特集 2019年9月26日

坐禅で動いたら棒で叩かれるやつを全自動化する

坐禅(ざぜん)のときに和尚さんが肩を木の棒で叩いてくださることがある。あれを自動化するマシーンを作った。

 

1992年三重生まれ、会社員。ゆるくまじめに過ごしています。ものすごく暇なときにへんな曲とへんなゲームを作ります。

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全自動坐禅棒叩きマシーン

あの棒のことを警策(きょうさく、けいさく)という。警策は文殊菩薩の手の代わりともいわれ、修行者の精進を促す、非常にありがたい施しだそうだ。あれを受けたい。木の棒で叩かれたい。そんなマシーンを作った。さっそくだが、その様子がこちらである。

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木の棒で叩かれる様子

機械化するとありがたみがゼロだ。しかし、坐禅に臨場感が出ることは確かである。今回、これを作るのに一ヶ月かかった。毎週末作業をした。けっこうがんばったので聞いてほしい。

全自動警策システム HODOKOSHI壱号構想

全自動坐禅棒叩きマシーンの正式名称を「全自動警策システム HODOKOSHI壱号」という。警策はありがたい施しなのでこういう名前にした。何事もかっこいい名前をつけることはモチベーションアップにつながる。初期段階の構想がこちらである。

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初期構想。相変わらず絵が下手だが、たぶん伝わるはず…。

仕組みは意外と簡単である。ししおどし的なものを作成し、その近くで坐禅をする。一般的なししおどしは時間ベースで発動するが、今回は何らかのセンサが「施しが必要」と検知した時に発動する。

まずは物理システムの構築

ししおどし的なものを作るために東急ハンズへ行く。作ると言ったが、東急ハンズにししおどしが売っていたらそれを買う予定だ。大人はすぐにお金で解決しようとする。

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東急ハンズに来た。ししおどしは売ってなかった。

東急ハンズにししおどしは売ってなかったので、作る。工作は苦手だが、さすがにこれくらいは作れると思う。木をくっつければいける。

警策本体の部分をどうするか。Amazonで買おうとすると結構高い。というかAmazonで売っていることに驚く。うーん、本物の警策に穴を開けるのはバチが当たる気がする。(そもそもこんなマシーンを作っている時点でバチが当たる気がするが…。)ここは普通に木の棒から作ることにする。フルスクラッチ警策だ。

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帰宅後撮影した、警策本体部分になる予定の木材。いい感じのサイズ感。この後やすりをかけて先端を丸くした。

さて、東急ハンズには木材加工コーナーがある。ししおどし的なものを作るために、木材に穴を開けてもらう。穴を開けるのは業者がはやい。

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生まれて初めて書いた加工図面。僕が書いたのは長方形と穴、そして寸法。加工図面の書き方は義務教育になかった。木材加工コーナーのスタッフに提出したら「6φ」「穴はじ」「CL」など書き足された。

分からないなりに必要最低限の情報は書いた。こんな図面でも読み取ってもらえてよかった。大事なのは気持ちだ。

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加工済みの木材とその他部品たち

これらを差し込んだりネジを使ったり接着剤を使ったりして組み合わせる。

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警策本体部分には金属製のリングを2つ取り付け、そこに細い棒を通す。
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物理システムの完成。結構凶暴な動きをする。あたるといたそう。

ほどこしセンサをどうするか?

物理システムが完成したのであとは「ほどこしセンサ」で施しが必要なことを検知し、サーボモーターでししおどしを発動させれば完成だ。ほどこしセンサの仕組みはこれから考える。Fitbitという腕時計型のトラッカーを持っているのでそれで心拍数を計測しても良いし、ふつうにカメラを使って画像処理をしても良い。

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Fitbit。心拍数を表示する機能がある。このデータを引っこ抜きたい。

半日ほどかけてFitbitで計測した心拍数をリアルタイムに取得するプログラムを試行錯誤したが、うまくいかなかった。(このあたりけっこう話が複雑なので省略します。)さっさと切り替えてカメラ方式を採用する。

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やりたいことと技術的ハードルの折り合いのなかで仕様は自然と固まっていく

一言でカメラといっても、どうやってほどこしが必要であることを検知するか。体が動いたらなのか、目を閉じたらなのか、表情が変わったらなのか。そもそも警策で叩く行為はどういう場面で行われるのか。対象をもっと深く知る必要があるのではないか。坐禅を体験しに行こう。

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実際に施されにいく

棒叩きマシーンの仕様詳細化のために坐禅を体験しに行く。こう書くと動機があまりにも不純すぎる。言い訳じゃないが、もともと僕は坐禅に興味があったのだ。今回この企画をひらめいたのも坐禅に興味があったからだ。ここからは工作記事ではなく、坐禅体験ルポである。

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北鎌倉の円覚寺に来た。
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ここでは毎週土曜日に坐禅会が行われている。

