ねっとり信仰からの卒業
私の長年の無条件のねっとり信仰がこれにて一段落ついた気がする。
これからはねっとりにとらわれることなく、ほっくりと折り合いを付けながら穏やかに生きて行けそうだ。人生でひとつ大きなかせを外したような気持ちでいる。
あらためて芋を好きになった。
10月。焼き芋、シーズンインだ。
以前から、焼き芋には皮近くのじゅわっとしてねっとりした部分と、中心部のほっくりした部分があり、ひとつの芋なのにだいぶ食感や味が違うなと思っていた。
これ、分解して別々にスイートポテトをつくれば、全く別の味のお菓子ができるのではないか。
※2009年11月に掲載された記事の写真画像を大きくして加筆修正し再掲載しました。
品種や焼き方にもよるとは思うが、焼き芋には層がある。
皮に近い部分:茶色がかった黄色で蜜を感じさせるねっとり部分
中心:黄色くほくほくした部分
というぐあいだ。
AとBでは、味も食感もかなり違う。
焼き芋に興味のない方は、揚げカレーパンと焼きカレーパンぐらい違うと思っていただければいい。そう、芋好きにとっては、揚げるか焼くかぐらい違うのだ。
個人的に、私はねっとり部分が大好きだ。ほくほくの5倍ぐらい好きだ。同じようにカレーパンも焼きカレーパンよりも揚げカレーパンのほうが5倍好きだ。
※カレーパンを出して焼き芋に興味のないかたも記事に巻き込もうとしておりますが、そろそろ本気になるため、焼き芋の話しか出てこなくなります。ご了承ください。
今回は、あらためてねっとりと ほくほく、2つの層を食べ比べつつ、最終的にそれぞれを使い分けて2種類のスイートポテトを作ってみようと思う。
ねっとり V Sほくほくをガチンコで勝負させてみよう。
まずはとにかく芋を焼こう。芋を焼かねば始まらない。
以前、こちらのサイトで様々な器具を使っての焼き芋の焼き比べをする記事を書いた(こちら「結局、芋は何で焼けばいいのか 」)。
ねっとり部分を大量生産するのには、土鍋か魚焼きグリルを使うとよいという結果が出ている。
実はその後も個人的に焼き芋の研究を続けていたのだが(研究といっても芋焼いて食べてただけ)、現在は土鍋や魚焼き以上に手軽にねっとり部分を生産する焼き方として
ぬらした新聞紙にくるんでからホイルでつつみ、180℃のオーブンで40分(芋の大きさにもよる)焼く
という方法に落ち着いた(なお、うちは新聞をとっていないので、くるむのはいつもだいたい区報だ)。
今回はこれで試していこう。
というのも、以前記事を書いたときは自宅にオーブンレンジしかなかったのだが、天火のオーブンがある家に引っ越したのだ。
天火は革命だった。うまく芋を焼く上ではこの引っ越しは神話級のできごとといってもいい。
そういうわけで、神話的な奇跡でオーブンで芋が焼けた。
スイートポテトを作る前にまずはねっとり部とほっくり部をそのままで食べ比べてみよう。焼けたばっかりの芋をぼっこり割ってみると……。
だいたい皮から1.5cmぐらいがねっとり部だろうか。
ちょこちょこと食べて確認しつつ、ねっとり部とほっくり部を解体していった。
そのまま食べた結果は、以下の通りだ。
ほくほく部
・あつい
・うまい
・ほくほくだ
ねっとり部
・あつい
・うまい
・ねっとりだ
食感だけで、それほど味には違いはないのだろうか。
続いて、AとB、それぞれの芋でスイートポテトを作っていく。
不安になったが、結果を先に言うと、スイートポテト化によりかなり違いが明らかになったのだ。
う、う……。
うまそうだ~~~~!
はっ、しまった。つい大興奮してしまった。冷静に味見するため、一晩おいて味をなじませつつ、気持ちを落ち着かた。
そして翌朝。
心静かにいただきます。
この味勝負は、なんと中心、ほくほく部を使ったスイートポテトの勝ちであった……!
さつまいもは皮の近くにえぐみやスジがある。ほくほく部の方はそういった雑味が少なく、砂糖や牛乳、卵と上手に調和した。
焼き芋としてはねっとり部はほくほく部よりも優勢を誇っていたが、まさかこういう結果になるとは。
おもえば、ねっとり部とほっくり部を分けなければれば皮のえぐみは気にならないどころか、味わいにもなっていたんじゃないか。
ねっとりとほくほくが別人であるという考えからして間違いだった。 やっぱり、芋はほくほくもねっとりも、併せて一つの芋なのだ。
私の長年の無条件のねっとり信仰がこれにて一段落ついた気がする。
これからはねっとりにとらわれることなく、ほっくりと折り合いを付けながら穏やかに生きて行けそうだ。人生でひとつ大きなかせを外したような気持ちでいる。
あらためて芋を好きになった。
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