イランの結婚の儀式
しばらくしたら祭事の準備が始まりました。最初にエスファンドと呼ばれる植物の煙をあびます。魔除けとかの意味があるとのこと。
そしてコーラン(イスラム教の聖典)に口づけ。
これは神様へのリスペクトを示すためで、「神さまありがとう!」的なノリでよくやるらしい(アリサさん談)。
準備が整ったところで、親族が誓いの宣誓っぽいのを読み上げて下さいました。
名前を呼ばれたら「バレ(YES)」と答えます。ペルシャ語なんでわかんないまま答えてますが「二人とも仲良くやってね?OK!」みたいな内容なんでしょう。おそらくきっと!
ここから、イラン式 結婚の儀式が始まります。
第一の儀式 砂糖がけ
私と妻の上に白い布がタープのように渡されているんですけど、そのうえでガツガツと何かを打ち合わせています。
これは"砂糖(ガント)をこすって、新郎新婦の上にふりかける"という儀式。
こすってる間には"詩を朗読"
※イランでは詩が人気
もうさっぱりわからなすぎて、どんな顔してればいいのやら?(なんか真面目そうな顔してますね私)
砂糖には『二人の暮らしが甘く幸せになりますように』みたいな意味がこめられてるらしい。甘い結婚生活ってのは世界共通なのですね。物理的に甘いのは想定外ですけど…!
第二の儀式 はちみつ交換
続いて、はちみつの入ったグラスを渡されました。
何やら、この"ハチミツをお互いになめさせる"という催しをやるらしい。
親族&友人一同に見守られる中、小っ恥ずかしいわけですが、グラスに小指をつけて口へ…
イランでよくやる儀式で、これも『二人の暮らしが甘く幸せになりますように』的な意味があるとのこと、どんだけ甘くさせたいんですかイランの民は…!
第三の儀式 指輪交換
指輪の交換。これは日本でもやるよくあるやつ。
共通文化なんですけど、交換したあと指輪にキス。いちいち熱量が強い…!
第四の儀式 写真撮影&贈り物タイム
そのあとは写真撮影。嫁の父母や兄弟とパチリ。日本からやってきた友人のみんなとパチリ。疲れてきた私は「顔がぎこちないよ!」と指導を受けたりしつつ、代わる代わる親族の皆さんがやってきて撮影していきます。
てか、義父の妹さん家族とパチリ、義父の弟さん家族とパチリ、義父のまた別の弟さん家族とパチリ…、終わらない写真撮影。
てか参加者が多すぎませんか?「親類で結婚式をやる」くらいに聞いていたので、多くても2~3家族で10数人かと思っていたのですが、どうも義父が10人兄弟(!?)らしく、その兄弟がそれぞれ自分の伴侶や子供(さらに、その子供も!)が来てくれている。合計で50人以上が参加してるのではなかろうか?
あとあと聞いた話だと、これでもイランだと小規模。我々を気遣って最低限な人数にしてくれてて、遠縁の方は断ってくれているそうです。ちゃんとやったら100人超えるらしい。ホント熱量が強烈なんですよね、イランは!
イランの結婚式でお金ではなく、ものを贈る
続いて贈り物タイム。イランは結婚式で参列者が新郎新婦に贈り物をする風習があるみたい。我々も伝統工芸品(金属製の花瓶)とか、金製品(金の指輪とか!)などをいただいてしまいました。
ちなみに、これが日本で言う"ご祝儀"の代わりのよう。イランは通貨が安定しないので「困ったら売ってね」みたいな感覚で、価値がある贈り物をするらしいです。さすがは商人の国、しっかりしてますね。
ところで、いただいたヘビ皮バッグ、どこで使えばいいんでしょうか…。
イランの結婚式は男女わかれてやる!
