デジタルリマスター 2023年11月20日

冬の渡名喜島探訪(デジタルリマスター)

沖縄本島から西へ60km行った海上に、渡名喜(となき)島という離島がある。あまり観光化のされていない小さな島だが、そこには昔ながらの沖縄伝統家屋が数多く残っているという。

ほぉ、なかなか魅力的な島ではないか。そう思って調べてみると、どうも状況が芳しくない。渡名喜島へのフェリーは、結構欠航しやすいというのだ(だじゃれじゃないよ)。冬場は特に欠航が多いようで、数日連続で船が来ず延泊せざるを得なかった、と書かれてるブログもちらほら見受けられる。

しかし、溢れる渡名喜島への好奇心は抑えられない。今年の年末年始、沖縄へ行く機会に恵まれたので、思い切って渡名喜島へ渡ってみる事にした。欠航を体験しに……ではなく、渡名喜島の観光をしに。

2010年1月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

前の記事:気になる笠置町のアメーバ飛び地(デジタルリマスター)

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渡名喜島へのフェリーは一日一便

小さな島である渡名喜島には空港など無く、交通手段はフェリーに限られる。しかもフェリーも渡名喜島行きという便は無く、久米島行きのフェリーが途中で渡名喜島にちょいと寄って、人と物を下ろしていく、という寸法だ。

便数は上り下り共に一日一便。下り便が渡名喜島に到着する時間は10時45分、上り便が渡名喜島を出る時間は10時15分なので、つまり渡名喜島へ行くには最低でも島内で一泊せざるを得ない(ただし夏場は金曜日のみ上り便が増え、日帰りも可能らしい)。

しかも欠航しやすいとなると、う~ん、確かにハードルは高いかもしれん。

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フェリーが出るのは那覇の泊港
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前面がカパっと開くのがカッコ良い

一応日程に余裕は持たせてあるが、帰りの飛行機の日までに戻れなかったらどうしよう。一抹の不安を覚えながらも、那覇の泊港にやってきた。渡名喜島経由久米島行きのフェリーは、この港から出航する。

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あいにくの雨というのも不安に拍車をかける
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菅笠をかぶったおじさんにちょっと気持ちが和らぐ
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船内は……まぁ、普通のフェリーでしょう
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しかし、周囲に張られたこの雨避けのビニールが……不安だ
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程なくして定時どおりにフェリーは出航
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手すり側で黄昏ていたら、屋根に溜まった雨水が落ちてきた

船は順調に渡名喜島へと向かって行った。天候の影響か少々波が高く、揺れた際に屋根に溜まった水が突然落ちてきてびしょ濡れになったりはしたが、まぁせいぜいそのくらいで、至って普通の航海だった。

乗船時間も2時間くらいと船旅にはちょうど良いくらい。過ぎ行く島々をぼーっと眺めていれば、空き缶を磨くほどの暇など生じることはないだろう(→参照)。

しかし、今回問題になるのは航海の最中ではない。肝心なのは島に着いてから、渡名喜島の港に入る時なのだ。

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そうして、渡名喜島が姿を現した
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思ったよりゴツゴツしている島だ
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この港に入るのが大変らしい

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 渡名喜島の港は狭く、海が荒れるとすぐ入れなくなってしまうそうだ。何でも、フェリーが港に入るかどうかは、その時の船長の判断次第なのだとか。

際立って波が高いように見えないが、しかしそれでも天気があまり良くないし、入港できるかどうか心配されるところだが……

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フェリーは迷うことなく港へぐんぐんアプローチ
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意外にあっさり入ってしまった
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冬場の天気が悪い日でも、海の色はさすがにキレイだ
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そうして、渡名喜島に到着

フェリーは私の心配など全く意に介しない様子で渡名喜島の港に入り、無事着岸に成功した。何だ、普通に着くじゃないか。

誰だ、誰なんだ。渡名喜島の欠航率が高いとか言ったのは。誰だ、誰だ、誰……あ、オレだった。

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やってきたぞ、渡名喜島

冒頭でも述べた通り、渡名喜島はとても小さな島だ。島の周囲は12kmほどということなので、歩いても3時間程度、自転車なら1時間もかからず一周することができるだろう。

ちなみに、渡名喜島が属している自治体は沖縄県渡名喜村。この渡名喜島と、近くにある入砂島という無人島だけで成る村で、面積ではなんと日本で二番目に小さい自治体なのだと言う(日本一小さい富山県舟橋村についてはこちら→参照)。

それでは、早速島を歩いてみる事にしよう。港から渡名喜村の役場までは、沖縄県道188号線が続いている。

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渡名喜島唯一の信号機がお出迎え(でも車は全く来ない)
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港の前、ここから役場まで県道188号線が続く
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このポールの左が村道27号線、右が県道188号線
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この角を曲がって……はい、この奥で終わり
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ここからは村道1号線

「港から渡名喜村の役場までは、沖縄県道188号線が続いている」などと偉そうに書いておいてなんだが、実は港と役場は、ほぼ隣り合っていると言っても良いくらいに近い。

それらを結ぶ県道188号線の全長は、たった25m。これは沖縄県内の国道や県道の中ではダントツ一番の短さらしい。

そしてその県道188号線の終点から集落内部へは、村道1号線が伸びている。

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いきなり現れた生い茂る木々、白砂の道。これが渡名喜村道1号線
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分け入っても分け入っても、深緑の生垣が続いている
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絶妙な道のカーブ具合に思わず興奮

村道1号線の起点に立ったとき、まるで別世界に引き込まれたような錯覚があった。

県道188号線付近はコンクリートとアスファルトで固められた、いかにも港や役場という感じなのだが、この村道1号線に入った途端、それががらっと変化する。

道沿いにはフクギという常緑樹の生垣が生い茂り、地面は舗装されてはおらず白砂のまま。朝掃いたのであろう、ホウキの筋がところどころに残されており、清潔感がある。

「これは良い島だ!」 私はそう思った。

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最後にこの急カーブを曲がると……
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港と反対側の海に出て村道1号線、終了

県道188号線ほどではないが、村道1号線もまた全長500m足らずと短い道だ。写真を撮りながらゆっくり歩いても、10分もかからず終わってしまう。そしてこの道は、渡名喜島における時間と距離のスケールでもあるのだろう。

ふと横道に反れると、展望の良さそうな丘へと続く階段が目に留まったので、登ってみる事にした。

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ここまで登るのに結構疲れたが、うむ、なかなか良い景色じゃぁないか
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集落東部。陸と海のコントラストが素晴らしい
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集落西部。集落全体がフクギの木に覆われているのが分かる

どうよ、この景色。冬場であれど濃い緑色のフクギの中に、ぽつんぽつんと見える赤瓦の屋根。そして周囲は白浜に青い海。背後にはダイナミックな山々。いやはや、絶景の要素がこれでもかというくらいにてんこ盛りだ。

これでも十分良い景色なのだけれども、夏場の天気の良い日ならばもっとキレイなんだろうなぁ。でもまぁ、これはこれで風情がある(ような気がする)からいいや。

⏩ 次ページに続きます

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