特集 2019年7月31日

和歌山ではラーメン屋で寿司も食べる

和歌山の寿司バリエーションに触れる

和歌山には「めはり寿司」「はや寿司」「なれ寿司」などの寿司があると聞いた。地元の人にとってみたらきっと当たり前だが、馴染みのない者にとってみたらどれも珍しい。

せっかくの初和歌山なので、それぞれを堪能して歩くことにしてみた。

島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。(動画インタビュー

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和歌山の寿司を知りたい

取材で和歌山へ行くことが決まり、Twitterで現地の情報を収集していたときに、「なれ寿司」「はや寿司」「めはり寿司」という寿司の名前が多く挙がった。

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そこで「和歌山って、寿司のバリエーションが多いんだな」という印象は受けたが、どれがどんな寿司なのかはよく分かっていない。

初めて行く土地の、初めて見る寿司文化。なにもかもが珍しい。

せっかくなら、存分にこの寿司文化に触れまくって帰ることにしよう。

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目を見張って食べる「めはり寿司」

まずは「めはり寿司」から。

「めはり寿司を食べる時に本当に目を見張るのか見てみたい」というコメントが届いたのだが、見張る?

「めはり寿司」は紀伊半島南部の郷土料理ということで、滞在してた和歌山市より南だ。

南下していくと、だんだん「めはり寿司」という文字が増え始め、ドライブインの売店の入口の貼り紙に由来を説明してもらえた。

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ドライブインにあった貼り紙

そして南紀白浜の海鮮マーケット「とれとれ市場」に到着。ここで休憩しつつ目を見張ってみようじゃないか。

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海鮮マーケット「とれとれ市場」
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ここで購入して……
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カッッッッ!!!!!!

思いっきり見張ってみた。一口で食べようとすると、まあまあこうなる。

味はというと、「寿司」と名乗ってるのに酸っぱくない。酢飯ではなく醤油でほんのり味付けされたおにぎりだ。高菜に巻かれているのも個人的には新鮮。売店で売られてた梅干しを付け合わせてもよく合う。

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ラーメン屋には必ずある「はや寿司」

つぎは「はや寿司」。これはラーメン屋やスーパーに行けば必ずと言っていいほどあると聞いた。

ラーメン屋に入るとテーブルに置いてある。

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本当だ、ラーメン屋に寿司がある!
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別の店にもある!
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また別の店にもある!!(これは寿司は食後)

本当にどこに行ってもある。レンタカー屋の人に何気なく「ラーメン屋以外の飲食店にも置いてあるんですか?」と聞いてみたら、

「そういえばラーメン屋以外にはないですね。当たり前すぎて考えたこともなかったですけど。」

と言われた。

「当たり前すぎて」!!?!?

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これが??

「深く考えたことなかった」というところからして、地元に浸透しまくってる証拠だ。

置いてある「はや寿司」は、自由に取って食べてもよくて、会計時にラーメン代と一緒に精算する。

しかし、どのタイミングで食べるのが正しいんだろう。食前? 食後……?

何人に聞いてみたら、「ラーメンの前です!」という人もいれば「いつでもいい」という人もいる。多分好きに食べればいいのだ。

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自分のタイミングで食べればいい(麺見えてないが、奥のどんぶりはラーメン)

ところでこれは「はや寿司」のはずだが、「早なれ」というフレーズを何度聞いた。

「早」?「なれ」??

和歌山には(この後出てくる)「なれ寿司」というのもあるが、このどちらも含んでそうな言葉はなんだ。

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メニューにも書いてあったり
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ここにも「早なれずし」って書いてある

入った飲食店でお店の人に「早なれってなんですか?」と聞いてみたら、当然のように

「『なれ』が『早い』んですよ」と言われ、

え、なれが??

どうやら「熟れ(なれ)=発酵」がそんなに進んでなく、「なれ寿司よりも早い」ってことみたいだ。そして「なれ寿司」は別名「遅寿司」とも呼ばれ、作るのにもかなり時間がかかる。

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ものすごく臭い「なれ寿司」

つぎはこの「早くない」という「なれ寿司」を食べてみよう。店で注文しようとしたら、まず止められた。

「クセが強すぎて、女性の一人客が気軽に頼むようなものではない! いっぱい残すに違いないから、よっぽどじゃない限り思いとどまってくれ……」

ということらしい。え、そんなに?

