わたしのわさびのり太郎は中学から
わたしがわさびのり太郎にゾッコンになったのは中学の頃である。
男子中学生といえば常に食に飢えている生き物であり、私とて例外ではなかった。 部活の後にファミリーマートの50円のコロッケやブタメン、駄菓子の類を食べに食べた上で何食わぬ顔で帰宅し、夜ごはんをもりもり食べていたものだ。
その時に光り輝いていたのがわさびのり太郎だ。わさび醤油という駄菓子にしては一風変わった味付けが私をとらえて離さなかったのだ。
そんなわさびのり太郎のうまみを効率よく摂取するために編み出した方法が、一口で食べるというものだ。
ツンとくる辛さがよりダイレクトに味わえることに気づいてからは、常に一口で食べていたような気がする。
丁寧な御礼に続いて「ボク、わさびのり太郎は」とある。えっ、これわさびのり太郎本人からのメッセージなの?
一口で食べるわさびのり太郎は青春の味
一口で食べるのがいい、と言ったがわさびのり太郎は一口でほおばるにはややでかい。だから食べる際にはうまいこと口の中で折りたたみながら口全体を使って食べる必要がある。だがそれがいい。
そしてこの味である。わさび醤油のじわりとした辛さがベースのたれやおさかなの甘味とマッチしている。薄すぎず濃すぎない味付けが 2枚3枚と食べたくなってしまう秘訣なのだ。
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..................中学の時、隣のクラスに好きだった女の子がいた。
通学路が途中まで同じこともあってたびたび話をしていたのだが、何を間違ったかこの「わさびのり太郎は一口で食べるとうまい」という発明を自慢気に話してしまったことがあった。
どう考えても好意的に受け止められるエピソードではない。大人の私が横で聞いていたら全力で止めていたであろう。
だけども彼女はにっこりとした笑顔で「そうなんだ!今から買いに行こうよ!」と言い放った。なんだそれは。そんなことがあるのか。
しかして一行はわさびのり太郎を求めて近所のコンビニやスーパーをさまよい歩いたが、なぜだかその日は売っているところを見つけられなかった。私には日を改めて捜索に誘う勇気がなく、なんだかんだ過ごしているうちにその話題は忘れ去られていった。
全然嘘だ。この発明を人に話したことはないし、私がいた中学は男子校である。
先日31歳になったのだが、こういう嘘の青春の話ができるのもそろそろ最後かなと思ったので書いてしまった。ごめんなさい。