そんな服ってありませんか?
先日、友人と立ち飲み屋で生ビールを飲みながら話していた。その友人は音楽好きで、歳は私よりだいぶ下なのだが、好きなミュージシャンが重なっていたりして、関西圏のあちこちのライブハウスでばったり会う。
その日も飲みながら「今度どこかライブ行く予定あるんですか?」「ああ、来月、〇〇のライブに行こうと思ってます」というようなやり取りをして、それからなんとなくバンドTシャツの話になった。
お互い、好きなミュージシャンのTシャツはついつい買ってしまう方で、「Tシャツ、どんどん買ってしまいますよねー」「そうですねー」「こんなに買っていつ着るんだっていう」「正直、全然ほとんど着てないのもあります」といった会話が続いた。
2杯目となったビールの酔いもあって、「今度、そういう服を着て集まりましょうよ!」と私がいつものように雑な提案をして、でも、後でじっくり考えてみても、それを実際にやってみるのは楽しそうに思えたのだった。
それからしばらくして、夏の盛りを過ぎてようやく涼しくなってきたタイミングで、思いつきのピクニックに付き合ってくれそうな友人に連絡をしてみた。誘いの連絡をする際、以下のようなことを事前に伝えた。
・買ったはいいがあまり着ていない服を着て集まる。Tシャツに限らず、どんな服でもいい
・何着か持ってきて、可能なら途中で着替えてもいい
・それ以外はただのピクニックとして飲んだり食べたりして楽しむ
それだけである。中にはピクニックの予定日の前日に偶然会って、いきなり「明日、暇ですか?着てない服ありませんか?」みたいに誘って、来てもらうことになった人もいる。
前夜、自分の部屋にたくさん溜まっているTシャツを一枚ずつ見返して、どれを持っていこうかと悩んだ。いざとなるとなかなか決まらないものだ。
どれも欲しくて買ったTシャツである(人からもらったものも少しある)。だが、よく着るもの、たまにのもの、あまり着ていないもの、と、差ができるから不思議だ。まあ、中には買う時にすでに「あまり着なそうだけど……買うか!」と思いながら手に入れたものもあったりするが。
なんとか(といってもかなり多めに)選び、トートバッグに詰め込んで当日を迎えた。しかし、数日前から天気予報を見て懸念していたことではあったのだが、その日は雨だった。
雨でも集まってくれた友人たち
本当なら、大阪城公園という、大阪市内でも有数の広さを誇る公園をピクニックの会場にしようと思っていた。なんでよりによってこんな天気なんだ……と自分の運のなさを恨んだが、まあそれならそれで、どこか場所を探そうと思い、とりあえず予定通り、友人たちには大阪城公園のすぐそばのJR森ノ宮駅に集合してもらった。
ここで一つ、事前に説明しておきたいことがある。私は大阪に住んでライター業をしているのだが、その活動について、最近、NHK大阪放送局の方々が取材をしてくれている。いずれドキュメント番組にまとまるらしいその取材の中で、私が記事を書くために取材をしている様子も撮影したいと相談されていた。
で、今回のこのピクニックの模様も撮影してもらう話になり、その準備もしてもらっていたのだが、この通り、あいにくの雨となった。
すると、NHK大阪放送局の方から「もしよかったら社屋の一角でピクニックをしてもらって、その様子を撮影してもいいでしょうか」と、驚くような提案があったのだった。社屋の中でピクニックを……まあ、そのわけのわからない展開も面白いかもしれない。
というわけで、まずは駅前のスーパーで飲み物や食べ物を買った。
あきらめきれずに一応念のため公園にも行ってみたが、やっぱり雨が強くてだめそうだ。
それで、大阪城公園から割と近い距離にあるNHK大阪放送局へ移動することに。関係者専用のエレベーターに乗る。
上昇するエレベーターの中、「なんだか緊張しますよ」と誰かがつぶやく。高層階に着くと、エレベーターホールの前の窓からの眺望が素晴らしく「うおーっ」と声が上がった。今回は事情が事情だということで特別にこの窓の前でピクニックをしていいとのこと。すごい。
そして、それに加えて荷物を置く場所として会議室をお借りできることになった。服を着替える時も、ここを使えば便利だろう。
思ってもみない場所で始まったピクニック
果たしてこれはピクニックなのか、もうわからないが、広げたレジャーシートの上に座ってみると不思議と気持ちは落ち着いてくるものだ。
そして乾杯だ。
ちなみに、公園の芝生と違って、なんせ社屋の一角なので酒をこぼしたりせぬよう細心の注意を払いました。怒られることはないと思うのでご安心ください。
ここで本日の参加メンバーを紹介しておきたい。
よくデイリーポータルZの取材に協力してくれる山琴さん。
この企画が生まれるもとになった音楽好き、だてめがねさん。
この催しのために愛知県から来てくれたカニさん。
昨日いきなりオファーして、それで来てもらったサトシさん。
そして私。
以上5名である。みんなそれぞれに面識はあって、たまに会えば乾杯するような関係だ。とはいえ急な誘いを受けてくれて、さらには足元の悪い中、ここまで来てくれたことに感謝。
なかなか着る機会のない服について説明してもらう
乾杯の後、まずはそれぞれ「今着ている服」について説明をし合う流れになった。みんな、この時点で今まであまり出番のなかった服を着ているのである。
カニさん
「これね、見ての通りビール柄なんで、できれば暑い日に着たいじゃないですか。でもこの泡の部分がちょっと立体プリントになっていて、ここが全然、汗を吸わないんですよ(笑)だから、暑い日に着れなくて、今日、着るのが2回目です。今は下に一枚、肌着を着てるんでまだマシなんですけどね。ただ、この泡の質感はすごく気に入っています」
だてめがねさん
「これは(新潟のアイドルグループ)NegiccoのTシャツで、8年ほど前にライブを見に行った時に買ったんですけど、漢字で『葱娘』って書いてあるのがちょっと目立ち過ぎるなっていうのがあって、新潟でNegiccoのライブがある時に着ていったことはあって、そこではもちろん堂々と着れたんですけど、いざ普通の日に着るかってなるとなかなか……」
山琴さん
「僕は今日、着替えてからがスタートだと思ってたんで、これは着る機会がないどころか、普段からよく着ているものですね。大好きな『アシッド田宮三四郎』さんのTシャツですね。気に入ってるんですよ」
私も山琴さん同様、一着目が普段から着れそうなTシャツを着てきてしまったので、着替え後からがスタートである。今日はみんな何着か、これまで着る機会がなかった服を持ってきてくれたという(私は10着ぐらい持ってきてしまった)。
5人で話し合った結果、せっかく会議室を借りられたのだから、そこで着替えをして、向こうの通路から現れてくるというのはどうだろうという話になった。まずは山琴さんが会議室に着替えに行った。
今か今かと待つ。ドキドキする……。