いや、ここは注文させてもらいますよ。さあ「なれ寿司」、来い!

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きたーーー!!
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うわっっ!!

匂いをかぐと、本当に臭い。別名「腐り寿司」と呼ばれるのも納得の臭さだ。

「なれ寿司」は、炊いた米にサバの塩漬けを乗せ、重石をして一カ月ほど放置し、乳酸発酵させたもの。酢や砂糖がなかった時代に、魚を保存するためにこうやって米を発酵させて保存剤として使っていたのだ。

もっと本格的な「なれ寿司」だと、更に長期間放置し、もっと臭くなるらしい。

腐敗臭のする寿司と言えば「ふな寿司」も有名だが、あれも「なれ寿司」の一種とのこと。そうだったのか。

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最初ビールと一緒に飲んでたが……これ合わなくないか……
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……と思ったので、試しに日本酒を頼んでみたら
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おっ、これは……!!

やっぱり思った通りだ。発酵した米には、発酵した米の酒が合う。

臭いと思いつつも、食べてるうちに受け入れ態勢が徐々に整ってきた。慣れると美味いから「なれ寿司」っていうのかもなーはっはっはっ……と、どうでもいいダジャレを頭によぎらせつつ、この臭みと自分の折り合いも付き、抵抗がなくなってきたぞ。よかった、これで堪能できる!

そういえばブルーチーズも昔は食べられなかったけど今は好きだし、「腐敗への慣れ」という意味で共通するものがある。

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折り合いが付けばこっちのもんだ。うまい!

残り2切れになったところで、量そのものが多かったので持ち帰り用に包んでもらった。

お店の方も「こんなにまさか食べてもらえるとは……」と喜んでくれた。

地元の人だと、もっと発酵が進んだものを好んだり、戦中・戦後に食べた思い出の味として思い入れのある人も多いらしい。

これでもかなりクセがあるのに、これ以上となったらどんなものなのだろう。興味はあるが、なかなか想像できない。

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YES/NOチャートで寿司に導きたい

ここまで3種類の寿司を食べ歩いてみたが、和歌山初心者だとどれを試してみようか迷うものだ。

そこで、和歌山旅行をした人がどの寿司を食べるか迷ったときに、これを使って決めたらいいよ! というものを作ってみた。

迷ったら質問に答えて寿司を選ぼう!
和歌山で寿司を食べたことがある
犬より猫が好き
ラーメン屋に行くぐらいならインスタントラーメンを食べたい
本当に早起きは三文の得だと思う?
よく寝坊をするほうだ
FacebookよりTwitter派だ
ビールよりも日本酒が好き
パンよりもご飯が好き
今すぐ遠足に行こうと誘われたら行く
いつか宇宙に行ってみたい
家にこもるよりも運動をする方が好き
インターネットをやってるうちに、うっかり徹夜したことがある
納豆はあまり混ぜないほうだ
令和にはもうすっかり慣れた
あなたにおすすめの寿司は……?

めはり寿司

はや寿司

なれ寿司

ボタンをクリックして START!!
YES
NO

地元の人にしてみたら、「もっとこれがある!」「あれが足りない!」となるのかもしれないが、ここは良しとしてもらおう。

まったく関係ない質問のオンパレードだが、相当迷ったときの決める手掛かりにしてもらえればいいなと思う。


はげまされて和歌山

自転車を漕ぐとマフラーができる編み機の記事、山のように積まれている梅干しの種探しの記事、そして今回の計3本は「デイリーポータルZをはげます会」の会費から経費を出してもらうという、ありがたすぎる旅だった。

初めての和歌山旅は、大阪から意外と行きやすくてびっくりしたところからスタートし、知らない土地を車移動するときにありがちな無駄な大回り・大きなタイムロスもあり、もっとここ行きたかったなーと思いつつ断念した場所もあった。(田辺あたりとか特に。)

なので、きっといつかまた行きたい。

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