です。
はげます会専用ページでしか読めませんでしが、「次の日には食べたくなるパン ~勝手に食べ放題 京都のパン、志津屋編」の記事を紹介します。
ある日の夕方のこと。やることがないので畳の上でゴロゴロしていたら、編集部の橋田さんからメッセージが届いた。見ると、『勝手に食べ放題』の参加打診ではないか。「果報は寝て待て」とはよく言ったものだ。
好きな店で好きなものを好きなだけ食べるという、なにかの罠なんじゃないかなと思うほど最高なのがこの企画。今回はお店選びに一つ制限がついていた。ご当地チェーンのお店にしてくれというのだ。
はて、ご当地チェーン......。
筆者は京都在住である。京都で生まれたチェーンといえば、餃子の王将、ラーメンの天下一品なんかがまっさきに思い浮かぶ。が、これらはすでに全国チェーンの仲間入りをしているといっていいだろう。
さて、どこへ行ったものか。
パン屋に行こう
志津屋にやってきた。
最近知ったことだが、京都府民の一人当たりのパンの消費量は日本一を誇るらしい。
誇りにするようなことかはともかく、それゆえ市内には多くのパン屋がひしめいている。そして、そんな京都市で半世紀以上にわたって店舗数を増やしてきた京都パン屋界隈のドンといえる存在が志津屋なんである。
その頼もしい姿にてっきり全国チェーンだと思っていたのだが、調べてみたところ京都市内だけに展開しているまごうかたなきご当地チェーンだった。どうりで、よその町で一度も見かけたことがないわけだ。
個人店だろうがチェーン店だろうが美味しければそれでいいのだが、今回ばかりは自分が好きな店がご当地チェーンで良かったと思った(企画の縛り的な意味で)。
パンを選ぶのが遅い問題
パン屋なのでたくさんのパンが並んでいます。
パン屋のパンは美味い。
スーパーやコンビニで売られている、みっちりと個包装されたパンももちろん美味しいけれど、やはり餅は餅屋、パンはパン屋である。
普段だったら、たくさんあって目移りするパンの中からどれを買うか決めるのはちょっとした一大事だ。あれこれ組み合わせを考えて選ぶのに時間がかかるんである。
選んでいる時間が楽しいとはいえ、檻に入れられた動物のように店内を際限なくグルグルするのもなんなので、大まかにわけて食事用の甘くないパンとお菓子用の甘いパンをそれぞれ1個ずつ買うよう決めている。
今回は食べ放題なのでそんなことを気にする必要はない。とはいえ無思慮に甘いものを食べると2つくらいで満足してしまう可能性がある。さすがにそれは食べ放題としてどうなんだ?
なので、前半は食事パンを買い、後半で甘いお菓子パンを買うことにした。
イートインで食べるメニューも充実。パンを買うときは持ち帰ることがほとんどだからちゃんと眺めたことがなかったけれど、あらためて見るとこりゃあ目移りするな。
店内用のメニューは注文してから作ってくれる。番号札をもってテーブルへ。
第一弾はこちら。パストラミビーフサンドとコーヒーのセット(890円)。
こちらはPicking Flower Petals American Jack Pizza(ピッキングフラワーペタルスアメリカンジャックピッツァ)(250円)。
ひょっとして貴族の出なのかな?と思うくらい名前が長い。
このPicking Flower Petals American Jack Pizza、今回訪れた三条店限定のメニューで、アメリカ産チーズを使ったアイデアメニューコンテストのピザ部門で大賞を獲得したこともあるらしい。
さすが志津屋、大組織だけあってすごい経歴のやつが混じっているのだ。食べちゃうけど。
貴族ではないけどすごいパンだった。
トンビにパンをさらわれた人も多いでしょう
ほんのり温かいできたてのサンドイッチがうれしいです。
心配していた店内の混雑がなくてまずは一安心だ。
