ピリリとした非日常がやってくる
ざるメシ、非常に簡単なのだ。
炊いたご飯を冷まして、ザルにのせるだけ。
なぜ誰もやらなかったんだと思う手軽さだ。
しかしだ。
見慣れない。
見慣れたものしか目に入らないはずなのに。
誰もがやる前から思ったであろう、最初の関門だ。
食べづらい。
ぽろぽろと暗いつゆの中へと落ちていく粒たち。
なんとかすくって食べてみよう。
味は美味しい。
美味しくない要素がないのだ。
麺つゆと白米は合う。薬味と白米も合う。
当たり前のように、美味しい。
これはいけるんじゃないか。
和食のニュー・スタンダードとして、高らかに名乗りをあげたいと思った。
ちょうどその時、
同居する家族は蕎麦を茹でて食べようとしていた。
蕎麦の美味しさとともに、すこしずつ深まる知見
ざるメシの後に食べて、強く感じたことがある。
蕎麦は、麺をズズズとすするということだ。
喉ごしのよい炭水化物が、勢いよく口の中に飛び込んでくる。
その愉悦。
当たり前になっているが、とっても気持ち良い体験なのだ。
ざるメシにはそれがない。
代わりに食べづらい。
…しかし、そこは道具次第でなんとかなるはずだ。
このまま出オチで終わりたくない。
もう少し、ざるメシと真剣に向き合いたい。
食べ物で遊ぶ大人になりたくはないのだ。
そう心に決めると、ざるメシには喉ごしがない分、別のメリットが浮かんでくる。
食感というのは想像以上に大きいもので、同じぐらいつゆをつけても、蕎麦よりご飯の方がつゆの旨味甘味を感じられる。
そして、食べづらい分ゆっくりと味わえる。
つゆの配合もざる蕎麦とは変わってくる。
今回、にんべんの麺つゆをベースに使ったが、蕎麦で食べるときよりも甘味を強く感じる。
米自体も甘いからだろう。
料理として成立させるには、やはりひと手間が大事だ。
麺つゆ20ml・濃口醤油10ml・水120mlを足し、煮立たせて鰹節を追いダシとしていれる。
あとは冷やすだけだ。
あっさりしながら、風味が増して最高だ。
じわじわと見えてくる、ざるメシのたしかな魅力
ざるメシ、言ってみれば冷や飯なんだけれど、こうして舞台が整うと妙に豪華に感じられるのだ。
それに、カロリー的には全然たいしたことないのに、食べるスピードと見た目からわりかし満腹感がある。
つまりヘルシーなのだ。
さらにだ。
慣れてくると箸でも食べられるようになってくるし、それが妙に通っぽい。
うまくできると、すこしだけ誇らしいのだ。
これぞ日本通の証…なんて世界線は存在しないけども。
気合をいれて20まで項目をつくったけど、果たしてどこまでたまるだろうか。
もうすこしだけあがいてみたい。
蕎麦に丼ものをつけたくなるけど、ざるメシにはつけたくならない。やっぱりざるメシ、ヘルシー。