特集 2012年4月23日

全自動のりたま分離器で「たま」だけ食べ放題

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ふりかけの、のりたま。

海苔と、玉子、そして調味料等で構成されている。
これを、全部仕分けてみたらどのくらいの時間がかかるのだろうか。
驚くべきことに、当サイトではその時間がすでに計測されている。「のりたまの「たま」だけ食べる」によると、一袋62gののりたまを分けるのに、実に4時間かかるらしい。それで得られた「たま」は6g。

6gの「たま」のために4時間。それがプラチナなら話は別だが、「たま」である。手間すぎて、ちょっと人間のやる作業じゃないと思う。機械にやらせてみてはどうか。

今日は「自動のりたま分離器」を作ります。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。(動画インタビュー)

前の記事:0.2秒でラーメンがすすれる箸

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まずは敵を知る

そういうわけで、手元にはのりたまが一袋。2006年の記事を書いた工藤さんが買ったのと同じのりたまである。
6年前から変わらぬパッケージ
6年前から変わらぬパッケージ
一列に並んだヒヨコが「のりとたまごの絶妙バランス♪」と無邪気に歌っているが、そのたまごはおそらく彼らの兄弟。いや別の家族かもしれないが、少なくとも同族であることを思うと、複雑な心境になってくる。強がっているのか?
しかもそんな強がりでさえ否定しようとしているのが、今回の試みである。のりたまを全部分離して、「絶妙バランス♪」を台無しに。

…なんか、ごめん。
内容物を観察
内容物を観察
よく見ると、ゴマやおかか、小さなかりんとうみたいなかけらなどいろいろ入っているのだが、今回は「のりたま」の定義にのっとり、「のり」「たま」「その他(工藤さんはエーテルと呼んでいたが)」の3つに分けることを目的としよう。

第一ターゲット・のり

まずは簡単そうな、「のり」を分離するしくみを考えよう。のりの特徴といえば、ペラペラで、軽いこと。
5枚歯ファンを用意しました
5枚歯ファンを用意しました
のりを風で吹き飛ばしてしまおう。
実は同じ原理が、穀物の脱穀に使われているらしい。
「唐箕(とうみ)」という機械を使って、脱穀した穀物と籾殻を、風の力で選別するのだそうだ。
俺の唐箕は日本の食糧自給率に一切貢献しないんだぜ
俺の唐箕は日本の食糧自給率に一切貢献しないんだぜ
機体はダンボールで
機体はダンボールで
対象物を上から落下させ、横から風を当てることによって、軽い成分だけ吹き飛ばす。これが唐箕の基本構造。この部分は踏襲していこう。
いい風きてます
いい風きてます
ダンボールに穴を開け、送風機と窓をつける。ものの10分で終わる簡単な工作ではあるが、理論上はこれで「たま」「その他」はまっすぐ下に落ち、「のり」は箱のすみっこにたまるはずだ。

いざ、実験。
…
……
……
風に煽られてのりたまは全体にちょっと左に寄ってるが、肝心の「のり」と「たま」&「その他」は全然分離してない。
…まあ、工作って往々にして、こういうものである。むしろ最初から成功してしまっては面白くないだろう。そう来なくっちゃ。

ただ問題は、僕がこれ以上の策を何も用意していなかったことだ。

秘密兵器すぐ破れる

長考の末、これしかないという結論に至った。「さらなる風力を」である。
秋葉原に行ってきました
秋葉原に行ってきました
このマットなブラック、ずっしりとした質量感。誰もジャンク品で200円だったとは思うまい。
パソコンのケースに付けるファンである。なんたって12V。動かすのに乾電池8本が必要なのだ。
相当なパワーを秘めているに違いない!
弱かった
弱かった
僕はたっぷり5秒はかけて、ゆっくりとヒザから崩れ落ちた。
ファンの電圧が高いのはパソコンの電源系統に合わせただけだ。パワー関係なかった。大きくて広範囲に風を送れるので冷却能力はあるのだろうけど、風速はそんなに強くない。期待の方向が的外れであった…。

