バンメンの秘密
・あんかけラーメンである。
・横浜の一部にしかないらしい
横浜でご飯を食べようとふと入った町の中華料理屋でのできごとである。餃子、ラーメン、チャーハンなどどれもおいしそうで、空腹のあまり全部頼んでしまおうかと思ったが、あるメニューで目にとまった。バンメンである。バンメン?
夜になるとご飯を食べたくなる。チェーン店よりも個人がやってそうなお店で胃がはちきれんばかり食べてやろうと思い、見つけたお店に入った。
町中にある中華料理屋だ。仕事終わりにぶらぶらと歩いていたら見つけたのでビールと餃子でも食べようと入ってみた。
注文しようとメニュー表を手に取りながら、壁に入ってあるメニューをふと見ると気になるものを見つけた。
当店おすすめの中にある一番右にある「バンメン」の文字。初めて聞く食べ物の名前である。聞いてみるとラーメンらしい。
冷やし中華を食べて今年の夏も終わりしようと思っていたが、バンメンが気になるので頼んでみた。
具材が盛りだくさんでただよう香りも100点。今日は帰って、明日もう一回見ても100点なラーメンがやってきた。
しょうゆ味のスープにねぎ、にんじん、白菜、きくらげ、エビで作られたあんかけがのっている。
そこに細いラーメンが絡みついてはちゃめちゃにうまい。食べ終わったあとにご飯を入れて食べたら絶対においしいと思う。おいしいと思うならやってみるしかないのではやる気持ちをおさえてライスを注文する。
あんかけの味と具材から出るだしが、スープに溶け込んで、甘みのあるどんぶり3杯は食べられるおじやになった。餃子もおいしい。全部、おいしい。自分がお金持ちなら油田をあげている。
珍しいので聞いてみたら、どうやら横浜周辺にしかない料理らしい。
・あんかけラーメンである。
・横浜の一部にしかないらしい
一度意識してしまうと、気になってしまう。まるで初恋の気持ちだ。これは食べ回るしかない。色々と食べ回ることにした最初の1軒目、京浜東北線JR山手駅から40分ぐらいの場所に目的のお店がある。
横浜市中区錦町にあるこちらの中華料理屋。近くには倉庫や工場などの会社で多くあるため、そこで働く人が来ることも多いそうだ。
こちらにもバンメンがある。そして、先ほどのお店にはなかった漢字表記「辨麺」。次の漢字テストに出ても書ける自信がある。
バンメンの下にあるカレーソバも「辨麺」の名前がついていたので、「これもバンメンですか?」と聞いたら「これはカレーソバなので違います」と言われた。
カレーソバを食べたい気持ちをグッとこらえて、帰ったらカレーヌードルを食べることを決意しつつ、バンメンを注文する。
あんかけ焼きそばにも見えるが、聞くと「五目やきそばなどはあんをかけただけですが、バンメンはラーメンのスープを入れて、そこにうま煮をかけています。」
具材も色々と違っておいしいがもっと気になるところがある。皿が平たいのだ。
バンメン、もしかしたら浅めの皿に入れるのが共通の認識としてあるのかもしれない。
「そうか、浅い皿が特徴なのか」と思い、次のお店に行ってみる。
なにを頼んでもおいしそうな雰囲気がある。バンメンに対する期待もふくれあがる。
他のお店と同じく浅めのうつわを使っているが、ここのバンメンは他と違って甘めの味付けが口の中に広がる。
自分の好みの甘じょっぱい味。このスープを水筒にいれて持ち帰って大切に抱きしめたい。
・うつわが皿の場合もある。(普通のラーメンどんぶりの場合もある。)
・お店によって具材が変わる。具材が平均化されていない。また、味付けもそれぞれ少しずつ異なる。
続いて行ったのが、伊勢崎長者町にある「玉泉亭」というお店だ。
中には芸能人のサインが飾られている有名店のようだ。「なんか写真も飾っているな」と思ってよく見たらすごい写真だった。
田中角栄が来ている。すごいお店に来てしまった。財布を見たらお金が1500円しかない。どうしよう、ものすごく高いお店だったら。
こちらは大正7年に開店して、100年以上続く老舗の中華料理屋である。星がついているのはおすすめメニューだ。おいしいが約束されている。意気揚々とバンメンを下さいと頼んだ。
中華特有の風味に醤油の味、エビ、チャーシュー、全部がたまごでとじられている。その姿はまるで母の優しさのようだ。それはもう間違いないおいしさである。
どうして生まれたのか、聞いてみたが「昔からあるものなので、ちょっとわからない」そうだ。ミステリアスな料理である。
由来が謎。
謎のバンメンだが果たして、中国になにかヒントがないだろうか。そう思い、横浜の中華街にやってきた。
夜でもにぎやかな町でバンメンを探して歩き回る。おいしそうな料理がお店の前に並んでいるがバンメンの文字が見当たらない。
色々な食べ物があるはずの中華街でバンメンが全然見当たらない。なんでだろう、そう思いながら近くのお店の人に「バンメンってありますか?」と聞いてみる。すると、「うちにはないけど、ここにはあるよ」とバンメンのあるお店を教えてくれた。
お店の人が言うには「一般的な中華料理屋には置いてなくて、専門店のような場所でない」そうだ。
ここは食券式である。購入し、店員へと渡して席で待つ。果たしてどんなバンメンなのか。
これはなんだろう。今まで見た来たバンメンとは全然違う。ごまだれの冷やし中華みたいな見た目である。
食べて見るとコクがすごい。ピーナッツのコクだけを集めたようなタレに麺が絡み合って、濃厚で独特な味である。ピーナッツバターの甘くない感じだ。
変わった食べ物ではあるが、これもバンメンである。ただ、メニューのポスターを見ると、他のバンメンと違う点があった。
栄濱楼で見つけた「辨麺」とは違う漢字である。先ほどまで食べていたあんかけのバンメンを店員へ見せるが、こんなバンメン、中国にはないそうだ。どうやら本場中国のメニューではないらしい。
本場・中国には「辨麺」はないが「拌麺」はある。
逆に日本人がやっていそうな中華料理屋にはあるのではないかと横浜駅のレストラン街に行ってみる。ここで問題です。次の食べ物はなんでしょうか。
バンメンだと思った人、残念! お座り下さい。実はこれは違う食べ物なのだ。
広東麺は中国の地名「広東」で生まれたラーメンではなく、日本生まれの料理だ。広東に行っても広東麺という料理はない。天津飯が天津になかったり、ミラノ風ドリアがイタリアのミラノにはないみたいなことである。それっぽくて、おいしければそれでいいじゃない。
そして、神奈川県にはサンマーメンという野菜が乗ったあんかけラーメンがある。この記事に詳しいが横浜、似たような料理がありすぎじゃないか。
横浜にある中華料理屋でも置いてあるお店と置いてないお店がある。町の中華料理屋に置いてある確率が高い。似たような料理は置いてある。
生まれたきっかけだが、広東麺やバンメンも由来がはっきりしていない。しかし、1つ納得の推測を聞いた。
横浜の中華街があるように、元々横浜には中国人の人が多く住んでいた。そこの料理を見た日本人が作ったのではないかという説だ。
少し不思議な食べ物である。でも、バンメンはおいしいので横浜に来たらぜひ食べてみてください。
同じ神奈川県に住んでいるがバンメンの存在は知らなかった。隠れた食文化って面白い。
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