阿蘇山という山はない
熊本空港まで家族を迎えに行った折、弟が阿蘇の火口を見たことがないと言うのでついでに連れて行くことにした。
ついでと言っても地球の長い歴史からすれば山々が生まれたついでに人間が発生したようなもので、どうも人間は偉そうでいけない。
実は阿蘇山という単独の山はなく、阿蘇カルデラの中央にそびえる阿蘇五岳と呼ばれる火山群と外輪山を総称して阿蘇山という。
ちなみに地理に弱いわたしは阿蘇地方で見かける山々はぜんぶ阿蘇山だと思っている(最近のアイドルはみんな同じ顔に見える!のテンションで)。
草千里ヶ浜はオープンワールド
阿蘇山は観光面でいうと原っぱが広がる草千里ヶ浜と中岳の火口見学が特に有名で、今回はシンプルにそのふたつを見てきた。
まずは草千里ヶ浜から。
その名の通りどこまでも草原が広がっていて、放牧された動物を見ることもできる。なんせあたり一帯が牛馬の糞まみれなので糞千里と呼ぶ人もいるらしい。
雄大な景色のなかに小さく映る人間と動物、雨水がたまり自然にできた池、はるかに見える濃い緑色の山。嘘みたいによくできた景色で冒険系のオープンワールドみたいだ。
歩いていると弟が急に笑いはじめて、なにごとかと思ったら動物のフンから生えるキノコを発見して喜んでいた。そしてこの日でいちばん丁寧に写真を撮っていた。
火口付近は風がすごい
草千里ヶ浜から車を走らせればそのまま火口のそばまで行くことができる。いつも職場やスーパーに行くのに使っている自家用車で火口のそばまで!
火口見学はいつでもできるわけではなく、噴火警戒レベルが高いときはもちろんのこと、風向きの具合でガスが流れてきて危険なときなんかも不可能となる。自然中心だ。
いまここで触れておこう。阿蘇山は風がすごい。夏真っ盛りなのに寒さを感じるほどなのだ。朝食を食べていなかったら体が軽くて吹き飛ばされていただろう。
風で全身が冷え切って疲労まで感じたのは初めてのことだった。この寒さはおもしろいのでぜひ現場で味わってもらいたい。
火口付近には退避壕が点在していて、現役の活火山っぷりを感じられる。
避難壕の内壁は落書きまみれだった。事と次第によっては人生最後の喫緊のメッセージが残されるようなところに「国試ガンバ」はおかしい。
火口を見るぞ
それではいよいよ火口を見よう。
火口を覗き込むと見える火口湖の水は火山由来の成分が溶け出したものらしく独特の色をしている。確実に分かることは落ちたら帰ってこれないということで、さすがに迫力がある。
風向きの影響なのか特別にガス臭かったりはしなかった。火口湖にむかって手をかざすと少しあたたかいような気がしたが、これは気のせいかもしれない。
火口を見学するといっても数分も眺めれば満足できる。正直に言えばすぐ飽きた。
飽きてしまったあと、火山とは直接関係ないひとつのことでわたしの頭はいっぱいになっていた。
それは、火口付近の駐車場に停まっている車のアルファード/ヴェルファイア率の異様な高さである。体感で3台に1台はそのどちらかだった。なんだったんだろうか。