転んだらできれば有料で起きたい

とはいえ、ファンに学ぶべきところはあった。風の流れである。ファンの写真をもう一度みていただこう。
自作
自作
PC用ファン
PC用ファン
PC用ファンはファンの後ろが空いていて、空気をしっかり吸い込んでいる。
いっぽう、自作の方はすぐ後ろが壁だ。吹き出す前に、吸い込む空気が確保できていないのではないか。
こうなった
こうなった
ファンの背後の穴を広げた。そのあと風が機体内に溜まらず直線で抜けるように、ファンの対面の壁も網張りにした。これで風力100倍だ。
あと、分離後ののりたまを受ける部分に、仕切りを付けた。のりは仕切りの向こうに全部入ってもらおう。

で、結果。
はい…
はい…
動画も撮ったけど、載せるほどじゃないよな、と判断しました。
さっきとあんまり変わってねえ!

オレ流で行く

そもそも、唐箕をベースとしたコンセプトに無理があるのではないか。
のりたまを落下させる場合、ファンの前をのりたまが通るのは一瞬。その一瞬の間に、吹き飛ばそうとするから困難なのだ。
後で使おうと思ってた、ザル
後で使おうと思ってた、ザル
「俺さ、のりが分離できたらさ、そのあとザルに受けるんだ!それからそのザルを使ってさ、大きい「たま」と小さい「その他」に分けるんだ!」
そう無邪気に考えていたあの頃から、もう何時間が経っただろうか。

その夢はいちどは潰えたが、かわりにこんな形でザルが生きてくるとは。人生何が幸いするかわからない。

どう使うかって?まあ黙って見ててくれよ。
丸材をつけた
丸材をつけた
これ、作らなくてもこういう器具あるよな。
ラーメン屋とかに。
ファンは下の方に移動
ファンは下の方に移動
Ver.2、完成
Ver.2、完成
「のり」を飛ばしたあと、ざるで「たま」「その他」を分離、そうやって2段階に分けるからややこしいのである。

そうじゃなくて最初から全部ざるに入れてしまって、「のり」を飛ばしながら「たま」「その他」をザルで分けていけばいいのだ。
実演してみよう。
ザルが手動なのがちょっとダサいが、いい感じで「のり」が吹き飛び、「その他」が落ちる。
こうして分離されたのりたまが、これだ!
わ、わかれた…!
わ、わかれた…!
やった!分離してる!!!!
純度100%で完璧に分離、とは言えないものの、かなり分かれていると言っていい。自動のりたま分離器、完成である。
めでたしめでたし。はい、おしまい。

…で、いいのだろうか。これって自動なのか?ザルの操作にけっこうコツがあって、上の結果は10回くらい練習した後の写真だけどいいのか?そのたびにのりたま回収するのけっこう大変だったけどいいのか?これでも自動のりたま分離器といえるのか!?

もっと文明にはできることがあるはずである。米を炊くのだって昔は技術が必要だったが、今は炊飯器でボタンひとつである。
人類に、練習しないでのりたまを分離できる世界を!
モーターにアンバランスに重りを接着
モーターにアンバランスに重りを接着
ザルに付けて
ザルに付けて
バイブレーター機能つきザル
バイブレーター機能つきザル
ザルを使ったことがある人なら、この有用性はすぐにわかるだろう。
というか、これ普通に市販されててもいいんじゃないだろうか。
だってこの便利さである
前ページの動画、ザルのふちをやたらダンボールにガンガン叩きつけているのが気になった方もいると思うが、ザルってそうしないと、ふるい切れないのである。そこを自動化したのが、この新型ザルだ。

半自動のりたま分離器にこの半自動ザルをくわえれば、半+半で全自動と言ってもいいのではないか。

試作3号、その性能を上からのアングルで見ていただこう。
分離したのりたまがこちら。
前ページと遜色ない仕上がり
前ページと遜色ない仕上がり
分離精度は変わらないが、作業効率はずいぶん上がった。ザルはたまに持ち上げて、のりたまを寄せてやるだけでOK。ガンガン叩き付けなくてよくなったので、夜遅い時間にものりたまを分けることができる。ひとり暮らしで残業の多い、独身サラリーマン向けのモデルである。

