11月の天気振り返り
西村:
順調に(気温が)下がってきてますね。
林:
寒いのはこの辺(11月13、14日あたり)ですね、なんて言って、その後またすごい谷(11月19日〜21日あたり)が来て……でも、11月下旬からすこし暖かいですね。
増田:
そうですね、昨日(12月1日)20℃でしたからね。
林:
とは言え、温暖差ありつつ下がっていく感じですね。これ、いつもグラフ描いてて思うんですが、平年気温見ると傾向がわかりますね。平年の気温のグラフをみると、1月の21日、22日ごろが谷だから、そこまで……。
増田:
そこまで(寒さを)ガマンすればいいんですよってのはわかりますね。
西村:
あと、1ヶ月ちょっとぐらいか。
増田:
そうですね。それまではドラゴンボールみたいに、どんどん強い敵、強い寒さが現れるという感じですね。
林:
今週(12月最初の週)は寒気がやってくるんですよね。増田さんがいつも「あったかい空気がくると反動で寒くなるんです」と言いますが、この反動ってどういうメカニズムなんだろう。
増田:
空の高いところの風が、波打ってる感じですね。基本的に風は西から東に流れていて、この風がさ−っと流れているときは南の暖かい空気と北の冷たい空気は混ざらないんですが、川の流れと一緒で、流れが緩まるとこう、蛇行するようになる。
林:
蛇行の空気がそのまま西から東に流れる。
増田:
そうです、南の空気が勝ってるときは暖かくなって、北の空気が勝ってるときは寒くなる。
西村:
観測者は同じ場所にいるから、気温が反動で上がったり下がったりしてるように見えるけど、これは暖かい空気と冷たい空気の蛇行の波の中にいるだけということですね。
増田:
そうですね。風は水と一緒で、流れが早いとさ−っとそのまま流れるのに比べて流れが緩やかだとうねうね蛇行する。
西村:
平地の川と一緒だ。
林:
風って偏西風ですか?
増田:
偏西風ですね。
林:
あ、いつもの偏西風だ。結局、天気の話は偏西風と蛇行ってことになりますね。川の流れとか、風の動きって結局自然科学だから一緒ですね。
西村:
物理ですよね。
林:
今後の見込みとしては、例えば1月とかになると蛇行は無くなるんですか?
増田:
蛇行が大きくなると、風の流れが渋滞して蛇行が止まるんですね。すると、日本列島が寒気に覆われて例えばですけど、東北でものすごい雪が降るみたいなことも起こります。寒気が日本列島を覆う形でとまっちゃったら「鍋底型の寒気」なんていいますね。
西村:
季節によって、偏西風の流れ方とかは変わったりするんですか?
増田:
偏西風の早いところは暖かい空気と冷たい空気の境目なので、冬になって冷たい空気が勝ってくると、だんだんだんだん南に行きますし、夏が勝ってくるとだんだん北に行きます。基本夏とかはこの偏西風というのはもうだいぶ北を流れているので、だから夏ってあんまり西から東に天気が移ったりはしないんですよね。
2025年の夏は本当に暑かった?
林:
12月ですね。新語・流行語大賞では二季がトップテンにはいってましたが、2025年の天気で印象に残ったことを読者の皆さんに聞いてみました。
西村:
これ、きいたんですが……暑かったという話がすごく多くて。
西村:
確かに暑かったのはそうなんですが、実際のデータ上ではどうだったんだろう? データを比べてみれば意外とそんなに暑くなかったんじゃないか? と、あまのじゃくなんで、そういうのが気になるんです。で、気象庁の最高気温のランキングなどを見てみたんです。
西村:
これを見ると、20位(同率順位含む22件19位)までの中に今年が8件も入ってまして、こんなにランクインしたのは、かつてなかったのでは? と思いました。
増田:
なるほど。これ2018年も結構入ったんですよ。
林:
ちょっとその名残りがありますよね。
西村:
今年が暑くて2018年の記録が下に押し出されちゃってる感じですかね。
増田:
それもありますが、地点によっては2018年に暑い記録がでて、今年書き換えられちゃったのもあるかもしれない。2018年のランキングデータ確認してみましたけど、5地点はありましたよ。
西村:
まあ、暑さを記録した地点、場所、日数、数でいったらやっぱり今年は多いのは多かった。でも、8月平均気温での平年差を比べれば2023年のほうが高かった。
増田:
そうですね、でもまあ、これはデータのどこを切り取ればそう見えるか。という話ですから。やはり、いちばん「文句を言わせない」っていうのは気象庁の定義で6月〜8月を夏としていますが、その三ヶ月の全国の平均気温というのは今年また1番を更新したので、全体の平均をとると、25年は一番だったね。ということになりますね。
西村:
うーん、残念(笑)
増田:
あとはピンポイントの過去最高気温(国内の史上最高気温)も1位を更新しましたね。この二冠は大きいです。いろんなタイトルがあるなかで、MVPと沢村賞みたいな。そんな感じですよ。
西村:
ランキングデータ好きとしては天気のいろんなタイトルを知りたくなりますね。
増田:
タイトルは色々ありますからね、真夏日記録とか、あと去年の福岡の大宰府であった35℃以上の猛暑日の最多日数とか。タイトルはいくらでも作れるなと思いましたよ(笑)

西村:
それでちょっと思ったんですけど、これはまあ屁理屈ではあるんですけど、暑かった日というのは、その日のどの瞬間がどれぐらい暑かったかを比べるよりも、その日一番涼しいとされた時の温度がどれぐらい暑かったのか? を比べるべきじゃないのか、と思いまして、つまり最低気温の最高気温を比べる……。
増田:
そうですよね。
西村:
ランキングデータを見てみたんです。
増田:
これもタイトルに入れたいぐらいですね。
林:
これを見たら、東京は暑い暑い言っても30℃越えているのが2013年に1日あるだけで、暑くても30℃は切ってるんですね。
増田:
そうですよね、この日はね、覚えてますよ!
