いざ出港じゃー
出港してすぐに我らが船は全速力で航行を始めた。ちなみにこのツアー、事前予約をした91人が全員乗船しているのだという。早朝、しかも雨の中で出席率100パーセントはすごいだろう。
今この船を走らせている燃料の半分は執念だと思う。
しばらくして船内放送が流れる。
「みなさん、いよいよこれから夢のクィーンメリー2号に併走するわけですが、撮影に気をとられて海に落ちないようにしてくださいよ!現在クィーンメリー2は船体2時の方向、5500メートルの付近を航行中です。」
確かに落ちたくないが、落ちたらあちらの船に向かって泳ごうかとも思った。
事前情報ゼロでやってきた僕を尻目に放送を聞いた船内はにわかに活気づく。「どこだ!」、「あっちだ!」戦々恐々だ。
周辺はタンカーのようなでかい船が行きかう水域のため引き波に揺られて船がばったんばったんいっている。加えて猛スピードのエンジン音と飛ばされそうな強風が船上に修羅場の様相を呈す。
早く、早く船見て帰らせてください!
弱音を吐きそうになったそのとき
「あれだ!見えたぞ!」
ついに豪華客船クィーンメリー2がその船体を我々の前に現したのだ。その衝撃の姿は下の写真!
・・すっごい遠いんだね
どこが水平線なのかわからない暗闇の中に、ぽつんと小さなライトが見えるのだ。曰くあれが豪華客船なのだと。うぬう。
しかし我々の船内ではすでに大撮影大会が繰り広げられていた。みなさん、いったいどんな超高倍率カメラを持ってきたんですか。
別の不安が頭をかすめる
普通のデジタルカメラしか持ってきていない僕には上のような点の光を捉えるのがやっとだった。なにより気になるのが胃の辺りに感じる不安感だ。これを船酔いと認めた瞬間に負ける気がする。
4時から船に乗っている身としてはもうすこしなんとか興奮がほしいところなのだが、それは僕に想像力が足りないだけだろうか。
悶々としながら猛然と暗闇を突き進む船に揺られることさらに30分、また船内放送が入った。
「現在1時方向、約1200メートルの距離でクィーンメリー2を確認できます!」
1200メートルだと!さっきよりもずいぶん近くなったじゃないか。アナウンスの声にも熱を感じる。これは期待して良いのかもしれない!