ひとしきり、写真撮影を終えたところで、儀式の間の部終了。テーブルについて食事をとるとのこと。
親族に案内され…二階ホールをでて、下のフロアへ、
「あれ?移動?」
…と思うところなんですが、ここから先は男女が別の部屋。イスラム的なしきたりでそうなってるっぽい。
男部屋は落ち着いた雰囲気。私も男性友人らの近くに座って、式の感想なんかをしゃべりつつ、果物をかじってちょっと一息、
とはいえ落ち着くまもなく、すぐに義父と共に挨拶まわりが始まりました。親族の男性陣に「サラーム」と挨拶し、両頬にキスをする"チュッチュ"の挨拶をこなします。急に結婚式から社交会に変わりましたね。ここはどこ!?
…と、ここで
『 ズン♪ ズン♪ 』
上のフロアから音楽が聞こえ始めました。
これは…
ダンスミュージック!!
上の女性フロアではダンスパーティが始まったよう。男性陣は厳かに社交会。対して女性は賑やかにダンスパーティ。ここはどこ異世界?
新郎だけが入ることを許された、女性パーティ部屋に入る!
ちょっぴり宗教的な話になっちゃうのですが、イランで一般的なイスラム教の女性は、いわゆるスカーフのような"ヘジャブ"で顔や体を覆うしきたりがあります。特に成人男性がいる場では基本的に必須。
しかし、女性しかいないときは外してよくって、外したときはそのぶん開放的になるものらしい。そう今の上のフロアは女性しかおらず開放モード、貴重な機会であり、踊り歌って楽しむのがキホン。
そして、そのフロアに”新郎だけは入室できる”とのこと、
「えっ、そうなの!?いいの!?」
結婚式の女性部屋にいざ突入!
というわけで、他の友人や家族を置いて、義父と私だけ上のフロアに移動。
戻ってみると…メッチャ踊ってる!
主賓席の左右にあったスピーカーが猛烈にダンスミュージックを奏でています。ズンズン♪ジャカジャカ♪私は結婚式か社交会にいたはず…クラブにきた覚えは…
んで、とうぜん私も誘われて踊らされるわけです…!アァー!!
私は踊りのスタイルがよくわからんので、周りの人を真似て必死に体を動かします。
すると、うまく踊れたのか?チップが飛んできました。ヒラヒラ~と、100万リアル紙幣や10万リアル紙幣(インフレしてる)を浴びつつ踊るわけです。ヒラヒラ~フリフリ~。ちょっと楽しくなってきたかも!
厳しい慣習を守りつつも、開放できるときではハッチャける、これがイランのやりかた…!普段はつつましくしつつも、楽しむときは楽しむ。たくましい国民性を感じるひととき。
イランのウエディングケーキは踊らねば食べられない
女性部屋でしばらく踊っていたら…ケーキがやってきました。
「こっちにもあるんだ。結婚式のケーキ!!!」
ではさっそく、ケーキ入刀…!
とはいかないのがイラン流、ケーキを切るためのナイフは踊らないと貰えません(なんで!?)
音楽に合わせて体を動かし、踊りながらナイフを受け取る…というミッションにチャレンジ。もうね今日だけで一生分踊った気がしますよ。
そうして何とか受け取ったナイフでケーキに刃を入れ、めいっぱい祝福されました。フゥ…!
ここまできてようやくご飯にありつけます
このあたりでやっとこさ食事(長かった…!)
別部屋(さっきのごちゃごちゃした小部屋!)に移動すると、ちみっこいテーブルに所狭しとペルシャ料理が並び始めました。
ホールで食事をしないのは「男性がいると女性が自由に楽しめないから」とのこと。なるほど、ルールをうまくいなして楽しむのがイラン流。我々は二人きりでちょっとさみしいですが、落ち着いて食事できるので良し!