小林:
覚えてますね!
西村:
覚えてるんだ……。
増田:
0時を迎える直前に、我々もチャットで「これは、記録、記録、記録!」ってやってましたね。これはあれだ、江川崎の記録が出た時の熱波が来てて、本来なら東京は暑くなると夕立がサッと降って最終的にはポンと気温が下がることが多くて、流石に30℃は切るだろうと思ってたけど雨が降らなかった。雨雲が来たと思ったら、都心に来る前にフワッと別れて、結局下がらないまま30℃を切らなかった。これを奇跡の分割って僕は勝手に呼んでます。
林:
そんな、ドーハの悲劇みたいな。これ、たしかに今年の桐生で41.8℃のときもちゃんと夜は30℃切ってるんですね……。
西村:
で、これランキング上位をみてみると、ことごとく日本海側なんですよね。しかも新潟と山陰(鳥取・島根)なんです。
増田:
これはもう、明らかに台風絡みですね。2023年の8月10日ですよね。やっぱり、台風絡みですね。
増田:
台風が九州の西を通って北上している。九州の西を通るってことは、高気圧の縁を通っているので、夏の高気圧がバーンと九州~本州に張り出していて、暑い状態は作られている。さらに台風が南からの熱い空気を引き込むので、さらに温度が上がりやすくなる。プラス、台風に向かって日本海の方まで吹き込む風で南風、もしくは南東の風になって山越えするので、日本海側でフェーン現象が起こって、それで暑いんですよ。
林:
2位の2019年の相川も?
増田:
これも台風ですね。
増田:
台風が南から来ていて、そのまま日本海にまっすぐ進んでいるので、南風が吹いて夜でも気温がさがらなかった。
林:
例えば桐生とかの暑いのは、夕立なんかで下がっちゃうけど、そういうのはフェーン現象では起きないんですか?
増田:
もちろん台風の雨雲がすごくて雨が降ってたら気温は上がらないんですが、この辺まで北上しているとだいぶ台風も弱まっているんで、雨雲が届いてないことが多い。そしてフェーン現象というのはこの暖かい空気が山を越えて下降気流になる。下降気流は雲や雨雲って消える(気圧が上がって空気の温度が上がり、空気が抱え込める湿気の量が増えて雲が消えるため)んですよ。
林・西村:あー。
増田:
だから、雨が降りにくく、気温だけが上がっちゃう。
西村:
ずーっと最高気温一位だった1933年7月25日の山形の40.8℃、これもフェーン現象だったんですよね。
増田:
そうですね。
今年が暑かった原因とは?
西村:
さて、今年の夏が暑かった理由ってなんでしょう?
増田:
理由は一つじゃないと思いますけど、今年に関して特徴的だったのは、やっぱり梅雨が梅雨らしくなかったというのは大きいと思いますね。
西村:
あぁ、そういう意見も来ていました。
増田:
6月からもう40℃近い日が出てきて、それが夏全体の平均の気温を押し上げたというのもありますし、6月で高温のベースができちゃったから、7月、8月とその上に暑さの建物が立てやすくなったというのもあります。あと、ふつう梅雨前線がベターっとあると、雲に日差しをさえぎられ海水温が上がりにくくなるんですけども、今年は梅雨前線が途切れ途切れだったり、雨が少なかったりで晴れてた日が多かったので、海水温が六月から暖まりやすかったというのはあるんですよ。日本のまわりが湯たんぽみたいになってしまったわけですね。
西村:
梅雨が一回途切れてまた梅雨になったみたいな感じでしたよね。
増田:
はい。それも途切れていた期間の方が長かったですからね。皆さん梅雨がうっとうしいとか、マイナスのイメージが多いですけど。梅雨がないと、こういう大変なことになっていくからっていうところですね。
林:
6月に40℃ぐらいになって、冗談で「このまま8月になると50℃だね」なんてこといいますけど、結構それだったってことですね。

