特集 2024年7月30日

お台場で見るべきものはプランクトン

9年ほど前、デイリーポータルZの生配信でプランクトンを見る企画を行った。
都庁の近くの水たまりから汲んできた水にはなにもいなかった。

なにもいないね、という無の内容で生放送は終わった。

うまくいけばプランクトン中継で目立てると思ったのだが、その目論見も消えた。
だが、2024年ついにそのチャンスが訪れた。
 

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:サンノゼ人体博物館(デジタルリマスター)

> 個人サイト webやぎの目

まずはプランクトンのみなさんをどうぞ 

今回の記事は水を採集→顕微鏡で見るという流れだが、まずはつかみでプランクトンを見ていただきたい。

驚く声もそのままに

元気よく動き回っているのがカイアシ類という甲殻類の子ども(ノープリウス幼生)である。右のほうにいるでっかいのはたぶんゴカイのなかま(多毛類)の幼生。ゴカイは成虫になってもなかなかだが、幼生の時点でふてぶてしさの片鱗がある。

この水はお台場の砂浜で汲んできた海水だ。

001.jpg
こうやって雑にとった海水だ

波打ち際でペットボトルでただ汲んだ。そのなかにあれだけの生き物がいる。
これはお台場の海が汚いという話ではなくて、近くの海にもこれだけ小さい生き物がいるということである。これが生態系だ。

……とかっこつけて言ってるが正直ちょっと気持ち悪い。

わ、この記事ちょっと苦手かもと思ったみなさん。大丈夫です。僕も撮影しながらずっとひや~と心のなかで言ってました。

021.jpg
記事の終わりには好きになってるはず

では改めて水採集からスタートです。

いったん広告です

強力な助っ人がふたり

以前も記事に登場してもらった小学館の図鑑編集者 小林由佳さんの新作がプランクトン図鑑だった。

 
プランクトン: クラゲ・ミジンコ・小さな水の生物 (小学館の図鑑NEO POCKET)
プランクトン: クラゲ・ミジンコ・小さな水の生物 (小学館の図鑑NEO POCKET)
 
山崎 博史(監修), 仲村 康秀(監修), 田中 隼人(監修), 山崎 博史(著), 仲村 康秀(著), 田中 隼人(著)

※このリンクからお買い物していただくとアフィリエイト収益が運営費の支えになります!

176ページ、オールカラー税込1100円。約500種類のプランクトンが載っているのでプランクトン1種類あたり2.2円(税込)だ。 

022.jpg
みんな大好きミジンコ
004.jpg
プランクトンの定義

フグやエビのようなメジャーな生物の幼生も、コケ類のような植物も、水流に逆らえずに漂っている生物は全部プランクトンになる。
つまりプランクトンとは生き方の問題だったのだ。

今回、まずは小林さんに手伝ってもらいお台場で海水と淡水を採集。それから図鑑の協力者のひとりである奥修先生に顕微鏡を借りる。
自ら頑張らず、プランクトンなみに人まかせにした。

003.jpg
左が小林さんです。べつやくさんの登場はこのあと
いったん広告です

水を採取する

まずはお台場で淡水と海水を採集する。
お台場を選んだのは東京湾の海水を採集するためと、「お台場」の響きがプランクトンにあってなかったからだ。
お台場で見るべきものはガンダムに加えてプランクトンである。

淡水は青海(お台場の南のほう)の公園の池で水をくんだ。
表面にはコケが浮かび、水草がもそもそしている。埋立地なのにカッパがいそうな雰囲気だ。

005.jpg
天下一品のラーメンぐらいどろどろの池
006.jpg
おっかなびっくり水を採集

よく見ると池には小さな魚が泳いでいる。プランクトンがいるに違いない。

007.jpg
汲んだ水に気泡ができている

ペットボトルの中の藻が光合成している証拠だそうだ。自然は小さくても生きてる証を見せてくる。

008.jpg
布で濾す

採集した水を濾すと布のうえにプランクトンがたくさん残り、観察しやすくなる。
あまり目がすかすかの布だとプランクトンも抜けてしまうので向いてない。これはスカートの裏地。

どろどろ池の横には少しきれいな池もあった。

002.jpg
ひしゃくで少しきれいな池の水を汲む小林さん

海水はお台場の砂浜で採集。

009.jpg
どこかにひしゃくを落としたため雑にペットボトルで直接汲む

落としたひしゃくが黄金のひしゃくになって返ってくることもなく、プランクトンを見るために奥修先生のところに向かう。

いったん広告です

顕微鏡を借りる

顕微鏡を使わせてもらうのはプランクトンを研究している奥修先生。

011.jpg
「これはいますよ」と奥先生(顕微鏡いらず!)
010.jpg
手土産のように持ってきた2種類の池の水と海の水
いったん広告です

生き物のからをまつ毛で押して模様を作ってる

ところで奥先生には珪藻アート作家という肩書がある。僕らが汲んできた水を見る前に奥先生のプレパラートを見せてもらった。

014.jpg
?どういうこと?

このひとつひとつが珪藻の殻なのだ。珪藻とはガラス質の殻を持つ単細胞生物で、上記の写真はその殻をきれいに並べてある。珪藻は珪藻土マットのもとになっている生物だ。
CDのように輝いているのは光の波長以下の凹凸があるときにおきる現象(構造色)、生物でそれが起きている。くわしくは奥先生の著書、珪藻美術館(福音館書店)をどうぞ。

 
珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界 (たくさんのふしぎ傑作集)

※このリンクからお買い物していただくとアフィリエイト収益が運営費の支えになります!

015.jpg
ちなみに肉眼だとこれぐらいの大きさ

 並べるときはまつげかまゆげを用いた自作の道具を使用しているとのこと。
「まつげのほうが細いですね。タンパク質で押した方が傷つけない。」
顕微鏡借りていいっすか、みたいなノリで来たがけっこうな人のところに来てしまった。

⏩ いよいよプランクトン実況

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