渡名喜島へのフェリーは一日一便
小さな島である渡名喜島には空港など無く、交通手段はフェリーに限られる。しかもフェリーも渡名喜島行きという便は無く、久米島行きのフェリーが途中で渡名喜島にちょいと寄って、人と物を下ろしていく、という寸法だ。
便数は上り下り共に一日一便。下り便が渡名喜島に到着する時間は10時45分、上り便が渡名喜島を出る時間は10時15分なので、つまり渡名喜島へ行くには最低でも島内で一泊せざるを得ない(ただし夏場は金曜日のみ上り便が増え、日帰りも可能らしい)。
しかも欠航しやすいとなると、う~ん、確かにハードルは高いかもしれん。
一応日程に余裕は持たせてあるが、帰りの飛行機の日までに戻れなかったらどうしよう。一抹の不安を覚えながらも、那覇の泊港にやってきた。渡名喜島経由久米島行きのフェリーは、この港から出航する。
船は順調に渡名喜島へと向かって行った。天候の影響か少々波が高く、揺れた際に屋根に溜まった水が突然落ちてきてびしょ濡れになったりはしたが、まぁせいぜいそのくらいで、至って普通の航海だった。
乗船時間も2時間くらいと船旅にはちょうど良いくらい。過ぎ行く島々をぼーっと眺めていれば、空き缶を磨くほどの暇など生じることはないだろう(→参照)。
しかし、今回問題になるのは航海の最中ではない。肝心なのは島に着いてから、渡名喜島の港に入る時なのだ。
渡名喜島の港は狭く、海が荒れるとすぐ入れなくなってしまうそうだ。何でも、フェリーが港に入るかどうかは、その時の船長の判断次第なのだとか。
際立って波が高いように見えないが、しかしそれでも天気があまり良くないし、入港できるかどうか心配されるところだが……
フェリーは私の心配など全く意に介しない様子で渡名喜島の港に入り、無事着岸に成功した。何だ、普通に着くじゃないか。
誰だ、誰なんだ。渡名喜島の欠航率が高いとか言ったのは。誰だ、誰だ、誰……あ、オレだった。
やってきたぞ、渡名喜島
冒頭でも述べた通り、渡名喜島はとても小さな島だ。島の周囲は12kmほどということなので、歩いても3時間程度、自転車なら1時間もかからず一周することができるだろう。
ちなみに、渡名喜島が属している自治体は沖縄県渡名喜村。この渡名喜島と、近くにある入砂島という無人島だけで成る村で、面積ではなんと日本で二番目に小さい自治体なのだと言う(日本一小さい富山県舟橋村についてはこちら→参照)。
それでは、早速島を歩いてみる事にしよう。港から渡名喜村の役場までは、沖縄県道188号線が続いている。
「港から渡名喜村の役場までは、沖縄県道188号線が続いている」などと偉そうに書いておいてなんだが、実は港と役場は、ほぼ隣り合っていると言っても良いくらいに近い。
それらを結ぶ県道188号線の全長は、たった25m。これは沖縄県内の国道や県道の中ではダントツ一番の短さらしい。
そしてその県道188号線の終点から集落内部へは、村道1号線が伸びている。
村道1号線の起点に立ったとき、まるで別世界に引き込まれたような錯覚があった。
県道188号線付近はコンクリートとアスファルトで固められた、いかにも港や役場という感じなのだが、この村道1号線に入った途端、それががらっと変化する。
道沿いにはフクギという常緑樹の生垣が生い茂り、地面は舗装されてはおらず白砂のまま。朝掃いたのであろう、ホウキの筋がところどころに残されており、清潔感がある。
「これは良い島だ!」 私はそう思った。
県道188号線ほどではないが、村道1号線もまた全長500m足らずと短い道だ。写真を撮りながらゆっくり歩いても、10分もかからず終わってしまう。そしてこの道は、渡名喜島における時間と距離のスケールでもあるのだろう。
ふと横道に反れると、展望の良さそうな丘へと続く階段が目に留まったので、登ってみる事にした。
どうよ、この景色。冬場であれど濃い緑色のフクギの中に、ぽつんぽつんと見える赤瓦の屋根。そして周囲は白浜に青い海。背後にはダイナミックな山々。いやはや、絶景の要素がこれでもかというくらいにてんこ盛りだ。
これでも十分良い景色なのだけれども、夏場の天気の良い日ならばもっとキレイなんだろうなぁ。でもまぁ、これはこれで風情がある(ような気がする)からいいや。