特集 2019年8月26日

自然の緑でクロマキー合成をする

クロマキー合成という技術がある。緑色の布の前に立って撮影し、合成を行うというものだ。自然の緑であれをやりたい。理由はない。思いついたことなのでしょうがない。この夏、僕は自然の緑でクロマキー合成をした。

1992年三重生まれ、会社員。ゆるくまじめに過ごしています。ものすごく暇なときにへんな曲とへんなゲームを作ります。

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クロマキー合成とは

クロマキー合成について簡単に説明すると、緑色の布の前に立って撮影し、緑色の部分だけをコンピュータで抽出し、画像をはめ込むというものである。テレビや映画の撮影で合成を行う時に使われる。プリクラ機でも使われている。

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まず、グリーンバックで撮影する。(画像はイメージです。)

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そして、緑の部分に別の画像をはめ込む。これにより、いつでも南の島に行くことができる。

数年前、ウェザーニュースにゲスト出演したガチャピンがクロマキー合成のせいで透明になってしまい、ネットで話題となった。実際に背景かどうかに関係なく、緑色のものを切り抜いて合成してしまうため、このようなことが起きる。

 

クロマキー合成を実装する

自然の緑でクロマキー合成をやりたい。そこで、まずはクロマキー合成をプログラミングで実装する。仕組みは次の通りである。

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緑の部分を透過し、背景と重ね合わせれば良い。意外と単純な仕組みだ。

これをPythonという言語でプログラミングし、実現する。

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日曜プログラミングという言葉がある。趣味でやるプログラミングは楽しい。ソースコードはここにあります。

一通りできたので、試してみる。

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100均で買った人工芝をカメラに認識させ、プログラムによって天気予報の画像を当てはめている。よし、うまくいった。

思っている以上にうまくいった。これを人工芝ではなく天然の緑でやりたい。外に出かける。

森の緑でクロマキー合成

緑を求めて、生田緑地という場所に来た。特に下調べはしなかったが、緑地と書かれているので緑がたくさんあるのだと思う。

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先ほどから画像で使用している筆者の全身姿の元素材はこれです。この写真は合成ではなく本当に撮った写真です。

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広場に来た。緑が多く、勝利を確信する。そこら中に天然のグリーンバックがある!
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パソコンを設置する。人工芝を持ってきておいて良かった。

さっそく、先ほどのプログラムでクロマキー合成をする。

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これが元の様子。

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クロマキー合成を施すとこうなる。

ん~。なんかイマイチ。うっすらと天気予報がみえるが、家でやったときほどうまくはいかない。

理由はおそらく2つ。

① 部屋の中と外では明るさが違う

② 森の緑は一色ではなく、いろんな緑色がある

天気予報のおじさんになりきるため、暑い中スーツを着てきたというのに、このままでは失敗で終わってしまう。

さっそく、その場でプログラムを修正する。

 

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緑地でプログラムを修正するスーツ姿の筆者。傍から見ると完全に不審者だが、時間帯が遅く人が居なかったのでセーフ。

プログラムを修正し、「どの部分を緑色と認識するか」という設定を変更した。

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緑といっても、いろいろな緑がある。HSV空間という色空間でどこからどこまでを緑とみなすのかを、プログラムで設定する。(図はWikipedia記載の画像(by Wapcaplet)を元に筆者が作成。)

芝生の緑でクロマキー合成

さらなる改善として、森の緑は濃い部分と薄い部分があって一様に緑というわけにはいかないので、芝生の緑を使うことにした。

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これはいいグリーンだ。
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北海道に腰掛ける筆者。

さっきよりはマシになったきがするが、芝生の砂の部分が緑色と認識されず、ノイズのようになってしまう。しかし気が付いた。

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右のほうにもっと良い芝生がある!

右のほうにきれいな良い芝生がある。しかし、そこは芝生の張替え中で立ち入り禁止となっている。そこで、立ち入らずにグリーンバックだけ写るように頑張る。

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これはかなり良いグリーンだ。たすかる。

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海をバックにしてみた。柵のぎりぎりから手を振る筆者。南の島と現実が柵により寸断されている。

まだまだ完ぺきではないが、ある程度は出来ていると思う。これ以上のクオリティは求めず、自然の緑でクロマキー合成をしているこの現状を楽しむことにする。

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柵のぎりぎりから楽しそうに手を振る筆者。合成後は南の島に来たことになっているので、楽しそうにする必要がある。

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天気予報。芝がはげているせいで大阪・兵庫あたりが消失しているが、比較的きれいに合成できている。意味不明な場所をてのひらで示す筆者。
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夜景を合成してみる。夜のニュースでは天気予報に入る前にこういう夜景が映ることがある気がする。しかし夜景はノイズが目立つ。あんまりきれいじゃない。

 

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家系ラーメンを合成してみる。これに関しては合成する理由はない。そんな合成は見たことない。
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クロマキー合成のおかげで家系ラーメンのチャーシューをツンツンすることができた。

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菖蒲の緑でクロマキー合成

場所を変えてみる。生田緑地には菖蒲園があるので、そこに移動する。

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移動の途中で見つけた、最も原始的な合成である、顔出しパネル。日の入りが迫っている。道草をしている場合ではない。

菖蒲園に来た。

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良い緑だ。花が咲いていないので本当に菖蒲なのかただの草なのか分からない。

菖蒲園にずかずかと入るわけにはいかないので、またしても工夫が必要である。

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今日はずっとこんなことばっかりしているな。

柵のぎりぎりから腕を伸ばす。そうして合成された画像がこちらである。

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中国地方を指さすことに成功した。草の白っぽい部分が映りこんでしまうので、芝生よりも全体的に汚い。

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日本地図の左上に表示されている沖縄の上で手を振る筆者。

草は難しい。一本一本の光の反射や影が映りこんでしまう。芝生が一番良かった。グリーンバックに向いているのは芝生だ。クロマキー合成をしたいときに緑の布がないときは芝生で撮影すれば良い。そんなことが分かった、26の夏。


とても満足している

自然の緑でクロマキー合成をしたいという謎の願望が叶った。あんまりきれいに合成できないところもあった。自然は手ごわい。それでも満足している。この記事を通じて何かを伝えたいとかはない。僕は自然の緑でクロマキー合成をやりたくて、それが実現した。うれしい。それで十分だ。自然よ、ありがとう。

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途中で発見したARの看板。すでに似たようなことが行われているのかと焦ったが、どうやら違うようだ。
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