グラスを滑らすのは気持ちがいい
シャンパングラスでは失敗したが、他の3種類のグラスを滑らせることに成功した。とても気持ちが良かった。最高の気分だ。
バーでマスターが「あちらのお客様からです」と言って、カクテルをスライドさせて提供するやつがある。あれをやってみたいとずっと思っていたらこの度やるチャンスが訪れたので、思う存分滑らせました。
女性が1人でバーで飲んでいるところ、突然マスターからカクテルがスライドして提供される。驚いてマスターのほうに目をやると、マスターは「あちらのお客様からです」と言う。奥の席では、NON STYLEの井上みたいな人が微笑んでいる。
そういうシチュエーションがあったと思う。ドラマか映画で見たことがある気がする。あれをやりたい。マスターになりたい。
バーでグラスを滑らせたい。でもそんなことをさせてくれるバーはあるのか?普通にバーに行って「グラスを滑らすのをやらせてください」と言ったら変な目で見られるし、出禁になるかもしれない。しかし、僕にはバーテンダーをしている友人が一人いる。ダメ元でお願いしてみたところ、「開店前ならやってもらっていいよ」とのこと。絶好のチャンスが訪れた。
初めてバーテンダーをやるのだが、服装が分からないので結婚式の二次会に来ていくスーツに蝶ネクタイをつけていった。そうやっていつも形から入ることを大事にしている。そしたらAさんに、「そのシャツの素材はバーテンダーっぽくない」と言われてしまった。形から入れていない。
なにはともあれ、やります。バーでグラスを滑らせます。その前にルールを説明する。
ルール1:4種類のグラスで試す
せっかくなので、いろいろなグラスで試そうと思う。グラスごとの特性によって難易度の違いが出ると思う。
ルール2:目印よりも奥まで滑れば成功
目印、もっともおしゃれな何かにすれば良かった。こういうところで日頃の行いが出る。
ルール3:グラスには水と氷を入れる
ついにやります!!
まずは簡単そうなグラスから試す。
いよいよ、その時が来た。
いきなりお水ありは怖いので、まずは空のグラスで練習してみた。自分でも笑っちゃうぐらいビビリであることが判明する。
グラスは思ったより滑らないということが分かった。すると、この様子を見ていたAさんが「手首のスナップを効かせるとやりやすいって店長が言ってた」と言う。なんだ、バーで働く人はみんな一度はやろうとしたことがあるんじゃないか。
手首のスナップを効かせるのと、もう少し勇気を出すことを意識して再挑戦する。あとせっかくなので水も入れてやってみる。
なんと、まさかの一発成功である。手を離れたグラスが「するするするっ」と推進していくのが気持ちいい。目印を過ぎたあたりでピタっと止まるのも気持ちいい。
初心者にぴったりの難易度だと思う。最初にこれをやっておいて良かった。
次は脚なしワイングラスだ。ステムレスワイングラスとも言う。(さっきグーグルで調べました。)
オレンジ色の強いお酒が入っていそう。次の日頭痛くなるやつ。心を込めて滑らせます。
気持ちいい!!!
実は一度目は半分くらいの距離で止まってしまったのだが、Aさんのアドバイスに従い水を減らすことでグラス全体の重心を低くしたところ、うまくいった。グラスが丸みを帯びているので手に馴染みやすくスナップが効かせやすい。また、接地面積が小さいため滑りやすく、気持ちがいい。
あまりにも気持ちがいいので逆再生も付けてみた。頭の中でマンボNo.5を再生してください。
ロックグラスよりは安定感が少ないが、まだまだ簡単なほうだ。
さて、ここでちょっと休憩。そもそもこのシチュエーションの元ネタは何なのか?多くの人が漠然としたイメージだけを持っているように思う。
周囲の人に聞くと、「『あちらのお客様からです』は知っているが、グラスは置くだけ」派と、「『あちらのお客様からです』を知っており、グラスを滑らせる」派があった。後者の元ネタが知りたい。
知人が言うには、「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3でそういうシーンがあった」とのこと。せっかくなのでPART1から見直した。いい映画なので。
うーん。結局元ネタが分からない。インターネットで検索しても「往年のトレンディドラマでよくあった」ということしかわからず、ズバリと出てこない。(ご存知の方はTwitterかはてブで教えてください。)
もやもやしたまま本題に戻ります。
脚があるので転倒の可能性がある。不安…。
「これは確実にグラスが倒れる」と脳が勝手に判断し、自然とブレーキをかけてしまう。
「もうどうにでもなれ」と念じブレーキを解除する。
アクセル全開でいったら目印を大きくオーバーした。もう少しで壁に当たって大惨事になるところだった。あぶない。
難易度はぐっと上がる。自分を信じることと失敗を恐れないことが大事だ。あとはできるだけ重心に近いところを持つといい。
調子が上がってきたところで最後はシャンパングラス。正直、めちゃくちゃ難易度が高いと思う。
ワイングラスよりも細いので転倒のリスクが高い。でもここまで3種類のグラスを滑らせてきて分かったことは気持ちの大切さだ。「絶対にうまくいく」と強く念じることが結果につながる。
盛大にやらかしてしまった。
せっかくなので動画を載せる。撮影を手伝ってくれた妻の悲鳴と、筆者の笑い声が聞こえる。笑っている場合ではない。
事前に用意していた大量のタオルで慌てて拭いたので事なきを得た。ブルーシートを敷いておいて本当に良かった。でもこれ以上失敗するとお店にご迷惑をお掛けするのでやめます。シャンパングラス、失敗。
グラスは背が高ければ高いほど、また、太さが細ければ細いほど、転倒のリスクが高まる。シャンパングラスはどちらも満たすのでかなり難しい。そして、カクテルグラスはもっと難しいに違いない。物理的に不可能なのでは?
シャンパングラスでは失敗したが、他の3種類のグラスを滑らせることに成功した。とても気持ちが良かった。最高の気分だ。
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