今回参加するのは初心者用の坐禅会である。かなり人が多い。40名ほどだ。施してもらえるかな…。

時間になり、普段は締まっている門が開く。中に案内されると木造のお堂があり、座布団が敷き詰められている。ここで坐禅をする。とても写真を撮れる雰囲気ではないので、ここからは文字と絵で伝える。

いよいよ!人生初の坐禅会

時間になり、和尚さんが入場する。坐禅の前にまずは準備体操をするという。これが思った以上に本格的で、トータルで30分ぐらいはしていた。足の指を一個一個ほぐしていったり、股関節のストレッチをしたり。和尚さんが体育の先生に見えた。体育の授業と違うのは、「自分の体に意識を向けながら体操をしてください」と言われたことだ。右足だけをほぐした後に目を閉じる。すると、右足だけぽかぽかしてほのかに心地いいのを感じる。体操だけでも意識を変えるだけでこんなにも自分と向き合うことができるとは。すごいなあ。

長い体操を経て、いよいよ坐禅の説明である。坐禅のスタイルとして、結跏趺坐(けっかふざ)と半跏趺坐(はんかふざ)がある。結跏趺坐は両足を太ももの上に乗せるスタイル。半跏趺坐は片足だけ乗せるスタイルで、少し簡単。無理して結跏趺坐をする必要はなく、安定させることが大事だと言われる。半跏趺坐でも安定しない場合はあぐらでも良いとのこと。

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いよいよ15分の坐禅をする。股関節が凝り固まっている僕は結跏趺坐なんてできるわけがなく、半跏趺坐も安定しない。あぐらでも良いとおっしゃっていたが、周りを見るとあぐらの人は一人もいなかったので謎の見栄を張り半跏趺坐に挑戦することにした。すでに執着心にまみれている。

半跏趺坐。体を安定させるのが難しい。和尚さんがおっしゃっていたのは、「天と地を結ぶ線に沿うように背をまっすぐ」「緊張と弛緩(リラックス)のちょうど真ん中に意識を持って行く」「自分の心と体を意識する」「考えていることを考える」など。どれも難しい。呼吸のたびに体がぐらぐらする。すぐに余計なことを考えてしまい、ますます体がぐらぐらする。つらい。どんどん姿勢が崩れていく。半跏趺坐ができていないのもあるし、意識をコントロールできていないのもあると思う。坐禅、むずかしい。

もうダメ〜!というところで15分がたった。終了である。結局、警策で叩かれることはなかった。初心者コースだからなのか、参加者が多すぎるからなのかは分からない。

坐禅終了後、最後に質問コーナーがあった。和尚さんは何を質問しても良いですよとおっしゃっていた。誰かがとても真面目でいい質問をした。和尚さんは熱心に5分ぐらいかけてその質問に回答していた。それを聞き、「あの、警策で叩かれたいんですけど…」という質問をしようという気持ちは自然と消えてしまった。

でも、ヒントは得られた。坐禅はうまくできないとぐらぐらする。それを自覚するのも大事だが、他者に指摘されるのも大事だと思う。そのタイミングでほどこしを発動させたい。

いよいよ完成。

ここから工作に戻る。坐禅会で学んだ通り、体がぐらぐらしたタイミングでほどこしを与える。体が動いたことをカメラで検知するプログラムを書く。

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動いたことを認識するプログラムの様子。

そして、動きを検知したらラズベリーパイというコンピュータでサーボモータを動作させる。

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サーボモータの羽が少しでも触れたらししおどしが発動するよう絶妙に調整した
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手前のMacBookに付属のカメラに動きを検知させると、後ろのサーボモータが作動し、ししおどしが発動する。実験は成功である。

完成!!!!!ここまで長かった。さっそくこれで坐禅をする。

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半跏趺坐さえまともにできないくせに、形から入るために買った作務衣

今回も半跏趺坐で挑戦。

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股関節がとても固く、右足が浮いたようになっている。全然安定していない。

ずっと同じ状態を保つのは難しい。油断するとすぐに余計なことを考えてしまう。

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油断するとすぐに、宝くじで10億円当てて南の島で暮らしたいと考えてしまう

この状態でちょっとでも体が動くと

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体の微細な動きを検知し、ししおどしが発動。ほどこしを受けることができる。これが警策というものか。

ほどこしを受けることができる。ありがたい。

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GIF画像の様子。
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MacBookのカメラの映像。体が一瞬動いたのを見逃さない。

痛い。実は、当初、木板が軽すぎて全然痛くなかったので、気に石ころを取り付けるようにしたのだ。そしたら普通に痛い。

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ほどこしの強度を増すため、上端にその辺で拾った石ころをとりつけた。バランスを保つため、下端にも石ころをとりつけた。

改良を重ねるごとに無骨になっていく。工作とはそういうものだ。

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目の前のMacBookには内蔵カメラで自分を撮影した姿がリアルタイムに表示される。自己との対話である。

 


いつか本物の警策を

これから毎日股関節のストレッチをして、結跏趺坐が安定するようになったら初心者じゃない方のコースに参加しようと思う。本物のほどこしを受けたい。

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円覚寺ではいろんな坐禅会をやっているようだ。

 

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