メニューは、
・べレンジ(サフランライス)
・バカリポロマイチェ(そら豆と羊肉入炊き込みご飯)
・クビデケバブ(羊の串焼き)
・ジュジェケバブ(鶏の串焼き)
・サラダ
・でかいバケツゼリー
・さっきのケーキ(全部中身が詰まってて、なおかつ美味しい)
・ぶどうジュース(イランではお酒を飲みません)
など、どれも美しく映える一品。イラン飯はかなりうまいんですが、それはまた別の機会に話をさせてください(長くなるので!)
そういえばさっきまでの女性フロアでのイベント、とうぜん男性陣のフロアではやってません。
男性フロアでは何をしていたのか?というと、ずっと穏やかに会談と食事をしていたそうです。2〜3時間くらい。
「これ、日本からきた男性組は損じゃない!?」という話、たしかに!
とはいえ、これに関しては「我が家の男性陣が真面目すぎるだけ」というのはアリサさん談。他のご家庭は男性ホールでもダンスしているのかも?
宴の終わりと次の宴へ
食事をとったらほぼ終了、閉会に向かっていきます。
ホールをでて時計を見てみたら時間は24時。
ほとんど12時間はお祭り騒ぎをやっていた計算。イランの民のパワー…おそるべし!
しかしこれで終わらず、帰りも道行く車に🚘<プップップププ!!)と祝福されまくったり、家に帰っても親族が集まっての会談がはじまって、寝たのは深夜の3時とか…!!
本当にイラン人はパワーがあります。そのタフネスがどこからきてるのかさっぱり分からない!本当の結婚式だと自宅でのパーティが数日は続くらしいです。新郎と新婦を二人きりにしてはいけないとか(なんで?そっとしといて??)。
さすがに体がもたん!!むりよ!ドクターストップ!
というわけで我々は「友人らの観光のため」という名目とともに翌日、バスに乗り込み北部の観光地へ旅立ちの脱出。
そこからはイランの湿地を目指すギーラーン州の旅が始まるのですが長くなるのでまたそれは別の機会に…!
イランなまとめ
はい、そんなわけでイランで(なかば強制的に)結婚式をさせられてきたレポートでした。
アリサさんと関わるまでは、それほどイランに詳しくなかった私ですが、行って結婚式をやってみて分かったこと…とにかくイラン人はパワーがあります。そして賑やかで、ホスピタリティが高い。もてなさなければ死んでしまう民族。いい国ですね。
イラン周辺は国が密集してるエリアであり争いもゼロではないんですけど、首都のテヘランは落ち着いていて、国の皆さんは賑やかに暮らしていました。今後アリサさんとおつきあいをする上で関わることになるでしょうけど、ぜんぜん不安なく楽しくやってけそうです。(体力がもつか心配なこと以外は)
そしてそれ以前に我々は無事日本に帰ってくることができるのか!?(主に体力的な意味で)
長文、お読みくださりありがとうございました。機会があればまた"続イランの話”をしたいくらいには楽しい国でした。最後に、歓迎して下さった親族の皆様、一緒に行って下さった友人の皆に感謝を!
参考にさせていただいた資料
Wikipedia(イラン版・日本版)
arga-mag.com(ファッション&ライフスタイル)
talarkadeh.com(ウェディングプラン
この記事は読者投稿でお送りいただいた記事です。
編集部より寸評
海外の異文化を紹介するレポート記事は数あれど、自身の結婚式ともなると、他に類をみない希少な記事でした。しかも日本人の大多数にとって特になじみの薄いであろう中東。知らないカルチャーが目白押しでした。
対象の珍しさだけでなく、筆者のさんの筆致も軽く、ボリューム大の記事でありながらサクサク読み進められるのも良かったです。
結婚式という自分が主役の場でありながら、巻き込まれていく側の視点で書かれているのも楽しく、またイランの人々のパワーを感じさせる効果があったと思います。(編集部・石川)
記事原稿募集中
未発表原稿のほか、すでにご自身の個人ブログやSNSで発表したものでも可。優秀作はこのように掲載させていただきます。
詳細はこちらから。→記事原稿募集ページ