溶接マスクを買う
溶接マスク、通販で手頃な値段のものを見つけた。
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値段の割にしっかりした物に見えて嬉しい。商品のレビューにも「中途半端な性能のものを買うくらいだったら、これで十分」というようなことが書いてあった。溶接をやったことはないが、説得力を感じる。
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集中力が上がった
では、出そう。緊張感。
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顔の正面から来る音が遮られてすごく静かになった。視界も狭まり、集中力が上がる。
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とんこつラーメンの一蘭の、味集中カウンターというものがあるが、あれを思い出した。感覚が対象だけに向かっていく感じ。
緊張感の中でも、スポーツ選手がゾーンに入った時のような心地いい緊張感だった。きっと溶接もうまくいくだろう。
外でも使ってみよう
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やっぱり緊張感が出る。今まで見るという行為を侮っていた。ただ視界に入れるだけではなく、集中して見ると心持ちが全然違う。
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そうこれ、マスクをかぶった本人とそれを外から見る人で見え方が全然違うのだ。
本人がいつもと違うものの見え方に目を見開いている時、外からは「何でもないものを異様に怖がる人」に見える。その様子が、怖い。相手と自分の溝を感じるから。
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第三者がいると分からなくなる
「物」があり、それを「溶接マスクで見る自分」がいる。見え方が変わりドキドキする。
しかしそこに「その様子を見る人」が加わると、ドキドキがどこかに行ってしまう。悲しい三角関係。
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「あっぶね〜…」という顔で窪田さんに同意を求めたら、またスーンとした顔で僕を見ていた。噛み合わない、顔が。
あれ、と思い手元を見ると麦茶がある。もちろん全く危なくない。確かにそこにあった緊張感が、砂みたいに一瞬で崩れて何も分からなくなる。
世界が僕と麦茶だけなら良かったのに。でもそれではダメなことも分かっている。人はつながりの中で生きていくものだから。