笏あれこれ
笏は簡単に言えばおじゃる丸が持っているピンクのアレのことだ。実物は大抵茶色であり、子鬼トリオから狙われることもない。
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笏の起源については諸説あるようだが、こと日本においては6世紀ごろに中国から伝来し、主として官人が公事などの場で式次第を書いた紙(笏紙)を貼り付けるために使われていたそうだ。もとは神職が持つためだけのものではなかったのだろう。
かくいう自分も神職になったばかりの頃は神事の式次第を間違えないために、カンニングペーパーを都度作って笏に貼り付けていたことがある。昔もそうやって使われていたとはつゆ知らず。
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祖父から聞くところによると、神職を務めていたご先祖様は神事に望むにあたって短刀を懐に忍ばせていたとのことである。もし粗相があったら自らの命で責任が取れるように、という理由らしい。
そのような緊張感のなかで、式次第を間違えないように備忘録を用意するというのはごく自然なことのように思われる。
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現代の神職における笏の役割は威儀を正すためだの、持つ人の姿勢や心を整えるためだのと言われているが、実際としては「そうと決まっているから持つ」くらいの捉え方が一般的ではなかろうか。
でも、元はと言えば笏は実用品だったのだ。実用してあげるのが本来だろう。かわいそうだから笏持って散歩しようぜ。
笏を持って散歩する
ちょうど東京に出る用事があったので、笏を携えて宿の周辺を出歩いてみることにした。そうは言っても物質としては木の薄板に過ぎない笏。なにか変化は起こるだろうか。
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普段の洋服にあわせて笏を構えてみたが、この不思議な収まりのよさはいったいなんなのか。すっげえオシャレじゃんね。ループタイのような文化系レトロアイテムに見えるというか。
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歩いてみてもどこか威厳がでる。苦手な人混みもなんのその、自然と背筋が伸びて自信に満ち溢れている。とてつもないフィット感である。
そもそも数千年という長いスパンで考えたら、人類はスマホよりも笏を持ってる期間のほうが長いだろうからね。いいじゃん、笏。
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そういえば、さくらももこ女史がとあるエッセイのなかで、人を待っているときにタバコを吸えば間が持って格好良くみえるというようなことを書いていた。大人が手ぶらでボーっとするのはマズい、みたいな内容だった気がする。
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それで言うと、笏を握っていれば手持ち無沙汰な時間も格好がつくんじゃなかろうか。
ばかっぽくなるどころか律令国家の官人に見えさえするのである。これぞ立身出世!故郷に小錦でも呼んでパーッとやりましょうや!ちゃんこで乾杯!
笏に機能をつけました
ただ持って歩いただけでは笏を実用したとは言えないので、ちょっとした機能を笏につけてることにした。
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白紙のメモ紙を笏に貼り付けることで、ペンさえあればどこにいても簡単に字を書き込めるようにしたのである。笏を構えて字を書くさまはまるで平安貴族。あはれなり。