勝手に食べ放題は、あくまでこちらが勝手にやっているだけのことなので、時間制限などはない。時間を気にせず落ち着いて食べられてうれしい。
「落ち着いて」で思い出したが、以前に志津屋の別の店舗でパンを買い、川岸に座って食べた時は、急降下してきたトンビにパンをさらわれたのだった。
そしてそれを見た通行人に
「トンビにパンをとられるのは何度目ですか?なに、初めて?私はこれまで3回もとられた。あなたはまだまだだ」
などと言われ、開いた口が塞がらなかったものだ。
今は室内にいるから、優雅な食事が突如トンビ・パニックものになる心配はない。これもうれしい。
いいことずくめだ。
食べ終わった。普段なら満足して帰るかな?というくらいの腹具合。
そもそもパンは腹が膨れやすい。なによりPicking Flower Petals American Jack Pizzaの上にたっぷりとのっていたアメリカンチーズの影響が大きい気がする。
少し休みたい気がした。でも、時間がたつとかえって満腹感が増すことは周知のとおりだ。夕飯の時間まで居座ってもいいなら話は別だが。
2回目のパン選び
甘いのをね、甘いのを食べたいんですよ。
というわけで、間を開けずにパンを選ぶ。
無理してたくさん食べる気はさらさらないけれど、もう少し食べたいのも事実なのだな。狙うのは、事前の取り決め通り甘いお菓子パンだ。
「お待たせしました!」とまで言われたら選ばないわけにはいかない。なんとフルーツサンドのためだけに焼き上げたブリオッシュ食パンが使われているという。オーダーメイドの服なんて人間の私でも持っていない。やっぱりここのパンは貴族なんじゃないだろうか?
「もうちょっと食べたい」が積もり積もってこれ。
気がついたら、5つも買ってしまっていた。しかも、前言に反して甘くないカルネまで。
満腹感は人の判断力を鈍らせるようだ。あと、記憶力も。食後に大事なことを決めるのはやめようと思った。
三者三様の甘さ
ブリオッシュフルーツサンド(500円)。果物ドーン!クリームドーン!の贅沢仕様にとどまらず、専用のパンで外側をしっとりと包んだ芸の細かい一品。
京都 ザ・あんぱん(190円)。おれがこの町のスタンダードだ!と言わんばかりのネーミングに度肝を抜かれた。小豆の味を活かした控えめな甘さのおかげでもう少し食べられそう。
ホワイトキャラメルロール(180円)。大昔から売られている。私の中の『柔らかい白パン』のイメージはこれだ。
このキャラメルの味で満足感が振り切れたのを感じた。
口に入れた瞬間、表面に粉のまぶされたふわふわの白パンが口の中の水分をもっていく。
これはよく噛んで食べなければ。一噛みするたびに満足感の水位が満タンのラインに近づいていくのを感じた。
そろそろ、帰って寝たいと思った。
というわけで、ここらでご馳走様でした。
2つ食べきれなくてお持ち帰りになった。ほんとの食べ放題だと、たぶん持ち帰り行為はNGだ。
もういいかな、と思っても次の日には食べたくなるパン
後半、調子にのって買ったパンは食べきれなかった。
これがバイキング形式の食べ放題ならとてももったいないことになるのだけれど、パンはそのまま持ち帰ることができるのだから罪がない。
帰った直後こそ「しばらくパンはいいかな」という気分だったのだが、翌朝には腹も減ったしパンも食べたくなった。持ち帰ったパンは朝食になった。めでたしめでたし。
食べたもの一覧と総額
はげます会限定のページに公開されているので、全部読みたい人は入会してくださいね。
過去の「勝手に食べ放題」はこちらから読めます。
・勝手に食べ放題
・好きなものを勝手に食べ放題
・勝手に食べ放題 ~おしゃれな感じがするチェーン店の乱~
・勝手に食べ放題2015
・勝手に食べ放題2016~胃弱~
・勝手に食べ放題2018
・勝手に食べ放題2020
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