特集 2020年4月2日

エイプリルフールの喫茶デイリーポータルZとはなんだったのか

喫茶店になっていました

2020年のデイリーポータルZのエイプリルフール企画は「喫茶デイリーポータルZ」だった。

https://dailyportalz.jp/special/cafe/

喫茶店のサイトとなって1日を過ごした。

だが、いきなり閉店するし無人の店内の生中継があるなど不思議な部分も多かったのであらためて説明したい。

この企画はただのエイプリルフールではないのだ。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと新宿区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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ずっと喫茶店になりたかった

2013年、当時所属していた会社の総務部長から連絡があった。オフィスがあるビルの下の商業施設のフロアに空き部屋があるという。編集部の部屋としてどうだろうとのこと。行ってみるとそこは元喫茶店だった。

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ここが編集部というのもおもしろい、が…

喫茶店居抜きのスペースを編集部として使うなんてかっこいい。村上春樹みたいだ。そう思ったのだが、そこを借りる条件は「喫茶店として営業すること。そしてランチも出すこと。」。

ん、つまりそれは喫茶店になるということではないか。

ランチの仕込みでサイトの更新が遅れる可能性がある。いや、そもそもこの会社、飲食店じゃないだろう。総務部長に聞くと

「約款を変えればいい。」

と一言。なんだその総務とは思えないフレキシブルな対応は。「あと、ランチはカレーでいいよ」とのことだった。カレーなら…と思ったが論点はそこではない。

その話はなくなったが「デイリーポータルZが喫茶店になる」というアイデアは棘のように残った。

2020年、喫茶店案に血肉がついた

総務部長の呪いおかげで、エイプリルフールの打ち合わせでは毎年「喫茶店になる」という案が出ていた。

喫茶店のサイトになっていて、サイトに書いてある場所に行くと「デイリーポータルZ」という店がある。

いいうそだ。

1日だけ借りられる喫茶店がなくて毎年見送っていたのだが、ことしは心当たりがあった。ライブ配信、配信用スタジオを持っているヒマイヌの川井さんが店のようなスタジオを作っていたのだった。

川井さんには以前、奴隷が押している棒の撮影場所を借りたことがある。

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考えてみればスタジオである必要がない企画だった(奴隷が回してる謎の棒って何なんだ?

今回は奴隷の撮影に比べたら説明しやすい。メッセンジャーで打診したところ、即答でOKだった。

すごいスピードでおかしなことが決まっていく。仕事の醍醐味である。

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素敵なスタジオである

このページで「喫茶デイリーポータルZ」と呼んでいるのは、ヒマナイヌスタジオ高円寺である。みんな使おう。

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うそ計画2020

喫茶デイリーポータルZのうそはこうだ

・2020年4月1日 デイリーポータルZは喫茶店のサイトになる
・そのサイトはブログのみ。店員のほか、常連客も書く(昔の喫茶店の落書きノートのようなものだ)
・店員、常連客はデイリーポータルZ編集部、ライター
・当日店の場所を公開、そこに行くとブログに載っていた店員と従業員がいる
・喫茶店営業をしてコーヒーとフードも出す

店側と売上シェア率を確認し、食中毒にならないようにフードは雪の宿だけにすることにした。編集部の安藤がむかし喫茶店をやっていたので彼にコーヒーを淹れてもらうことにした。

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だが、堂々とお湯をこぼしながらインスタントコーヒーを淹れた。

 安藤から

「カップラーメン出しましょう」

と提案があったが、かつての彼のカフェがそうやってだんだん深夜営業の飲み屋になっていたことを知ってるので無視した。

安藤の店はカメラも売るカフェだった。ヒマナイヌスタジオはスタジオなのであちこちにカメラがあり、安藤のトラウマを蘇らせていた。

世界観

関係者に原稿を依頼するにあたって、店に出入りする人のキャラクターを考えた。そしてライターに好きなキャラクターを選んでもらった。

配役は以下となった。

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この相関図をライターに渡して原稿を依頼した。
3月中に2回の撮影の機会を設け、ブログを書いてもらった。

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撮影のオフショット。オフショットなのか設定なのかよくわからないけど。

