花火に火を点けるまで
さっそく早起きしてホームセンターに花火を買いに行った。
無事に花火を手に入れて車に乗り込もうとしたとき、隣接する田んぼでたまたま作業をしていた親戚と目が合った。朝から草を刈る高齢者と、花火をしようとする30代のわたし。なんとなくバツがわるい。
思うに、朝という時間は行為の持つ力を増幅するのだ。朝からランニングをしている人はストイックな人物に映る一方で、朝から遊んでいる人は年がら年中遊んでいるように見える。
そういう社会の目との戦いなんじゃないか朝花火って。果たしておれは戦えるだろうか。
いろんな意味で雲行きが不安だが、花火で遊ぶ場所に向かった。
朝花火の場所として、祖父が神職を務める神社の駐車場を借りることにした。神様って文句ひとつ言わずなんでも受け入れてくれるからいい。もっと神に甘えたほうがいいですよ皆さん。
朝花火の魅力
神社に参拝者はいなかったので思う存分花火で遊べそうだ。これぞ信仰の効能である。
道具も場所も整ったところで、さっそく花火に火をつけてみよう。
明るいところでも綺麗な火花が見られた。多少の見え方の違いはあるかもしれないが、明るいところでやっても花火はじゅうぶんに楽しい。
でも煙の量がすごい。明るい場所でやっているからなおさら目立つのだろう。アパートの敷地でやらなくてよかった。朝っぱらから名前も知らない隣人を燻すのは気まずい。
花火の匂いが好きなので、それが朝から嗅げるのがなにより嬉しい。
仕事のある日に一本花火を燃やしてから出発したらリラックス効果があっていいんじゃないか。火薬の匂いのリセッシュとかでないかな。
噴出花火は音がでかい
せっかくなのでセットに入っていた噴き出し花火もやっておこう。
今までコソコソと噴出花火をやる機会がなくて気づかなかったのだが、これは音がデカすぎる。集落中の人が野次馬に来てもおかしくないくらいの迫力だ。
土台、勤務中や飲み会のときなどに他人の声の大きさを注意するタイプなのだ。心の底から恥ずかしい。
ああ、朝の火花に照らされて明らかになったものは、徹頭徹尾他人の目を気にする自分の姿だった。
いいのかそれで!
そうこうしているうちに大雨が降ってきたので引き上げて家に帰った。
これだけ楽しんでも朝の9時過ぎである。満足感に包まれたまま夕方まで寝っ転がってロックマンをプレイした。いい日だった。