これにて自動のりたま分離器、完成!寝ます!(夜中までかかった)

まだ終わらんよ

大学生のころ僕は大阪に住んでいたんだけど、住んでいたマンション(という名前だったが実質はアパートだろう)は洗濯機が共同で、ボロボロの二槽式が屋上においてあった。

平成生まれの人のために説明しておくと、二槽式洗濯機というのは全自動になる前の洗濯機だ。「洗う槽」「脱水する槽」の2つがついていて、洗い→脱水→すすぎ→脱水、の行程ごとに洗濯物を移し替えなければいけなかったのだ。
当時住んでたとこ。建物内に樹を2本飲み込んでいる、ビジュアル的にもすごい建物だった
当時住んでたとこ。建物内に樹を2本飲み込んでいる、ビジュアル的にもすごい建物だった
そういうわけで、僕は洗濯のたびに部屋と屋上を、何度も何度もいったり来たり…。いまだに家事の中で洗濯がダントツに嫌いなのは、あの頃のトラウマが残っているからだと思う。

何がいいたいんだっけ。そうそう、やっぱり機械なのに人の手がいるのは悪だと思うのだ。それが洗濯だろうと、のりたま分けだろうと。
前ページではすっかりつかれて寝てしまったが、一晩明けて気分がリフレッシュしてみると、その人手の部分が急に許せなくなってきた。

本物の全自動を見せてやる…!
決意を胸に作業部屋に行ってみると、散らかり放題でびっくりした
決意を胸に作業部屋に行ってみると、散らかり放題でびっくりした

全自動への道

せめて掃除してから寝ればよかった、という後悔はさておき、ふたたび工具との格闘が始まる。
前ページで作ったザルをいったん解体
前ページで作ったザルをいったん解体
家に余ってたギアボックスをつける
家に余ってたギアボックスをつける
機体に固定
機体に固定
わーメリーゴーランドみたい!
わーメリーゴーランドみたい!
さらに、バイブレーターをギアボックス側に装着
さらに、バイブレーターをギアボックス側に装着
一気にお見せしたが、これが全自動への道である。
ちなみにバイブレーターをギアボックス側に付けたのは、ザルにつけると回転でねじ切れるからである。ギアボックスごと揺らすことにした。

全自動のりたま分離器、こんどこそ完成
全自動のりたま分離器、こんどこそ完成
さあ、本物の全自動、今度こそ完成だ。その動作を、とくとごらんください。
分離されたのりたまたち
分離されたのりたまたち
のり
のり
たま
たま
「その他」
「その他」
わかってる。分別が完全じゃないのはわかってる。
でも違うだろう、大切なのはそんなことじゃない。僕らはのりたまを綺麗に分けたいわけじゃない。だってそのまま食べた方がうまいじゃん。
それよりも、機械がのりたまを分けたことに意義があるのだ。人の手を使わずに、スイッチひとつで。全自動で。機械が!

その興奮は、ここまで読み進めてくれたあなたならわかってくれることと思う。
最後に、アポロ11号に搭乗したアームストロング船長のこの言葉を引用し、この原稿を締めることにしよう。

「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ。」

雰囲気だけで言った

アームストロング船長の言葉とこの記事の内容は全く関係がないのだが、引用しておけばなんとなくかっこよく締まるかな、と思って載せてみた。なんのつながりもないので考え込まないで欲しい。

あと筐体をダンボールにしたのは試作品だからであって後でスチールで組み直そうと思っていたのだけど、のりたまは思ったよりも手強く、とてもそんな手間をかけている場合ではなかった。こういった点も含めて、やはり一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だったのだ。(ここも雰囲気だけです)
後日ちゃんと掃除してから撮り直しました。改めて全貌
後日ちゃんと掃除してから撮り直しました。改めて全貌
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