原稿を入れるブログは編集部の石川が1から手作りした。

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「絵文字がたくさん入って行間が長くて、常連が勝手に化粧水とか紹介しちゃうようなやつ」という雑なニュアンスが伝わった

そしてライター・編集部は無茶な設定を理解し膨らましてブログを書いてくれた。

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店長・古賀。ブログの雰囲気にあわせて「だっぴょー」とおかしなテンションになっている
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店に融資している信用金庫の職員となった井上さん。おもしろくない素材写真が最高におもしろい
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バイト役の北向ハナウタさんはドトール系列のBGMのBPMを調査。高級店ほどBPMが低いという法則を見つけていた。これエイプリルフールじゃないときの記事にしてほしい
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べつやくさんは店内で勝手に占いを始める常連客となった。
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常連の刑事はカウンターの女性が自分が追ってる人だと気づかない

そしていちばん難しい設定が西村さんである。日本兵、しかも怨霊だ。
締め切り前日にこんな難しい原稿ないという連絡があったがそうだと思う。僕もそんな原稿の依頼をしたのははじめてだ。

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それでも旧字・文語体の見事なブログエントリーをぶち込んできた

このほか、水道工事もチンピラもすべてよかった。

この企画がとても演劇的だな、と思ったのだ。

役割があって、ライターが役者のようにそれを解釈して書く。そして4月1日に実際に店が開くと、そこにはブログのなかだけだったキャラクターが実際に、いる。

占いをする常連がいたり、バイトが選んだBGMがかかって、水道工事の人がたまに現れる。表には刑事。開店時間はいつもの更新時間と同じ11時。
行けない人のためにネット中継も準備した。

いいエイプリルフールだ。
 

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あっちの世界では18年、喫茶店をやっている

ちなみに喫茶デイリーポータルZのブログエントリーの最初の日付は2002年10月7日である。デイリーポータルZが始まった日だ。
 

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どこかにデイリーポータルZが喫茶店である世界があって、それが2020年4月1日に顔を出すのだ。

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世界のしくみ

4月2日になるとその世界は見えなくなって、ねじれの関係のように離れていく。

でも開店前に閉店した

デイリーポータルZが喫茶店である世界が表出するタイミングに、100年にいちどのパンデミックが重なった。

店は窓全開にできるので風通しはよく、人も集まらなければ問題ない。滞在はひとり3分、テイクアウトのみの営業にするなど考えたが、閉店することにした。シンプルでおもしろいからだ。

喫茶店である世界が現れたと思ったら開店時間の前にいきなり閉店。時空の隙間はすぐに戻ってしまうのだ。タイムトラベルものでもおなじみの設定である。

大変だったのは4月1日当日に店に行ってブログを書こうとしていたライターである。架空の店、しかも閉店してる店のブログを書かなければならないのだ。乙幡さん、三土さん、江ノ島さん、西垣さんから知恵を絞った原稿が来た。

YouTuberという設定の西垣さんからは、店に行きそうで行かない動画

店からの生中継は無人の店内を中継することにした。

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無人の店内で日が暮れて夜になっていった。ここに店員と常連がいたのだ。あっちの世界は表に出ようとして、出る前に消えていった。

なにが本当で、なにがうそなのかよくわからなくなった。


エイプリルフールかどうかはおれが決める

今回の企画が好評で夏にまた開店

それもまた好評のため、秋に1週間期間限定でオープン。

記事に登場したフードもいれて1ヶ月のポップアップカフェ
……
そうしていつのまにか本当にデイリーポータルZが喫茶店になる、というのもおもしろい。いつのまにか世界が入れ替わっているというコメディだ。

しかしいきなりオープンしないという展開も意外だった。次回以降も理由をつけて直前で閉店、を繰り返すのも良い。来ない人を待つ物語みたいで。

今回はひとつのブログだったが、YouTubeやツイッターを使ってもいいだろう。ブログではおとなしく店長の言うことを聞いてるバイトがツイッターで悪口を書いてたりするのだ。

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おれたちのエイプリルフールはこれからだ!

喫茶デイリーポータルZ
https://dailyportalz.jp/special/cafe/ 

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